範馬刃牙 第190話 あの言葉があったから



刃牙が母の心境を語る。
勇次郎に殺されたことが、女性として報われた瞬間…
何とも救いのない答えだ。
主人公がそれでいいのか?


「奧さまは 女性として報われた………………」
「そりゃあ そうでしょうよ」


涙ながらに栗谷川さんは怒る。
栗谷川さんも範馬勇次郎に認められることの意味の大きさは知っているだろう。
だからこそ、内心では朱沢江珠の心境も理解していたのかもしれない。
刃牙の言っていることも間違っていないと受け止めていそうだ。

だが、実の息子の刃牙がそんなことを言っていると、理性で納得出来ても感情では納得出来ないだろう。
だからこそ、栗谷川さんは怒っているに違いない。
刃牙にこそ、否定して欲しかったはずだ。

「報われたのは奥さまの人生だけです 刃牙さんの人生ではない」

朱沢江珠は女性として報われた。
それでいいとしても、問題となるのは刃牙本人の問題だ。
刃牙の人生は勇次郎を倒すための人生、母の仇討ちの人生だった。
だが、仇討ちでは違った。

では、何のために勇次郎を倒すのか。今は何のために生きているのか。
新しい問題が刃牙にのし掛かる。

「奥さまを満たすために生き 勇次郎さまを満たすために生きる」
「奥さまはよくやったと褒めるでしょう
 勇次郎さまはそれでこそ「範馬の血」と褒めるのでしょう」
「それは間違っています」


勇次郎を倒すために強くなり、勇次郎を楽しませる。
刃牙はそのために産み落とされたようなものだ。
そこに刃牙本人の意志はない。

それでも刃牙の人生は刃牙のものだ。
勇次郎への復讐は両親の思惑から離れた刃牙自身が見つけた目標だったはずだ。
それを否定された今、刃牙は何のために生きているのか。

こうして栗谷川さんは刃牙を叱るのであった。
使用人が主人を叱りつける…
よほどの想いが栗谷川さんにはある。

ここで刃牙は勇次郎との戦いを語り出す。
勇次郎に完膚無きまで叩きのめされた時、朱沢江珠は勇次郎の前に立ち殴りかかった。
朱沢江珠が刃牙のために殺される戦いに身を投じた瞬間だった。

「あたしが相手だッッ」

その時の朱沢江珠の叫びを刃牙は天使の言葉と形容した。
…いや、全然天使じゃないがな。
ガンダムに憧れる刹那・F・セイエイのような心境なのかもしれない。
俺が朱沢江珠だ。

とにかく、朱沢江珠は勇次郎に戦いを挑んだ。
刃牙はその意味を栗谷川さんに問いかける。
「おわかりでしょう」と三連呼するのが刃牙っぽいウザさでいいな。
いいのか?

「我が身と引き替えに―― 俺を救おうとした」

刃牙は朱沢江珠が母親として戦いに身を投じたことも理解していた。
その意味の大きさを知る刃牙は涙する。鼻水だって流す。梢江がいたら綺麗と言われる状態だ。
涙するほど、母の愛だった。
あれが刃牙が朱沢江珠に愛されていると感じることの出来た唯一の瞬間なのだろう。
母の愛を感じ取れた一言…残りの人生を引き替えにしてもいいとまで刃牙は語る。

刃牙は朱沢江珠の一言があったからこそ、生きてこられ強くなれたと語る。
刃牙の強さの全ての源流は朱沢江珠にあったのだ。
SAGAや妖術だけではなかったのだ。
源流からかなり歪んだ気がするが、朱沢江珠本人が真っ当な人間とは言い難い。
歪むのも致し方ないか。

刃牙は朱沢江珠の女性としての性と母親としての性の双方を理解していた。
朱沢江珠の親子愛を無視していたと想ってしまったのは早計だったようだ。
そうだよね、刃牙はそんなクズじゃないよね。
ピクルに見せた姿はクズ同然だった気がしなくもないが。

栗谷川さんは刃牙に対して詫びる。
まさかここまで考えていたなんて…
ちょっと私も詫びるべきか?

刃牙は栗谷川さんに頭を下げる。
今の自分は栗谷川さんが信じてきた理由では戦っていない。
長年、自分を信じてきた男に対するせめてもの詫びなのだろうか。

こうして己の胸中を語り、栗谷川さんと別れる。
同時に走り出す。
早速、トレーニング開始だ。
あれ?刃牙ってこんなに真面目だっけ?

[父を越えるという悲願]
[父を倒すという宿命(さだめ)]
[それは母の優しさへの解答(こたえ)]
[仇討ちではない…………………]


朱沢江珠の母性愛のために戦う。
それが今の刃牙が戦う理由だった。
朱沢江珠は母性愛のために戦いに身を投じた。
その母性愛に報いるためには、自らも勇次郎に戦いを挑み越える…
微妙に繋がっていない気がするが、そこは範馬的な価値観でカバーなのだろう。

復讐ではなく、愛に報いるために勇次郎と戦う。
疑念を抱いてしまった戦う理由は決まった。
勇次郎に殺された夜叉猿のことは無視していますが、母への愛と比べたらそんな感情も些細なものだ。
大丈夫、二匹目がいる!

あとは戦うだけ…なのか?
正直、今の刃牙だと勇次郎に勝てる気がしない。
ピクルを追い詰められたのは相性が良かっただけだ。
あの手の小細工は勇次郎には通用しないだろう。

一区切りがついたところで次回から新展開だろうか。
うっかり戦いを挑んでしまうのか。
それとも、未知の強者を相手に己を磨くのだろうか。
あるいはストライダム編が続いてしまうのか?

結局、ストライダムは何だったんだろう。
刃牙の母への想いを語るのを2話続けても良かったじゃん。
いや、ストライダムは面白かったし笑えたのでいいのですが。
さすがにクリスマスに真面目な話×2では湿っぽかった。
次回へ続く。


刃牙は母が抱えた恋と愛の二つを理解していた。
理解した上で、勇次郎を越えようとしている。
おお、何だか主人公っぽいな。
ここ2話だけ見ると十分に主人公の資格ありだ。
本当に越えようとしているのか伺わしい部分があるけど。

刃牙は勇次郎に戦いを挑むのだろうか。
周りはけっこうおんぶしようとしている。
でも、このまま戦っても無理だろう。
ピクルを正面から破るくらいじゃないと辛い。
格闘技で倒した?
いや、あれは妖術だろう。

10年以上前の伏線を回収した。
あとはここ数ヶ月以内のことも回収してもらおう。
はい、ピクルさんのことです。
さすがに投げっぱなしENDすぎるだろう…

ストライダムが勇次郎からピクルに挑めと言われるとか。
Aッchiiッだけじゃ足りなかったのだ。
さらなるリアクションを求められる!
ストライダムとしては涙目だな。

というか、ストライダムはピクルの管理担当者だったはずだ。
逃げ出したピクルを追いかける仕事があることだろう。
自爆して遊んでいる場合じゃないじゃん…
いや、本人にとっては遊びじゃないけど。
命がけのギャグです。

刃牙に焦点を当てると勇次郎と戦う前にもっと強くなっておきたい。
そのために実戦だ!
リアルシャドーは認めん。
そうなるとピクル以上勇次郎以下の対戦相手に困る。
作中2番目の実力者と思われていたジャックですらピクルには一蹴されている。
これ以上、強い人物を出すと完全にインフレ状態だ。

やっぱり、次からは範馬脳編か?
範馬脳はギャグじゃないんだぜ。
立派な伏線なんだぜ。
夢を見るのはこの辺にしておきましょう。

そう思うとやっぱり勇次郎と戦う以外に道はない。
でも、明らかに勇次郎と戦える器ではない。
ジレンマだな。
まぁ、バキにおいて、展開予想なんて意味を持たないだろう。
ストライダムが沸いて出てくるくらいだし。

しかし、こうなったら勇次郎サイドの話も欲しいな。
刃牙が何を考えているのかは少しだけわかった。
だが、勇次郎はわからない。
勇次郎は何も考えていないようで、実際何も考えていない気がする。
でも、本当は深いことを考えている気がしないでもない(曖昧)。

勇次郎は刃牙を鍛え上げた。
その目的は何なのだろうか。
自らを楽しませるためなのか?
地上最強の男にかなう相手は滅多にいない。
ライバルと呼べるライバルが存在せず孤独なのは間違いない。
その孤独を紛らわすために、刃牙を育てたのか?

でも、勇次郎の親馬鹿っぷりにはそれ以上のものを感じる。
地上最強の生物として刃牙を食いたい気持ちと、親として息子の成長を見守り楽しむ二つの感情が混ざっているのだろうか。
これが明らかになるのは多分最終回付近だな。
そもそも、最終回が来るのだろうか。
多分、来週も斜め上の展開になって、最終決戦は数年後の話になりそうだな。



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