刃牙道感想 第148話「常日頃」



機動隊でさえ武蔵を止められなかった。
止められないのは予想の範囲内だが、2人も殺されてしまったのは予想の範囲外だ。
殺人はバキ世界においても何だかんだでデカいのだ。
死してから己の重要さを知らしめた本部であった……


さて、場所は警察以上の武力と諜報力を持つ謎の組織、神心会の道場である。
そこにいるのは独歩、克巳、寺田、あと何故か刃牙である。
刃牙と克巳はいつの間にか仲良くなっていたからその繋がりであろうか。

独歩は針金を片手で持っている寺田と向かい合っている。
両手で針金を張るようなことをしていないので、普通に針金を切ろうとしても折れ曲がって終わりだ。
刃物を持ってしても無理だろう。
だが、人間凶器、愚地独歩は手刀で針金を切ってのける。
ピクル編で烈が食われた直後に見せた針金切りである。

「「針金切り」………」「親父のオリジナルだ」

克巳の言葉によるとこの針金切り、独歩にしかできないようだ。
独歩以上の才能を持ち、20歳による瓶切りを達成した克巳でさえ不可能なのか。
スピードやタイミングを越えた境地、四肢の武器化によってのみ、達成できるものなのだろう。
アラミド繊維を切り裂ける独歩ならではの技であった。

が、独歩としては針金の切れ具合がいまいちで本調子ではないらしい。
そんな独歩を克巳は引きこもるっているのではないかと、久し振りにいやらしい顔で笑う。
そういえば、初期の頃はこんな嫌らしい表情をできましたな、アンタ。
ピクル編で男を大きく上げたから忘れていたけどこんな一面があったのだ。
何だかんだで父が復帰したのが嬉しいのかも。

それに対して武道家にとって道場は自室、つまり、引きこもり続行中だと返す。
そんなところにこだわらんでも……
引きこもり武道家の路線を進めたいのか?

それにしても独歩が復帰したというのに加藤も末堂も出てこない。 本部の時は出てきたのにな。
こいつら、やっぱり、驚きたかっただけだったのか?

さて、格闘家の中でも一流である刃牙、独歩、克巳が集まったのだから、話題は当然武蔵のことだ。
どうやら平兵衛と岩間が殺されたことはニュースになっているようだ。 名実共に武蔵は日本全国から悪と認定されてしまった。
こうなるとみっちゃんでさえ擁護不能だ。
そして、みっちゃんは無責任なれど、塀の外では生きられないと言う言葉は正しかった。
……それならTVに出演させるなよ。いや、ホント、マジで。

独歩曰く、警察とは強くあるらしい。
……そうなのか?
何か不甲斐ないところしか見せてもらっていないのですが……
ともあれ、そんな警察が本気になると、装甲車や銃器も出てくると推測される。
武蔵は一人なれど凶悪な破壊力を秘めたテロリストと言っても過言ではない。
ピクルの方がまだ安全ですよ。

「棺桶の山ができる」

「最悪です」

それでも止められないというのが独歩の予想であった。
機関銃で武蔵に勝てるなら本部でも勝てる。
刃牙は最悪だと模範解答ながらも刃牙らしくない感想を述べる。
君、むしろ最悪側の人間じゃん。巨凶やん。範馬を受け入れたやん。
良心があって良かったと喜ぶべきだろうか。

最近の勇次郎はすっかり丸くなって無差別に暴力を振るうことはなくなった。
勇次郎も戦場ではともかく現代の日本では大体が骨を折るくらいだし、殺人まではなかなかしないのが現実である。
その点で考えると今の武蔵は勇次郎以上の危険人物だ。
せめて無刀なら……

守護まもるとしたら」「「俺ら」の誰か…?」

そんな暴力の塊であり危険の塊が暴れている。
それに対して強さに生きる格闘家たちができることは何か。
克巳は誰かが守護ることだと答える。
「俺が守護る」じゃない辺り、今の武蔵とはあまり戦いたくないようだ。
他力本願はちょっと格好悪いぞ。

死の危険があるのはピクルの時と変わらない。
だが、ピクルは絶大なるフィジカルの持ち主だったし、だからこそ相手の攻撃を避けなかった。
つまりは鍛え上げた自分の全てをぶつけられるという確信があったから、格闘家たちはこぞって挑もうとしたのだろう。
あえて酷い言い方をすれば上等なサンドバッグである。 烈も全てを打ち込めるピクルに対して至福を覚えていたわけだし。

だが、武蔵はやりたいこともやれずに斬殺される可能性が多々ある。
烈も持ち味をあまり活かせなかった。
対抗するには本部のような卑怯な戦い方が必要となる。
そうなると強いんだ星人の趣旨からやや外れてしまうのだろう。

ともあれ、誰かが守護らねばならぬ。
本部が守護っていたがその本部が入院中なのだから、本部以外が守護らねばならぬ。
だからこそ、独歩も引きこもっている場合ではないと言う。
守護る気があるのはいいが、あなたはけっこう無様な負けをしたような……
いや、言うまい。

守護るのは何なのか。
本部が言った武蔵そのものか、あるいは武蔵の手によって脅かされている日本の秩序か。
どちらなのかはわからないが格闘家たちは動くことを決意する。

では、神心会本部から出て帰路に着こうとしている刃牙はどうなのか。
出遅れることに関しては超一流なのが範馬刃牙である。
お前も誰かが守護ればいいと思っていないか?
半袖にマフラーという冷やしたいのか暖めたいのかどっちなのかわからんファッションでそう思っているのか?

「遅いぜ館長…」
「とっくに守護まもるつもりだぜ」


馬鹿な!? 刃牙が出遅れない気だ!?
「範馬刃牙」の頃の刃牙はやる気があるのかないのか、わからない態度を続けた結果、ゲバルとの勝負を逃し、ピクルとの勝負には出遅れまくった。
だが、今の刃牙はやる気だ。武蔵との因縁もあるしやる気だ。
全然出遅れているけど、今度こそ遅れない気だ。

「宮本武蔵と対峙するのに「特訓」はフェアじゃない」
「そう」
日常いつも通りの自分おれでなくっちゃ……」


いつも通りの刃牙なら戦わないのだが、まぁ、そこは無視しておこう。
常在戦場の男、武蔵と戦うのに特訓はフェアではない。
範馬刃牙の型を見つけようと特訓していたのは無視しておくとして、爪のひとつ取っても試合前の3日前に切るのがベスト。
だが、今の爪はいつ切ったのかを忘れた。
それでも構わない。ロクな準備もせずに挑む。
それでこそフェアなのだ。

とびっきりの野性のピクルでさえ餓えるという準備をしたのに、この現代人、何を仰っているのでしょうか。
面接に対して練習しないで挑むのが礼儀と言わんばかりの傲慢な態度である。
うむ、実に刃牙って感じだ。
何か元気が出てきますな。

刃牙の表情は怒りによるものだろうか、歪んでいた。
通行人が引くくらいの表情である。
それもまたいつも通り。
ともあれ、刃牙の心は完全に臨戦態勢に入っていた。
心だけはな……
アンタ、身体の備えもした方がいいと思うよ……
次回へ続く。


ついに格闘家たちが動き出そうとしている!
ちょっと他力本願だけどネ。
まぁ、若い克巳は帯刀武蔵に挑むのが嫌になっても仕方ない。
あるいは右腕を失う戦いをして死の危険というのを理解したのかも。
片腕という個性が実戦で発揮される姿を見てみたいが、それは武蔵以外にやってもらおう。
ところで今更気付いたけど「刃牙道」になってから「克巳」が「克己」になっている。
何か髪型が違うのは実は別人だったり?

慎重派な克巳の一方で刃牙はやる気を出している。
……やる気だけは。
まぁ、やる気さえ危ういよりはマシか。
そして、臨戦態勢に入っている。
……気持ちだけは。

武蔵と相対するのに選んだ刃牙の選択肢は鍛錬しないこと!
……この人はようわからんな。
武蔵は常在戦場の覚悟でいるだろうけど、普段は鍛錬をしている。
なので刃牙も特訓をしても問題ないかと……
というか特訓もせずに強者に勝つから刃牙の好感度は上がらない。 久し振りに必死に全力で勝ちに行く刃牙も見てみたいのだが……
刃牙道の刃牙は(余計なことをしていないというのもあるが)けっこう好感度が高いだけに見直すようなエピソードには期待したい。

武蔵には鍛錬をしないのがフェアは、普段武蔵が鍛錬をしていない場合のみに当てはまることだ。
もっとも、今の武蔵は逃亡生活中だから鍛錬どころではないかもしれないが。
鍛錬どころか食事すら危うい。
武蔵の時代は肉食は一般的ではなかった。
みっちゃんもそれを把握しているのか、武蔵に肉を出している描写はなかった。
だが、現代には肉が溢れている。未知の食料ばかりだ。

逆に考えればそれが刃牙にとっての突破口かも。
ピクルは餓えているのがベストコンディション!
それは同じく過去の人間の武蔵も一緒!
というわけで、餓えきった時を狙って刃牙が襲いかかる。
鍛錬をするのはフェアではないが、弱り切ったところを襲うのはありなのだ。
それで餓えで見境のなくなった武蔵に一刀両断されたら、まぁ、諦めよう……