刃牙道 第28話 勝負観
刃牙は武蔵に何を問う。
是非、範馬刃牙らしさを期待したいところだ。
勝ったのは俺だと言っておくか?
武蔵を怒らせられるかもしれんぞ?
そんなわけで刃牙の問いの答えとは!
何のための稽古かというものだった!
お前は何を言っているんだ?
アンタの階段ダッシュの方が何のための稽古か問いたいものだと思うのだが……
うーむ、武蔵だと確信したならもうちょっと気の利いたことを聞きたまえよ。
答えは考えたことがないというものだった。
こんなことを言い出したら刃牙は打倒勇次郎という目標を失ったのにトレーニングを続けている。
目的があれば長続きするのか、目的がないからこそ長続きするのか。
どちらが正しいのかは難しいところだが、生涯を武に捧げた人間ならば目的がなくとも稽古をするようにしなければいけないか。
生きることそのものが稽古なのだ。
「だったら」「俺と勝負したほうが稽古になる」
敗北2週で即リベンジ発言だ!
敗北をあっさりと受け止めたと思っていたら、存外悔しかったようだ。
うーむ、ここまで対戦相手に執着する刃牙も珍しいような。
わりと柳とかゲバルとかピクルの時はあっさりと後回しにしたのに。
ゲバルなんて後回しにしていたら相手がどっか行っちゃったくらいだし。
しかし、何故にここまで戦いたがっているのか。
相当に強者に恵まれなかったようだ。
今の刃牙は餓えているぞ。
餓狼が何をするかは言うまでもない。
……数年間に渡ってトーナメント観戦とかするぞ。
「少年(ぼん)」
「お前は死んでいるではないか」
「一刻…」
「おぬしは」「一刻ほども眠り続けた」
「その間幾度殺せた………?」
そんな刃牙に対し武蔵はこう返すのだった。
殺せたのだからもうこれ以上やる必要はない。
さすが、古代人。現代人とは倫理観が異なる。
あまりにも異なる勝負観に刃牙は自身の発言を引っ込めるしかなかった。
しかし、刃牙さんや。
アンタも殺し合いレベルの戦いを幾度か経験していますよね。
でも、「範馬刃牙」では敗北=Dieのピクルや勇次郎に負けても五体概ね無事に済んでいる。
そのおかげで戦いに対する緊張感が減ってしまったのかもしれない。
武蔵の発言は刃牙のその緩みを突いた発言でもあるか。
そんな刃牙に対して武蔵は竹を振ってみろと言う。
うーむ、何と言うかフレンドリーですな。
物騒なことばかり言っているが、武人としての部分以外は良識人なのだろうか。
何かあれば人を煽っている刃牙には見習って欲しいですな。
差し出された竹をどうするか。
刃牙はハイキックで切断する。
節ごと切られており武蔵からも簡単なことではないと評価された。
さらに最初の蹴りよりも速かったようだ。
最初の蹴りは半信半疑のまま放ったので、あまり本気ではなかったのだろうか。
これは武蔵の蹴り批判に対する答えか。
微妙に反骨心を見せやがって。
「迅い…………………が」
「「武」ではない」
またダメ出しされた!
如何に速かろうと不安定な状況で放たれる以上、評価には値しないということか。
なかなか厳しい武蔵さんであった。
速さしか興味がなかったサムワン海王とか無価値なんだろうな……
武蔵は刀を持って斬り合う時代に生きてきた。
相手を文字通り必殺する技術が求められていたのだろう。
そのため、速くはあれど必殺ではない技術を評価していないのかもしれない。
刃牙の蹴りは速いかもしれないが、一撃で倒すには足りないか。
この言葉に絶句する刃牙であった。
バキ世界においてスポーツマン扱いは最大級の侮蔑である。
ピクルや勇次郎と互角に戦った自分がスポーツマン扱い!
これは絶句してもおかしくない。
まぁ、ここ1年は雑魚としか戦っていなかったみたいだし、鈍っていてもおかしくはない。
17歳から18歳に至るまで濃密すぎる時間を過ごしたからなおさらだ。
さて、刃牙は置いておいて武蔵は外出したいとみっちゃんに言う。
当然、止めてくれと制止するみっちゃんである。
現代の常識をまったく持っていないのだ。不味いことになるのは間違いない。
でも、ピクルはそれなりに上手くやっていた。
案外平気なんじゃないだろうか。まぁ、トラブルを何件も起こすのは間違いないだろうが。
「外出はムリだ」
「アンタは出掛けらんねェよ」
それに対して今度は刃牙が物言いだ。
いきなりアンタと来ましたか。
無礼な若者ですな。
だが、刃牙の持ち味は無礼であるほどに活かされる。
要するにヒールなのだ。
「甘ェよアンタ」
「幾度だって殺せたのに――――」
「止めを怠った!!!」
そ、そう来たかー。
そう来たか、刃牙さんー。
明らかに不覚を取ったのに相手を甘いとダメ出しした。
スゴい上から視点ですね。
うーむ、さすがは範馬刃牙だ。
自分の落ち度を即座に相手の落ち度に変えた。
だが、私はダマされんぞ。
「現存する近代武術 格闘技 格闘スポーツ…………………」
「その全てで最速の技術(わざ)はジャブ!!!」
「俺のは閃光(ひかり)より迅いぜ!!!」
迅いだけでは武ではないと言われた。
それに対する返答がこのジャブだ!
現代格闘技における最速をぶつけたのであった。
でも、「ジャブより速い」打撃がバキ世界には溢れている。
主に勇次郎がやっているであり、その打撃が速いというよりも勇次郎が速いのだが。
だが、個人の圧倒的な力に負けてしまう速さなのだ。
うーむ、生意気な刃牙らしさを見せたかと思ったら、即座にダメな空気を漂わせやがって……
これなら妖術の方がまだいいんじゃないか?
ともあれ、現代格闘技の最速をぶつけられた武蔵であった。
古代の武術はどう対抗するのか。
まともに食らう方が想像しにくい辺り、ジャブに対する信頼度の低さが伺える。
一流でさえ当たることが当然とかつてへっぽこボクサーが言ったが、今では一流には当たらないことが当然になっている。
これで武蔵がジャブに当たったら逆にジャブくらいを食らうのかよとバカにできるな。
次回へ続く。
蹴りだけではなく精神性までダメ出しされた刃牙であった。
せっかくの主人公なのに格好良いところがない。
やはり、こやつはヒールに染まりきるしかないのだろうか。
スポーツマン扱いされちゃってちょっとヤバいぞ。
今のところ、武蔵の武蔵らしい強さを見せていない。
人を叩き付けるのは勇次郎やオリバが既にやっている。
このジャブには武蔵らしい対処を期待したいところだ。
二刀流の逸話とか組み込んで右ジャブで対抗とか。
……いかんな。
さて、情けないところばっかりな刃牙なのだが、こいつはスロースターターだ。
とにかく出だしが遅い。
代わりにやたらとタフなので序盤さえ耐えれば輝く。
理不尽なくらいに輝く。
だが、ここで問題となるのが武蔵との相性だ。
武蔵は刀を持って斬り合っていただけに一撃必殺を心がけてきただろう。
自然と刃牙の苦手な序盤を突く形となってしまう。
一撃で終わらせられると刃牙の強みも活かされない。
事実、刃牙が負けた戦いは一撃で終わらせられている。
逆に長引けば長引くほど強くなり、勇次郎とも互角に渡り合えるのだ。
つまり、今の刃牙に求められているのは戦いを長引かせる方法だな。
ここでスポーツから学んでみてはどうだろうか。
そう、判定勝ちを狙うようなアウトボクシング!
これで延々と長引かせて刃牙の得意な長期戦に持ち込むのだ。
こうして刃牙ボクシング編が始まるのだった……
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