範馬刃牙 第62話 弱者
刃牙は小便を浴びて高笑いをする。
ナニが嬉しいんだろう。ナニが。
マゾで試合中に失禁するだけあり、汚物プレイはお手の物か。
小便なんて汚いのうちに入りません。
むしろ、聖水ですよ、聖水。
黄金まで行くと敷居が急上昇するので止めておきましょう。
「〜〜…ッッ」
「あ〜〜…… 爆笑(わら)った……」
ええ。ええ。
小便を浴びて爆笑する主人公はどうかと思う。
なんか、こいつ本気で嬉しそうだし。
…梢江とSAGAっている最中にこの手の趣味に開花したのだろうか。
「刑務所(ここ)で一番エライアンタがよォ」
「身動き一つ取れねェような俺に 小便まで喰らわしてよォ」
「今の2人にはそれほどの差があるんだ」
「なのにどうよ…」
「アンタときたらちっとも笑ってねェッッ」
刃牙は聖水が嬉しいのではなく、オリバが笑わないことが楽しいらしい。
そりゃあ、尿かけられたのに爆笑するような変態が目の前にいれば、いくらオリバでも思考が停止する。
尿作戦、大失敗だ。
「ハハハハハハハ」
「笑わねェのかいミスターアンチェインッッ 笑えねェかいミスターアンチェイン
ハハハハハハハハハハハハ」
うわ、主人公らしくねえ!
なんか、一瞬にしてロシア人になってしまった気がする。
これはまずい。ええ、まずい。
口を開くたびに地位が危うくなっている。
ネガティブループだ。
ここはオリバも刃牙に合わせて爆笑するのはどうだろうか?
これでイーブンだ!
漫画太郎漫画だったら、数週間爆笑し続けてやがて爆発するくらい、誤った対応だけど。
ええい、もう殴れこの範馬を。
尿なんてかけずに、鉄拳制裁すればいいんですよ!
で、オリバのディナーが始まった。
汚いモノを見たあとだからか、オリバの顔は優れない。
一流の料理の数々も黄色に染まった刃牙に見えるのだろう。
きっと、殴れるものがあったら殴ってる。
ムエタイなんかがいたら、ジャガられていたところだろう。
看守たちは相当気まずいのか、オリバに食事を勧める。
だが、極上の海亀のスープを一口飲んでも顔は冴えないままだ。
怒られるのが怖いのか、看守はワイン作戦に出てみる。
高級ワインの本場、ロマネ・コンティだ!
もう、看守はソムリエになった気持ちでワインを注ぐ。
お前、レストランに帰れ。
で、オリバはまず香りから入る。
香りから入るのが通だ。
「まずは花――――ラベンダー…… イメージでは何種類もの赤い花…
それも一本二本ではない一面の花畑だ」
「そこに微かになめし皮… さらに日本の梅ぼしに似たものが混じり」
「ただごとではないウマ味成分を予感させている」
怒涛の解説だ。
心の中は海原雄山だ。
いや、海原雄山と一緒に食事して、なぜか怒られる食通と言った方が正しいか。
看守はオリバの解説に惹かれたのか、唾を飲み込む。
…私的感覚だとなめし皮とか言われても、うまみ成分を予感できないのですけど。
「純粋無垢なピノノワールだ 見事な果実の味わい」
「樽の熟成香」
「豊かな土壌からくる土の香り」
「そしてハーブ(香草)」
「若干のタバコのニュアンス…」
「たった一口の液体だというのに―――」
「まるで100人編成のフルオーケストラ!」
「莫大な数の味が複雑に絡み合っているにもかかわらず
そのどれもが誇示し過ぎることなく――― そのどれもが緻密なまま」
「完璧なバランスだ」
並大抵の料理漫画ではこれほどの解説を見ることは出来ない。
意味のわからなさも並大抵の料理漫画では見ることは出来ない。
オリバ先生が語る酒の席で役に立つハッタリだ。
多分、変人扱いされる。
ともあれ、お喜びのオリバさんを見て、看守もほっとする。
「しかしだ……」
「この葡萄を発酵させた液体のどこに――――」
「10ドルで売られる手頃なワインの10000倍もの価値がある」
「ウマさはせいぜいが19倍」
「喜びもせいぜいが22倍」
さんざんと語って、ブチ切れモードに入った。
この洗いを作ったのは誰だモードとも言える。
オリバ先生が語る高級料理を食べた際の文句だ。
で、ロマネコンティの瓶をテーブルに押し付けて割る。
料理もワインも台無しだ。
そして、看守はとばっちりが来ないのかとビビる。
ああ…刃牙が横暴をした余波がこんなところに…
巨凶範馬は周りまで巻き込む。
刃牙にももう少し自重してもらいたいところだ。
そして、オリバは所長を呼ばせる。
刃牙の拘束を破らせるつもりだろうか?
刃牙とオリバの戦いの時が迫っているのか。
ほんの少しでもいいから、ゲバルさんのことも思い出してあげてください。
「うンめェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
オリバが超高級ワインに満足しない中、刃牙は氷すら入っていない一杯の水で至福を味わっていた。
いや、身体を洗わないと尿とか混ざってるんじゃあ…
それを含めてうまいのだろうか?
…だとしたら、嫌な主人公だなぁ…
刃牙がよくわからないうちに態度がでかくなって、よくわからないうちに決戦が近づいている。
頑張って2世と呼ばれるまでになったゲバルは無駄な手順を踏んだ気がする。
今の刃牙は態度はでかいが、それを支持する人が一切いない。
世界にひとりぼっちだ。
でも、それが刃牙だ。孤独の戦士だ。
…孤独っていうかニートなんだけどな。
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