範馬刃牙 第182話 友好条約



刃牙とピクルの死闘は終わった。
思って見ればすごい戦いだった。
その余韻を味わうように今回は刃牙の出番がない。ピクルの出番もないのでおあいこか?

せっかくなので本編の感想に入る前に、刃牙の戦いを振り返っておこうと思う。
ピクル編ワーストバウトだったな!という人はこちらを押していただければ本編の感想まで飛びます。

まずは刃牙の決意は伝説の名言、明日からやる!からだった(第139話)。
(正確には「明日………直…………俺がピクルの下へ出向く」)
そんなたわけた発言が通るわけもなく、刃牙はジャックに出番を奪われてしまう。

いざ決戦直前になると第2の名言である「先んじる――――ではなく 最初(はな)っから居りゃーいい!!!」が飛び出す(第155話)。
何という発想の逆転…
最初から居ればいいのか、なるほどッッッ。
人気ゲームが発売即売り切れになるのなら、先んじるのではなく最初っから店頭に居りゃーいい!
迷惑なので弾き飛ばされます。
そして、予約制度に敗北しろ!

戦いが始まると「文化としての戦い」を謳い「命の奪い合いをすることはないんだ…」と囁きながら、
純殺意100%の攻撃ばかりを仕掛ける(第158話)。
この時、刃牙が仕掛けた攻撃は奇しくもJr.を殺そうとした時のものとほぼ同様のものだ。
金的がないくらいです。
まぁ、ちゃんと後で金的するわけなのですが。

さらに刃牙は飛び降り自殺を敢行する(第161話)。
高所から飛び降りて瀕死なら、また飛び降りてしまえばいい!
さすが、最初っから居座る男、範馬刃牙。発想のスケールが違う。発想の軸もズレている。
文化としての戦いを教えるつもりが、文化としての自殺を教えてしまった。

難攻不落のピクルのタフネスを打ち破るべく、自殺直後の刃牙はカスりパンチを放つ(第163話)。
これが後の世に伝えられる妖術師刃牙、誕生の瞬間であった。
おそらくは今後の刃牙は妖術師と呼ばれ続けることだろう。
妖術と言い出せば郭海皇の方がよっぽど妖術だったのに、刃牙の方が妖術師としての印象が強いのが不思議だ。
あれか?妖術師というより詐欺師なのが良くないのか?
この辺りから徳川光成の言動がおかしくなっていることも見逃せない。

妖術でピクルを惑わした刃牙はさらなる妖術、鞭打で攻撃する(第165話)。
懐かしの技で戦うのは主人公らしいんですけどね。
わざわざ、鞭打を持ってくる必要はなかろうよ。
鞭打の発祥である空道なんて柳の失態によって株が大暴落した。あと疵顔によってマスター国松の株も大暴落した。
そんな状況で鞭打はないと思う。
ただ、痛みに苦しむピクルだったが、肉体にはダメージがない。
皮膚をちぎれ飛ばす鞭打に耐えうる肉体なのだ!
こうしたピクルの強さを暗に描写していたのだが、後に刃牙のインチキによってほぼなかったことにされてしまうのだった。

鞭打に対抗するため、ピクルタックルの構えを取ったピクルに対し、刃牙はトリケラトプス拳を見せる(第166話)。
さらにプテラノドン拳も!ティラノサウルス拳も!(第167話
ハッタリで押し切ると思ったら、本当にハッタリで押し切りやがった。
刃牙が妖術師なだけではなく、詐欺師であることが判明するのであった。
だが、ハッタリなだけじゃなく実益を含んでいたことが直後に発覚する(第168話)。
いや、ピクルさんや。ティラノサウルスに胴体を噛まれた経験があるなら、ティラノサウルス拳なんかに騙されるなよ。
相当に混乱していたことが伺える。

何とか持ち直して必殺のスカイラブピクルタックルを放つが、刃牙に腕一本で逸らされてしまう(第169話)。
烈を屠り克巳が腕を犠牲に跳ね返した必殺技が腕一本で破られたのは悲しかった。
解説役に転職した烈は「花山氏が―――――ピクルを語り始めたのです――――――刃牙ではなく…ッッ」と驚くに至る。
いや、驚く場所がそこなんですか。
あなす氏が――大正野球娘を見始めたのです――しゅごキャラではなく…ッッ。

さらに刃牙は闘技場に尿を撒き散らす(第170話)。
かつて試合中に尿を撒き散らした男だけはあるぜ。
こっちの方は完全に悪意が込められた尿だったけど。
あの尿フィールドのせいでピクルは弱体化したのだろうか。
ピクルも尿をしておけば…あるいは…

まぁ、やっと刃牙も回復したので真っ向勝負。初めてピクルの打撃がまともに入る(第171話)。
ピクルの超攻撃力には「防御したその腕が……急所になってしまったような…………………」と刃牙も大絶賛だ。
ピクルの一撃は超タフネスの刃牙にとっても、これほどの威力を誇るのだ!
後々、ものともしなくなるのだが。
やっぱり、刃牙はズルい。
「そう………本当の興味は……本当に見たいのは――範馬刃牙ならどうコイツを仕留めるか……ッッ」と名言も残す。
皮肉なことに読者の興味はピクルがどうやって刃牙を仕留めるかに集約されるのだが。

真っ向勝負が始まったと思ったら、刃牙は新技粒子化によってピクルを惑わす(第173話)。
結局、妖術じゃねえか!この詐欺師め!
そして、妖術からのコンビネーションで金的を放つ。
前代未聞の金的オンリーの話が始まるのだった(第174話)。
金的の話は思わず腹を抱えて笑ってしまった。
あれで笑わない人はバキという漫画を楽しめないと思う。
なお、刃牙VSピクルの戦いでは第174話感想のテキスト量はトップクラスであった。
私もついつい金的に熱を入れてしまったようだ。

金的の怒りによってピクルは最終形態に変形する(第175話)。
関節の位置を組み変えるという人間には出来ない発想!というか、行為!
ピクルのそこにしびれる憧れるぅ!
まぁ、まったく意味がなかったわけだけど。
威嚇にしかなっていなかった。
そして、稀代の問題発言、「決着は直後でした」が烈の口から飛び出るのだった。

最終形態になったピクルの攻撃を僅か1週間後にして刃牙は無力化する(第176話)。
何故かアッパーが振り抜かれても刃牙は飛ばない!

「これが技術…」
「これが進化だッッ」
「俺達は格闘技を手に入れたッ 何も捨てちゃいないッッ」
「ここは一歩も譲らねェッッ」

刃牙は強く叫ぶ。
アッパーを振り抜かれても飛ばないのは技術ではない。
妖術だ。

妖術が功を奏したのか。確変が始まり、さらに刃牙フィーバーも始まる(第177話)。
「己の背景(れきし)に目覚めた刃牙の眼に―――――それが目撃(みえ)るのはむしろ必然」であるように、
「己の背景(れきし)に目覚めた刃牙の力が―――――ピクルを超越(こえ)るのはむしろ必然」なのだ。
…納得いかねえよ。
明らかに刃牙が悪役ですね。
ピクル、凶悪な部分もあるけど悪い奴じゃないんだよなぁ…

白亜紀闘法すらも打ち破りピクルを圧倒する刃牙だったが、最後の最後で本当の真っ向勝負をする(第180話)。
あえなく刃牙は負けるわけだが、最後の最後にピクルは技を使って投げ飛ばす。
だから、心情的には刃牙の勝利!
いや、それは何かおかしい。
ついでにジャックですら殴り合うことを許されなかったのがピクルの筋力だ。
でも、刃牙はそれなりには殴り合っていた。
…やっぱり、刃牙のタフネスはおかしいな。

決着後、二人一緒に大白亜の絶景を見て、仲直りして刃牙VSピクルは終わる(第181話)。
仲直りィ?
ピクルを一方的に傷付けて、(心情的には)励ましに行った刃牙の図太さは賞賛に値すると思う。
これでピクルが刃牙に惚れたらスイーツ(笑)もいいところだが、実際はどうなのだろうか。
さりげなく刃牙が勝ったのか負けたのかは明言されていない。
さ、詐欺臭ェ…

怒濤の1戦だった。
怒濤の怪しさだ。
やっぱり、妖術に帰結するのですね。

というわけで、刃牙の妖術ショーの次は何が起こるのだろうか。
やっぱりあれはないよなとギャラリー一同で反省会か?
どうなる、妖術師!

場所はアメリカ、ワシントンDCの中心街にあるセント・レナスホテルが舞台となる。
そこを中心とした半径700m以内への一般市民の出入りを禁じるほどの警備体制だ。
ホテルで一体何があるのだろうか。

ホテルには大物が二人いた。
一人はアメリカ初のアフリカ系大統領…
キング・オマ…いや、そっちはギャンブルフィッシュの方だった。
こっちのアフリカ系大統領はバラク・オズマだ。
Yes I canで有名な人だ。いや、それもギャンブルフィッシュだよ。

その大統領と同席しているのは同じく大物、範馬勇次郎だ。
大統領と同席出来る大物は勇次郎以外にありえない。
本部なんて挑んじゃいけないんですよ。

オズマ大統領は大学時代から勇次郎の存在を知っていたようだ。
憧れですらあるようだ。
ボッシュといいアメリカ大統領は勇次郎が大好きなようだ。
勇次郎のキャラクター性はアメリカ受けするのだろうか。
オリバがアメリカの象徴になっちゃうくらいだからな。
勇次郎だってイケるぜ!

勇次郎は歴代大統領にとって重大申し送り事項だった。
それほどの重要人物である。
さすが一国に匹敵する暴力を持つ男だ。
刃牙は一国に匹敵する妖術を持つ男か?

オズマ大統領は勇次郎に出逢えた感動を語るが、勇次郎に用件を済ますように言われる。
こう言われたら大統領と言えど従わざるを得ない。
オズマ大統領はビジネスを始めると言う。
これが勇次郎を招聘した用件なのだろう。

「宣誓ッ」
「我が米国合衆国(ユナイテッドステイツ)国家は戦士(マスター)範馬勇次郎氏とここに友好関係を結び」
「氏を尊重し一切の生活を侵害することなく」
「この確約がいかなる事態が起ころうが遵守し」
「神の下 この確かなる友好条約を全うすることを誓う」
「2009年10月3日合衆国大統領バラク・オズマ」


大統領直々に勇次郎と友好条約を結ぶ。
それが今回の用件であった。
だが、友好条約とは名ばかりで勇次郎への隷属を意味する言葉だった
国家単位の隷属…勇次郎と言う男の力の凄まじさがわかる。
ベトナム戦争で手痛い目にあったことが大きいのだろうか。
さりげなく作中の時系列が危ないことになっているが、そこは無視しておく。

しかし、一応の友好条約なのだからアメリカが困った時に勇次郎に助けてもらえるのだろうか。
戦争が起ころうものなら百人力だな。
ピクルの時は連れてこなかったから、なるべくなら頼りたくはないのかもしれないが。

この友好条約は毎期の儀式らしい。
歴代大統領にとって、勇次郎と仲良くすることは重要事項なのだった。
だが、オズマ大統領はさらに個人的なお願いを勇次郎に頼み込む。
当然、勇次郎はブチ切れそうになる。
自分のワガママは通すが、相手のワガママは許さん。
それが範馬一族だ!

オズマ大統領は真っ黒な塊を出す。
石炭だった。
これで勇次郎に何をやらせようと言うのだろうか。

「炭素に10万気圧の圧力を加えると ダイヤモンドに変化するという現実」
「理屈では成り立つだろうが―― この眼で見なければ到底納得できるものではない」
「ミスターオーガよ 君の力ならどうだろう」
「核より強力と云われる君の―――――――― その握力なら!!!」


いや、それは無理だろ!
1気圧につき、面積1cm2あたり約1kgの圧力がかかる。
単純計算して10万kg、100tもの握力が必要だ。
さすがにそれは勇次郎にだって…

あるいは勇次郎に無理を押し付けることがオズマ大統領の狙いなのだろうか。
肉体を使った事柄なら勇次郎は出来ないとは言えない。
そして、失敗すれば勇次郎としては恥ずかしい。
キャハハ!キモーい!ダイヤモンドを握力で作れないのが許されるのは小学生までだよねー!と煽ることだって出来る。
純粋な好奇心もあるかもしれないが、これはせめてもの仕返しなのかもしれない。

勇次郎は石炭を握る。
当然、あっさりと潰れる。拳大ほどあった石炭は完全に勇次郎の手の内に隠れた。
新聞を拳で隠すってレベルじゃない握力だ(第117話)。
しかし、この程度なら出来ることは予測の範疇だ。
問題は人工ダイヤモンドが完成しているか否かである。
どうなる。勇次郎神話が崩れるのか?

勇次郎は手を開くことなく、中指一本拳をガラスのテーブルに突き立てる。
するとそれだけでガラスのテーブルが斬れた。
ダイヤモンドカッター並みの切れ味だ。
そのまま、手前に引いていく。テーブルは斬れていき、一刀両断される。
シコルスキーとは比べものにならないほどの切れ味である。
シコルスキーに出来たんだから、勇次郎に出来ないはずがない。

「あいにく人工ダイヤだがな」

「ノン(いいや)
「Yes,you could(あなたはできた)


勇次郎=ダイヤモンド!
驚愕の拳に大統領は勇次郎を認めた。
石炭のダイヤモンド化に成功したかどうかは定かではないけど。
課題Aを押し付けられたが、それを行うには非常に難度が高い。
そこで課題Aよりは簡単だが十分難度の高い課題Bを行った。
課題Bはすごいのでそれを先方は評価する。
勇次郎は迫力で課題をすり替えた!
だが、課題Bをやれど課題Aをやっていないという事実は変わっていないのだ。

これでねえ?手を開いてよ?ダイヤモンドになったのかな?とオズマ大統領は煽ってみてはいかがだろうか。
間違いなく銃弾を9発入れたロシアンルーレットよりも致死率が高い。
世界のキングだって死んじゃうぜ。

だが、苦しいのは勇次郎も一緒だ。
オズマ大統領の眼から離れるまで手を開くことは許されない。
握り拳のまま、帰路に着く必要がある。
開いたら開いたで手の平は真っ黒だ。
自爆攻撃には成功か?
次回へ続く。


激闘の後の小休止ということで勇次郎の話が挿入された。
アメリカ大統領が出ると大抵勇次郎が絡むな。
地上最強大統領だけある。

勇次郎が出てきたということは、これからは勇次郎のターンなのだろうか。
勇次郎VSピクルの最強決定戦が行われそうだ。
バキ史上最大最強の激突になることは間違いない。
究極の力と力の激突だ。
勇次郎は今まで力属性の相手と戦ったことがない。
壮絶な戦いになることは確定的に明らか。

刃牙はヘタれながらギャラリーにならざるを得ないな。
あのピクルならこの程度はやるだろうとか言い出したら殴られそうだ。
一番怒られるのは俺はピクルに勝っていた!と勇次郎に喧嘩を売ることだけど。
邪ッッと裏拳食らってしまうよ。

ここ数年、ピクルとの開戦はGWやお盆などの連休前に合わせてきている。
そして、2話同時掲載だ。感想を書く側としては2話同時掲載は辛いが、それはそれ。
ともあれ、前例を見る限り、正月前の合併号に合わせて来るのだろうか。
試合前の準備にはほどよい時間がある。
来週から勇次郎とピクルの準備が描かれるのかもしれない。
刃牙は是非ヘタれの位置で二人に関与してもらいたい。
人気を取り戻すにはヘタれる以外に手はないと思う。
まぁ、ヘタれても人気は取り戻せませんが。



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