範馬刃牙 第148話 憧憬



ジャックのアゴが粉々に砕かれた。
恐るべし原始の力。恐るべし原始の怒り。
刃牙はこの現実を見て、知って、いかにするべきであろうか。
ただ冷や汗を流すだけならただのモブですよ。
主人公らしさを見せろ!
…あ、克巳の時は何もしてなかった…


拳を天に掲げピクルは勝利の舞を踊る。
刃牙を一蹴した時よりも動きが激しい。
結果は圧勝だったものの、現代の戦士の中ではジャックが唯一ピクルに消えぬ傷を付けた存在だ。
勝者としての喜びも大きいのだろう。

ジャックはピクルの命を脅かす正真正銘の敵だった。
耳じゃなく頸動脈に噛み付いていれば、勝てたかもしれないほどだ。
いかん。このままでは食われる。ピクルもそう思ったに違いない。
…それくらい思ってくれないとジャックが報われない。

壮絶な破壊劇を目の当たりにした4名全員がピクルの勝利を確信していた。
あの刃牙だってピクルが勝利したことを疑っていない。
それほどまでに凄まじい打撃であり、惨たらしいダメージであった。
勝負ありでしょう…
食われる前に運んで上げてください。

と、その時、ピクルが涙を流した
ピクルが涙する時…それは烈をピクルタックルで吹き飛ばした時…命を捧げた克巳を前にした時…
号泣、即ち食(イート)!!
ついにこの時がやって来た。格闘家人生を終わらせる恐怖の食人タイムの開始だ

ジャックはピクルにとって敵だから食わないとか甘いことを思っていた。甘かった。
敵だからこそ好敵手だ。好敵手だからこそ涙する。涙するからこそ食らう。
感情と本能の間で苦しみこそすれど、歪みないピクルの生き様である。
そのことは実際に食われた烈がよく知っている。

こうなったら麻酔以外に惨劇は回避不能だ。
だが、ジャックは突如の来襲だったから徳川光成はハンター一同を用意できなかっただろう。
ペイン博士だって白亜紀闘法を見せられた今となっては麻酔注射を打ち込む勇気があるはずもない。
ジャック範馬オワタ\(^o^)/

「泣きたいのはこっちのほうじゃッッ」
「烈 海王……」「愚地克巳……」「そして……… ここにジャック……」
「わしの……… 憧れ達が…」


3人目の犠牲者を前に徳川光成もまた号泣する。
格闘家の戦う姿が何よりも好きだった徳川光成にとって、それが壊されるのはとても耐えられることではない。
だったら戦わせるなよと思わず突っ込みたくなるが、それはそれ。
…って、克巳は憧れだったのか?
克巳とのやり取りを見ると妙に楽しそうに生贄として捧げていたような…

徳川光成は地下闘技場戦士の最強を信じている。
そこで史上最強と名高いピクルが現れた。
地下闘技場戦士の最強を信じている徳川光成として、ピクルと地下闘技場戦士の激突は必然と考えたことだろう。
死刑囚に地下闘技場戦士をぶつける徳川光成だから、これは当然の流れである。当然です。

しかし、結果は無残だ。信じていた地下闘技場戦士が敗れ、食われ、破壊されていく。
今までの人生で築いてきた信念が砕かれていくような思いに違いない。
だが、最強を信じる以上、地下闘技場戦士をピクルにぶつけるのを止めるわけにはいかない。
徳川光成も呪われたサガを背負っていたのだった。
いや、本人は戦わないけど。
あ、そういえば、地下闘技場戦士じゃない寂海王はどうなるんだ?

ピクルは「ズチャ…」とまるで範馬一族のような足音を鳴らしながらゆっくりとジャックに近付いていく。
ゆっくりと、ゆっくりと…そして、ジャックを目の前にした時、口を開ける。
歯のほぼ全てを砕かれたジャックとは対称的に、ピクルは全ての歯が健在なのがちょっと憎たらしい。
ジャックという戦士、戦士の終わり…それが近付いている。
このままでいいのか?このままジャックを食わせてしまっていいのか?

「バキさん」

その時、刃牙が動いた!
あの小憎たらしい憎たらしい、スーパーヒールの刃牙が動いた。
実の兄にして、人生最大の強敵が食われようとしているのを前にして黙って見過ごすことはできないのだ。
おお、主人公らしい。

実に主人公らしいが刃牙に何が出来るんだ?
食事を邪魔されること…それはピクルの想いを踏みにじるに等しいはずだ。
怒る。絶対怒る。
刃牙のアゴも粉々に砕かれるぞ。ジャックよりも小さいし軽いから、数割増で回転しちゃうことだろう。

だが、止める。止めてやるぜ、今日の俺は。
明日じゃなく今日止める!
刃牙は(どうせノープランだろうけど)決意と共にピクルの背後に近付く。
ノープランでも明日に回すよりは主人公らしいぞ。
兄ちゃん!明日って今さ!

カチッ

と、その時だった。
ピクルの野生が異音を耳にする。

カチカチカチカチカチカチカチ

異音は続く。
この異音を前にピクルの涙は止まり、なんと冷や汗を浮かべる
驚愕だ。あのピクルが驚愕(おど)ろいている!
マックシングで殴られた以上の衝撃がそこにはあった。

原始の網膜は果てたジャックにハチの姿を重ねる
ハチは白亜紀には存在していたらしい。ならば、ピクルもハチと出逢っていたということか。
でも、ハチか。ジャック兄さんはハチなのか。
…ハチから遠い人の気がする。
刃牙だったらカマキリを連想しちゃうのかな。連想するどころか、実際に妄想カマキリを見せるかもしれないけど。

ピクルは冷や汗を浮かべながら後ずさり、さらには背中を向けてジャックから離れる。
恐竜をも恐れぬピクルとは思えない反応だ。
こいつは食えない。食っちゃいけない相手だとピクルは悟っている。

その予感は正しい、と思う。
何せジャックは薬漬けの超不健康な身体だ
その肉を食らえば間接的にではあるが、薬物を摂取することになる。
天然食品のみを食らってきたピクルにとって、有毒極まりない。
あ、顔面の皮に関しては皮だから薬があまり浸透していないということでひとつ…
今になって皮の毒が効いてくるとかなしの方向で。

[ピクル(おのれ)がまだ幼かった頃……………]
[生まれて初めて我より小さな敵に挑まれた]


ピクルは幼年期を思い出す。
その頃にピクルはハチに戦いを挑まれていた。
ハチとはいえかなりデカい。スズメバチ、あるいはその先祖だろうか。

相手が小さかろうと何だろうと、挑まれたら敵であり餌だ。
歪みない生き方を幼年期からするピクルは、ハチを倒し、そして食らう。
…食うならは虫類だろうと霊長類だろうと昆虫だろうと何でもいいんだな…
食らうのはもっとも大きい部位である尻尾ってそこには毒がないか?
しかも、都合良く毒嚢っぽいものまで食べている。
嗚呼…ピクル少年が直後に毒でのたうつ様が想像できる…
子供の頃から天然だったらしい。

そんなハチのような危険性をジャックに感じた…
やはり、毒か?毒なのか?
ピクルといえど毒は怖いらしい。
ピクルは現に毒にやられている(第101話 )。範馬一族だって毒には大打撃を受ける。
バキ世界のリーサルウェポンは毒なのだ。
戦闘における効能は銃弾よりも高い。

刃牙も毒を武器に戦ってみてはいかがか。
ハンター部隊を雇うのは主人公としてどうかと思うので、毒砂に手を突っ込んで毒手を身に付けろ。
対本部属性は下落するがそれはしょうがないということで…

ともあれ、ピクルがジャックにハチを重ねたおかげで食われずに済んだ。
恐竜扱いされなかったのは何とも寂しい気はするが、おかげで助かったことに違いはない。
凄惨なダメージだったがめでたしめでたしだ。
さあ、速くジャックを病院に運んで、アゴにワイヤーを通してやれ。当面の危機は去ったが、ダメージは消えていないぞ。
そういえば、刃牙は結局何も出来なかった
次回へ続く。

[その瞬間(とき)だった…ッッ]

次回へ続く、と思ったら違った。
戦闘不能どころか再起不能になったと思われたジャックの顔が僅かに持ち上がった
まさか…まさかの復活か?
ここまでアゴが壊されればこれ以上戦うのは酷だから、復活せずに寝たままでいてくださいと思った直後に復活なのか?
食えばヤバい毒だけではなく、戦ってヤバい猛毒だということを思い知らせるのか?
範馬一族の戦いはこれからだ!
せっかく巡ったと思った刃牙の出番は…明日から。
兄ちゃん…明日は明日だったよ…
今度こそ次回へ続く。


ジャックが復活の予兆を見せた。
打たれ打たれて、そして覚醒するのが範馬一族だ。
瀕死こそ範馬一族の見せ場だ。
刃牙は瀕死になって鬼の貌に目覚めたし、ガリガリになって14リットルの砂糖水を飲んだ。
やべ、後者は大道芸じゃん。

しかし、気持ちは持ち直しても圧倒的すぎる体力差をどう補うのだろうか。
範馬の血に目覚めたからといって埋められる差とは思えない。
マックシングジャックを突き放した差を補って余りある覚醒をするのだろうか?
…人間の限界を通り越さないと無理だ。
ジャックも人間を越えちゃうか?

如何にしてジャックは復活するのだろうか。
やっぱり、ゲロか?大量のゲロか?
健全になればなるほどパワーアップするのがピクルならば、不健全になればなるほどパワーアップするのがジャックだ。
人類の限界VS太古の暴力は自然VS不自然のバトルへと移ろうのだ。

でも、ゲロれば体内にある毒素もゲロりそうだ。
何せステロイドを凌駕したのがガリガリジャックですよ。ステロイドなど身体にあろうはずもない。
そうすると残ったのは完全ナチュラルジャック…ピクルが喜んで食っちゃいそうだな。
豪快なゲロを見た後に食欲がわき起こるかは置いておく。

あるいはゲロ以外の進化を果たすのだろうか(ゲロが進化かどうかは置いておく)。
範馬一族の秘密兵器、鬼の貌をジャックも宿してしまえ。
宿して負けたら、範馬一族の沽券に関わるけど。
逆に鬼の貌を宿して勝ったら刃牙にも勝利の目が出てくる。
俺だって鬼の顔を出せるから勝てるぜ。130kgの体重差に押し潰されるがいい。

ジャックは身長を骨延長手術で伸ばした。
しかし、その御利益がどこにあるのかわかっていない。
とりあえず、身体能力は伸びたらしい。当然リーチも伸びた。
打撃力は上がっていることは疑いようもないが、その打撃がピクルには通用していない。
これじゃあ伸ばした恩恵がないに等しい。

そこで伸ばした身長を元の身長まで圧縮してみるとか
ゲロって細くなったのとは違い、今度は縮めてみるのだ。当然、筋肉も圧縮される。
そして、圧縮された筋肉はピクルの筋肉と同等かそれ以上ッッ。
見てみい、あの原人が自分と同じ速度で動く相手と初めて向き合って戸惑っておるわい。
そう本部は満足気に呟いていた。
…かなり馬鹿なことを書いたけど、これくらいやらないと差を埋められない気が…

ジャックが復活しそうなのは喜ばしいが人間じゃねえクラスの進化が必要だ。
極度に薬物を摂取した筋肉は人体の限界を凌駕するほどに反応し――自らの骨格を食いつぶしていき――
しかし、闘争のために生み出された肉体は――極度に発達した筋肉に耐えきれず自壊するのではなく――
筋肉そのものが骨格を保持するよう進化していた――とか。
そんなわけで砕けた骨格を筋肉で支えてしまえ。それなら砕けたアゴの問題も解決だ。
…やっぱり、ファンタジーな復活が頭に浮かぶ。

現実的な線で考えるとピクルはジャックの毒を恐れている(ように見える)。
ならば、そこで攻めればいい。
つまり、ジャックのゲロシャワーをピクルにぶっかける!
良い子のヒーロー、カレーパンマンだってゲロで攻撃するんですよ。
問題ないッ。何も問題などないッッ。疑るなァ!
ゲロで攻撃してさらにガリガリになってパワーアップと、攻撃魔法と補助魔法を合体させたハイブリッド魔法である。
今のジャックに必要なのは回復魔法ですが。

まぁ、何にせよそれ人間と違うッ的な変貌を遂げてくれるに違いない。
板垣先生ならやる。
だって、塩だけを頼りに原人を蘇らせた男だ。
ジャックが人間離れした変貌をしても驚くけど驚かない。突っ込むけど突っ込まない。

進化を遂げなければいけないのは刃牙もだ。
今の刃牙がピクルに勝てる気がまったくしない。ジャックに勝てるのかすら怪しいぞ。
もう鼻水を出したくはなかろうて…

関節を多重化する以上に、ゲロ吐く以上に三段跳びで進化しなければならない。
主人公らしく今までのライバルの要素を全て合わせて進化してみるか?
例としては毒砂に手を突っ込んで、身体にスプリングを仕込んで、実は98歳で、
胃の中に硫酸を仕込んで、トドメに指の力だけでロッククライミング…
最凶死刑囚の要素を全て合わせてダーク刃牙の誕生だ!
うん。勝てない。

刃牙は克巳に真マッハ理論を学んでみてはどうか。
イメージの力なら刃牙にかなう相手はいない。
一瞬で全身の関節を多重化することだろう。
嫉妬して克巳は殴る。烈も嫉妬して殴る。誰も止めない。
音速の壁にぶつかって四肢が自壊するのが真マッハ理論の弱点だけど、そこはイメージで音速の壁から身を守るバリアーを…

それにしても刃牙にせっかくの出番が回ってきたと思ったら、結局刃牙の出番がなかった。
ジャックが食われそうになった時、ピクルを止められるのは刃牙だけだと思っていた。
実際に行動してくれた。それは嬉しい。
でも…ジャックは自力?で何とかしちゃった…
立つ瀬がない。穴があったら入りたい。範馬刃牙外伝SAGAが掲載されるならそっちを専業にしたい。

今の刃牙はジャックとピクルの間に立っている。
ジャックが起き上がったら邪魔だ。実に邪魔だ。
冷や汗流しながら逃げるしかない。
うう…格好がつかない…

しかし、邪魔なのが刃牙にとってはチャンスだ。目立つチャンスだ。
刃牙は邪魔者。いらない子。この駄犬。
そういうのはどかすに尽きる。

というわけで、復活したジャックに吹っ飛ばされろ!
ガリガリジャックに触れた鎬紅葉のように回転しながら吹っ飛ぶのだ。
高度なネタを生み出してくれる面白い吹き飛び方は刃牙にこそ相応しい。
うむ!刃牙の役割はこれに尽きる!
…刃牙はやられるためだけに動いたようにしか思えないのですが…



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