バキ道感想 第58話「体重差の盲点」



巨鯨に目潰しが炸裂した! インタビューはどうした!?
喧嘩稼業ではおなじみの目潰しだが、バキシリーズにおいても頻用されている。
最近の例だと武蔵が花山の目を斬っている。
視界を潰すという行動はとにかく強いのだ。
昂昇も無理に紐切りせずに目潰しすればいいのでは?
その目潰しがどうなる! どうなる、インタビュー!


情けをかけられて本気になった渋川先生が巨鯨に目潰しを決める。
巨鯨の右目から血液が流れ落ちる。
これは完全に潰れたか? インタビューは……ほら、義眼じゃよ。

巨鯨は最初こそ渋川先生を侮っていたものの、合気を味わってからは一定の敬意を以て戦っていた。
つまり、巨漢ではあるが悪い奴ではない。
それだけに目潰しというのはちょっと惨たらしい。悲惨だ。
巨漢はやられることが通例ながら後々に残るほどの大ダメージを受けることは少ない。 指を噛み千切られたガーレン、耳を噛み千切られたピクルくらいだろうか。
どちらもジャックがやっています。
そんなジャックが本部にコテンパンのフライパンにされたのは巨漢の呪いだった……?

イスタスに目潰しを決めた克巳は刃牙に怒られていたし、地下闘技場では何でもありとはいえ目潰しは決して頻用していい技術ではない。
あくまで奥の手なのだ。
その奥の手を解禁したことが渋川先生の本気と憤怒が窺える。
なお、金的は頻用してもわりと大丈夫。
「しかし反則ではないぞッッ」

だが、ここから躊躇しないのが地下闘技場である。
地下闘技場では目潰しは反則ではないのだ!
実況だって知っている。故に渋川先生を非難することはない。
大相撲力士がアウェイで戦っていると実感させる一コマだ。 巨鯨はその事実に気付くのが遅かったと言わざるをえない。

さらに渋川先生の猛攻は続く。
飛び上がって延髄を両足で踏みつけた!
76歳とは思えない実にアクロバチックなピンポイント爆撃である。
渋川流において踏み付けは多用されているが、それは体格の不利を補うためだろう。
だが、体格の不利を技で補い切れない相手がいる。今回の巨鯨だ。
このジャンピング踏み付けは巨鯨のような規格外の体格の持ち主にぶつけるための新技か。
「反則じゃない」

闘技場ここでも古代相撲でもナ」

目潰しに踏み付け。
相撲では反則だが地下闘技場ではアリアリである。
その事実は地下闘技場戦士がよく知っている。
なお、地下闘技場緒戦で目潰しを決めた克巳はノーコメントである。 人間的に大きく成長した克巳にとって、アレはやり過ぎだとあまり思い出したくない過去なのかも……

渋川先生のジャンピング踏み付けを受けても巨鯨は姿勢を屈ませるだけで崩れていない。
相撲で鍛え上げた足腰の強さと圧倒的なフィジカルは健在である。
だが、目潰しを受けた上に延髄にピンポイントで攻撃を受けている。
その結果、目の前にはドロドロの光景が広がる。 片目で視界が塞がれている上にドロドロになればキツい。完全に巨鯨の動きが止まっている。

だが、この渋川剛気、容赦せんせんせんせんせんせんせん。
巨鯨の鼻穴に指をブッ刺した! これは痛い!
鍛えようのない絶対急所への攻めである。
これを受ければ夜叉猿だってオリバだって泣く。巨鯨も泣く。

だが、渋川先生のオリジナリティはここからである。
鼻の中に入れた指を曲げる! これは痛い。さらに痛い。
そして、投げる!
それは鼻孔を廻しに見立てた出し投げであった。
……何か無理矢理相撲の技に当てはめてないか?

痛い。とにかく痛い。
ここまで痛い技は久し振りだ。
バキって痛そうな技が多いことを久し振りに思い出させる荒技である。
だが、巨鯨は耐えた。痛みに涙しながらも倒れない。 これはもはや力士としての本能か。
心身共に砕かれても力士としては屈しないのであった。

だが、合気は人の反射を利用する術である。 渋川先生は腕を大きく掲げる。
すると今度は上方向に鼻孔が刺激される。
この激痛から逃れるために巨鯨は反射的に飛んだ。
それは巨鯨が支えとした地面を捨てた瞬間であった。

「宙に浮くものにアンタ……」
重量おもさなんて無ぇんだよ!」


この瞬間を渋川先生は勝機と掴み取り零さない。
まずは浮いた巨鯨の足を手に取り一気に回す。
力と重さで圧倒的に劣るはずの渋川先生は巨鯨をいとも容易く回転させた。
これは最大トーナメントで見せた独歩を大回転させた技と同じ理屈だろう。
如何に圧倒的な体格差があろうとも空中なら体重は関係ないのだ!
あ、いや、慣性の法則とかありましてですね……
空中にある物体は摩擦力がゼロになるからその分は必要な力が減るけど、抜本的な解決にはならなくてですね……

ともあれ、合気は魔術。魔術なら空中にいる人間くらい回せる。
これによって巨鯨を1回転させる。
そして、両手で顔面を地面に叩き付けた!
技の構造そのものは独歩に放った投げと酷似しているが、初手は足払いではなく巨鯨の反射を利用している。
そのフィニッシュもさらに片手ではなく両手とよりダイナミックになった。
独歩に放った投げを発展進化させた技と言えよう。

「古武道渋川流柔術渋川剛気」「先陣を切る」

この技によってついに巨鯨を討ち倒した渋川先生であった。
インタビューの連発によって意外なほどに長引いたこの一戦だったが、渋川先生が本気を出したら決着は早かった。
相撲ルールでは巨鯨に合気は通用しなかったが、何でもありの古代相撲ルールならその持ち味を存分に活かしたと言えよう。
逆に巨鯨視点では相撲ルールでは持ち味を活かせたが、古代相撲ルールでは特にメンタル面の弱さが浮き出て圧倒されてしまったか。
二人は同じルールで戦っていたようでいて実は違ったのかもしれない。
圧倒的な体格差を以てして巨鯨が負けた。
さらに片目を潰されてしまった。
大相撲サイドとしては戦略を大きく変えなければならない事態が起きた。
とりあえず、巨鯨は何でもありの覚悟が欠けていたし、それが勝敗に繋がってしまった。
巨漢としては異例の大活躍だったけど、崩れれば脆いのは実に巨漢らしかった。

次は独歩VS猛剣となる。
独歩はとかく人体の破壊を得意とする危険度MAXの男だ。
ドリアンとJr.はボキボキになるまで破壊されている。
対して猛剣は技巧派らしいが独歩の破壊術にどこまで通じるのか。
とはいえ、猛剣は桑田巧美の腕を折り全治7ヶ月の重傷を負わせている。
人体破壊なら負けていないか?

次はベテラン同士の技巧勝負になるのか、それとも何でもありの破壊勝負になるのか。
お互いにどちらでも戦える技量を見せているがどちらで戦うことやら。
インタビューなしで2週間くらい力士に見せ場を作ってから、今回みたいに大逆転とすればテンポ良くて助かるんですけどね。
インタビューを如何に封じるかが今後の要となるであろう。 次回へ続く。