刃牙道感想 第183話「立ち合いの継続(つづ)き」



武蔵が刃牙を蹴った!
何で蹴るん。
不安定になるやん。
そんなことを言っていた武蔵が刃牙を蹴ったのだ。
つまりは本気ではないということか?
とにかく刃牙が蹴られた! ざまぁ!


以前まえは」「「蹴り技」の愚を口にしていた」

見事に一本取られた刃牙だが反論をする。
武蔵の発言で特に印象深いのが蹴りの否定である。 蹴って当たり前の現代格闘技の観点からすれば、武蔵のこの考えは一線を画す。
昨今は鬼の血によるゴリ押しが目立つ刃牙だが、これで現代格闘技全般に長ける男。
蹴りの否定は見過ごせない台詞だっただろうし、だからこそ、こうして覚えているのだろう。

「ははは……」「俺も学んだ」
「さすがに少年ぼんらのようにはな」「臍から上は蹴飛ばさんが」
けん敵あいてにはなかなかの効果だ」


蹴りを否定しつつも何度も蹴られているのが武蔵である。
蹴りの名手、烈にはもちろん本部にだって蹴られている。 本部にだって! あの本部に! しかも、ヘソの上を!
あの人、ドロップキックをやったり妙にアグレッシブだったな。

「「強き人」に一度煮え湯を飲まされとる」
金的つりがねならば「剣」よりもいい」


さらに勇次郎に蹴られた経験が武蔵の蹴りへの評価を変えたのだった。
やっぱり、金的はデカかったかー……
あの金的を食らったのは実質的には敗北とも言えた。
なので、その経験から重心が上に上がり不安定になる中段から上段への蹴りはしないが、下段への蹴りは使ってもいいと思ったようだ。
実際に関ヶ原の回想では倒れた兵への追撃に踏み付けを行っていた。
それを踏まえて素手対素手なら十分に使えるものだと認識を改めたのかも。

武蔵は刃牙が勇次郎に勝ったことに触れる。
刃牙はそれを否定する。
刃牙としても親子喧嘩は負けという認識のようだ。
いや、あれで勝ったと言われても困るのだが……
武蔵も実際にあの戦いを見れば刃牙の負けだと捉えそうだし。
今の刃牙は勇次郎へのリスペクトとラブで溢れている。
偉大なる父に勝ったというのならそれこそ自分が認められる勝利でなければ勝利と思えないのだろう。
トレーニングをサボる発言で笑いを誘った刃牙だが、こうした部分には勇次郎への敬愛が感じられる。

対して勝ちは勝ちと言う武蔵であった。
だが、刃牙は認めようとはしないのか無言だ。
刃牙はピクルに文化としての戦いを教えようとしたり、その果てに殴り合いを挑んで負けたりと、単純な勝敗以上に優先しているものがある。
相手が素手でも遠慮なく刀を持ち出して勝とうとする武蔵とは価値観が大きく異なる。 こう書くと刃牙って主人公らしい気がしてくる。

武蔵は咳き込む。
この咳を見てみっちゃんは冷や汗を流す。
クローン体は寿命が短いとかそういうものだろうか。
だとしたら、烈がクローン体で復活という展開には期待できないか……

改めて構えて両雄は向かい合う。
この構図を本部は勇次郎との立ち合いの世代を跨いだ続きだと見る。 父の続きを息子が執り行う。
普通なら刃牙は武蔵にやられた勇次郎の仇を取るという立場なのだが、生憎にも勇次郎は強すぎるのでそうとはならなかった。
なので、父の続きというなかなかない形での試合となるのだった。

そして、今の本部は車椅子の身なので守護ることができない。
決着を付けるより他ない。
ところで何でこの人、あの時、守護ったんでしょうね。
無刀にビビりすぎじゃないっすか?

この試合はあの時の続き。
それを察したのか、武蔵は勇次郎との戦いで見せた脱力からのダッシュを繰り出す。 0.00……の超高速ダッシュである。
無刀の時の速度は刀を持っている時を凌駕する。
勇次郎でさえ刀を前には攻めの枕を抑えることができたが、無刀相手には回避しかできなかった。
タフネス化け物のピクルに金重を持ち出したことから、攻撃力においては刀に劣るが速度では無刀なのだ。

「消え!!?」

だが、武蔵の眼前から刃牙の姿が消えていた。
脱力ダッシュに対してゴキブリダッシュからのパンチ3連発で迎撃だ!
スピードならこっちも負けねえと見事な返しである。
殴った箇所は額・ボディ・金的である。
そこでも抜かりねえな。こいつは。

武蔵の額は切れダウンする。
エア刀で不意を突かれて一本取られた刃牙だったが、今度はゴキブリダッシュによって一本取り返したのだった。
元々は対勇次郎を想定した技なので武蔵に通用するのも道理か。
久し振りのゴキブリダッシュの炸裂にちょっと興奮しちゃったよ……
次回へ続く!