刃牙道感想 第59話「気絶」



烈が武蔵の人体素振りを受けて致命傷を負った。
立ったまま気絶しているのか、あるいはまだイケるのか。
後者の場合、刃牙の何か妙にタフな部分を見習ったのかも。
そこはあまり見習わない方が……


さて、武蔵が烈の眼前まで近付く。
そこまでに烈の反応、一切なし。
つまり、烈は気絶していた!
気絶しているからか、目元もちょっとアヘっている。キモい。
あの烈がここまであっさりと気絶するとは……
いや、ボクシングに手こずるほどだから妥当かもしれない。

普通なら勝負ありである。
だが、これは試合ではなく死合いだ。
気絶しても生きている限りは勝負は終わらない。
武蔵ならこんな状態の相手にトドメを刺すことも躊躇わないだろう。
烈、ピンチ!
ピクルと戦ってからの烈はピンチ続きだ。

だが、烈の闘争本能が気絶したままで身体を動かす。
武蔵に崩拳だ! ただし、メッチャスロー!
目元はアヘっているままだ。
うむ、これはあかん。刃牙がやっていたらさらにヘイトを集めていたことだろう。

しかし、中国武術には攻めの消力がある。 遅くとも油断ならぬ破壊力がある。
少なくとも大擂台賽当時の刃牙なら一撃で倒すことはできただろう。
烈が消力を体得したというのならば、このスローな打撃もあるいは。

と期待したのだが、武蔵にあっさりと手首を掴まれて投げられる。
小手返しだ。
この技に馴染み深い渋川先生と本部は反応する。
柔術とは剣術から発展したものであり、それはつまり合戦の技術を元にする。
2人の源流が武蔵の合戦での技術にあってもおかしくはない。
なので、ここで本部に解説してもらいたいところである。
本部の知識量なら武蔵の技術に敵わないまでも、それが何なのかの解析はできるだろう。
なのに、何も解説ってくれない。
クソも役に立たないおっさんだな!

地面に叩き付けられ烈は目を覚ます。
即座に蹴りを放ち反撃を試みるのだがかわされてしまう。
烈の攻撃が武蔵に見切られ始めているのだろうか。
全然当たらなくなっている。

それでも烈はまだ戦う気だ。
構えを取る。
その構えはグルグルパンチを行った時とそっくりの構えだ! ああ……不吉な……

だが、今の烈の心は簡単には折れぬ。
まずは左の拳を打ち込むが初動を押さえられる。
次に右の拳を打ち込むがこれも初動を押さえられる。
刃牙のジャブを押さえた0.5秒の先読みの本領発揮だ。
その握力で手を握られてまたまた烈ピンチだ。
武蔵を止めようと義足の右膝蹴りを放つが、これも義足部を握られて初動を押さえられる。
武蔵の持ち味は烈のような器用な技術で戦うより、この圧倒的な先読み能力を活かしたシンプルな駆け引きで活かされるのだろう。

武蔵は拳を握ったまま肘を極めて烈を投げる。
投げるだけなら手首を握った方が投げやすいだろうに、拳を握ったまま投げる。
これは相手をより速く投げるための戦国の技術だろうか。

「肘をイカれたッッ」
投げられた烈はくるりと回って着地する。
投げられたことによるダメージはない。
だが、肘を極められたことで使い物にならなくなったようだ。
刃牙はこの攻防の結果を見抜いている。
郭海皇も同じなのか、もはや帰ってくることを祈るのみだ。
郭海皇は前線に出れば強いが、銃後としてはあまり役に立たないのだった。
役立たずが2人もいた中国連合軍から見るにあの頃から参謀としての才能はなかった。
烈が肘があと一撃で完全に破壊されるか、今でももう使えるものではないかと危惧している。
が、それにさらに追い打ちをかけるように武蔵は武器の山から武器を手に取っている。 素手で烈の肉体にも精神にも大ダメージを与え、勝っていることを証明できた。
となればあとはトドメを刺すだけということか。

(玩具も玩具……)
(到底武器と呼べる代物ではない……………)

武蔵は青竜刀を手に取り素振りで破壊する。
烈の国の武器を玩具と罵り破壊するという明らかに挑発的な行為だ。 スゴクシツレイに当たるがこれも武蔵の策略か。
次に手にした青竜刀は魂が入っていないと酷評しながらも包丁代わりにはなると手にする。

「参る」
青竜刀を軽く振り回し烈の方へと振り返る。
武蔵の膂力を以てしても実用に足る國虎を使わず、烈の国の武器であり包丁程度の青竜刀を武器とする……
烈のメンタルがボロボロになっても仕方がない。
実力でやり返そうにも先ほどその実力に決定的な差があることを教えられた。
まさに絶望である。

烈は地力では武蔵に負けているかもしれない。
だが、ライバルの数は負けていない。
それに最近、新たなライバルが増えた。
本部以蔵、解説神と呼ばれる男である。

そんなかつてのライバルたちの激闘の記憶が烈に自分の構えではなくライバルの構えを取らせた。
烈は最近、新たなライバルが増えた。
本部以蔵、解説神と呼ばれる男である。
だから、烈が取った構えはもちろん!
範馬刃牙の構えでした。

お前の構えかよ!?

「お…ッ 俺の構え!!?」
この烈の暴挙には刃牙もびっくりである。
そりゃ刃牙の構えを取ればね。
グルグルパンチに続く新たな捨てゲーか?
そもそも刃牙は武蔵に負けているしあまりいい未来が浮かばないのですが……

しかし、刃牙と言えば理不尽の象徴である。
思えば刃牙の理不尽が明確な形を為したのは烈に勝ってからだ。
圧倒的に押していたはずの烈が、範馬の血の覚醒によって為す術もなく敗北している。
そんな理不尽を烈が模倣することができれば!
……まぁ、あれは血の問題なので構え程度でどうにかなるようなものではないか。

追い詰められた烈は活路を中国武術ではなく刃牙に求めた。
これは中国武術に頼り切れなくなった弱さか、それとも中国武術以外にも目を向けることができるようになった強さか、どちらなのかはわからない。
とりあえず、刃牙の構えを取ったことを中国武術至上主義の郭海皇に怒られないようにしましょう。
次回へ続く。


武蔵は武器持ちでも強いが素手でも強い。
かつてそのポジションだったのが烈だが、今ではどちらの上を行かれてしまった。
挙げ句、自国の武器を破壊されると心身共に大ピンチだ。
肉体はもちろん、心も砕くのが武蔵らしさか。

烈が活路を見出そうとしているのは刃牙の構えだった。
でも、刃牙の強さって範馬刃牙であることが最大の要因だ。
真似してもどうしようもないような……
中国武術の構えではないことから、ボクシングを経た新たな烈を見せてくれるかも。
ボクシング編の残滓でも烈には拾っていただきたい心持ちである。
じゃないとボクシング編が無意味なものとなってしまう。
なお、ボルト戦の要素を拾われると困惑する。

さて、今回も本部には冷や汗がない。
異常なほどに落ち着き払っている。
あの観客席で冷や汗を流しまくっていた本部が……
それはいいのだがちっとも解説しない。
解説できることが盛り沢山だと思うのだが……

それにしてもちっとも出さない消力だ。
リハーサル通りに青竜刀を持ちだしたから、絶好の消力チャンスであるとはいえ……
でも、本部にダメ出しされた技術だから先が不安だ。
消力が破られた時に本部がドヤ顔で解説を始めたら、格闘家たちのターゲットは本部になっちゃうかも。
寂海王VS本部! ストライダムVS本部! 加藤VS本部!
ドリームマッチ開催!
……こいつらの戦いはちょっと真面目に見てみたいカモ。



刃牙道(5): 少年チャンピオン・コミックス