餓狼伝 Vol.208



そうさ。死んだよ。ふたりとも――。
前回の「歌を唄ってくれ。童謡がいいな」で思ったことだけど、餓狼伝のアオリがおかしい
二人とも死んだって一体何の話だ。
こういうのを作るのは担当編集者の仕事だが、すさまじいまでのセンスを感じる。
今回は丹波の出番がないから二人とも死んだことにしたかったのか?
主人公として死んでるのは丹波なのだが。


姫川と藤巻の正面衝突は続いていた。
姫川の頬に拳が、藤巻の眉間に一本拳が突き刺さる。
相変わらず藤巻は舌を狙っているように見える。
殴る場所が全て口元になっている。
勝利を狙っているのか。それとも勝利に焦っているのか。

それに対して姫川は喉仏といい、ピンポイントに急所を狙っている
単純な殴り合いでは藤巻の方に分がある。
ならばと急所を狙うことで優位に立とうという作戦か。
ダメージを受けながらも正確に部位を撃ち抜くのに、姫川の高い技量を感じる。

そして、二人の距離は離れる。
眉間を狙われた藤巻はそこを押さえ、姫川は派手にのけぞる。
打撃の違いがダメージに現れている。


その時、姫川は5年前を思い出す
松尾象山に腕を折られ、北辰館に入門した直後であった。
姫川は夜の道場で一人型稽古をしていた。
元々、他流派だから北辰館の中でも異端児なのだろうか。
他の門下生と一緒に稽古しているわけではないようだ。

そんな中、適度に強そうで噛まれそうなひげ面の男が姿を現す。
男の名は東郷だった。
自称北辰館で一番不器用な男。
そして、姫川はもっとも過酷に肉体を追い込む男と称する。
要するには努力型の男だ。

「嘗めてンのかよ」

東郷は型稽古しかしない姫川に怒りを露わにする。
姫川はよくわからないけど強いという天才の代名詞みたいな人だ。
努力をする男、東郷にとって嫉妬よりも怒りを覚える対象になるのだろう。

型稽古だけで松尾象山に挑んだ姫川。
対して北辰館で一番稽古を繰り返しても松尾象山に挑めるとは思っていない東郷。
二人の意見も稽古も食い違う。
松尾象山に挑むか否かは稽古の違いではなく性格の違いだとは思うが。

東郷は松尾象山を尊敬しているのだろう。
少しでも追いつくために空手のことだけを考えて生きてきた。
そんな時に松尾象山に戦いを挑んで、そして負けを認めていない姫川がいた。
そして、その男がやることと言えば型稽古だけだった。
殴りたくもなる。

「才なき者の取る途(みち)は―― 所詮汗以外にはない」

テメエは才能がないんだよと姫川は東郷に言う。
ひどい侮辱だ。もう北辰館の稽古自体を否定している。
その一言が引き金となり、東郷は姫川へ歩み出す。
立ち合いが始まった。
東郷は平拳を姫川へ向けて突き出す。

次の瞬間、姫川が東郷の顔を立てた指先で掴んでいた。
東郷の身体は大きく反り、宙に浮く。
努力の男、東郷は果敢にも挑むが一瞬で勝負ありだった。
才能がある人は違う。
ありすぎだろう…常識的に考えて…

これは姫川の必殺技だろうか。
ただカウンターするのではなく、指先を立てているのが特異だ。
もしかして、藤巻にこの技を放つために回想したのか?


そして、回想は終わり藤巻との試合に戻る。
藤巻は跳び蹴りを姫川に放つ。
それに対して姫川の構えはない。
いつの間にかいつもの勝利パターンに戻っている。
構えを取らない状態から恐怖の反応して、カウンターを取るのが姫川の必勝法だった。
殴り合いになったかと思ったら、姫川のペースに戻されている

「ありがとう…………」
「ありがとう…………」
「理想の打撃を……」


藤巻の足刀が姫川のアゴに触れる。
そのまま足刀を振り切れば間違いなく脳震盪もので、藤巻の勝利が確定する。
だが、姫川の視線は氷のように鋭かった

藤巻の打撃も想定範囲内なのか?
東郷を切って落とした技を藤巻にも繰り出すのか?
藤巻大ピンチの中、次回へ続く。
だが、次号は休みだ!
…休みかよorz


回想はOSR値を上げるという。
追い詰められた姫川は回想することで逆転への布石とするのだろうか。
殴り合いにしておきながら、いつの間にか自分の得意なカウンターの流れにする辺り、姫川はちょっとズルい
作戦というヤツなのか…

何にせよ姫川に分のある展開になってきた。
逃亡中ながら身体を鍛えることを止めなかった努力の男藤巻は、やはり天才には負けてしまうのだろうか。
この世界、化け物か天才じゃないと勝てないのかなぁ…
あ。丹波はなんで勝てているんだろう。

1ヶ月後の次回はどうなるのだろうか。
いきなり姫川が観客一同に祝福され、「あなたにはかないませんッッ 許してッ」と鞍馬が土下座する。
さらに松尾象山が姫川を北辰館最強だと称えるのだ。
こういうことって…たいていはそう…たいていは…夢…
そして、目覚めた時には藤巻の足刀が姫川の顔面にめり込んでいる。
地球アタック不発事件再来!


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