範馬刃牙 第57話 オリバと刃牙



刃牙は脱走しようとしてライフルに囲まれた。
これがサムワンとかだったら、しこたま撃たれるしか選択肢がない。
ただ、この場合は範馬だ。
近代兵器に屈していては、範馬をやっていけない。
科学特捜隊に負ける怪獣なんていないんですよ。

さて、刃牙の目的は何なのか?
やっぱり、ゲバルに逢いに行くのだろうか。
喧嘩を売ったんだから、それを反故にされたんじゃたまらない。
今すぐゲバル島を荒らそう。
主人公度急上昇だ。


そんなわけで一見絶体絶命の刃牙だ。
その様子は監視塔にいる職員の目にも入っている。
別の職員と連絡を取りながら、明らかにまったりムードで見ている。
しまいにはタバコを吸う始末だ。
うわ、緊張感ねえ
刃牙の絶対の安全が保証されているように、職員にはやる気がない。
今、この場でマジになっているのは所長くらいなんだろうなぁ。

「この絶望的な状況下 なおも「アンチェイン」に――――――」
「「繋ぎ止められぬ者」になれると君は言う」
「つまりこの状況を打破できると受け取っていいかね…………?」


わりと役に立たない陣形を取っている中、所長は超余裕だ。
あまりに余裕ぶっているので、刃牙の安全度も上がっていく。
刃牙世界で近代兵器に遅れを取ることは弱者の証だ。
近代兵器に対応できない奴なんて不良くらいですよ。

この期に及んで余裕たっぷりの刃牙に対し、所長は状況を打破するように挑発する。
ああ…お前、そんなに金玉蹴られたいのか
蹴りますよ、刃牙なら。
遠慮なく、嬉々として蹴り上げて、蹴り潰す。

「してるさ」

挑発に対して、刃牙は堂々と返答する。
もう蹴り潰しているということか?
――と、その瞬間、所長のサングラスが割れた。
割ったのではなく、自然に割れたのだった。

「割らせてもらったよさっき」

所長が刃牙の間合いに入った際に、一本拳でサングラスを破壊したようだ。
常人にはまったくモーションの見えない神速の一撃だ。
さすが、斗馬さんをして、刃牙クラスが本気になれば人間の反射神経を凌駕すると言わしめるだけはある。
でも、時間差で割れるのっておかしくないか?
お前、北斗神拳の使い手か何かか。
まぁ、風を吹かせたり、タキシードを固定させるよりはマシか。

「アンタだけじゃない」
「ここにいる射撃手6名 全員の第2ボタンだ」
「つまり ここ 胴体最弱の急所に位置するボタンを頂いたワケだ」


今度はライフル持ちの第2ボタンを奪ってみせた
サングラスを破壊した時のように、動きはまったく見えなかったようだ。
それは先輩の第2ボタンを奪うような一撃だ。
そんなシチュエーション、刃牙世界では死んでもありえないが。

だが、刃牙と射撃手の位置を見てみると、刃牙が手を伸ばしても届かない位置にいる
少なくとも身を乗り出さなければ取ることができないだろう。
まして、後方に位置する人物となると、振り返る必要もある。
刃牙はなかなか無理のあることをしてくれた。

ともあれ、刃牙は圧倒的な戦力差、といえるかどうかはわからないが、自分の実力を所長たちに知らしめた。
驚異的な運動能力+ハッタリで瞬く間に刃牙ペースになった。

「仮に今この中の1名が引き金を引いたとしても―――」
「運動神経を司る小脳を 正確に撃ち抜かなければ俺は確実に動く」
「そん時ゃボタンぐらいじゃモチロンすまない」
「股間を蹴り潰すか ノドをエグるか 人中を穿つか」
「いずれにしろ6人の―――― 2人以上が必ず死ぬ」


なんか小脳をピンポイントで破壊しなきゃ再生するような言い回しだ。
いつのまにこいつはミュータントになったのだろうか。
普通の人間なら頭撃たれただけで死ぬ。小脳とか関係なく大抵は死ぬ。
脳の一部が欠損しても生きている人もいるため、死なないにしても撃たれれば気絶はするだろう。
見事なまでのハッタリだ。
身体能力と巧みな話術で弱者をいたぶっている。
少年漫画の主人公スキルとしてはあまりよろしくないような気がする。

ところで攻撃する部位を挙げた際に一番最初に金的が出てくるのがどこまでも刃牙だ。
本当は蹴りたくてたまらないんだろうな。
あと、18歳が普通に人を殺すことを諮詢してどうするのだろう。
かなり前からだけど、刃牙の精神は相当暗黒面に踏み込んでいる。

刃牙のハッタリを振り払おうと、所長は部下に射撃命令を出す。
が、撃てない
ムエタイじゃないから、金玉を打たれるのが怖いのだ。
冷や汗を流したまま、沈黙することしかできなかった。

[世界初!]
[素手の犯人 銃を突きつける人質の図]


所長は刃牙に脅されて、所長は刃牙と肩を組む。
完全に密着した。
もう金的一発どころじゃありませんよ。
少なく見積もって5発は打ち込める。
ついでに金的1発で地獄3回分の破壊力だ。

そのまま、刃牙は正門へと向かう。
門は所長が開けてくれた。
刃牙は暴力と知略を結集させて高い壁を乗り越えた。
本当、弱い奴には強い男だな
というか、刑務所に入ってからというもの、弱い奴しか相手にしていない。
オリバやゲバルに歯向かったこともあったけど、一発で気絶した。

そして、刃牙は刑務所の外へ出た。
広大な荒野が広がる。
ここからゲバル島へと向かうのは骨だろう。
だから、所長に運転手を務めさせるに違いない。
傍若無人なのが刃牙だ。

「受刑者バキ ハンマ帰還します 手錠を…」

と、せっかく出たところで、刃牙は所長に振り向いてこの台詞だ。
お前、何抜かしてやがる。
帰還するってことは刑務所に留まるということだ。
ゲバル島なんかには行かず、オリバと戦うつもりだろうか。
ちょっと待てお前。
オリバと戦うことすら忘れゲバルに執着していたというのに、なんだこれは
やっぱり刃牙は刃牙だった。
PEッッッ。


結局、刃牙は刑務所に留まるつもりらしい。
ゲバルのこと、完全に忘れたのだろうか。
…なんかこの構図だと、オリバとゲバル、勝った方が俺と戦ってやるといった感じだ。
主従関係が逆転している。
チャレンジャーの立場のくせにやたらと態度がでかい。

この儀式で刃牙はアンチェインの称号を手に入れたと満足しているが、それは形だけではないだろうか。
正面から脱走するだけならシコルスキーにだってできる
刃牙の所業に得心のいかないオリバはアンチェイン試験をやらさせるとか。
全世界1万人のアンチェイン希望者との熾烈な争いを繰り広げるのだ!
とりあえず、ガソリンのプールを泳いだりする。


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