刃牙道 第25話 対面



刃牙と武蔵が出逢った!
出逢うのかよ!?
なら互いに強者を求めていることだし戦うのは間近か。

もちろん、そうはいかないのが範馬刃牙という男だ。
導火線があって後は火を点けるだけの状況で、マッチを手に説明を開始する男なのだ。
誰も戦わなくなってからが刃牙の出番!
これ豆な。


(あり得ない?)(そりゃそうさ!!!)(何百年も過去(むかし)に死んでる?)(知ってるよ!!!)(全部承知してるさ!)(普通に承知してるさ!!)(それでも尚…ッッ)(それでも他に言いようがない……)
「宮本武蔵さん……?」


怒濤の勢いで自分ツッコミをしながらも正解を述べる刃牙であった。
ツッコミはごもっともである。
ごもっともであるが、白亜紀の原人が蘇るよりはまだ現実的だ。
生物史を塗り替えるレベルの原人よりは古代の侍が蘇る方がまだわかる。
異常の後に異常が続いたので異常を異常と感じられなくなっているのか?

ともあれ、大正解だ。
さすがは刃牙である。妖術の使い手だ。
そんな刃牙にみっちゃんは「気は確かか」と言う。
褒めたれよ! いろいろおかしいけど褒めたれよ!
みっちゃんは刃牙が嫌いなのか?
あのアクビ瞬殺を見るに嫌いになってもおかしくはないが。

「戦国時代の侍が現代に蘇る」「SF作家さえ躊躇らう安易な設定だ」

刃牙は設定なんて言葉を使う。
うーむ、意外だな。存外ラノベが好きだったりするのか?
タイムスリップはSFの定番だから武蔵が復活するのもそれなりにあり得そうなのだが。
武蔵ならミュータントと戦ってもそれなりに頑張れそうだし。それくらいの説得力はありますよ。
とはいえ、格闘漫画の作家がやるのはどうかと思う。

そんな刃牙を見て武蔵は笑う。
ご馳走が目の前だからな。
そう思っていたら刃牙が飛んだ。
武蔵の身長より高く飛んでいる。普通飛ぼうと思っても飛べない高さまで飛んだ。
突然変なことをしでかす男だが、今回も変なことをしでかした。

「斬ったな」

「否……」「躱された」


刃牙の奇行は武蔵の斬撃をかわすためだった。
精神上の行為とはいえ、相変わらず何の気負いもなく斬る男だ。
天下の侍は天下の人斬りでもあるということか。
そして、それをかわした刃牙もさすがと言っていいのか。
刃牙はトリケラトプスを出して対抗すればいいのに。

とにかく、武蔵は武蔵であることを主張する刃牙だ。
理屈も根拠もないが武蔵だと感じる何かがあったのか。
もっとも、宮本武蔵はバキ世界でも絶対的な存在だ。
何かを感じてもおかしくはない。
おかしいがおかしくはない。

そんなわけで刃牙と武蔵は庭に出る。
かつて刃牙と加納秀明が戦った場所だ。
花田が雑魚格闘家たちを倒した場所でもある。
伝統的な(雑魚との)戦いが幾度も行われた地が徳川邸の庭である。
うーむ、どうもいい印象がないな。

さて、庭に来た理由はひとつ。
立ち会うためだ。
立ち会うのか!?
やらない夫、刃牙がやる夫になるなど私は信じられませぬ。

ここで武蔵が刃牙に丸腰でいいのかと問う。
現代からすればそれは当たり前だが、戦場に生きた武蔵からすれば素手というのはあり得ないのだろう。
武器を使われることが当たり前の環境で生きてきたのだ。
刃牙は百戦錬磨であるが、実戦の場数は武蔵が圧倒的に上か。

「どうだ」「少年(ボン)

そこで武蔵は人差し指を伸ばしそれを握る。
紙上で幾度か描写された謎のポーズだ。
すると武蔵が日本刀を握っているように見えた。
まさかのイメージ日本刀!
一流ならばイメージのひとつやふたつを嗜むということか。
妖術使いの刃牙にとって天敵と言える存在になりそうだ。

早速刃牙は斬られる。
見事に袈裟斬られた。
イメージ上のことではあるが斬撃3回のうち2回は命中だ。
リアルならお前もう死んでるぞ。

「我は天下一…」
「俺ほどになるとな」
「姿がそのまま刃」
「帯刀の必要もない」


そう言って武蔵は構えを解く。
イメージ日本刀をあっさりと解除しやがった。
しかし、自分そのものをTSURUGIと申すか。
侍というよりもSAKIMORIではないか?

剣を持たずとも同等の迫力を生み出すことができる。
それだけの力量を身に付けたのならば、もはや剣さえ不必要になるのか。
イメージ剣で戦うのか、あるいは素手で戦うのか。どちらなのかはわからない。
前者ならちと格闘漫画的にあまりいい絵じゃないな。

ともあれ、これで武蔵は素手で戦える!
最大の難関を潜り抜けおった。
武蔵を復活させたみっちゃんは多分その辺を考慮に入れてなかった。最悪、日本刀を持たせて戦わせようとした。
事実、佐部には殺す気で立ち会わせようとしていた。
武蔵はみっちゃんの暗黒面が生み出した邪神としか思えぬ。

「こ………ッッ これは次元が……ッッ」
「こういう強さもあったのか………ッッ」


武蔵の未知の強さにビビるのは刃牙だけでない。みっちゃんもだ。
さりげなく刃牙を止めてもいる。
まるでグラップラー刃牙時代の刃牙に対する態度だ。
それはまだ未熟であまり高慢でない刃牙への態度である。

ううむ、懐かしい。
勇次郎やピクルと対等に戦ったのだからこうしたへっぽこな刃牙はもう見られないと思っていた。
だが、見事に披露してくれた。
やはり、範馬刃牙はこうでなくては。
格好悪いくらいがちょうどいいのだ。

「え〜と…」
「いざ」


だが、引かぬ媚びぬ省みぬ。
範馬勇次郎の息子はいかに相手が脅威と言えど引く姿勢を見せない。
戦う気満々だ!
戦うのかよ!?
ほ、本気なのか? 本気で戦うのか?
いきなり主人公とラスボスが戦うのか?

ここで何か理由を付けて戦わないのが今までの刃牙だ。
戦わないことに関しては超一流だ。
だが、今回はいきなり戦う気だ!
し、信じられん……本当に戦うのか……?
今回は合併号なので再来週の次回へ続く。


いきなり戦う気だ!
てっきり1年くらいは戦わずにのんびりすると思ったんですけどね。
しかし、本当に戦うのか?
ここに至って戦うことを疑わせる刃牙の人望は凄まじいものがある。

勇次郎に勝つ。
そんな目標が失われたから刃牙は捨て鉢になっているのかもしれない。
だとすると以前より弱くなった可能性もある。
だからこそ、いとも簡単に斬られたかもしれない。
そして、捨て鉢だからこそ武蔵に挑むのか。

今のところ、刃牙の方が圧倒的に格下に思える。
まぁ、刃牙にはよくあることですね。
何も変わっていないのは安定感がある。

だが、油断はならない。
ゲバルより格下の気がしたのに、ゲバルを飛び越えてオリバを倒した男だ。
特に特訓も秘策もなしでピクルも圧倒している。
いきなり武蔵に虎王を決めて倒しかねない。

いや、戦わないプロの刃牙の正念場はここからかもしれない。
戦うと見せかけて、戦わない!
ここまできて戦わない!
新たな伝説を築くチャンスなのだ。

有効なのは解説あるいは回想だ。
武蔵だと気付いた理由を言い出せば危ない。
さらに武蔵に憧れていたと回想し始めるとなお危ない。
終わった頃には烈のボクシング編が始まっていれば完璧だ。
今、刃牙の真骨頂が試されようとしている……




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