刃牙道 第40話 ぶった斬り
ついに武蔵が帯刀しあまつさえ抜刀した。
その危険度は言うまでもなく極めて高い。
この危機を独歩は独力で切り抜けられるか?
それとも本部が守護らねばならぬか?
本部ー! 早く来てくれー!
武蔵の挑発に乗ってしまった独歩は跳び蹴りを繰り出す。
真剣持ちという大物相手に出すにはちと大振りで隙がある技だ。
安易な一撃を誘い出されてしまった。
あるいは真剣のリーチを幻影刀で知っている。
跳び蹴りで一気に射程内に近付こうという算段だろうか。
それでも如何せんリスキーだ。
もうちょっと慎重でも……一切守護らぬ本部くらい慎重でも……
あの人、勘違いで勇次郎に挑んだからクソも慎重じゃねえな。
独歩は射程内に入り蹴りを繰り出す。
それに対して武蔵はワンテンポ遅れて動き出す。
そして、独歩の蹴りと武蔵の斬撃が交差する。
独歩の蹴りはかわされた。そして、武蔵の斬撃が独歩に迫る。
武蔵はワンテンポ遅れて動き出したのに攻撃と回避を同時に行っている。
それも納刀した状態から抜刀したというのにカウンターに成功している。
目の前の相手を操る心理術も驚異的だが、その反応速度と瞬発力も常軌を逸している。
特に納刀していたのに抜刀が間に合っているというのが恐ろしい。
なお、野太刀の重量は1.3kgぐらいだ。
急に抜いて間に合うものではない。
まして武神愚地独歩の蹴りよりも速いとは……
そりゃ佐部も斬られるというものですよ。
あの人、抜いてから斬りかかって負けたし。
そして、独歩の顔面のど真ん中に刀が押しつけられる。
そのまま床に叩き付けられた。顔面には刀がめり込んでいる。
ほ、本当に斬ったのか?
綺麗に真っ二つか?
心臓を止められても、手を切られても、顔面を爆破されても生きている半ば不死身な独歩も真っ二つにされればダメなのか?
「斬ってはおらん」
と、ここでまさかの斬っていない発言だ。
いや、どうみても斬ってますがな。
顔面の中心を真っ二つですがな。
メッチャ刃がめり込んでますがな。
本部が守護ってくれませんでしたがな。
でも、たしかに血は出ていない。
血どころか脳味噌が出てもおかしくないのに平気だ。
「当てて………」
「圧しただけ…」
「圧しただけでは」「押しただけでは切れやせぬ」
と、ここでからくりが説明される。
如何に刀と言えど押しただけでは切れぬ。
当てて引かねば切れぬ。
だから、独歩は斬っていない!
……いや、たしかに、料理で食材を上手く斬るコツは引くことだ。
柳刃包丁が長いのは長く引くことで食材を綺麗に切るためである。
日本刀が逸っているのも引きやすくするためである。
でも、独歩の体重は110kg、さらに全力で飛びかかった相手を床に叩き付けるほどの力で刀を押しつけた……
普通に斬れるわ!
それとも武蔵は全力で飛びかかってきた110kgの男を床に叩き付けるほどの力で刀を押しつけても斬らないほどの技量を持っているのか。
武蔵は口先で自分の真意を悟らせないようにしている。
押しただけでは斬れないというのもただの事実を並べただけで、そこに何らかの技術があってもおかしくはない。
だとしたらとんでもない技量だ。
日本刀の何たるかを知り尽くしている男だ。
柳とか本部じゃ相手にならないほどの剣技である。
あえて強調。
とはいえ、武蔵も無傷で独歩を制したわけではなく、その頬を蹴りで切られていた。
素手でアラミド繊維を切った男である。
その拳足の破壊力は刃物同然……ではあるが、こうなると格好付かない。
「大いに反省せねばなるまい」
「「紙きれ一枚切れやせぬ」?」
「愚地さん」
「あなたの手足は立派に刃だ」
そんなわけで武蔵は独歩の力量を褒める。
褒めるのだが圧倒した後なのだから空しくもある。
武蔵のこれが本音なのかはわからない。
この世辞も遺恨を遺さないようにするための方便なのかもしれない。
完敗したとはいえ褒められれば闘争心も湧きにくいというものだろう。
武蔵は本音がどこにあるのかわかりにくい。
それだけに読みにくい相手か。
「斃れ伏す敗者を足元に」
「ぬけぬけと放つ称賛」
「褒め称えられながらも動かぬ現実」
「ぶった斬られた……!!!」
独歩は真剣と立ち合っても命は失わなかった。
失わなかったが、一歩も動くことができなかった。
真剣を叩き付けられたのだ。
これ以上ない形で負けを押しつけられたのだから仕方ないか。
武蔵は独歩の心を完全にへし折って勝利した。
武蔵は独歩でさえ赤子扱いする実力の持ち主だった。
(刃牙はいつものことなので略)
これには現代の格闘家はどう対抗するのか。
本部はどう守護るのか。
とりあえず、押しただけでは斬れないとはいえ刀を押しつけられるのは心臓に悪いので、帯刀はなしでやってもらうしかないかな……
次回へ続く。
独歩、今度こそ完全敗北!
久し振りに格好良い独歩を見られるかと思ったが、残念ながら噛ませ犬となってしまった。
まぁ、独歩の立ち位置ってそういうことなのよね……
また守護れなかった……
刀は押しただけでは切れない。
とは申しておりますが、例えそうだとしても反りがある以上、普通に押しただけで引くことになってしまい、結果、斬れてしまう。
武蔵は刀を一切微動だにさせずに押す技術があるのだろうか。
技術だとしたら格闘戦での活躍に期待したいところだが……
剛体術みたいな技には使えるか?
ともあれ、斬ったのに斬れないは神技と言える。
立ち合いではさぞかし役に立ったことだろう。
相手を殺さずに、されど相手の心を折る。
宮本武蔵の武名を広めるにはぴったりの技術だ。
殺した相手の首を抱えて自慢するわけにもいかない。
伊達にして返すべし。
あの独歩が完敗したとなると対抗馬が問題となる。
刀を持った武蔵と対等に戦える現代の戦士はいるのか。
勇次郎かピクルくらいになってしまう。
ならば、こっちも帯刀するというのは格闘漫画的にちょっとアレだ。
現代最強の剣士、佐部がイメージだけで敗北したのだから、剣術で勝ち目を見出すのは難しいだろう。
でも、範馬の血族に刀を加えたら……
と、刃牙が帯刀する格闘技、刃牙道に目覚めたら格闘漫画史上最低最悪の主人公になれるな!
やはり、武蔵と対等に戦うためには素手になってもらうしかないか。
だが、素手でも戦えるけど本気を出すなら帯刀となるとあまり面白くない。
そこで本部には上手いこと整合性を取ってもらいたいな。
本部が勇次郎みたいに刀をぺきぺきとへし折っていけば、あるいは……
そして、本部が武蔵を挑発すれば盛り上がりますよ!
怒った武蔵に本部が敵う可能性は……信頼(しんじ)ねばならぬ。
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