範馬刃牙 第308話 父からの抱擁



勇次郎が拳を解き腕を広げた!
残り5回(今回含む)と丁寧にカウントされ、残り10回設定がなかったことになっていないことを教えてくれる。
決着は近い。
だが、いきなり回想が始まる可能性も否定できない。
今まで屠ってきたムエタイ戦士を思い出しても誰が責められようか。


勇次郎は抵抗を止めた。
ただ刃牙の打撃を受けている。
だが、その打撃の回転が凄い。
とんでもないラッシュだ。
並みの格闘家なら間違いなく倒れかねない猛ラッシュである。

それを格闘家関係者は冷や汗を流しながら見つめる。
壮絶かつ異常な光景なのだろう。
ピクルだって驚いているよ。
白亜紀にさえなかったラッシュなのだろうか。

そして、梢江の姿は見えない。
綺麗事を許さない壮絶なラッシュの前に梢江割り込む隙まったくなし。
このまま、SAGAもなかったことにならないかな。
むしろ、記憶から消したい。
でも、SAGAがなかったことになれば、刃牙は強くなれず今この場にいないか。
あるいは柳相手に意地を張らず鞭打をかわして、健康な生活を送れてむしろハッピーか?

[見えているのか………]
[聴こえているのか…………]
[父の肉体(にく)を打つ拳……]
[拳打つ 父親の確かな感触…]
[痺れ続ける拳のみが][父と我が身を繋ぐ唯一の絆]


さて、鬼の貌を出しながらラッシュを続ける刃牙は……
完全に意識の飛んでいる表情であった。
とてもではないがかっこよくない。
むしろ、情けない。いつもの範馬刃牙である。

鼻血も血涙も流して殴り続ける。
剣兼防人並みの出血だ。
それでも殴るのを止めない。
君とご飯を食べるまで殴るのを止めない。
範馬一族に刻まれた本能に従っているかのようだ。
強さの世界の頂点に立つ一族の闘争本能が刃牙を突き動かしているのか。

(打っているのか…? 俺は……)
(打ち返されているのか………? 俺は……)
(せっかくの触れ合いじゃないか)
(“打つ”ように打ったんじゃ 勿体ねェよ)
(そう……)
(抱擁(だき)しめるようにね 打つんだ…)


殴り合いさえ触れ合い!
やはり、範馬一族にとって戦いは最高のコミュニティだ。
そういえば、殴られることではなく殴ることでお互いを感じていた。
攻撃が大事なのだ。受けの姿勢ではわかり合えない。
刃牙は今まで受けてばかりだったから、勇次郎を理解できていなかったのかもしれない。

抱き締めるように打つ。
範馬一族は何でも殴ることに持っていこうとする。
抱くのか、殴るのか、抱き締めるように殴るとかどうやって殴るんだ?
ともあれ、刃牙にとってはただの殴り合いではない。
それ以上の高尚な何かであるのはたしかなようだ。
でも、血涙流しまくりに生気なさすぎで抱き締められたくないな……

ガキッ

そう思っていたら本当に勇次郎に抱き締められた。
だが、効果音がガキッだ。
優しさがまったく感じられない。
生気の感じなかった刃牙が生気を取り戻すほどの衝撃だ。
多分、けっこう嬉しい。

さて、ホワイトハウス。
この激戦をオズマ大統領もTVで見ていた。
って、海外にも放送されているのかよ!?
国際放送するほどのビッグカードである。
もう社会現象だな。
プライバシーをガン無視である。
これが有名人のSAGAか……

オズマ大統領はパジャマで正座してみている。
大統領が着替える時間さえ惜しみ、正座するほど畏まる一戦であった。
オズマ大統領は勇次郎に並々ならぬ感情を抱いている。
こんな態度で見るか。
そんなオズマ大統領の様子を大統領夫人は怪訝に思い、ワールドカップかと声をかける。

「TAWAKE…」

「誰の真似?」


オズマ大統領が勇次郎の顔真似をした。
しかも、TAWAKE!
けど、夫人には気付いてもらえなかった。
ちょっと再現度が低かったか。
刃牙なら顔真似はもちろん、台詞だってそっくりに模倣してみせる。
ニンジャスレイヤーがイヤーグワーだけではないと言わんばかりに、ハイクを交えてパロディしてみせる。

刃牙を抱き締めた勇次郎は何とも言えない表情をする。
刃牙が自分と張り合えるくらいに育ったことが嬉しいような、それを終わらせるのが悲しいような……
勇次郎の複雑な想いが痛いほど伝わってくる。
言葉はない。あっても刃牙には聞こえない。
だが、その表情が勇次郎の心中を物語っていた。

メキャッ

そして、母朱沢江珠の命を奪った博愛固めが刃牙に放たれた!
最大の愛と最大の暴力を込めた一撃である。
骨を砕かれ鼓膜を破られても屈服しなかった朱沢江珠を倒した技である。
この技を食らった後、朱沢江珠は勇次郎を抱いていた。
ただの暴力ではない。
夫としての愛も込められていたのだ。

その博愛固めを刃牙は受けた。
この長く続いた戦いのフィナーレを飾るに相応しい。
母も子もこの技の前に倒れてしまうのか?
それとも刃牙はまだ終わらないのか?
残り4回。
内外ともフィナーレが近づいている。
次回へ続く。


博愛固め!
因縁の技である。
最強のみならず最愛を込めた技だ。
親子喧嘩のフィナーレとしてこれ以上相応しい技は存在しないか。

前述した通り、朱沢江珠は勇次郎を抱こうとしていた。
なら、刃牙も抱いてみるか?
まさかの抱き合いで決着!
親子愛というテーマを描けるので案外いいかも。
いやどうだろう。

二人ともお互いに重い愛を抱いている。
それが見えにくく、刃牙は勇次郎を憎んでいた時期もあった。
だが、成長することでそれは別のモノになり、殴り合うことで二人は理解し合えた。
そんな二人の関係の重さはやはり抱き締めることで表現か。
愛情表現と同時に暴力表現も混ざるのは範馬一族の恒例です。

とりあえず、無呼吸連打が止まったので独歩の予想通りなら決着の流れだ。
本部が言ったのなら信憑性がないというか、多分ドレス辺りで決着とか人間じゃねぇと言おうものだが、独歩なら信頼できる。
でも、最近の独歩にはいいところがないからなー。
船井零を倒し素人相手に殺人技を使いまくったことくらいだ。
注目されたピクルとの戦いもなかったことに。
……信用ならんかな。

最終回は格闘家一同で祝うのが恒例だ。
最大トーナメントの遅ェぞチャンプはもちろん、バキだって多くの格闘家が集まってくれた。
本部だってな!
そんなわけでみんな集まるのがいいんじゃないだろうか。
烈なんて友人なんだから来てやれよ。
ボクシングを捨ててやってきた、なんて言われれば俺たちは何のために戦ってきたんだろうと呟いてエンディングが始まる。



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