範馬刃牙 第53話 決着の刻



地球の力を俺に少し分けてくれ!
ゲバルが地球の核の力を借りる地球アタックを放った!
63780000メートル地下にある地球の核パワーはまさに驚異的だ。
63780000メートルの恩恵がよくわからないが。

地球アタックは地球の支えをフルに活用した技だ。
そのおかげで真上にいる相手しか攻撃できないが、その破壊力は推して知るべしだ。
真上に殴られれば真上に吹っ飛ぶだけだろというツッコミはしちゃあいけない。
真横に殴られても真横に吹っ飛ぶだけだから、問題ないよ!

地球の支えを最大限に活用するのが地球アタックなら、その支えを最大限に活用していないのがシコルスキーのスプリンクラーアタックだろう。
大地の真逆に位置するスプリンクラーに掴まっての一撃は、63780000メートル地下にある地球の核の力をまったく活かせない。
ケーキにラー油をぶちかけるような大失敗技だ。
ゲバルとシコルスキーが邂逅することがあったら、地球アタック理論を教えてあげよう。
大地を味方に土下寝をしてくれるに違いあるまい。


まぁ、そんなわけでゲバルは囚人のみんなの歓声を一身に受けていました
これはチャンピオンが乱丁だったり、編集が1週間後の内容を入れてしまったり、
いきなりバキSAGAが開始されたからチャンピオンを裂いたというわけではない。

とにかく、歓声を浴びるんですよ。
ゲバルは満足げな顔だ。
そりゃあ、勝てば嬉しい。とても嬉しい。
アイアン・マイケルに放尿するよりも嬉しいに決まっている。
アイアン・マイケルは浴びても嬉しいタイプかもしれないが。

「あなたにはかないませんッッ 許してッ」

刑務所のトップに立ったゲバルには、当然ボッシュ大統領も土下座しますよ。
それはとても見事なDO・GE・ZAだ。
恐らく全世界土下座四天王の一人になれるだろう。
四天王を掌握するのは土下寝大王のシコルスキーだ。
スプリンクラーに掴まったままの土下寝はまさに妖怪ロシアカマーセ。学校の怖い話になってしまうことは想像に難くない。
2007年初頭、トイレの花子さんに並ぶ、トイレのシコルスが誕生する。

さらには勇次郎もゲバルを祝福するために現れる。
地上最強の勇次郎さんだ。
これには土下座四天王のボッシュも霞む。
見事なDO・GE・ZAも一瞬で忘れ去られてしまった。

「地上最強とかなんとか言われてるけど…………」
「それは俺じゃねェ…」
「ゲバルおめェさんだよ」


勇次郎からゲバルへ地上最強の称号が授与された。
おめでとうゲバル。ありがとう勇次郎。
世界はじょじょに平和になっていく。
きっと、ヤイサホーの歌でみんな幸せだ。

「そんなんアタリまえじゃんッ」

「やっぱり?」


当然のごとく、勇次郎は刃牙にツッコミを受ける。
思わず顔をほころばせる。
実の息子に突っ込まれたのがそんなに嬉しかったのか、今までにないくらいのパパ笑顔だ。
これにはアイアン・マイケルもつられて笑う。
勇次郎の至近距離で笑う。

………

……



おかしい。
何がおかしいかってアイアン・マイケルが勇次郎の至近距離で笑っていられるのがおかしい
これは何の悪夢だ。
お前は冷や汗を流して、失禁して、電話ボックスに立てこもるのが仕事だろ

勇次郎は例えるならストーブですよ。
常時高温を発生させている。
それに対してアイアン・マイケルはアイスクリームだ。
近づいただけでドロドロに溶ける。
勇次郎に近づいた日にはもう細胞単位で否定されます。

(こういうことって…)
(たいていはそう………)
(たいていは……)
(夢)


アイアン・マイケルから異常を察したのか(本当はボッシュ大統領の時点で疑問を覚えていたが無視)、ゲバルは現実に引き戻される。
現実に戻ったらあら大変。
オリバさんの鉄拳が顔面に突き刺さっていた。
強力な握力によって握られた拳はそれだけで十分凶器だが、それだけではなく地面に叩きつける形で一撃を食らわせている。
さすがのゲバルもこのパンチの前には、立ち上がることはできないだろう。

こんなパンチを食らってれば、そりゃあ、勝利した現実逃避もしますよ。
柳と末堂とアイアン・マイケルのいる黄泉の世界へ飛ばなかっただけ、まだマシだ。
あ、柳はともかく末堂とアイアン・マイケルはまだ生きているか。
…いや、末堂は生死不明だった…
いい加減はっきりさせてください。

地球を支えにするのがゲバルの地球アタックなら、地球へと叩きつけたオリバのはさながら逆地球アタックだ。
上から下へと振り下ろすため、地球アタックとは逆に踏ん張りが効きにくいが、逆地球アタックは力の逃げ場がない
地球を支えにすることで、パンチの威力の全てを相手にぶつけることができるのだ。
皮肉にもゲバルは63780000メートル地下にある地球の核の硬さを叩きつけるはずが、
自らが63780000メートル地下にある地球の核の硬さを受けてしまうことになってしまった。

ということは、地球理論は別の形ではあるが随分前に達成されていることになる。
…やっぱり、ゲバルの言葉は陳海王クラスだったか。
せめて、寂海王クラスのハッタリにならないと。
背中の耐久力は7倍ですよ。

よほどすさまじい一撃だったのか、オリバの逆地球アタックに周囲はただ静まるのみだった。
刃牙も、マリアさんも、アイアン・マイケルも冷や汗を流すだけだ。
アイアン・マイケルはいつも流しているが無視の方向でよろしくお願いします。

「あなたの… 肉体への信仰が勝った」

静まった刑務所の中、刃牙は一言コメントをする。
地球愛は筋肉愛には勝てなかった。
この刃牙の言葉にオリバはゲバルは筋肉(にく)への愛がなかったと語る。

「俺よりもず〜〜っと早い段階で――――」
「筋肉というかけがえのない恋人に別れを告げている」
「脱力だ 技術だ 重心(バランス)だ 支えだ…と」
「他の恋人達とイチャイチャやってきた」


驚天動地の愛理論だ。
地球理論よりも雄弁な言葉だ。
筋肉への愛があれば負けないんだ!

ずっと前に刃牙に向かって言った「愛以外に人を強くするものがあるか」の言葉の真意がやっと明らかになった、気がする。
愛がなければきっとグラップラーな面々は強くなれないのだろう。
オリバは筋肉に愛を込めてるし、勇次郎は自分の強さがとことん好きだ。
郭海皇は中国拳法への愛が自らを強くしたし、独歩も渋川先生も自分の流儀に命を懸けている。
そんな中、ゲバルは様々なものに強さを求めた結果、たったひとつの揺ぎ無い強さを手に入れられなかったのかもしれない。
勇気をもらったと言いながらも、ヒゲミサイルや三半規管壊しとかセコい手ばっかりだったし。

「今見ている俺の肉体(からだ)―――― 実はこれ…………本来のサイズではない」
「では何故こうもコンパクトに納められているのか」
「閉じ込めているからさ」


なんかオリバさんがいきなり電波を放出し始めた
本来のサイズじゃないって、お前どこの宇宙人だ。
きっと、筋肉星人だな。
1日3食筋肉を食べ、1日5回筋肉の殿堂で祈りを捧げる日々を送っているに違いあるまい。

とにかく、オリバの電波に皆戸惑う。そりゃあ戸惑う。
こんな地球外生命体発言されたら、戸惑うより他ない。
地球外生命体(100キロのカマキリ)を呼び出した刃牙もびっくりだ。
リアルで地球外生命体を見るのはこれが始めて――
どっかの中国の妖怪や地上最強の生物がいたなぁ…

「仮に閉じている扉を開いたら―――」
「この筋肉の大きさ(サイズ)は―――」
「おそらく………」


オリバが想像した本来の筋肉は、刑務所を覆い尽くすほど巨大だった。
オリバは宇宙人というより宇宙怪獣だったらしい。
不定形の肉は明らかに人類のものじゃありません。
科学特捜隊に倒してもらおう。倒せるかは怪しいが。


そんなわけで地球規模の一撃に勝ったのは、宇宙規模の筋肉だった。
そりゃあ、宇宙には勝てない。
ブラックホールで地球を一口に呑み込む。
宇宙に喧嘩を売っちゃダメだ、ゲバル。
相手が宇宙怪獣だったなんて、まったく想像もできなかったからしょうがないだろうけど。

いつのまにか、戦いが地球規模になってしまった。
刃牙も地球に勝つために新技宇宙アタックを見につける必要があるだろう。
無重力から放たれる拳は変幻自在で見切ることは不可能だ!
でも、無重力だから、殴っても反作用で自分が吹っ飛ぶ。
重力の加護を受けている相手は、刃牙がはるか遠くへと吹っ飛ぶのをじっと見守るだけだ。
そして、範馬勇次郎が新連載される。


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