範馬刃牙 第97話 離さない



もう止めてピクル!烈のMPも0よ!
喰われて、叩かれて、もうHPが尽きたのに、トドメにMPまですり減らしやがる。
技も出したし、力も尽くした。
肉も食わせたし、涙も流した。
トドメに誇りも捨て去った。
もう烈には出すものがないよ。もう許してやれよ、ピクル。
さながらカイジの社長並みに搾り取られた。
あと出せるものがあるとすれば尿くらいだ
…失禁は勘弁してくれ。

[グルグルパンチ]
[作戦・戦法 戦略・効率等 一切の謀を捨て去った――]
[純粋な感情のみ]


前回の引きのまま、烈永周はグルグルパンチでピクルに突っ込む。
烈ほどの身体能力の持ち主がグルグルパンチをするのだ。
相当な速度を生み出していることだろう。現に残像がいくつも見えている。
おそらく並みの格闘家ならこれだけで倒せることだろう。
アイアン・マイケルなんか3秒間で5KOはできる。
でも、相手はピクルだ。絶対通用しねえ。
これでピクルが倒れたらいくら何でもギャグが露骨だ。

というか、肩の肉がないのにこんなことをやったら痛かろう。
烈永周、とことん不器用だ。

[おそらくは――]
[たぶん……]
[人類最古―― 最終兵器(わざ)ではあるが――]


無数の残像を生み出す烈永周の必殺技がピクルにヒットする。
ピクルは…ちょっと身を縮めてグルグルパンチを防ごうとする。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
地味に効いている!

スパムメールくらいには効いているぞ!
スパムメールくらいの効力だから、なんか迷惑そうな顔をする程度に終わっているぞ!
でも、ピクルにガードさせたのはある意味快挙だよな。
ピクルにとって、グルグルパンチはアゴへの六連打以上の脅威があるのだろう
いや、ねえよ。

グルグルパンチは回転力を活かした攻撃だ。
軌道が単純で読まれやすいが、回転力を活かせるため破壊力だけはあるかもしれない
バキ世界ではモーションが大きくてもド派手なパンチの方が地味なパンチよりもダメージを稼げるんだ。
意外とグルグルパンチは有効かもしれないぞ。
両方の腕を使うから連打も効く。
…まぁ、体重が乗らないけど。

でも、やがてピクルはガードするのを止めて、直立でグルグルパンチを受け止める。
あまりに未知すぎる攻撃のため警戒したのか。
それとも烈永周の突然の突撃に警戒したのか。
いずれにせよ、出された時はびびったけど、どんな攻撃なのかわかったから平気らしい。

「なんちゅういたわしい光景じゃ…」
「あの烈 海王が……… グルグル……って」


烈海王のかっこいい部分をたくさん知っている徳川のじっちゃんにとって、烈永周の姿は見るに堪えないのだろう。
冷や汗流しまくっている。顔も悲しみに染まっている。
なら、止めろよ。
もう首筋と肩の肉が喰われているんだ。
そのうち生命活動に重要な部位が喰われたら死んでしまうぞ。
やっぱり戦いが見たいだけなのか、こいつ。

烈永周のグルグルパンチに脅威はないとピクルは悟った。
でも、困惑している
現代に蘇って初めて警戒するに値する好敵手だったのだが、いきなり勝つ気ゼロの攻撃をされて混乱したのか。
そりゃあ、恐竜はこんな奇行しないよな。
読者もこんな奇行をするなんて予想外だった。

[襲いかかってくるからこそ反撃する………]
[強力だったからこそ]
[全力も出せたのだ……]


ピクルは自分に向かってくる敵しか戦わないし食べない。
無闇に戦いを仕掛けない分、わりと平和だ。
食べるのがそれを帳消しにするくらい危険だけど。
でも、現代は食料調達が楽な世界だとわかると、戦うことだけに集中できるかもしれない。
スリージジイは餌をどう調達するかではなく、餌をどう食べさせるかを考えた方がいい
まぁ、それもピクルの行動原理が喰うことよりも戦いが優先されていたらの話だが。
喰うために戦っているとしたら、餌の意味がない。

[これではまるで――]
[雌]


落ちぶれた好敵手をピクルは雌判定した
これは交尾の始まりか?
烈が第2の女性レポーターになってしまう!
と馬鹿なことを思っていたら、ピクルは腕を振り下ろした
敵でなくなった敵に価値はなし。いっそのこと勝負を終わらせることにしたのか。

ピクルほどの身長から振り下ろされる拳は相当の威力を持つはずだ。
また、ピクル推定2m20cmに対し、烈海王は176cm。40cmほどという圧倒的な身長差がある。
打ち下ろす打撃は身長差があればあるほど威力が増加する。
それを考えると拳の威力はさらに跳ね上がるだろう。
一撃でジャガられかねない。



もうこんな感じに「完(アヴィ)ッ!!!」と烈がやられてしまう。
グルグルパンチの果てにジャガられる…最悪だ
もう烈永周のイロモノ度が極まってしまう。
でも、やられたのは烈海王じゃないから。中国四千年の名誉は守られるよ。
問題は感染者であるスリージジイが烈永周を烈海王と認識していることだけど

ただ、烈は雌判定されたけど、雌よりも女の子だろう
もっと言うならおんなのこっだ。
烈の萌えっぷりを雌で区切るのはあまりにもったいない。
この辺がピクルの誤りだ。
とりあえず、だっこしようよ。

ガッ

なんて馬鹿なことをまた思っていたら、烈が蹴りでピクルの拳を受け止めた
振り下ろされたピクルの拳をまともにガードしても間違いなく受け止めきれない。
何せ勇次郎以上のパワーだ。防御は意味を為さず潰れてしまう。

だからなのか、烈はピクルの拳を蹴ることで、あえて攻めることで迎撃に成功した
また、蹴っている部分は拳そのものではなく、その下の手首だ。
そして、振り下ろされたと同時に、つまり拳の加速が始まったばかりの瞬間を蹴っている。
ピクルの攻撃力が発揮されない場所と瞬間を狙い澄ました蹴りなのだ。
攻撃部位及びタイミング共に神業としか言いようがない。
中国拳法の理合が詰まり詰まった完璧な防御だ。

烈が見せた技にスリージジイもピクルも驚く。
特にピクルの驚愕はかなり大きいようだ。
いきなり抵抗されたこともあるかもしれないが、初めて攻撃をまともに防がれたのだ
ジュラ紀ではこんな経験はなかっただろう。

烈は力ではなく技で自分の身を守った。
グルグルパンチでどうなるかと思ったら、ちゃんと技術は捨ててなかったようだ。
むしろ、グルグルパンチはオトリだったのかもしれない。
適当に殴りつつも、密かにマッハ突きでも出そうとした。
でも、その前に殴られそうになったので緊急迎撃。
それが烈永周の思い描いたシナリオか!

[な……………ッ なにをしているのだ…ッッ 俺は………!!?]

お前が一番驚いてどうする。
何という天然ボケ…まさに萌えキャラである。
この調子だと刃牙や克己に優しくするたびに何をしているのだと自分突っ込みしそうだ。

烈の蹴りは無意識に放った防御だったのか。
技術を捨てても、本能にまで染みついた中国拳法が身体を動かしたのだろうか。
本能で生きているのはピクルだけじゃない。烈もだ!
ツンデレも本能だ。ガイアが俺にもっと萌えキャラになれと囁いている。

勝負を捨ててなかった好敵手に刺激されたのか。
ピクルは身を沈め、地面スレスレの軌道を描くアッパーを放つ
って、お前、アッパー使えるのかよ。
野生ってアッパーできるのか?
夜叉猿はアッパーしていたから野生でも使えるパンチなのか?

上から殴って蹴りで防がれたのならば、下から殴れば蹴りで防がれることはない、というピクルなりの計算があるのかもしれない。
ピクルは勇次郎の技を分析しようとしたように、戦いに関してはクレバーなところがある。
この振り分けは計算による部分が大きそうだ。
野生だからと、力自慢だからと、ワンパターンに陥ることがない。
それだけの思考力があるならいい加減服を着てください。
あと人肉喰うの止めろ。

しかし、ピクルのアッパーも烈は跳び蹴りで防ぐ
全体重を乗せるように蹴る。部位は当然手首。タイミングは加速し始めた瞬間だ。
相変わらずピクルの攻撃力を発揮させないように防御を行っている。
ここまで来れば小細工ではなく、立派な技術だ。
圧倒的な体力差を技術で見事に埋めている。

相変わらず手前ェで驚く烈であったが、ピクルは攻撃の手を緩めない。
今度はフックだ!
知能がないわりにパンチのパターンが豊富だ。
恐竜との戦いで身につけたのだろうか。

上から殴って防がれた。下から殴って防がれた
縦の攻撃が通用しないなら横の攻撃をしてみようという計算か。
狙っている部位は烈の顔面だ。ここを蹴りで防ぐのは難しいだろう。
蹴りによる防御を封じる意味でもフックを放ったのかもしれない。
僅か数回の攻防の中でピクルは最適解を模索している姿が見える。
また、94話では横からの攻撃で烈を大きく吹っ飛ばしている。
この経験からフックなら烈にダメージを与えられると踏んだのか。
ピクルフックが烈の顔面に襲い掛かる!

ガシッ

またも超破壊力を誇るピクルの攻撃を烈は防いだ。
右腕を立てて、全身ごとピクルの手首にぶつける。
全身をぶつけたことでピクルのパワーに負けなかったのか、烈は吹っ飛んでいない。
ピクルのパワーが凄まじくとも、片腕の力に烈の全身の力は負けないだろう。
これもまた完璧な防御であった。

3度最高の技術を以て、烈はピクルの攻撃を防いだ。
しかも、ただ攻撃を受ける防御ではなく、自ら前に出ることで力の差を埋める防御だ
守るという点でも中国拳法の奥は相当に深い。
中国拳法の防御が野生に通用している!

烈の防御にくじけずピクルは攻めようとする。
しかし、焦ってしまったのか。
烈の連続跳び蹴りがカウンターで決まった。
胸部より上のみを狙った蹴りだ。
ピクルの顔面が左右に揺れる。
防御でピクルを焦らせ、そして生まれた隙に最大限の反撃だ。
見事に技術でピクルを翻弄することに成功している。
ピクルにダメージがなさそうなのが不安要素だが。

何にせよグルグルパンチをやった時に浮かび上がった悲壮な空気を完全に払拭した。
これでこそ烈永周。いや、烈海王である。
復ッ活ッ。
烈海王復活!
烈海王復活!
烈海王復活!
烈海王復活!
烈海王復活!
烈海王復活!

…自分が言われるとは思いもしなかっただろうな復活連呼。

[こ………ッッ これは………??]

完璧な攻防を成し遂げた烈であったが、やっぱり本人が一番驚いている
驚きたいのはこっちだ。この天然野郎!
冷や汗流しすぎだ。
もしかしたら、今まで身体に力が入りすぎていたのかもしれない。
自然体で繰り出される中国拳法にこそ、中国四千年の真髄があるのかもしれない。
脱力に郭海皇の真髄があったし。

[烈よ……]
[この……… 薄情者よ……]


その時、烈に謎の声が聞こえる
きょろきょろ辺りを見回す。
目の前に食人を辞さないSSS級危険人物がいるというのに悠長な男だ。
いや、謎の声が聞こえることがそもそもやばい
実はグルグルパンチをやった時点でピクルに吹っ飛ばされて夢を見ているのかもしれない。
そのうち、郭海皇があなたにはかないませんと土下座したり、勇次郎が地上最強はお前だと褒め称えるかもしれない。

[そう冷たくするな……]

烈の後ろには巨大な烈の幻影が立っていた。
謎の声はこの幻影が出したのだろうか。
この幻影は…
ツンデレ神様だ!
ツンデレを極めた者のみに降臨なされるツンデレ神様が烈に舞い降りた!
完全なデレ期に入ったツンデレは母親のような包容力を持つという。
ツンデレ神様の包み込むような優しさはこの辺が影響しているのだろう。

烈は今まで他者に対してツンデレを発揮していた。
しかし、今は中国拳法という自分そのものに対してツンを発揮した
自分にすらツンデレを発動させた姿にツンデレ神様は感動し、烈に力を貸したのだろう。
ツンデレ神様の力を借りた烈の戦闘力は確実に上がるだろう。
ピクルに対抗出来るかもしれない。
ツンデレ神様の加護を受けつつ次回へ続く。


まさかまさかの烈海王覚醒だった。
グルグルパンチを見せた以上、そのままフェードアウトをするかと思ったら予想外の大活躍を果たした。
遺影作って損した。
そして、グルグルパンチの情けなさを忘れてしまうかのようなかっこよさだ。
防御という行動をここまで魅せる格闘家もいない。
多くの烈ファンが惚れ直すことは間違いなしだ。
でも、グルグルパンチの情けなさは忘れられないよな(どっちだよ)。

烈はピクルの攻撃に対し、こちらの攻撃を絶妙なタイミングと部位に合わせることで無力化している。
力の差を補う見事な防御だった。
万全とはいかずとも、ピクルの打撃の大半を無力化できることだろう。
ラッシュを仕掛けられたり捕まえられたりすると話は変わってくるだろうが、ピクルの攻撃を受け止められるようになったのは大きい
ピクルに立ち向かうことができるので反撃の目が出てくる。

ただ、防御は確立されたが、問題は攻撃だ
先週まで決死の攻撃を幾度も繰り返してきたが、目立ったダメージは与えられていない
今回放たれた連続蹴りもピクルのダメージにはなっていないようだった。
烈海王の意地を見せるためにも、最低、鼻血を出させないとダメだろう

急所狙いの攻撃は通用していなかったが、バキ世界において急所攻撃の信用性はまちまちだ。
急所を狙わずに力任せに殴った方がダメージが大きい場合もある。
もしかしたら、烈海王は近道しすぎようとして結果として遠回りしたのかもしれない。
即死耐性のあるモンスターに即死魔法を使ってすぐ倒そうと試みるようなものだ。
地道に殴る蹴るをした方がダメージを与えられる可能性がある。

とりあえず、これで烈vsピクルはあと数週間続きそうだ。
ずっと目の離せない展開が続いている。
来週もどうなるのか気になるところだ。
ここまで来て烈があっさり敗北するなんてオチはさすがにないだろう
十分な健闘が期待できる。

そうなると問題はピクルの食糧問題だ。
ここまで来て烈が喰われるのも不憫すぎる。
何とか友情が目覚めてピクルに中華料理をおごってもらいたいものだ。
あるいは14リットルの砂糖水。
肉は喰わずとも水は飲むらしいから、こっそり砂糖を混ぜておけば栄養補給出来るよ。

ただ、不安要素がある。
烈には幻影が見えた。
幻影が見える格闘家といえば彼ですよ。
今の烈はアイアン・マイケルとかぶっている。
…すまん。言わない方が良かった。


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