ワイルドアームズアルターコード:F紹介






・概要
2003年11月27日に発売されたWA1のフェイク(notリメイク)がWA:Fである。
公式サイト でもフェイクであることが強調されており、WA:Fは決してリメイクではない。
また、「ワイルドアームズアナザーコード:F」(後のWA4)が次回作の制作も並行して行われていることがWA:Fの発表と同時に告知された。
リメイクとは通常保守的な販売戦略にも捉えられかねない。
だが、リメイクではなくフェイク、WA4との並行開発、そして、WA:Fそのものの作り方など、
WA:Fに込めたスタッフの想いは間違いなく攻めの姿勢であったと言えよう。

なお、WA:FはWA3の発売から約1年半後とこれまでほぼ3年周期で発売していたWAシリーズとしては異例のハイペースである。
その後、WAシリーズは1年半ごとに新作を出すとハイペースを維持していく。
これはSCE製RPGを代表するアークシリーズやポポロシリーズがPS2で今ひとつ結果を出せなかったため、
WAシリーズに注力するようシフトしたからだろうか。
その結果、ある意味好き勝手やってきたWAシリーズにある程度のメスが入ることになるのだが、
それでも金子彰史はたしかなこだわりを貫いてきている。


・WA3からの変化
WA:FはPS2におけるWAシリーズの2作目となる。
WA3は初のPS2ということで手探りで作った部分が多分にあったと推測される。
その点、WA:FはPS2の性能を把握できたのだろうか、WA3よりもPS2を使いこなしていると言える。
それは戦闘中のエフェクトなどに現れており、グラフィックはWA3よりも確実に向上している。



大きな変化としてはトゥーンシェーディングを廃止、その上でアニメ的な質感を目指したことだろうか。
WA:Fは過渡期なこともありその仕上がりは上等とは言えなかったが(特にセシリア)、WA:Fを経たWA4は十分なレベルに達している。
一方でマップ造形や水の質感は凝っており十分なクオリティに達していると言える。
そこは自称地面マニアのスタッフ、伊藤志彦の尽力によるものが大きい(余談ながらWA1とWA2のキャラデザも担当している)。

また、WA:FではWAシリーズで初めてボイスが付いた。
とはいえ、WA:Fの段階ではイベントシーンにボイスはなく、フィールドアクションとバトルのみにボイスが組み込まれている。
そのため、WAシリーズと金子節の持ち味である読むことで面白さが出てくるテキストは健在である。
一方、WA4以降はイベントシーンにもボイスが組み込まれ、そのテキスト表現も変化が生じることとなる。


・WA1の「フェイク」として
WA:Fは前述した通り、リメイクではなくあくまでもフェイクである。
フェイクのため、WA1をなぞることを意識せず、むしろあえてWA1とは異なるように作られている。



そのために主要キャラ以外のほぼ全てのデザインが変更されており、町やダンジョンの雰囲気も一変している。
スクショはWA1とWA:Fのアーデルハイドの入り口付近なのだが、まったく違うものになっていることがわかる。
BGMも原曲の音質をより豪華にすると言ったものではなく、
原曲がアップテンポな曲ならWA:Fではテンポを抑え気味にするといったように異なる味付けにしている。
当然、ゲームバランスも変化しておりWA1との共通点を探す方が難しい。
その点でWA1とはまったくの別物となっていると言える。




一方でエルゥ界の北西にはABYSSが存在するという設定をカバーしたり、フィールド上に飛び交う渡り鳥を再現するなど、
細やかなWA1のネタが盛り込まれている。
追加イベントではWA1では有耶無耶にされていたサーフ村の人々と和解するイベントや
ベルセルクとの再戦を用意することでナイトクォーターズ最強の設定を回収している。
WA:Fはフェイクであると同時にWA1を掘り下げている作品でもあるのだ。

なお、WA1にあった進行上訪れるだけでこれといったイベントのないダンジョン、トライピラーやワンダリングアイルはばっさりと削除されている。
リメイクではなくフェイクのため、WA1を完全再現する必要はない。
そのため、要所要所でスリムアップも図られている。


・WAシリーズの集大成
WA:Fはこれまで続いてきたWAシリーズの集大成とも言えるシステムとなっている。
戦闘面でのWA3からの大きな変化としてはFPの蓄積によるオリジナルの仕様を廃止、WA1のようなMP制に回帰している。
一方でWA3のように装備が存在せずパーソナルスキルで代替する形となっており、フォースアビリティも基本的に1種類となっている。
また、WA2ののマリアベルのレッドパワーがエマのエミュレーターとして復活していると、シリーズのほぼ全ての要素が組み込まれていると言える。

MPの復活によってMPを温存する必要が生まれる。
だが、WA:Fではレベルアップ時にHPとMPが全回復するという要素を組み込むことで、
それを狙ったプレイをすればあまり節約する必要がなくなっている。
むしろ、ザックの早撃ちは使用回数によってMP消費量が下がるため、如何にオリジナルを使っていくかも考える必要が生まれている。
結果、WA2とWA3に多く存在した仕方なく通常攻撃をする場面が減っている。

とはいえ、バランス面も良くも悪くも集大成であり、どうにもやれることが固定されがちで戦術の幅が狭いのも変わっていない。
特定の状況に力を発揮するオリジナルというのも少なく、プレイヤーや進み方によってプレイスタイルが変わるということもあまりない。
戦闘のテンポもあまり良くなく冗長な印象は否めない。

フィールドアクションはWA3をそのまま引き継いでおりWA:Fならではの要素は特にない。
WA3で完成に達しているともいえるか。
ただエンカウントキャンセルだけは「キャンセルするほど不意打ちの確率が上がる」という仕様によって相当に不便になった。
WA3で効率よくキャンセルしていけばほとんど戦闘せずにボス戦へ行けたことへの対抗策なのかもしれないが、
結果としては普通にプレイしてもこの仕様に頭を悩ませることとなっており噛み合っているものとは言い難い。


・金子彰史作品として
WA1は後のシリーズと比べればではあるが金子彰史の味が薄いと言わざるを得なかった。
では、WA:Fはどうなるのか。
他のシリーズに劣らぬ金子彰史を出すことでWA1における最大の不足点を十分に補っている。
これこそがWA:Fにおける最大のカバーと言えよう。




全編のテキストを書き下ろしたこともあり、金子節が大幅強化されている。
また、WA3のような過剰に力んだものではなくいい意味で癖のない円熟したものとなっている。
さすがにWA3ははしゃぎすぎたようだ。



無論、テキストだけでなくデザインや演出面でもより金子彰史やスタッフの味が出ており、そちらでも見逃せない。
恒例のザダスはもちろん、何故かブリキロボ風にアレンジされたモンスター(ABYSSにはガンダムカラーverあり)と見所が多い。
なお、ザダスはWA:Fが最後の出番となっている。


・シナリオに関して
基本的にはWA1であり良質な仕上がりとなっている。
加えて金子節の充実とイベントの追加などでさらに強化されていると言えよう。
特にサーフ村の和解イベントはWAシリーズ屈指の感動イベントではないだろうか。
真エンディングも感慨深いものがある。
金子彰史の実力が遺憾なく発揮されている。


・ゲームとして
諸々の要素が上手く噛み合っていない印象がある。
まとまってはいるのだが、やはりプレイヤー側の選択肢が少なく冗長な印象はぬぐえない。
Lv40程度でHPが僅か1500程度だし与えられるダメージも少ないとデフレの傾向を歩んでいるため、爽快感もあまりない。
進めていくと万越えは多発するとはいえ、WA1のブーストアタックバニシングレイの9999のような爽快感は期待できない。
かといって戦闘のテンポもさほど良くなく、エンカウントキャンセルも前述の仕様から使いにくい。
良くも悪くもWAシリーズらしいバランスである。
そんなWA:Fのキャラ事情でも。

-ロディ
意図的に強くさせられたようで主人公として見事復権。
安定した高火力を誇っているメインアタッカーなのだが、特筆すべきはガトリングレイドか。
全弾発射と引き替えに高火力と一見使いにくいのだが、ロックオンアクティブと組み合わせることで事情が変わってくる。
ロックオンアクティブは必ずカウンターとオートリロードが発生するため、
ガトリングレイドで消費した弾数を即座に補給でき弱点を補うことができる。
加えてオートリロードでFP回復、カウンターでもFP回復、スキルリジェネレイションを付けておけばさらにFP回復……
とFPを消費するフォースアビリティを使ったはずなのに、むしろ怒濤の勢いでFPが回復することとなる。
そのため、超火力のガトリングレイドを毎ターン延々と撃ち続けるという凄まじいことになる。
なお、ロックオンデストロイは忘れろ。クリスが使ったからいいだろ!

-ザック
ロディが暴れる一方でこれといった強みがなくなり悲しい立ち位置になってしまった。
一応、ストライクバディ(ハンペン)やブレードパルサー(ハンペン)は雑魚戦では役立つ。
レイザーシルエット(ハンペン)も下準備が面倒だが相当な火力を誇りグロウアップル狩りに役立つ。
しかし、他の早撃ちが軒並み鳴かず飛ばずでボス戦で活躍させにくい。
そして、強い早撃ちのほぼ全てがハンペン頼りというのが悲しい。

これだけならまだ活躍の場面が限定される程度で済んだが、追い打ちの如く熟練度システムとの噛み合わせが悪い。
早撃ちの消費MPは初期Lvでは凄まじく高いが、早撃ちをしようすることで熟練度が高くなっていき消費MPが下がる。
熟練度が最大になればそれなりの燃費で戦えるため、それなりに便利なキャラになるのだが、
自分のLvと敵のLvの差によって溜まる熟練度が変化する。
しかし、普通に進める上ではLv差がさほど開かず熟練度も溜まらないため、半端な性能のわりに息切れが速い可哀想なキャラになる。
最高Lvに上げるには熟練度を450程度、Lv差がない敵で稼ぐには450回も使わなければならなくなり苦行である。

幸いにして稼ぎどころは用意されているため、計画的に育てれば何とかなる。
だが、2周目のEXニューゲームを行うとLv据え置きで熟練度がリセットされてしまう。
よってEXニューゲームでは熟練度を非常に稼ぎにくくザックはポンコツになってしまう。
悲しい。

-セシリア
WA1同様に回復や補助に大活躍する。
リタリエイションやパーマネンスを初めとした有用な補助が揃っており頼れる。
雑魚戦ではマテリアルによる一掃などで活躍するため、WA1と変わらず仕事が多い。

-ジェーン
WA:Fでパーティキャラに抜擢された。
ラギュ様相手に先手を取れる圧倒的な反応とミスティックによる全体回復の組み合わせが非常に強力で回復役として大活躍する。
オリジナルも使えるもののが揃っており出番は多い。
クリティカルで即死、ファイネストアーツは超火力と尖った性能も備わっている。

-エマ
補助のエキスパート。
取得に手間がかかるものの全能力上昇のグレートブースターと魔力ダメージ低下のアンチマジックゾーンが高性能。
というよりもこの2つしか使うものがないというか、この2つがあれば十分働けるというか。
隠しボス戦には欠かせない。

-ゼット
パラメーターは全体的に高く、クリティカル率などは他のキャラよりも高く設定されている。
だが、オリジナル全てが使いにくい。
ラギュ様一発撃破も狙えるがそこまでの道のりが長すぎる。
普通にプレイする上ではザックよりも出番がないのに、不遇という印象はあまりない。
何故だ?


・シンフォギアとの関連性
WA:Fとの関連性は即ちWA1との関連性にも等しいため、そちらを参照されたし。
WA1にあってWA:Fにないネタとしてはシェリフワッパーか。
逆にWA:FにあってWA1にないネタはクリスのロックオンアクティブとロックオンデストロイである。


・シンフォギアファンへのオススメ度
今見るとキャラのモデリングは古くさく感じてしまう。
WA3と違ってタッチで誤魔化せていない。
それを除けば何だかんだでよくまとまっており、十分に勧められる内容となっている。
金子節を求めるならWA1よりもこちら。

アーカイブ配信はされていないため、PS2実機やエミュレーターでプレイする必要がある。
なお、WA:Fのディスクは二層式DVDのため、PS2では型番によって読み込み不良が起こる。
SCPH-30000系以前のPS2でのプレイに注意。


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