第251話 ナント…



範馬はバキ世界における諸悪の根源だ。
フリーザ軍団を引き連れるフリーザ様と匹敵する。
ボスは強くなくてはいけない。
それと同様に死刑囚や海王も強くなくてはいけないのだ。


Jrは腹を押さえ、背中から煙が出て、全身が震えている。
ジャックが蹴りが相当効いたように思える。
さすが、範馬。
力みに力んだ一撃だけで超破壊力を生み出す。

(ナント巨大(おお)キク…………)

Jrは汗を垂れ流しながらジャックを見上げる。
汗はグラップラーたちにとって敗北の兆候だ
Jr、大ピンチ。
汗だけではなく、表情もなんか負け犬だ
Jr、もっと大ピンチ。

(ナント重ク………)
(ナント強靭(タフ)デ………)

負けムードを挽回できぬまま、Jrは驚愕し続ける。
人類の範疇を越えた身体能力には桁外れの才能もかなわず、か。
そりゃあ、どんな才能を持ってしても、ステロイドにここまで耐えられるニンゲンはいない。
霊長類の限界を悟ったか、Jr。
読者的にはバキSAGAの時点で限界を悟りました。

(ナント敏捷(すばや)イ………)

ジャックは範馬立ちからいきなりタックルを仕掛けた。
巨体からは想像できない素早い動きを見せた。
これが範馬だ。
人間の常識から動きを読んではいけません。

Jrは大ダメージを受けた中でも冷静にバックステップで距離を離す。
ジャックのタックルは紙一重で外れる。
そこにJrはアッパーを当てる。
相手が範海王なら全然ワケわかんなくなる見事な当たりをした。
だが、ジャックはひるまない。
むしろ、より強く踏み込む。

(ナント粘り強ク………)

ジャックのタフさに驚きつつも、変わらず殴り続ける。
だが、そこはジャックの間合いだ。
しかし、引かずに殴る。
足が動かないのか、それとも多少なりともダメージを与えたかったのか。

ガキッ

Jrの頑張りはむなしく、ジャックに捕まってしまった。
非常に危険だ。まずい、危険すぎる。
その危険をもっとも感じているJrは負け犬のようにビビり、そして汗を垂れ流す
しかも、その汗の流し方が絶妙な技だ。
上から下にではなく、下から上へと重力に逆らうような形で汗が沸き出ている。
最高級の驚愕の仕方だ。

ニィ…

そんなJrの反応が嬉しかったのか、それとも純粋にチャッチできたことが嬉しかったのか。
ジャックは危険度の高い範馬っぽい微笑みを浮かべる
そして、Jrを持ち上げる。
Jrは2m10cm(推定)の高みへと浮いた。
通常の投げ技ではありえない高さだ。
だが、ジャックが放ったのは技ではなかった。
ただ、力任せに、コンクリートの、地面へ、頭から、叩きつけるッ!!

一般人なら即死級の投げを食らい、Jrはさらなるピンチへと陥る。
それでも意識はあるようで、どうにか身体を起こす。
だが、立ち上がれない。
動くことができず、ジャックが近寄るのをただ見上げることしかできなかった。
しかも、迫ってくるジャックが5人に見えている。
ドロドロかな?

足も、目も、アライ流の鍵となるモノの全てが封じられた。
もう勝負ありだ。
だが、それを許すジャックでは、範馬ではない

(ソレホドノ潜在能力(ポテンシャル)ヲ持チナガラ……)
(徹底的デ……)

ジャックは力任せに拳を振り下ろす。
驚異的な範馬力だけではなく、コンクリートを利用の地面を利用した一撃だ。
試し割りの原理で破壊力は数倍に跳ね上がっていることだろう。
もう勝負ありだ。
Jrの気持ちは「10年以上ボクシングやってるけどよ…」「本気で下段突き入れるなんて見たことねェよ」か?
だが、ジャックは容赦なくもう一撃加えた。

(執拗デ………)

さらにジャックの拳が決まった。
当たり所が非常に悪い。
鼓膜がぶっ壊れそうな当たり方だ。
今すぐ、病院の集中治療室に連れて行くべきだろう。
もう勝利ありだろう。
だが、ジャックはさらなるダメ押しをした。

体重を乗せJrの顔面を踏みつけるジャック。
いや、やりすぎだろう。普通ならもう死んでるって。
Jrも「カンベンしてくれェェッ」「カンベンしてくれェェッ」「オレが悪かったァァッ」な心持だろう。
さすが、範馬。
初行為するとその勢いで数日連続ノンストップでやる。
急所を損傷したサムワンにとどめの言葉と暴力。
脳震盪ですでにKOの春成にダメ押しのアッパーにハイキック。
巨凶の血だけありダメ押しが大好きだ
もう勝負ありですよね?

数度に渡るダメ押しで満足したのかジャックは落ち着いた目でJrを見つめる。
やりすぎたと思ったのだろうか?
範馬のため、絶対そうは思わないだろうけど。
そんな静寂の中、Jrの唇がピク…と動く。
その瞬間、ジャックの目が研ぎ澄まされた凶器のように冷たく輝いた

ドカッ ガッ ドガッ

(ソシテ完全主義者………)

ジャックは殺す勢いでさらに踏みつぶすッ!踏みつぶすッ!踏み潰すッ!!
少しでも反抗の兆しがあるのなら、徹底的に叩き潰すのが範馬なのか。
教師や父親には絶対向いていない。
また、効果音がいくつかあることから、一度ならず何度も踏みつけたようだ。
ものすごいダメ押しだ。
そして、まだ勝負ありじゃないのかッ!?
このジャック、容赦せんッ。と次号へ続く。


やっぱり、範馬は違う。ナニかが違う。
アライ流は対人間を想定した技術なのだろう。
というか、全ての格闘技がそうなんだけど。
しかし、今回は相手が悪すぎた。
だって、範馬だもん。
人を食らう猛獣より厄介な生物が範馬なのだ。
ただの範とは別世界というか別時空というか別銀河の強さがある。

ボコボコにされたJrの顔は克己や範海王にどこか似ている。
空ろな表情が似ているのか、乱れた髪が似ているのか、そのどれもが似ているのか。
何にせよ堕ちた天才はこういった表情をするらしい。
まぁ、範海王が天才なのは判断しかねるところだが。

ジャックの超優勢だが、まだJrには切り札がある。
父親壊しのパンチが候補だ。
回想による技の解説が始まったらジャック、少しだけピンチだ。
回想を含んだ攻撃が不発に終わるとは思えない。
現に回想攻撃で達人と独歩を屠っているし。
とはいえ、ジャックも噛み付きを残している。
Jrが復活するにせよ、波乱の可能性はまだまだある。

またJrには父親壊し以上の武器を隠している。
それはハートだ。
アライ父の心の強さは彼の勇次郎にも、
「戦う技術が偉大なのではない」「ハートだッ」「例え国家が相手でも屈しない」「アンタの心根こそが偉大なんだ!」
と、賞賛されている。
そして、Jrはその父のハートを受け継いでいる。
だが、今までにそのハートの強さが描写されたことはない。
今ここで例え範馬が相手でも屈指しない偉大な心根をみせるのか?
もっとも心では負けていないにせよ、肉体的には範馬に圧倒されている。
そこが苦しいところだ。

もしかして、次回は病院のベットから開始か?
わりとありえそうな展開だ。
もしくは豪邸のど真ん中でパンチドランカーになるのかもしれない。
あそこまで殴られたらパンチドランカーになるだろうなぁ。



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