範馬刃牙 第74話 Over the Muscle 



オリバの鼻の穴に指を突っ込んだ!
シンプルにしてディープな攻撃だ。
オリバの逞しい穴に刃牙のアレが入っちゃうの。
ちょっとちっちゃいけど二本も入ればすごいんだから。

単純な攻撃ながら鍛えられない部分を突くため、オリバには剛体術よりもダメージを与えている
これにはオリバも参る。
そして、このままじゃまずいから、刃牙を裏拳を当て鼻穴責めを止めさせる。
数メートル先まで吹き飛んだため、地味に超破壊力だ。

しかし、間合いを離したのはいいのだが、オリバは涙を流して鼻を押さえていた
あ、あのオリバが涙を!
…いや、龍書文に顔面平手打ちを喰らった時にも涙を流していたな…
渋川先生に指を掴まれた時も大げさに痛がっていたし、存外痛みに対する耐性はないのかもしれない。
鞭打なんかやれば、筋肉ボールの上からでもダメージを与えられそうだ。

「このガキ…」

大量の鼻血を流しながら、オリバは完全にキレていた。
金的を喰らっても怒らなかったオリバが怒ってる。
鼻の穴の恨みは金玉よりも重いのだ!

まぁ、金的はバキ世界においてジャブみたいなものだ。
金的して当然だし、金的されて当然の当てられることを前提にしなければいけない技である。
そんな攻撃にいちいち怒っていたらもっと打ち込んでくださいと言っているようなものだ。
そして、金的だけで致命傷を受ける格闘家は二流だ。
あと金的一発くらいで金玉が潰れても二流の証拠である。
一流は何度も蹴られることになるから、いちいち潰れていては満足にSAGAれないのだ。

閑話休題(それはさておき)。
オリバは刃牙戦で初めて受けたダメージらしいダメージを受けている。
それどころかオリバ登場以来初めての大ダメージの可能性もある。
海王3人分の戦力はあると思われる凶人龍書文ですらオリバを苦しませるほどのダメージは与えられなかった
鼻の穴。偉大だ。
シコルスキーも鍛えられた指技で鼻の穴を狙えば良かったのに。
尻の穴を狙われるだけではつまらんぞ。

「ただではおかん…?」

「ただではおかん!!!」


相当頭に血が上っているのか、刃牙のジョセフ・ジョースター並みの誘導にオリバは見事に乗ってしまう。
ここまで感情を露わにするオリバは(マリアさん絡みの出来事以外では)初めてだ。
今まで余裕を持ちながら戦っていたオリバらしからぬ鬼気迫る表情だ。
顔面全面に皺が寄る凶相!
シコルスキーなら見られただけで漏らしかねない。
よくて冷や汗だ。

「いいだろ もう」
「秘密兵器ごっこはもうやめだ」


自分の秘密兵器が通用しなかったからってそりゃねえっすよ、刃牙さん。
自分の都合のいい方向に話の流れを進ませようとする…
それが範馬流だ。
でも、勇次郎がやれば思わず呑まれてしまうのだが、刃牙がやるとなんか外れてしまう。
迫力か?迫力が足りないのか?

さらに刃牙は範馬トークを続ける。
「小細工を弄して勝ったところでさほど意味はない」らしい。
小細工を弄しても勝てるのかすら怪しいが、ここでビビってしまうようじゃ範馬トークは終わってしまう。
どこまでも尊大に!
どこまでも身勝手に!
どこまでも傍若無人に!
それが範馬トークの極意だ。
要するに偉そうにしろ。

とりあえず、刃牙は「オリバを倒そうと思えばいつでも倒せる」とアピールして威圧する。
まぁ、たしかに0.5秒パンチでダウンさせた後、下段踵蹴りすれば勝てる…かもしれない。
もっとも板垣漫画では下段踵蹴りの必殺性に疑問符がつきまとうのだが。
雑魚にしか効いていないし。
必殺の名前がつく攻撃って大抵雑魚にしか通用しないけど。

「アメリカ合衆国最強――――」
「ビスケット・オリバに勝つってことは―――― そういうことじゃない」
「殴り合おう」

「正面からだ」
「足を止めて男らしく堂々と」


オリバとの戦いに当たって、一番男らしくなくて卑屈だったのはお前だろうが、刃牙ィィィッッッ。
この人はオリバを散々馬鹿にして、挙げ句勝負もせずに逃げた過去を忘れたらしい。
これほどまでに「男らしく」という言葉が似合わない主人公もそうそういないだろう。
だが、自分にとって都合が良ければそれでよしッッッ。
自分のことを棚に上げるのは範馬トークの基本である。

この言葉にオリバの顔が凶悪に歪む
やばいもうやばい。
シコルスキーならこの顔だけで「負けたくない」と逃げ出しかねない。
こうなったらもう止められない。
絶対刃牙殺すと誓っているのだろう。

「自分より100キロも軽い少年から言われたんだもの」
「堂々と殴り合えと――――!」


ボブは刃牙の暴言を反芻する。
格闘技において、体重差というのは非常に大きい要素だ。
体重によって打撃の威力が大きく違ってくる。
ボクシングの階級分けが細かく行われているのも、体重が違えばまともな勝負にならないことの証明とも言える。
まして、オリバと刃牙の体重差は100キロ近くあるらしい。
打撃力は桁違いだ。
さらに単純な筋力にも差がある。
そんな差がありながら正面からの殴り合いを挑まれたのは、オリバにとって侮辱されたに等しいのだろう

でも、バキ世界では体重と身長ほど強さの指標にならないものはない
いくら重くても重いだけなら吹っ飛ぶし、いくらでかくてもでかいだけなら地に倒れるだけだ。
身長167cm体重71kgの刃牙に身長240cm体重310kgのアンドレアス・リーガンが物の見事に吹っ飛ばされたし。
大事なのは密度であり量ではない。
綿菓子がいくらあろうと鉄の硬さにはかなわないのだ。

「NOオオオオオッッ」
「絶対に打ち合うなッッ」
「殺されるぞバキッッ」


その時、刃牙を止める声が割り込んだ!
だ、誰だ!
この期に及んで驚き役が増えるなんて聞いていないぞ!

「プロボクシング元世界ヘヴィ級王者(チャンプ)――――――」
「アイアン・マイケルその人さ………」


ボブは冷静に乱入者が誰なのか分析した。って…
お前かアイアン・マイケルウウウウウウウウウウウウウウウ!
両手が指錠で縛られているため、懲罰房にいたらしい。
「範馬刃牙」において、アイアン・マイケルほど扱いやすいキャラはいない。
アイアン・マイケルが出てくるだけでネタになると言っても過言ではない。
今のアイアン・マイケルは立っているだけでネタになる男だ。
グラップラー刃牙時代よりもその地位は大きく向上したと言えよう。
ある意味、オリバ刑務所編をゲバルやオリバ以上に象徴するキャラなので、
刃牙とオリバの戦いが終局を迎えようとしている段階で出てきてくれたのは非常に嬉しい。
だって、オリバ刑務所編が終わったら二度と出てこないと思うし。
この調子でシコルスキーも連れてきてやれ!

ともあれ、誤解説王ボブ・マッカーシーと弄られ王アイアン・マイケルの夢のタッグが土壇場で完成した。
キン肉マンで言えば、カナディアンとスペシャルマンのタッグといえよう。
全盛期の本部&加藤タッグに匹敵する組み合わせだ。
見事なる解説と驚愕、そして弄られを見せてくれることだろう。
まさに生きた芸術だ。

「おまえは体重差がワカってないッッ」
「ボクシングがなぜか17階級もあるのか考えてみろッッ」
「ミドル級程度のオマエがミスターと打ち合うなど 自殺行為なんだッッ」
「俺ですらミスターの正面には立たないッッ 立てないッッ」


「俺ですら」って嫌に自信過剰だなアイアン・マイケル。
読者的にはそれくらい言われなくてもわかっている。
多分、4000年かかってもアイアン・マイケルはオリバの前には立てない。

むしろ、立たないというか、立てないというか、「立ちたくない。早死にしたくねえからな」じゃないか?
アイアン・マイケルが正面に立てるのは除海王程度の気がする。
除海王相手ならアイアン・マイケルでも勝てそうだけど、腐っても海王だからなぁ…
やっぱり、張洋王くらいで妥協しておくのがベストか。
今のアイアン・マイケルでは張洋王にすら勝てそうにないのだが。

あと体重差をわかっていないのはお前だアイアン・マイケル。
お前、刃牙とリーガンの戦いを見ていなかったのか。
100kg差どころか180kgの大盤振る舞いだぞ。
さっきも書いたけど、バキ世界における体重は強さの基準ならないんだ。
お前、1回戦の相手がリーガンだったら「人間じゃねえ…」と控え室でビビることになるぞ。
この事実に気付かないとアイアン・マイケルは一生勝てないだろう。
あと、差があるのは体重差ではなく格の差だってことを教えてやるんだ!

そういえば、アイアン・マイケルよ。
なんでお前は懲罰房に入っているんだ。
…何か悪いこと、したのかなぁ…
…いや、普段のヘタレっぷりからは悪いことすらできそうにないからなぁ…
さすがアイアン・マイケルだ。
さりげなく、それでいて無意味にひどい扱いを受けている。
さすがいるだけでネタになる男だ。
極上のレクリエーションをサプライズボーナスしてくれてありがとう。

「ヤル価値 十分ってワケだ」

だが、しかし。
刃牙はアイアン・マイケルの言葉に一切耳を貸さない。
貸すわけがない。
アイアン・マイケルのアドバイスを真に受けるなんて、本部にアドバイスを求めるくらい危険だ。
あるいはボブに解説をお願いするくらい、か。
アイアン・マイケルでは範馬を止められない。
そして、アイアン・マイケルは範馬に弄られる。

「もう誰にも止められない……………」
「誰も止められない……」
「マイケルも…………」
「規則も……」


ここでボブらしい、どこかズレた合いの手が入る。
アイアン・マイケルに止められるのはボクシング部の高山くらい(グラップラー刃牙2巻参照)だぞ、ボブよ。
…あれ? なんかアイアン・マイケルの地位が底辺を突き破ったような言い方をしてしまったような気がする。
まぁ、いいか。
きっと間違えてなんかいない。

さて、刃牙は背筋を使って壁から跳ねるように前に進む。
その折りに壁に鬼の貌のクレーターを残した
背筋だけでクレーターを作るなんて人間業じゃない。
背筋だけで跳躍した時点で人間じゃなかったけど。
さすが、範馬の血族であり、鬼の貌だ。
というか、鬼の貌を忘れてなかったんだな。
もしかしたら、さっきまで省エネするために鬼の貌を解除していたのかも。

「この惑星誕生以来の―――」
「最強のブン殴り合い!!」


ついに刃牙がオリバと正面からぶつかり合った!
刃牙にとって久しぶりの――
というか、ジャック戦以来の殴り合いだ。
肉と肉のぶつかり合いは実に板垣漫画らしい。

前号決着と書かれていたが、何だかんだでまだまだ続きそうだ。
勝負は佳境に入ったが、ここから1ヶ月殴り合ってもおかしくない
あと0.5秒パンチ→0.5秒アッパー→0.5秒ハイキック→その間実に2秒コンボをやられたら怒る。

きっと、アイアン・マイケルは刃牙を熱く応援するんだろうな。
ケイッ!テリャッ!と左ジャブをして大応援。
思わず止めに入って2秒でミンチにされたりもする。
あと警告なしで発砲が許可されているらしいから、看守に撃たれないように気をつけた方がいいぞアイアン・マイケル。
もしかしたら、君の後ろに復讐の機会を探っていたマウスがいるかもしれない。
ゲバルに復讐したいところだけど、敵わないし、そもそも刑務所にいないのでアイアン・マイケルを狙うのだ。
でも、アイアン・マイケルが撃たれても刃牙とオリバは殴り合いを止めないと思う。
ボブも気に止めないと思う。
マイケル・ホールズ所長だけが契約をやっと達成できたとガッツポーズ。


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