範馬刃牙 第116話 克己心



克巳と烈がついに結ばれた。
いや、違う。打倒ピクルのために協力し合ったんだ。
でも、似たようなもんだよね。そうだよね、きっとそうだよね。


さて、そんな寿な出来事が起こっている中、野人に蹴られたどこぞの刃鹿…いや、刃牙の後日談だ。
刃牙ハウスに刻まれた「刃牙死ね」を書いた人も気持ちが何となくわかる。
いや、刃牙が犠牲になったからこそ、克巳は烈と友に一歩前に踏み出せたんだ…
そう考えれば刃牙の犠牲は無駄なものではなかった。…かも。

刃牙はパンツ一丁で寝っ転がっていた。
怠惰な主人公という風情だ。
だが、五体は保てている。どうやらあの後無事に運ばれたようだ。
…運べば大丈夫なのかよ。

そんないつも通りのやる気のないBOYを演出する刃牙だった。
が、ひとつ違いがあった。
胸にはピクルの足形が刻まれている。
観客席はるか後方まで吹き飛ばす蹴りを食らったのだ。
ある意味当然の結果である。

「闘う覚悟もなく…」
「無目的のままのこのこ出かけるから 無様な不覚を取るのだ」
「我が子ながら虫酸が走るわ あの甘ったるさにはッッ」


刃牙は勇次郎のように笑顔に顔を歪ませて独り言を喋り出す。
顔もそっくりなら言ってることもそっくりだ。
範馬の血に目覚めたか?
嫌だよ…こういう目覚め方は…

さすが、パパ大好きの刃牙だけあり、勇次郎の模倣は完璧だ。
本当に戦う覚悟もなければ、目的もなかった。だから、蹴られる。
でも、甘ったるいのは何か違う気がする
ただ、馬鹿なだけではないだろうか?
この辺の勘違いも合わせて見事な模倣であった。
勇次郎の顔真似で勇次郎に挑んでみてはどうだろうか。多分、即殺される。


「そこまで言うこともなかろうに………………」
「刃牙なりにガンバった結果じゃろう………………」


ゲゲー!マジで言ってた!
勇次郎はどういう流れでか、高級ホテルで徳川のじっちゃんと話していた。
自慢の息子が野人に一蹴されたのだ。
徳川のじっちゃんは勇次郎に即伝えたくなったのだろう。
そして、刃牙の言葉とまったく同じものを…

でも、刃牙は頑張ってねえよ
どうみてもやる気を出していないうちに決着が着いた。
そして、そのやられっぷりに徳川のじっちゃんは明らかに失望していた
柳に刃牙が負けた時の号泣っぷりはどこへやらだ。

当然、勇次郎もヤキが回ったかと突っ込む。
とりあえず、お茶を濁した徳川のじっちゃんを威圧する。
何が原因でキレるのかわからない人だ。とりあえず、お茶を濁すのはよくない。
あとこのじっちゃんはちょっとくらい死の危険を感じた方がいい。

「仮にもあの野生に触れちまったのだ」
「あの野郎 眠れぬ夜が続くだろうぜ」


愛息子が一蹴された。
しかし、勇次郎はあくまで満足げだ。
自分以上の力を持つ者に刃牙が出逢った。
刃牙がピクルを越えようとするのならば、今よりももっと強くなる。
勇次郎の餌としてより相応しくなるのだ。
何だかんだで刃牙大好きな親馬鹿勇次郎であった。


(………………なァんて言ってるんだろうな)

そんな親の気持ちは子にも伝わっていた。
本当に憎み合っているのか、好き合っているのか、よくわからない親子だ。

刃牙はピクルの蹴り一発でピクルのことを理解できたらしい。
この世界の住民は肉と肉の接触で理解しあえてもおかしくはない。
ピクルには言葉がない分、肉と肉のぶつかり合いの方が雄弁なのだろう。
SAGAだな…

もしかしたら、ピクルは最初から刃牙と戦う気がなかったのかもしれない。
だから、泣かなかったし食おうともしなかった。
ティラノサウルス級の戦力を誇る勇次郎と同じ何かを感じ取ったのだろうか。
それとも今食わずに育てることでティラノサウルスクラスの存在になると見たのか。
理由はわからないが知らぬ間にVIP待遇を受けた。

「たった一パツで親友だ」

E-!
し、親友かよ…
そういえば、刃牙は小学生を吹っ飛ばしたら親友になれた(3話)。
今回の件も刃牙をピクルに、ルミナを刃牙に入れ替えただけなのか。
そうなると刃牙の戦闘力はピクルにとって小学生レベルということか?
あれだけ吹っ飛ばされれば小学生扱いも仕方ない。


刃牙は蹴られた胸を押さえながら上半身を起き上がらせる。
1日経過してもダメージが残っている…
超再生力を誇る範馬一族にとっても、ピクルの一撃は堪えるらしい。
さすが範馬超級の一撃だけある。

「超えられる……?」
「あの領域を……」
「決して行けぬと予感していたあの領域へ―――」
「アイツとならば 超えられるッッ」


勇次郎以上のパワーを持つピクルを超えた時、勇次郎の領域へ踏み込めると感じる
バキ世界は筋肉至上主義世界だ。
いくら技術があっても桁違いの筋肉に淘汰されてしまう。
勇次郎と戦えるようになるためには、勇次郎クラスの筋肉を手に入れる必要がある。

そこで刃牙はオリバと戦った。
おそらく勇次郎のパワーに少しでも近付くためだったのだろう。
しかし、100kgのウェイト差があっても範馬の筋肉には追いつけなかった
オリバのパワーを仮想勇次郎に見立てても効果がなかった。
もしかして、オリバ刑務所編でやる気がなかったのは、オリバが仮想勇次郎になり得ないと悟ったからかもしれない。

そんな中、ピクルが出てきた。
現在、地球上で唯一範馬級の筋力を誇る生物だ。
仮想勇次郎に相応しい存在である。
ピクルを倒した時、刃牙は勇次郎と並べるかもしれない。

あと決して行けぬと予感していたってお前もノープランかよ
大擂台賽が終わった時に勇次郎とやる時が来たって言ったのにあれは何だったんだ?
もしかしてバキ最終話で呼び出したシャドー勇次郎に完膚無きまでボコられたのか?
刃牙は無計画に見えるが、挫折によって道に迷っていたのかもしれない。


パンッ

その頃、神心会本部では乾いた破裂音が響いていた。
空気の壁を突き破った音だ。
考えるまでもなくマッハ突きの音だった。
克巳がピクルとの決戦に向けて、烈と共に必殺技として磨きをかけているのだろうか?

「たしかこのようなものだったな 通称「マッハ突き」」

烈がマッハ突きの構えを取っていた。
破裂音は烈が出したものだったのだろう。
って、やれるのか烈〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
片脚がなくなったことによるダメージがどうみてもない。
近代体育の粋は片脚でも実現可能のようだ。
今の状態で大擂台賽に出場しても海王最強にはなれそうだ。

「君が持つ唯一わたしを驚かせた技術(わざ)だ」

あんたなんか大したことないんだから。
もう2000年前に通過しているんだからね。
…で、でも、マッハ突きだけはちょっとは驚いたわよ。
か、勘違いしないでよね!マッハ突きだけ驚いたんだから!他の技には興味なんかないんだから!
――と、ツンから入るツンデ烈先生であった。

「かつて君が花山氏を相手に この技術(わざ)を放つのを目にした」
「告白しよう」
「背スジが凍ったものだ」


でも、本当ね…
あなたのマッハ突きを見た時は背スジが凍ったの…
こう、私だって演舞でしかやったことのない技だったから…
なのに、あなたは実戦で使った…
それからあなたが気になり始めたの…
――と、デレで締めるツンデ烈先生であった。

とにもかくにも、ここで衝撃的な事実が明かされた
克巳のマッハ突きは烈をして驚愕に値する技だったのだ。
烈もマッハ突きを使えるものの、それも演舞におけるものであり実用体験は皆無と告白する。
烈と克巳の試合は一見烈の圧勝に見えて、烈の作戦によって勝ち得た紙一重の勝利であった。
多分後付け設定だとか、無粋なことは言わないでおこう。

烈と克巳では烈の方が強いというイメージが延々と先行していたのだが、烈本人は克巳との実力に試合結果ほどの差はないと言う。
互角だとは言わない。
この辺のごり押しが烈先生っぽい。ちょっと安心した。

「永きに渡る中国武術の歴史 この技を使いこなせるとしたら」
「おそらくは唯一人……………」


烈が想定したマッハ突きを使える中国武術家は妖怪郭海皇だった。
あの人は速さとは無縁の気がする。
消力パンチの遅さを間近で見ての発言なのだろうか?
いや、あの妖怪爺だったらマッハ突きもやれそうな気はするけど…

とにかく、中国武術の歴史と146年の研鑽の二つが揃って使えるマッハ突きを、克巳は齢20歳にしてオリジナルで生み出した。
烈にとって想像もできないことだったのだろう。
そんな偉業を見ただけで真似た刃牙に中国武術を教えるのを渋っても当然の反応と言える。

「克巳さん 研鑽(みが)いてみないかこの技術(わざ)を」
「今以上に速くッ 今以上に迅(はや)くッ」
「君だけが持つ天賦の才に預けたまえッ」


烈は並大抵の攻撃がピクルには通用しないとわかっている。
脳をどれくらい揺らしてもダメ、頸動脈を蹴り込んでもダメ、頭に肘と膝の挟み込みをやってもダメ。
そうなると最大火力を持つ兵器による一発逆転しか望みはなくなる

そんな算段があったのかはわからないが、烈は克巳にマッハ突きに磨きをかけることを打診する。
事実、それがもっとも有効な手段だろう。
正中線四連突とかじゃドリアンすら倒せない
それを言ったらマッハ突きもジャックを倒すには至っていない。
範馬級の生物であるピクルにマッハ突きは通用するのであろうか?
新必殺技4502年マッハ突きに期待がかかる中、次回へ続く。


バキ世界において、ひとつの必殺技が脚光を浴びる展開はあまりない。
剛体術やマッハ突きなどがあれど、決め技として使う場面はごく稀である。
バキ世界はひとつの必殺技で勝負を決めるわけではないのだ。
その辺はリアリティがあるのがバキ世界だ。

そんなバキ世界でひとつの必殺技に賭ける展開になった。
非常に珍しい流れだ。
刃牙だって勇次郎に勝つために必殺技を生みだそうとしていない。
いや、勇次郎にはどんな技も通用しないんだろうけど。

501年の空手と4001年の中国武術の融合形態はニューマッハ突きになるのだろうか。
消力しながら全身の関節を同時加速させて、インパクトの瞬間関節をホールドするのかもしれない。
それがマッハ消力剛体術なのだ!
…剛体術は刃牙に習わないといけないのかなぁ…
家で寝たきりの主人公には声をかけたくないなぁ…


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