範馬刃牙 第248話 機動隊曰く



東京で異常事態が続いている。
もちろん、範馬親子の家族団欒のことです。
ジャック兄さんのことを思い出してあげて欲しいところだが、ジャックは食事にまったく気を遣いそうにない。
毒も喰らい栄養も喰らうのが勇次郎の持論だが、ジャック兄さんは毒しか食べていそうにない。
家族団欒が実現しないのもある意味必然か。


刃牙ハウスにて濃厚な混沌(具体的には勇次郎が作法を諭したり、食への向き合い方を教えたり、じゃんけんしたりする)が渦巻いている。
だが、外は至って静かだった。
うるさくすれば勇次郎に殴られるから当然と言えば当然だが。
あと普通の人は刃牙ハウスに近付かない。

刃牙ハウス付近を隔離していた機動隊は双眼鏡で刃牙ハウスを監視する。
近付くだけでも危険なのが今の刃牙ハウスだ。
勇次郎に殴られる可能性の他に腹筋崩壊する危険性がある。
不発弾を見張るような慎重さが必要とされるのだ。

監視していた機動隊は普通だと呟く。
たしかに地震の類は起きていない。(刃牙のリアルシャドーでは地震が発生済みだ)
だが、普通ではあるが決して普通じゃないことが起きている。
あの勇次郎が刃牙と親子らしい一時を嗜む…
異常だよ。お前ら、機動隊はちゃんとチェックしておけよ。
写真なんか撮っておけばストライダムに高値で売れるのは間違いない。

一度下ろした再び双眼鏡を刃牙ハウスの玄関に向ける。
そこには勇次郎が立っていた。
双眼鏡を向ける前はいなかったのに、唐突に姿を現した。
目を離した時間なんて数秒程度のはずなのに…
相変わらず勇次郎の神出鬼没さはホラーの域だ。

勇次郎の目は据わっている。
(白目で)笑っていた刃牙ハウスの時とは大違いだ。
にこやかなパパモードではなく、凶悪なオーガモードに入ったことは想像に難くない。
未曾有の家族団欒を終えたのも、もしかしたら機動隊が邪魔に感じたからなのだろうか。

だが、怪異はこれだけでは済まない。
勇次郎の姿が消えた。
と思ったら次の瞬間には機動隊の後ろに回り込んでいた。
10m以上は楽にある距離を一瞬で埋めた。
無論、その動きを機動隊全員が捉えることはできなかった。
もはやゴキブリダッシュが霞んでしまうような高速移動である。
これはガンダムでも宇宙世紀じゃ無理だ。西暦まで行かないと。

「貴様ら………」
「人ン家の周りをウロウロと…」


別に刃牙ハウスは勇次郎の家ではないのだが、怒りの勇次郎に正論は通用しない。
hai!早く謝っテ!
双眼鏡で覗いていた隊員はただ無言でポリカーボネート製のライオットシールドを両手で構える。
自己の全てを防衛に回している。
情けない姿であったが、勇次郎への恐怖が痛いほどに伝わってくる。

だが、勇次郎にポリカーボネートなど何の障壁にもならない。
腕を伸ばしただけでシールドを貫通した。
相変わらず勇次郎の四肢は凶器そのものだ。
そんな腕でしっかりとした作法で刃牙のご飯を食べました。
嘘臭いですが、本当です。

シールドを貫いた勇次郎の腕は隊員の袖を掴み持ち上げる。
袖を掴んだだけで人が綺麗に持ち上がるはずはないのだが、軽々と持ち上がった。
職業柄平均以上の身長を誇るであろう機動隊でさえ、圧倒的な体躯の差を見せつけられている。
推定190cm(第192話)だからここまで大きな差はつくことはないのだが、
迫力で勇次郎の身長は変わってくるので何の不思議でもない。

勇次郎は隊員をそのまま振る。
首から上だけが左右に動き、そこから下は不動という非常に器用な振り方だ。
勇次郎の腕が動いている様子はない。
手首のスナップだけなのか?
大擂台賽で瓦を下の方から破壊した技といい、この人は高周波か何かでも出しているのだろうか。

[人間の頭部が]
[あれほどスピーディーに振れるのを]
[初めて見た…………と]


その他機動隊も絶賛の勇次郎の技だった。
当然、これほど頭部が揺れれば脳震盪どころの騒ぎではない。
あっさりと気を失い地面に倒れる。
機動隊など勇次郎にとっては前菜以下の存在であった。

そして、勇次郎は去る。
息子と初めての団欒を味わったのに、最後は機動隊のおかげで後味が悪くなってしまった。
そんな心持ちなのだろう。
あとマルバとかマルユウとか言って気合いを入れていた第1空挺団は結局出番がなかった。第245話

勇次郎に頭を振られた男、金光高(かねみつたかし)は後日語る。
インタビュアーは栗谷川さんだったりするのだろうか。
徳川光成の好奇心を満たすために右往左往する。

「いやァ…」
「“強い”というハナシは聞いていました “とにかく強い”と……」
「想像はしていましたが… まさかね… あれほどのものとは…」
「わたしも… こんな職を選ぶくらいですから
 どこか強さへの憧れがあるのでしょうねェ………」
「なにかこう………」
「ぶっちゃけ抱きついて キスしたいぐらいでしたよ…………」


一応、念を押しておくが刃牙の台詞じゃなく金光高の台詞だ。
抱きついてキスしたいくらいだなんて、ハハハ…
この世界の連中の強さへの憧憬はようわからんな。
強さへの憧れは愛に等しいということか?

キスをしたいと言う金光高は勇次郎の臀部を思い浮かべていた。
一体どこにキスするつもりだよ、テメエー!
無駄にホモ臭くなっちまったよ。
何か金光高の笑みもそっちの人に見えてくる。
まさか、お前…そっちの性癖を…

さて、勇次郎という超突風が過ぎ去った刃牙は、腕を組み思索に耽っていた。
冷や汗が流れ続けていることからよおど深い悩みがあることは想像に難くない
ジャンケンから勇次郎が去るまで何があったのだろうか。
刃牙の心中にこだまするのは勇次郎のある一言であった。

「いつも一方的なのは心苦しい」
「明日――おまえを招待したい 空けておけ」


絶対罠だよ、これ!
勇次郎の誘いとか嫌な匂いしかしない。
むしろ、どこに誘う気なんだ?
アンタ、家ないじゃん。根無し草じゃん。
いや、意外と豪邸に住んでいるのか?
実は美食倶楽部みたいな会員制の高級料理店を経営していて、そのおかげで職に対するこだわりがあるのかもしれない。

いずれにせよ果てしなく危険な誘いだ。
乗れば刃牙は無事では済むまい。
勇次郎が何をするにしても刃牙は混乱の極地へと誘われそうだ。
現に自分のホームで完敗している。
どうする、刃牙。

(何 来てきゃいいんだ…?)

悩むのがそこかよ!?
刃牙さん、アンタ、危惧するべき部分はそこじゃなかろうに。
勇次郎が誘うって時点で怪しい通り越して怪しいんだ。
であるのに、着るモノに悩む…
無駄に大物だ。さすがは主人公だ。
バカでもあるけど。

波乱は過ぎ去ったが、まだまだ続きそうだ。
ホームコメディというかホームカタストロフィだな。
読者も刃牙もまったく油断できそうにない。

とりあえず、問題はどこに誘われるかだ。
そして、勇次郎が何をするのかでもある。
疑問点は無数に並んでいる。
あまりに疑問点が並びすぎて、刃牙が勇次郎と戦わなかったことは華麗にスルーできそうだ。
って、そうだよ!何で戦っていないんだよ!
親子喧嘩したかったんじゃないのか?
やはり、この親子は戦わない。
次回へ続く。


結局、戦わずに家族団欒は終わったぞ!
まぁ、家族団欒は戦うためのものじゃないから仕方がない。
範馬親子ならあるいはと期待させたが、やはり親子の営みは親子の営みであった。
というよりも、妙に親子していて正直キモかった。

あんなものを見せられては機動隊も溜まったもんではなかろう。
見られた勇次郎も憤怒していたし、本人としても見られたくはなかったようだ。
でも、アフターフォローを忘れないことで鬼の威厳を保つ勇次郎であった。
これだけやって勇次郎が日和ったとまったく感じないのはさすがと言うべきだ。
むしろ、さすが勇次郎だ。
何か飛び抜けていやがる。

刃牙は終始勇次郎に差を見せつけられることとなった。
力で勝てず、教養で勝てず、作法で勝てず…
今挑んでも負けるばかりじゃないか?
もう刃牙の頭からは勇次郎と戦うという選択肢が丸ごと吹っ飛んでいるかもしれないが。

勇次郎の誘いは明日と目と鼻の先だ。
一体何を用意していることやら。
やはり、食事には食事でお返しか?
力尽くで作らせろ、というかつての言葉は忘れました。

刃牙の食卓は野菜・肉・魚・メカブとよくまとまっていた。
完成度は食した勇次郎しか知りえないがバランスはいい。
勇次郎が作るとしたらどう対抗するのだろうか。
やたらと豪勢に攻めてくるのか。
あるいは懐石の王道を行くように、質素で地味ながらも素材の旨味を引き出した料理を仕上げてくるのか。
何か刃牙の闘争心が根こそぎ削り取られそうで怖いな。

ただこれは刃牙にとって堂々と親子喧嘩をするチャンスだ。
刃牙の予行練習とは違って、黙々と勇次郎は食事してしまった。
波乱がなかった。(家族団欒していたこと自体が波乱なのは置いておく)
ならば、勇次郎の誘いで刃牙が暴れればあるいは…
いや、着るものに悩んでいる現状を見るに、戦う気なんてまるでなさそうだけど。

そもそも、勇次郎相手にファッションを考えても仕方あるまい。
勇次郎は常時胴着?だ。
ファッションにはこだわっていないだろう。
刃牙もいつものトランクスで行ってしまえばいいんじゃないか?

一体地球の裏側にいる烈は何をやっていることやら。
そして、盛大に紹介されたボルトもどうなのだろうか。
…もしかして、烈もボルトを食卓に招いたりして。
作法をしつこく教えて、キレたボルトとの戦いが始まる!
刃牙と勇次郎が食事で喧嘩するよりも、こっちの方が容易に想像できるのはどうなんだろう?



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