範馬刃牙 第22話 挑戦権



田仁志君は股間を手で押さえて悶絶している。
だが、気を失ってはいない。
…あれ?気を失っていない?
だとするならば、まだ、噛まれる余地がある。
失うものはきっと睾丸だけじゃない。

大事件が起きたが周りの連中は汗かかずに食事に専念している。
食事中に拳銃を突きつけたり、金的するのは日常茶飯事なのだろうか?
少なくとも金的は日常茶飯事のはずだ。
バキ的にも日常茶飯事だし。

「拳法か……?」

刃牙が隣にいる老人に問いかける。
この役どころは本部に解説を乞う加藤の姿だ。
もうすっかり立ち位置が小物になっている。
好印象だ。
実に好印象だ。
ついでに拳銃を突きつけさせ金的することを拳法と捉える刃牙はけっこうヤキが回ってると思う。
どうみても拳法じゃありません本当にありがとうございます。

「イヤ…」
「2(セカン)は流儀を持たない」


老人はスープをすすりながら、全てわかっているように解説してくれる
見事な解説役だ。
本部の親か何かか?
ところで今週の刃牙の出番は「拳法か……?」の1コマだけです。
よし、主人公らしくなってきた。
ついでにアイアン・マイケルの出番はなし。
よし、アイアン・マイケルらしくなってきた?

「なにを使いやがった」

田仁志君が股間を押さえるのを止め、視線を越前(ナンバー2)に向ける。
でも、よだれを垂らしているからかっこつかない。
ついでに何を使ったという問いも間抜けだ。
どうみても、金的です。格闘技でも何でもありません。

「スモウ…?」

越前はどこか的外れな問いに、完全に的外れな答えを返す。
拳銃と金的を巡った駆け引きを相撲と呼ぶのか?
越前の戦いは難しすぎる。

「俺に相撲で勝った気か」

…いや、相撲じゃないから…
田仁志君がどんどんかわいそうになっていく。
相撲じゃないのは明白だ。
それとも拳銃と金的を巡った駆け引きを相撲と呼ぶのか?
田仁志君の相撲は難しすぎる。

「モチロンさっきのはスモウじゃない」
「キックしたからね」
「しかし――――」
「君が望むのなら相撲で勝負してもいい」


お前の土俵で戦う宣言だ。
越前はどこまで田仁志君を追い込めば気が済むのだろう?
金的だけじゃすまない。
オムライスの恨みはそれほど大きいようだ。

田仁志君と相撲をするべく、越前は体育館を借りる。
無論、受刑者の一存で借りれるようなものでもないのだが、看守たちはあっさりと許可する。
許可する、というよりも、ただ余所見するだけだったが。
だが、否定もしていない、むしろできないため、越前的には許可なのだろう。


「おあつらえ向きの円があるじゃないか」

体育館中央のサークルの中で二人は向かい合う。
本気で相撲する気だ。
田仁志君は越前の受刑者らしからぬ権力に冷や汗を流しっぱなしだ。
戦う前から負ける準備をしてどうするんでしょう?
いや、金的の時点で負けているけど。

「DOSKOI!」

越前は田仁志君に掴みかかる。
田仁志君はあっけに取られるばかりだ。
…大丈夫か、この人。
完全に戦う準備ができていない。
逆に越前は戦う準備をさせない駆け引きの持ち主なのかもしれない。
清掃箱で眠っていたり突然体育館を貸しきったりと、驚かせるのが得意だ。

やっと火がついたのか田仁志君は越前のふんどし、正確にはズボンを掴む。
スモウレスラーのパワーを活かして、強引に投げにいくつもりか。
さっきから先手を取られてばかりだから、ここで流れを変える!!
かってんぐわぁー!
が、越前の体勢を崩すことはできなかった。
田仁志君はかなりの力を込めているはずだが、越前はそれをものともしない。
下半身の強さは半端じゃないようだ。
ペテン的な強さを持つと思っていたら、肉体的な強さも一流か。

「動かせるハズがない」
「地面に立っているだけの君らではね」


よくわからないが意味深な言葉だ。
特殊な立ち方でもしているのだろうか?
解説役の老人が流儀を持たないと言っていたが、何らかの格闘技はやっていそうだ。
刃牙のようにトータルファイティングなのだろうか。

パシ

越前が平手で田仁志君の耳を打つ。
鼓膜が破れた。
普通の格闘漫画ならば、これだけで勝負ありだろう。
だが、これは「範馬刃牙」だ
鼓膜破り程度日常茶飯事でジャブみたいなものだ。
オリバや郭海皇は鼓膜を破られても普通に話を聞いていた。
グラップラーの回復速度を考慮すると鼓膜破りなんて大したダメージではない。
が、ジャブでも勝負が決まってしまうのもバキ世界でもある。

さて、田仁志君は…
完全に放心状態です。
ジャブで勝負が決まってしまったようだ。
しかし、オムライスの恨みを晴らしていないのか、越前はさらなる追い打ちをする。
自分の髪を捻ってひとつの棒を作り出す。
すごく器用で髪の硬い人だ。
それはともかく、髪の棒を田仁志君の耳の中へ入れる。
髪は破けた鼓膜を通り抜け、三半規管まで入り込ませ、そこで指をぐるりと回し、先端の髪をほどく。
そして、ほどいた髪を三半規管に絡ませ髪を一気に引いた
当然、三半規管はバラバラになる。問答無用に大ダメージだ。
死んでもおかしくないだろう。廃人になるほどのダメージなのは間違いない。
というか、格闘技じゃない
試合に勝つ戦いじゃなく、勝負に勝つ戦い方だ。
死刑囚型の人間だ。
越前は強くなったシコルスキー的な位置づけか。
…すごく不安な響きだな、強くなったシコルスキー。

「傾いているッッ」
「倒れようとしてるッ」
「立ち上がらなければ…ッッ」


三半規管を完全に破壊されたことで田仁志君のバランス感覚もまた破壊されていた。
宙を浮いているような感覚を覚える。
ああ…もうだめだ…
おとなしく病院かタイに連れていこう。

田仁志君は急いで立ち上がろうとする。
が、立ち上がったつもりが地面にひれ伏していた。
こうなってしまっては格闘技どころではない。
そもそも、生きていることが奇跡だ。

「勝負あり」

越前は決着を一人告げる。
これで田仁志君はこれ以上弄られないだろう。
これ以上、弄られるようなら板垣先生は相撲すらムエタイの領域にした証拠だろう。
そんなわけで次号に続く。
次回こそは刃牙が活躍してくれるか?


越前は髪の毛を武器にした。
これは武器を所持できない獄中で身につけた戦い方なのだろう。
そのうち、ヒゲも武器にしそうだ。
そのために生やしてるヒゲっぽいし。

これがオリバにも決まれば、ナンバー1の座を頂けそうだ。
でも、オリバの場合、普通に越前を投げ飛ばしそうだなぁ。
刑務所内での争いなど、楽しみな要素が多い。
刃牙は置いておこう。
あいつ、いらん。


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