ピクル 第5話 憤怒(いか)り



アレン君はピクルを鋼鉄の壁の中に監禁することに成功した。
常人ならこれで脱出不可能だ。
サムワンなら安心して餓死、いや冷凍室だから凍死するか。
でもね。
バキ世界において鋼鉄の壁なんて障子紙みたいなものだ。
壊されるためだけに存在する。
そんなものに閉じこめたからって安心するアレン君はやっぱり道化だ。

ピクルを閉じこめている間に、アレン君はパトカーを5台呼ぶ。
この事態には上司のペイン博士も驚く。
そりゃあ、ジュラ紀の人間があんなネタとしか思えない蘇生法で蘇れば…

アレン君は自分が相当ひどい目にあったので、ピクルの戦力を計算してパトカー5台を呼び寄せたようだ。
素手で生身で全裸の人間を捕まえるには十分すぎる戦力だが、相手はティラノサウルスを捕食する新生物だ。
5台でも足りないくらいだ。
というか絶対足りない。
パトカー5台じゃシコルスキーすら抑えられないぞ。
格闘家を呼んでこいッッッ。

5台では役不足と知っているノーベル賞受賞者ペイン博士は警察ではなく、軍隊を要請することを提案する
さらにピクルをキングコング並みの戦闘能力の持ち主だと比喩する。
実にその通りだ。
でも、なんでペイン博士はピクルの戦闘力をここまで把握できているのだろうか?
ティラノサウルスを捕食していたということから推察したにしては、ペイン博士には迷いがなさすぎる。
目の前でピクルの強さを味わったかのように断言している。
これが想像の類からの断言だとしたら、アレン君の上司たる資質十分だ。
つまり、馬鹿。
アレン君よりは頭いいと思うけど。
というか、ノーベル賞受賞者が塩漬けの人間をあんな方法で復活させようとするか?

そうして、ピクルの戦闘能力について、警察の責任者とペイン博士が話していると、核廃棄物隔離施設の建物の壁が突然爆発した
出てきたのは当然ピクルだ。
って、待て。
冷凍室の壁はどうした?
いきなり建物の壁を破ってどうする。
コンクリートだぞ。鋼鉄よりも脆いからあまり自慢にならないぞ。
それとも鋼鉄の壁なんて壊すのが当たり前すぎたから省略したのだろうか。
…そんなものにピクルを閉じこめていい気になったアレン君は、やっぱり道化だ。

「本部に連絡しろ 応援要請を…20名――――イヤ…30………」

壁を破壊して現れたピクルを一目見た瞬間、警察の責任者は手のひらを返した態度を取る。
さっきまで楽勝発言していたのに、壁破られただけでもう敗北を確信した。
さすが、雑魚だ。
危機感応能力は高い。
これが小物だったら危機に気付かずに殺されたことだろう。
アレン君のように。

そして、次の瞬間、ピクルは警察の頭の上を飛び越していた
ピクルと警察の距離は軽く8メートルくらいはある。
これだけの距離を一瞬にして縮め、さらに高さ2メートルほどの跳躍を行うピクルの瞬発力は異常だ。
一瞬でアレン君の背後に回り込んだように、範馬クラスの機動力を持っている。

マッハで飛び越した後はパトカーまでまっすぐ向かう。
そして、1トン以上はあるパトカーを片手で投げた
かつて、スペックはパトカーを両手でひっくり返した。
これだけで十分すごいが、片手で投げるピクルの前には児戯に思えてくる。
ピクルの腕力はすごすぎてどこかおかしい

ピクルは範馬の機動力にオリバの筋力を両立しているようだ。
これは強い。
なんでアレン君を相手に引っ張っていたのかわからなくなるくらい強い。
いや…アレン君を相手にするあたりが板垣漫画らしさだよなぁ。
あえてネタキャラと相対させる。
だから、板垣漫画はギャグ漫画だと言われる。

で、ピクルは絶叫する
頭の上を飛び越される。パトカーを片手で投げられる。よくわからないけど絶叫される。
異常事態が続いたので、警察は軍に頼ることを決めた
警察じゃ死刑囚すら止められない。
なら、軍隊ならどうだ!
…バキ世界においては、軍隊もあまり強くないよなぁ…

「生き甲斐であり…食料であり…誇りでさえあった
 親友(ライバル)を横取りされたことに憤怒(いか)っているのだ」


ペイン博士はピクルの感情を冷静に分析する
イングリッシュで質問するアレン君とは大違いだ。
前回の奇行ももしかしたらティラノサウルスがどこにいるのか聞くためのコミュニケーションだったのかもしれない。
あの祈祷はよくわからないけど。

ティラノサウルスの死はピクルにとって、それほど衝撃的だったらしい。
何もかもがわからないこの現代において、ティラノサウルスは唯一の足場みたいなものだったのだろう。
だから、ティラノサウルスの肉を真っ先に食べたりした。
が、肝心要のティラノサウルスが凍結死していたことで、ピクルの中の何かが壊れたのかも知れない。
「お前が負けるなんてありえねえ!」みたいに。
でも、原人だから、考えていることはよくわかりません。

ともあれ、通報を受けて軍隊が出動する。
軍隊が出動するほどの異常事態だ。
しかも、警察側は誇張して武装テロと伝えた。
話が大きくなったので軍隊の人たちは内心穏やかではなさそうだが、なんと嬉々として出動を引き受けた

「実戦配備検討中だったある最新兵器の
 またとない実験(テスト)の機会(チャンス)だったからである」


最新兵器のテストの機会なのだ。
実戦テストなんて得ようと思っても得られない。
そんな時に格好のチャンスが現れた。
ならば、喜んで引き受ける!
その最新兵器はどんなものかというと…
パワードスーツでした。
具体的にはレッドフレームパワーローダーみたいなものだ。
それよりは大分機械部分が小さくなっているけど、人を中心に備えつつ、パワードアームを持っているのは共通している。
それ、何てネタマシン?
いや、もう、本気で勝つ気がないぞ軍隊
どうみてもただ実戦で通用するかどうかテストをしたいだけだ。
しかも、どれくらい効果があるかではなく、効果が0か1なのかを調べる段階だ。
これならグリズリースーツの方がまだ頼りになる。
いや、そっちならもっと頼りにならないか。

とりあえず、このスーツは数秒で敗北するだろう
だって、ピクルは片手で車を投げるんだ。
両手使って車を持つことがやっとそうなこのスーツではパワーの時点で負けている。
当然、機動力にも劣る。
勝ち目、なし。
ムエタイ並みの絶対敗北が待っている。
ちょっとでもピクルを驚かせられたら御の字だ。

この兵器が当然のように破れ、軍隊が当然のように全滅した暁にはやはり勇次郎の登場だろうか?
軍隊を生まれ持った力だけで全滅させる男には、勇次郎も惹かれることだろう。
両者共に相手にとって不足なしだ。
解説と実況はアレン君とペイン博士が行う。
アレン君は当然実況中も死亡フラグを踏む。
実況のくせに死にそうになるアレン君の姿に私たちは感動せざるを得ないのだ。


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