範馬刃牙 第177話 歴戦の疵



刃牙が格闘家として蘇った!
今の刃牙は普通にカッコイイ…はずなんだが、どうも腑に落ちない。
やはり、妖術を連発したのが悪かったのか。
遡ればバキ以降のあらゆる行為が悪かったことにもなる。
とりあえず、SAGAは致命的だったな。


「多くを積み重ねた」
「筋力(ちから)を」「迅(はや)さを」
「持久力(スタミナ)を」「経験を」


刃牙は自分が積み重ねてきたものを語る。
言葉は通じないけど、語っておく。
そう、刃牙は胡散臭い天才ではないのだ。
積み重ねた歴史がある!
見る限り、明らかに詐称がありますがね。

忘れてはいけないが刃牙は鍛錬を積んでいる。
何かとトレーニング描写が省かれがちなバキ世界のキャラの中で、刃牙は一番と言ってもいいくらいトレーニングが描写されている。
トレーニングはしているのはいいが、突然強くなるので印象が悪い
やっぱり、こいつは不真面目かも知れない。

「だがここまでは―――…… 俺も君も同等……」
「条件は同じだ」


この期に及んで互角と仰いますか!?
何という男だ。
いきなり、超異常なピクルとの差をなかったことにしやがった。
これだから嫌われるんだ、あんたは!

ピクルの身体能力は文字通り人間離れしている。
パワーに至っては(少なくとも通常時の)勇次郎以上であるほどだ。
それをあっさり互角かよ。
口だけじゃなく、互角に戦っちゃっているんだよな。
アッパーを振り抜かれてもなぜか吹っ飛ばないし。
…あれは妖術だろ。

「――――あるいは どれも君に劣るのかも知れない」
「とりわけ筋力 体重 骨格については比べるべくもない」


しかし、謙虚さが人気の秘訣だと気付いたのか。
刃牙は今更ながらに前言撤回する。
だが、それならそれで問題である。
筋力体重骨格で負けておいて同等とかどの口で言えるんだ。
範馬刃牙、迷走中である。

その刹那、ピクルが刃牙に両腕を振り落とす
刃牙を地面に叩きつけたものと同じだ(第170話)。
あの一撃を食らった刃牙はけっこう平気だった。それなりに持ち直しました。
だが、今のピクルは最終形態だ。
あの時とは破壊力が比ではない!
…はずなんだよな。

それに対し、刃牙は鉄壁の騎馬立ちに加え両腕を交差させて受け止める。
技術を用いた鉄壁の防御だ。
だからといって受け止められるのは正直納得いかないが、妖術を用いずに真っ向から受け止めた。
発言は信用ならないが、今度こそ正面からピクルに挑む気らしい。

しかし、最終形態になったのにピクルの攻撃は防がれてばかりだ。
最終形態って実はあんまり意味がないんじゃないか?
やっぱり、関節をズラせば力が入らないんですよ…
というか、最終形態になったのにピクルの攻撃パターンはまったく変わっていない。
肘を反対に折り曲げて殴るとか、人間からは考えられない攻撃をしてみてはいかがか。
もしかして、最終形態って威嚇用なのか?
エリマキトカゲみたいなものなんです。

「何をもって闘う…? 何をもって支える…?」
「技術(わざ)だろッ」

攻撃を受け止めたらすかさず反撃だ。
刃牙のつま先蹴りがピクルの頬に決まる。
技術が生んだエゲツのない攻撃だ。
格闘技だからって綺麗な攻撃ばかりじゃないのが刃牙なのだ。
殺し合いをする必要がないと言いながら、殺す気満々の攻撃をするだけのことはある。

受けて反撃を決める。格闘技のセオリーに乗っ取った戦法だ。
格闘技のセオリーにはない力だけの攻撃をしてきたピクルへの対抗策がこれだった。
刃牙はどこまでも格闘技で立ち向かう気のようだ。

刃牙の蹴りによってピクルの口の中が裂ける。
下手すればツマ先が頬を貫通していたかもしれない。
今後1週間ほどすっぱいものを食べられなくなりそうなダメージである。
そして、ピクルは大量の出血をする。
ついにピクルが出血した!
ピクルの出血は久しぶりだ。烈にピクルタックルを放った時以来だ。
耳を噛みちぎられた時のことはあえて除外しておこう。

しかし、出血は多いが実際のダメージは少なそうだ。
あくまでも派手に見える出血に留まっている。
ピクルはティラノサウルスに噛まれたことのある勇者だ。
多少の出血程度ではひるむことはないだろう。
ピクルを地に平伏すためには金的が必要だ。
ワンモア金的!

「古から受け継がれる闘争(たたかい)の技術 俺の中に生き支えている」

「手放せない―― この連鎖」


刃牙は自らを鍛え上げてきた人生を思い起こす。
無意識な拳の握りやさりげない足の配置。
自然に任せた呼吸に見るともなく見渡す眼付け。
修行だってエンドルフィンが出るまでトレーニングをした。
胃の許容量限界まで食った。
崖から飛び降りて死に際の集中力を身に付けた。
カマキリとも戦った。
…カマキリは余計だな。
もしかして、崖から飛び降りたのが刃牙の自殺癖を植え付けたのか?
あれは過去の経験から為せる技だったのだ。飛び降り自殺も格闘技だ!

生存や護身、憎悪や悲しみなど、あらゆるもので育まれた格闘技の歴史…
こうした歴史が刃牙の中に技術として宿り、支えているのだった。
何だかやたらと主人公っぽいことを言っているので刃牙っぽくない。

勇次郎は強者として技術を否定した。
対して刃牙は格闘技と共に生き抜くことを決めた。
勇次郎と比べると刃牙は圧倒的に弱者だ。
格闘技は弱者が強者のために存在する。
強者である勇次郎は格闘技を否定し、弱者である刃牙は格闘技を肯定する…
この対比は範馬刃牙のテーマに関わってくるかもしれない大きな事項である。

さて、想い出回顧録を続ける刃牙の眼には涙を流すピクルが見えた。
ピクルの涙は惨劇の予兆だ。
ピクルが泣く時、格闘家は食われると白亜紀の書物にも書いてある。
そして、涙はピクルが対戦相手を真の強敵と認めた証でもある
刃牙はついに強敵として認められた。倒すべき敵として立ちはだかっているのだ。
遊び相手から大昇格である。
最初からこんな戦いをすればさっさと認められたのに…

[己の背景(れきし)に目覚めた刃牙の眼に―――――
 それが目撃(みえ)るのはむしろ必然]


ピクルが涙を流すと同時に、メモリアル状態の刃牙はピクルの背後にあるものを見る。
かつて倒してきた恐竜たちだ。
刃牙に格闘技の歴史が宿っているように、ピクルだって恐竜たちを倒して生きてきた。
ピクルの五体は恐竜たちの肉で作られているのだ。
ピクルを支える大きなものである。

でも、だからって恐竜たちが見えるのは必然なのか?
相当無理しないと見えないと思う。
卓越した刃牙の妄想力なら見えてしまってもおかしくはないが。
見えなくてもいいものが見えてしまうのは辛いのかもしれない。
だって、異常者扱いされるから。

ピクルも刃牙も、積み重ねてきたものがある。
ただお互いの強さをぶつけ合うだけではなく、お互いの人生が問われる戦いになってきた。
経験で言えばお互いにSAGA経験がある
ピクルはあまりにもSAGAの手順が慣れているから経験豊富そうだ。
同族の女性を襲っていたのか?男性フェロモンだらけのピクルに魅了されまくる。
それとも恐竜に…アワワ。それはないことを祈ろう。

でも、刃牙の初体験の相手は恐竜みたいな存在だ。
現代のティラノサウルスが松本梢江ですよ。
それを考慮するとSAGA経験においては互角か?
いや、SAGAなんてどうでもいい。

さて、刃牙の妄想力によってピクルの戦いの歴史が見える。
しかし、並み居る恐竜たちの中に異質なものが見え始める。
そこまで見えるのかよ!?
ピクルはリアルシャドーをコピーしたのか、あるいはやっぱり刃牙の妄想力がすごいのか…

[爪を押しのけるように烈が]
[牙の手前に克巳が]
[角を踏みつけジャックが]
[確かにピクルを支えていた]


激闘を繰り広げた現代の戦士たちをピクルは刻み込んでいた!
おそらくは白亜紀には同族で烈たちのような強者はいなかったのだろう。
だからこそ、恐竜と戦う道を選んだ。
だが、現代は違う。
恐竜はいなけれど、自分と同じ形をした者たちが果敢に挑んできた。
ピクルとしては感動に値するほどのものだったに違いない。

だからこそ、心に刻みつけた。
恐竜以上の存在感にまでなった。
まるで主人公のような状態だ。
刃牙?
何それ。
歌?
外人?

「何が……」
「見えているんだ!!?」


刃牙が何を見ているのか、あの烈にさえわからなかった。
眼前で激闘を繰り広げる者だけに見える世界なのだろうか。
やっぱり刃牙の妄想力がすごいということなのだろうか。
常人には見えません。何かを見ていることがわかる烈はリアルシャドー慣れしているせいのか?

両者共に重い物を背負っている。
刃牙は格闘技の歴史に、母の死を乗り越えてまで戦った記憶。
ピクルには数多の強敵を食って生き抜いてきた人生。
刃牙には突っ込みたくもなるが、あえて公平な視点で見ておこう。
でも、最近の刃牙って何もしてないよね?

「厄介… ……………というより……………」
「こんな強敵見たことねェッッ」


散々ピクルを舐めた刃牙も、ピクルの人生の重さを知り改めて戦慄する。
多分、パワー馬鹿で俺様の人生と比べると大した生き方をしていないと思っていたに違いない。
しかし、違った。
刃牙が格闘技を積み重ねたように、ピクルだって食ってきた強敵を積み重ねている。

ピクルは刻みつけた強敵(とも)に恥じぬよう、前に出る。
両腕を同時に刃牙へと向けて振る。
再び格闘技にはない攻撃である。
しかも、軌道が変則的だ。それがピクルのパワーを伴って襲い掛かる…
刃牙はいかに対処するのだろうか。

「こんな時俺は何

その時、刃牙は棒立ち!
本当に棒立ちが好きな男だよな!
余裕か?余裕なのか?
無意識な拳の握り・さりげない足の配置・自然に任せた呼吸・見るともなく見渡す眼付け…
刃牙に染みついたはずの構えだが、明らかに前者2つは無視されている
いや、棒立ちが刃牙にとってのベストスタイルなのか?

幾多の閃光が刃牙を包み込む。
ピクルの放った打撃は一発ではないのか?数発連続で叩き込んだのか?
今回の刃牙はちゃんと格闘家として戦った。
それなりに格好良かったと思う。
だが、基本的に妖術師だから油断出来ない
故にピクルの猛攻に対し、再び透り抜け回避をして金的を打ち込む可能性だって否定出来ない。
刃牙の人生を振り返ると金的がたくさんだ。

戦いはお互いに人生をぶつけ合うレベルに達してきている。
刃牙としては格闘技を使ったからって越えられない壁が無数にある。
何か全然足りない臭がするが勢いで押し切りやがった。
それにしてもまだ鬼の貌を見せていない。
オリバの時は早々に見せたのに…必殺技を温存することを覚えたのだろうか。
温存してても戦えるのは奇妙と言わざるを得ない。
次回へ続く。


もう完全に決着の話は流れましたね。
とりあえず、最終形態とのバトルが始まった。
ピクルは久しぶりの出血である。
やっとピクルにもダメージらしいダメージが見えた。
鞭打や金的はダメージに換算したくない。
あれがダメージになるとピクルの小物臭が…

刃牙は格闘技によってピクルと互角に戦えるようになった。
いや、それだけで互角になれたら苦労しない。
しかし、格闘技を用いた戦いはピクルには有効であることは証明されている。
格闘技もピクルには通用するのだ。

人類の創意工夫を丸ごと打ち砕くのがピクルの恐ろしいところだ。
現に今まではピクルの超筋力によって、3人の戦士が打ち砕かれている。
でも、刃牙は超筋力を何とかしちゃってしまっている。
必殺のピクルタックルだって片手一本で破った。
超筋力による打撃だって受け止めることに成功している。
ううむ、ひどい。
殴られた部分が急所になるってレベルじゃねーぞ!

しかし、ノーダメージはノーダメージに違いないけど、妖術で捌いていた時とは偉く印象が異なる。
ううむ、やっぱり受け止めるのが大事ということか。
ピクルは何でもかんでも受け止めるあたりが人気の秘訣なのか?
もうちょっとジャックの攻撃を受け止めても良かったと思うが。

ピクルは泣いたけど何で泣いたのだろうか。
今まで通りなら刃牙を食べるのが惜しい強敵と認めたからだろう。
でも、今回はすごく悔しそうに泣いている。
やっぱり悔しいのか?
精一杯頑張っているのにあっさりと受け流しているんですよ。
悔しくもなる。

刃牙は格闘技で戦っている。技術ですよ。
…が、技術だけでピクルとここまで渡り合うのは無理だろう。
技術面では一流の烈も克巳も敗れている。
やっぱり格闘技じゃなく範馬の血か?
うーむ、詐欺臭い。

最初からこんな戦いをしてくれれば刃牙をもっと素直に応援出来たんですけどね。
でも、最初からこんな戦いを出来るほど刃牙はあんまり特訓していない。
ピクルを倒すために夜叉猿Jr.Jr.(祖父より強い)に挑む!くらいは頑張ればいいのに。
つまり、刃牙は格闘技で真っ向勝負出来るくらいに強くなっている。
何故か。そう、何故か強くなっている。

これで鬼の貌を出していたらまだ納得出来るのに…
いや、さらに鬼の顔というブーストがあるのかよ。
もうピクルは最終形態だよ!
そういえば、ピクルは白亜紀闘法を使っていない。
鬼の顔VS白亜紀闘法が激闘のフィナーレになるのか?

でも、白亜紀闘法って冷静に考えればものすごく速く動くというだけだ。
いや、それがすごいことは十分に承知しているけど、攻撃に直接的に結びつかないのが寂しい。
最終形態自体攻撃に結びついているのか怪しいけど。

白亜紀闘法を使ってきたら刃牙はどう対処するのだろうか。
そこで格闘技か?格闘技爆発か?
白亜紀闘法出来ないように柵に小便しておいたのさ!と相成るか?
…最近、格好良くなってきたけど、やっぱり信用できんな。



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