範馬刃牙 第150話 人の一刺し



ジャックは敗れたものの、敗れてなお尽きぬ執念がピクルを恐れさせた。
現代の戦士として初めてピクルを恐れさせた。
だから痛み分け…というわけにもいかないか。
範馬の血族を持ってしてもピクルに勝機を見出せなかった。
範馬VSピクル第一回戦は完敗に終わってしまった。


敗れたジャック範馬は病院で手術を終えたところだった。
執刀したのは久しぶりに登場したスーパードクター鎬紅葉だ。
骨延長手術を施したほどだから、ジャックの専属医師のようなものなのだろう。
ドーピングの数々も提供していたのかもしれない。
引退したとはいえ元マッドサイエンティストの鎬紅葉としては、ジャックは格好の素材に違いない。

ジャックの食われて崩壊したアゴには包帯が巻かれていた。
首にもギプスが付けられている。ピクルのアッパーはジャックの首に多大な負荷を与えたようだ。
そして、拳にも包帯が巻かれていた。

ピクルとの戦いで拳を痛めた描写はなかった。
無意識の中指攻撃くらいだが、あのくらいの傷なら絆創膏くらいで十分だろう。
だが、マックシングを発動させて、脅威のタフネスのピクルを殴りまくったのだ。
ジャックの拳は知らぬ間に痛んでいたのかも知れない。
かつては腕が壊れるほどだったし。

手術を終えた鎬紅葉は徳川光成とペイン博士に術後の経過を伝える。
頸椎に強いストレスがあるようだが、幸いなことに神経に問題はないようだ。
ジャックの鍛え上げられた筋肉が、すんでのところで命を繋ぎ止めていた。
逆に言えばジャック並みの筋肉がないとピクルの打撃に耐えることができないのだ
…刃牙よ…

久しぶりの鎬紅葉は眼鏡を着用している。
美形+眼鏡は強力な組み合わせだ。
板垣先生は女性人気を捨てていないぜ。
邪ッッ。

徳川光成はジャックが気絶しながらも放った中指一本貫手のことを鎬紅葉に話す。
気絶したまま、人が動けるのかどうか。
医者という人体の専門家に聞いてみたいところなのだろう。

「人間(ヒト)は意識がなくとも…否…」
「更に言うなら――― たとえ絶命したと思えても――――」
「行動できる」


と、鎬紅葉は驚きの言葉を告げる。
その一例として戦時中のある出来事を話す。
実話だと念を押して話す。
板垣先生の実話は信憑性がないが、あえて目をつぶっておこう。

戦争中に敵国の兵士を捕らえた。
戦時中故に処刑が即刻決定された。
処刑当日、捕虜になった兵士の隊長から斬首された後に首を抱えて走って、走った距離に従って部下を助けて欲しいと提案する。

当然、処刑執行人たちは笑う。
そして、処刑は執行され…隊長はなんと部下全員分の距離を走った。
とても信じられないような話に、徳川光成もペイン博士も言葉を失う。
トドメと言わんばかりに鎬紅葉は実話だと付け加える。

この話について軽くググって見ると実際にあった、とは断言できないが、何らかの書籍で語られたらしい。
真偽はともあれ、人の強い意志は絶命すれど朽ち果てることはないのだ
刃牙だって本気でリアルシャドーすれば、刃牙が死んでも100キロのカマキリが生きているぜ。
こうして街中を妄想カマキリが暴れ出すのだ。
倒せるのは刃牙と同じ妄想ファイターだけだ!

そんなわけで意識を失えど身体を動かす…
名も無き兵士が出来た。
ならば、ジャックだってできると鎬紅葉は語る。

「行住坐臥 生きる全てを“強さ”に向ける彼のこと」
「倒された後――――― 倒されたその先―――」
「如何にして闘うか―――を 考えていたハズ」
「その“プラン”を五体に――― 細胞の隅々にまで刻み込んでいたハズ」
「ジャックなら やるでしょう」


闘争の純血種、範馬一族は意識だけでなく細胞すらも戦いに向けられていた
斬首された隊長は死してなお朽ちぬ意志の力で走ったが、ジャックは負けてなお刻まれた細胞の記憶で戦う。
ジャック…恐ろしい子…
病的とまで言えるほどの強さへの執念は、細胞にすら変異を起こしていそうだな。だとしたら、斬首隊長よりも非人間度が上だ。
負けたとはいえ、範馬一族も人間じゃないことを忘れていた。
あ、気絶したらそのまま何も出来なかった人もいたっけ…

恐るべしジャックの執念に徳川光成もペイン博士の汗を垂れ流すばかりだ。
ジャックの執念を今一番知っているのは鎬紅葉だ。
何せ強さへの執念を間近に見ていた。それだけに説得力の言葉だった。
範馬ならやってもおかしくないという説得力がある。
刃牙だったら説得力がないな。前言撤回します。

ジャックは肉体では負けたが、脅威の精神力を見せた。
痛み分けではないが意地は見せた。
お前はよくやった…もう森へ帰ろう…
ミステリーを残す為気絶しても身体を動かしたが多分地下闘技場界で伝説になってる。

と、その時だった。
看護婦が突如部屋のドアを開ける。
ノックも何もなしだ。よほど大事な用件なのだろう。

その看護婦が紅葉に伝えた言葉は…ジャックの失踪だった
大事件だ。徳川光成も「なんぢゃとオッッ」と大ビックリだ。
…まだ「ぢゃ」を捨ててなかったのか。
この期に及んで萌えキャラを目指すのか、こいつは!

ジャックの失踪…何が起きたのだろうか。
もしかして、ピクルが誘拐したのか?
危険性はないと悟るや、誘拐して食うのだ。
勘弁勘弁マジ勘弁。顔面の皮で我慢してあげてください。

「ほらね…」

鎬紅葉はこのサプライズニュースを聞いても落ち着き払っていた。
いや、落ち着いちゃいかんだろ。
この事態を予想していたかのような口ぶりだ。
なら、対策くらいしろ!

それともマッドドクター鎬紅葉がこの件に協力していたのか?
点滴に見せかけてスーパードーピングを打ち込む。
これで死人とて復活だ!
何にせよ、ジャックの失踪はジャックをよく知る鎬紅葉にとって、驚くほどの情報ではなかったのだった。


さて、ジャックは地下闘技場にいた
今やピクルの巣になってる地下闘技場に舞い戻ってきた。
幸いなことにピクルに誘拐されたのではない。
自らの足でここまでやってきたようだ。
これにはピクルもビックリするのであった。

ジャックは首にギプスを付け、顔に包帯は巻いたままだ。
手を包んでいた包帯だけが外されている。
重傷は依然そのままであった。
なお、服装はハーフパンツ一丁である。バッシュは脱ぎ捨てている。

もしかして、この服装で病院から地下闘技場まで走ってきたのか?
ジャック…恐ろしい子…
恥じらいなんてとうの昔に捨て去っている。
せっかくだから首輪も付けてしまえ。

[すまない……ッッ]
[途中で抜けてすまなかったッッ]


ジャックは身体を直角に曲げてピクルに謝罪をする。
無頼に生きてきた男がせめてもの誠意を示そうとしている貴重な謝罪だ。
それだけに、重い。
原始の心にもこの重さは伝わると思いたい。

…って、途中?
途中とはどういうことだ。
もう勝負ついてるから。

[続きを!!!]

蹴った!ピクルの顔面を蹴った!!
ラウンド2ゥ〜。まさかまさかの「俺たちの戦いは始まったばかりだ」が行われた
しかも、打ち切らない。次回へ続きます。
ど、どういうことだ…?
完全に勝負あってから、さらに試合が継続するなんて今までにあったか?
…あ、死刑囚。

心が折れない限りは真の敗北はない。
それがバキ世界のルールだ。
そして、ジャックの心は折れていない。
折れていない以上、ジャックにとっては気絶も通過点に過ぎないのだ。

敗北を認めるとか認めないとかじゃない。
謝罪をしてしまうほどに清々しい負けず嫌いというか、何というか…
死刑囚と違って不思議と往生際の悪さを感じない。
ただ闘争への執念を感じさせる。

顔面の皮を食われ、歯のほぼ全てを折られ、アゴを砕かれて、首にギプスを付けながらも勝負は終わらない。
1本目とは違った意味で壮絶なバトルになりそうだ。
闘争はまた新たな次元に踏み込んだ。

[激闘必至の第2ラウンド緊急開戦ッッ!!
 更なる決着を求めて…本当の闘争(たたか)いはこれから!!
 先生、打ち合わせと違うじゃないですかァァ〜!!!(担当)]


予想の出来なかった驚愕の展開にアオリも燃え上がる。
って、担当オオオオオッッッ。
ジャックVSピクル2戦目は担当すら悲鳴をあげる怒濤の展開だった。
すごすぎるアオリだ。「学者として不適、だが人間として素敵」以上にすごい。

担当さんは打ち合わせで板垣先生にネームを見せてもらう。
ネームの段階では紅葉の胡散臭い話の後、刃牙が何となくやる気を見せている姿がある。
板垣先生、来週から刃牙VSピクル編になるんですよね。結局、厚木基地に集まった人たちは何だったんですか。特に寂海王。
うーん、忘れて。
範海王の再来ですか…
と苦笑いしながらも担当はネームにGOサインを出す。
数日後、〆切りにちゃんと原稿を間に合わす板垣先生がいた。
早速、担当さんは原稿に目を通す。
…あれ、ジャックがピクルに蹴り食らわしているんですか…?
ごめん、気が変わった。
おいィイイイイイイイイイイイイ?
こんなやり取りがあったに違いない。

今の板垣先生は担当にすら縛られない脅威のアンチェインっぷりを炸裂させた。
書きたいから、書く。
板垣先生の真骨頂を見せられた心持ちだ。
ルールにも担当にも縛られない怒濤の第2ラウンドが開始された。
たった一つのルールは心が折れたら負けだ。
…でも、担当はもうちょっと気遣ってあげてください。
次回へ続く。


ジャックが復活した。
前々回、ジャックの復活を煽りまくった甲斐があるってもんですよ。
私の心は前回あっさりと折れましたが。
悔しいのう悔しいのうギギギ。

ジャックは奇跡の復活を果たした。
果たしたが問題は勝負になるかどうかだ
白亜紀闘法で絶望的な実力差を見せられたばかりじゃねえか。
ジャックさん、あなたは神に祈りましたよね。実力による勝負を諦めてましたよね。

もうここまででも十分にジャックの不利は劣勢に決まったのだがさらに悩みは続く。
アゴを砕かれた。頸椎にダメージがあったし、ギプスを付けたままだ。
ただでさえ筋力で勝ち目がなかったというのに、さらなる不安要素が重くのしかかる。
アゴなんて包帯と中に通しただろうワイヤーで何とか形を留めているけど、もう一度アッパー食らうとボロボロにブランブランだよ。
オデノア゙ゴハボドボドダ!!

さらにさらに加えるのならば、明らかに薬が切れている
マックシングの異形の形相ではない。
口に包帯を巻いたままだし、少なくとも錠剤タイプと言った口腔摂取の薬は新しく摂取しているわけでもなさそうだ。
というか、アゴを壊されたから飲んだり食ったりはできない。鼻穴から流動食を通さないと無理だ。

マックシングを発動させても白亜紀闘法についていくことはできなかった。
かといって通常時のジャックでは顔面の皮を食われるわ、ジャックアッパーが通用しないわで散々だ。
復活したけど勝負になる要素がまったくない。
今のままだとまだ刃牙の方がマシだ。

ジャック・ハンマーは完膚無きまでに負けた。
ならば、ここからはジャック範馬の出番か?
ついにジャックも範馬の血に目覚めるのだ。
ただ病院で寝ていたんじゃない。密かにSAGAっておいたぜ!
SAGAパワーを身に付けたジャックに隙はない。

希望があるとすれば今のジャックが素足であることだ
今まで履いていたバッシュを脱ぎ捨てている。
ハーフパンツ一丁と文明の恩恵を限りなく受けていない状態だ。
多分、戦闘力は上がる。理屈も根拠もないけど、上がる気がする!
これで範馬一族御用達の漆黒のトランクスだったら完璧だったのだが…
よし、ジャックよ。ハーフパンツも脱ぎ捨てろ!

鎬紅葉の異様に落ち着いた態度も気になる。
まるでジャックの復活を予見していたかのようだ。
まだ、刃牙が毒に冒された時の方が慌てている。

ジャック復活の鍵は鎬紅葉が握っているのかも知れない。
ジャックからもし敗北した時はこの薬を使ってくれと預かったスーパードラッグを打ち込んだとか。
このドラッグを打ち込むと人間捨ててモンスターになれるぜー。
向こうもモンスター同然だからやっと互角である。

ともあれ、何か1500以下の攻撃力のモンスターカードを引く限り、延々と攻撃ができるレベルの切り札がないと厳しい。
そして、今度こそ負ければ食われる
必殺の中指アタックはもう見せてしまった。既にジャックに抱いた恐怖は得体の知れないものではなくなっている。
種が割れた以上、ピクルはちゃんと対策をして食うことだろう。
原始戦士に同じ技は二度通用しない。
ジャック、一難去ってまた一難である。

いざという時のラストスペルだった刃牙はもういない。
ジャックは1本目以上に必勝を志して戦わなければいけないのだ。
シューティングで例えると残機0ですよ。
しかも、ボスキャラのピクルは勝ち目が思い浮かばないほど強い。

まぁ、刃牙いても役に立たなかった。
止めようとはした。したが、ピクルには見向きもされなかった。
ジャックが復活したから影の薄さも加速した。
読者にもそこにいたのにいなかったという表情をされる。

と、刃牙は何をしているのだろう。
兄が致命的な致命傷を負ったのだ。
食われそうになった時は動いた。刃牙はジャックのことを心配していた。
なら、傍にいてあげればいいのに…

とりあえず、次回徳川光成からジャック復活の報を聞いて冷や汗を流すことは容易に想像できる。
また、地下闘技場に走って驚き役になるか?
もう驚くくらいしかやることがないぞ、刃牙。
解説は本部に頼んでやれ。
喜んで解説してくれるぞ!あるいは確実に冷や汗を流しまくる。

あ、ジャックにテメエは負けたんだから引っ込んでいやがれ!と割り込みするのはどうだ。
久しぶりに本気の刃牙を見られるぞ!
………
しまった。刃牙が客席に吹っ飛んでいる姿が頭をよぎった。



サイトTOPに戻る Weekly BAKIのTOPに戻る