シンフォギアGX後書き



シンフォギアGX完ッ!
そんなわけで後書きめいたものでも。



まず、GXはいつも通りのシンフォギアだった。
熱い展開にスピード感溢れ高密度に圧縮されたストーリー、理性のたがが外れた演出とシンフォギアらしさ及び金子彰史らしさは健在だった。
その上で変わったのはボケの方向性だろうか。
防人の乳イジメ、武士ノイズスケッチ、キクコーマン、投げ銭トンファーとボケが一捻りあるテクニカルなものになっている。 今までのシリーズの力任せの豪快なボケもいいものだが、GXの技巧派なボケもいいものである。
最終的にはデスデスルンバという力と技が混ざったボケをやった。
どこかでボケないと気が済まない金子彰史伝統のスタイル。

シンフォギアの方向性は第3期を迎えても維持しており、日和った部分が見られないのはさすがと言わざるをえない。
今後の展開にも同様のものが期待できる。
シンフォギアの展開が大きくなるにつれ商業的な側面も強くなり、やや窮屈になりかねないのが懸念要素ではあるが、金子彰史は社長を辞任し創作に専念する態勢を取った。
それもシンフォギアのためだろう。(あとWAシリーズも)
そんな金子彰史なのだから今後にさらなる期待したい。

さて、GXのテーマについて触れたい。
第2期では『英雄(の苦悩と再誕)』と、同じく2作目のWA2の『英雄』を踏襲する形となっていた。
それはGXでも同様でWA3の『想い出』が大きなテーマとなっているだろう。
響とキャロルは父との想い出がエピソードの主軸となり、他も翼は八紘、クリスは両親、F.I.S.装者は過去の罪と大なり小なりの想い出が絡んでいる。

同時にもうひとつのテーマとして『修復』があるのではなかろうか。
装者たちはいずれも精神的に強くなりイグナイトモジュールの負荷に耐えられるほどに成長した。
だが、その成長は劇的な変化というよりも、自分の中に元からあったがどこからか失ったり間違えたものを取り戻すことがきっかけとなっている。
それは装者たちのみならずキャロルもである。
「これは、コワレタモノを修復する物語」というコピーはしっかりと回収されていた。

これは何事も答えとは劇的なものではなく自分の中にあるという金子彰史からのメッセージなのだろうか。
自身の実体験がテーマ性に組み込まれるのが金子彰史作品の伝統である。
シンフォギアの制作の過程でこうした『修復』、転じて『気付くこと』を金子彰史が感じ、GXのストーリーに組み込まれたのではなかろうか。
例えば「やっぱり社長やるより創作に専念したい」とか。
また、シリーズ最大最強の敵がGXの売り文句であった。
事実、錬金術士サイドはいずれも強かった。
一方で圧倒的な強さを持つ一方で強さだけでは勝てないことも強調されていた。
洸との問題は力だけではどうにもできず、キャロルの抱えた闇を晴らすのも同じであった。
これはシンフォギアシリーズ全体を通しても同じであるが、敵の強さが強調されたGXではより表に出ている。
シンフォギアの根底に流れる相互理解についても改めて触れられているし、そこにもGXのテーマ性が隠されていそうだ。

圧倒的な強さを誇る一方でキャロルは弱さや脆さも強調されている。
弱さも強さと認めたのがマリアならば、強さとは弱さに繋がりかねないというメッセージ性があるのがキャロルであった。
ここは気付けた者と気付けなかった者の対比であろうか。
敵も味方も一筋縄にいかないのがシンフォギアらしさであり金子彰史らしさであった。

さて、楽曲に関して。
GXの楽曲の数は凄まじかった。
はじまりの歌と虹色のフリューゲルを含めれば30曲を越える。
一方でカップリング曲に回されたり、1度しか出番のない曲も多かった。
とはいえ、ここまでの質と量を両立した以上はそこに関してあれこれと言うのも野暮か。
怒濤の勢いで使っていけるほどの楽曲を用意したElements Gardenの絶唱っぷりをただただ賞賛したい。
カップリング曲もキャラクターの心情の深くまで掘り下げていたりと、もうひとつの本編として聞けるしGXの楽曲は見事の一言に尽きる。
おきてがみとか!

カップリング曲に関しては本編に使いたいけれどその余裕がないという状況下で、折衷案として「Tomorrow」のoff vocalを本編のBGMとして使ったりと工夫も見られる。
「殲琴・ダウルダブラ」もそうだがoff vocalをBGMとして使うのは新鮮さがあったので、今後も使われていくことになりそうだ。
アレンジ版をBGMとして使うのは今までもあったが、off vocalだけでも十分に映えることがわかったのはGXにおいて大きな収穫だろうか。

今後のGXの展開はしないフォギアにライブ……もあるが、大きな目玉としてインタビューがある。
金子彰史作品においてインタビューは欠かせない要素なのだ。
とりあえず、(GXのは発表されていないけど)恒例のキャラクター&VOICE BOOKに期待だ。
あと設定資料系。こちらはより突っ込んだインタビューなので期待したい。
それとまたラクウェル金子をお願いします。
スタッフ本のきりしら金子はあまりにもご褒美すぎたので期待してしまう……