餓狼伝 Vol.203



なんとなく思い立ったのでイブニングで連載されている餓狼伝感想をこれから書いてみようと思います。
バキは知れど餓狼伝は知らない人は多いと思うので、感想の前に簡単な解説を行います。
知ってるよ!という人はここ をクリックすれば感想まで飛びます。

餓狼伝の簡単な解説
夢枕獏作の格闘小説「餓狼伝」を板垣恵介が漫画化したもの。
原作付き板垣漫画だが大方の展開が同一なことを除けば、
原作では生きているキャラクターが死んだりオリジナルキャラが出たりとほぼ別物となっている。
いわゆる原作クラッシャー。これでこそ板垣恵介ッッッ。
なお、連載していた雑誌が二度廃刊されるという波瀾万丈な連載人生を歩んでいる。
現在、イブニングに居着いているが、それもどこまで続くことか…(不吉)

餓狼伝の簡単なあらすじ
日本最大勢力の空手団体、北辰館がトーナメントを開催。
現在、トーナメントの決勝戦が決着し、乱入者を迎え撃とうとしているところだ。
普通なら乱入者なんて迎え撃たないがトーナメント当日になって
ノールール勝負にルール変更を行うトーナメントなのでこの程度些細なことである。

トーナメントはプロレスラーの長田弘が苦戦しながらも決勝戦へと辿り着く。
それに対して容姿端麗の北辰館の空手家、姫川勉がノーダメージで決勝戦に望む。
長田と姫川の対決は長田が竹宮流奥義「虎王」を姫川に命中させ、大ダメージと左肩を壊すダメージを与えるが、
油断から姫川の奇襲を受けて敗北。トーナメント優勝者は姫川に決定する。
その時、長田に竹宮流の技術を教えた指名手配犯、藤巻十三が現れ姫川に決闘を挑む。今ここ。

登場人物の簡単な説明
・長田弘
プロレスリング団体FAWに所属していたプロレスラー。
ただし、北辰会館空手トーナメントに出場を決意したがために破門にされている。
プロレスに生涯を賭けてきた屈強な肉体が武器で、これを用いて並み居るライバルたちを苦戦しながらも倒してきた。
また、藤巻に竹宮流の技術を学んだため、柔術の技も用いることができる一筋縄ではいかないプロレスラーである。
姫川に竹宮流奥義虎王を炸裂させるものの、一瞬の油断から惜敗する。
恋女房の藤巻との絡みが楽しみである。

・姫川勉
北辰館に所属する天才空手家。容姿端麗。
公式戦での実績はなし。
段位自体は四段あるようだが、トーナメントには白帯で出場している。
四段という設定は連載初期の話だったこともあり多分トーナメント開催と同時になかったことにされた
板垣先生にはよくあることというか、やりかねないことだ。
かつて松尾象山に敗北しており、復讐するために松尾象山の傍らに控えている。

ただ、その実力は本物で決勝戦までノーダメージで勝ち進み、
決勝戦でも不意打ちだったとはいえタフネスに自信のある長田をハイキック一発で倒している。
現在、長田に竹宮流を教えた藤巻と対峙している。
勝敗やいかに。

・藤巻十三
超ツンデレ。
(日本より)西に烈海王あれば、東に藤巻十三ありと言えるほどのツンデレだ。
竹宮流柔術の達人。
過去、殺人を犯したために指名手配中(一応は正当防衛に近かった)。時効まで残り9日。
そんな事情があり、本来出場したかったはずの北辰館トーナメントに出場できず、代わりに長田にツンツンデレデレしながら竹宮流を教える。
が、長田の敗北にツンデレが爆発し、時効まで残り僅かになって会場のど真ん中に堂々登場。
試合は執り行われることになるが、終了と同時に逮捕されることになるだろう。
未来を捨ててまでツンデレに生きる超ツンデレ。
誇ってもいいくらいの超ツンデレ。

なお、バキファンにとって柔術と言えば本部流柔術が(不吉にも)思い出されるが、
竹宮流は本部流とはまったく別物で本作の主役を張っている格闘技のひとつである。

・松尾象山
北辰館の館長。
おそらく50歳に近い年齢ながらその実力は間違いなく餓狼伝世界で一番。
その純粋な腕っ節もさることながら、大胆かつ老獪な駆け引きも武器。
すさまじくワガママでトーナメントのルールを一声で変更したり、勝敗をほぼ勝手に決めたりしている。
無論、誰も反論できない。
トーナメント優勝者と試合することになっている。
その前哨戦として身長2メートルオーバーの巨人を瞬殺してのけた。
巨漢がかませ犬なのはバキ世界も餓狼伝世界も同じである。

・グレート巽
プロレス団体FAWのボス。
松尾象山に匹敵する実力の持ち主。
トーナメント終了後に北辰館との5on5が予定されており、そこで松尾象山と戦う予定。
トーナメントそのものには参加していないが、自分の後継者となるであろう人物を出場させるなど何らかの形で関わっている。
プロレスラー陣は全員敗退したものの、これからも動きを見せる可能性が高い。

・梶原年男
本部と加藤を足して2で割ったような人。
すさまじいまでのやられ役であり、解説役。
一応、FAWのプロレスラーとして未来を嘱望されていたが、とにかくいいところなし
そのネタ度の高さによりこれからの活躍が気にかかる。

・丹波文七
主人公。
本編では主人公といった扱い。
なんと数年の間続いている北辰館トーナメントに出場していない
そのため、数年間の間試合をしておらず、トーナメント中は主にわかったように驚く驚き役として活躍している。
存在感のなさは刃牙に匹敵する。試合しなくても別に困らない辺りも似ている。
これからの出番にも期待できない。
なお、今回は登場していない。


OK、大体の解説は終わった!
ここからが本編だッッッ。



姫川に決闘を挑んだ藤巻だったが即試合開始とはならず、控え室で師の泉宗一郎と向かい合っている。
ええ?いいの?
一応の指名手配犯だ。目を離せばまずかろう。
ドアの周りに警察はいないし、逃がす気満々だ。
これも松尾象山の思し召しだろうか。
松尾象山なら警察を張り付かせないことくらい軽々とやってのける。

二人は畳を敷いてその上で正座で向かい合っている。
畳はどこから持ってきたのだろうか。
梶原の差し入れだろうか。
いや、梶原にとって藤巻は恋敵だからそれはないか…

長らく対面していなかった師弟だ。
交わすべき言葉は多いのか、それとも少ないのか。
当人にしかわからない。
そして、言葉を交わす時間は少ないのか。二人は多くを口にしない。
代わりに泉宗一郎は藤巻の身体を隈無く見る。
太い首、盛り上がった肩、タコが出来た手。
藤巻が鍛錬を重ねている証だった。

「怠けていなかった 怠っていなかった」
「秘めた才能を 錆びつかせていなかった」
「それだけで充分だ」
「藤巻十三という稀有な才能が失われていない わたしはそれだけでもう充分だ」


逃亡中も藤巻は鍛錬していた。それも一人で。つい最近まで長田と。
そのことを泉宗一郎は賞賛する。
弟子としては身に余る光栄だろう。
への字に口を曲げていた藤巻も口を開きかける。
言葉にはしなかったが感謝の念が伝わってくる。
ツンデレの感謝は貴重なのだ。
長田もあと少しすればゲッチューラブラブモードだったのに…惜しい…

孤独ながら竹宮流の道を歩み続けていた弟子に師は自らの稽古着を渡す
泉宗一郎が長年鍛錬を共にしてきた貴重なものだ。
師の分身のようなものだろう。
弟子としては最大級のギフトだ。
藤巻は深々と頭を下げてこの厚意を受け取る。
今、竹宮流は師と弟子がひとつになった。
負けるものは、ない!…はず。
あとこのシチュエーションを本部と花田でやっても感動はまったくないだろうと断言できる。


稽古着に着替え、藤巻は決戦場へと降り立つ。
歓声があがる。
突如の無名乱入者としては破格の扱いだ。

[事実であった]
[観客達には届いていた]
[気……オーラ……たたずまい 雰囲気……]
[男の纏うもの… 尋常ではない戦力 そして――ただごとではない事情……]
[見る人が見れば――ではなく 誰が見てもワカる何か――が]
[その肉体から その姿かたちから溢れていた]


普通ならただ得体の知れないツンデレで終わるところだが、観客たちは藤巻の強さを感じ取っていた。
しかも、誰も見てもわかるものだ。
ムエタイや巨漢みたいに一般人は強そうと騙されるものではないのだ。

未来を捨ててまで勝負に挑みツンデレに殉じた男だ。
その覚悟たるや、万人が見てわかるものなのだろう。
そんな男が変装して会場に潜り込んでもすぐに怪しまれるのは当然のことである。
…なんかボケてるよな、さすがツンデレ。

藤巻は姫川の左肩が壊れていることを指摘する。
しかし、姫川は気にする様子がない。
武道家にとって肉体の不自由も闘争のうちだ。
そして、怪我しているからと逃げられる勝負でもない。
逃げたらJr.だよ。

ある種の余裕を見せる姫川に対し、藤巻は険しい顔をする。
当然だよな。ツンデレだし。
いや、ツンデレあんまり関係ないよ。

そんなことを思っていたら藤巻は左肘の下に手を当てて後方に反り返りながら飛んだ
いわゆるバク宙だ。
何かのパフォーマンスかと観客は沸き上がる。

[ビキッ]

藤巻は左肘を下に着地して腕を折った。
うわあ、この人やっちゃった!
パフォーマンスかと思っていた観客たちの顔は一瞬にしてこわばり、冷や汗が流れる。
そりゃあイロモノがたくさん出たトーナメントだったけど、いきなり腕を折るマゾなんていなかったよ。
驚くに決まってるよ。

一流のツンデレはSよりもMが先行すると言われる。
ツンデレ成分が高いほど守りが弱いのだ。
その絶妙な穴を愛でるのがツンデレの楽しみ方だ。
藤巻は見事に自爆した。
まさにツンデレ!ツンデレの鏡だ!

「ふん……」
「これでハンデなし……ってところだろう」


藤巻は余裕を見せながら折れた左肘を姫川に見せる。
って、冷や汗流しながら見せるのはまずいだろう。
ここは骨折の痛みなんかないかのように振る舞うべきだろう。
何をべ、別に骨折したって痛くないんだからね!とツンデレってんだ。
見事に別の意味で自爆してしまった。

藤巻は自らの左腕を使えなくすることでかっこつけたつもりが思わず萌えキャラ炸裂でスタートダッシュに失敗した
いや、普通痛いよ。でも、耐えろよ。
本当に萌えキャラなんだから…!
それでも未来は暗いながら刹那の輝きを見せる藤巻は萌えキャラの鏡と言える。

でも、これってバキのツンデレ烈海王と同じ境遇だよな。
烈はピクル戦前に萌えキャラを炸裂させたら肝心のピクル戦で右脚を喰われてしまった
ツンデレ同士のシンクロニシティで藤巻も危ないかもしれない。
二つの板垣漫画からツンデレが消えたら、どうやってツンデレを補給しろと言うんだよ。
再来週に続く。


思いっきり冷や汗をかいてOSRを下げた藤巻だった。
大丈夫か、この人。
どぢとしか言いようがない。
しかも、左肘が折れてるのが不安要素だ。
姫川の肩は外れているに留まっている。
ぶっちゃけ、試合中に直しようがある。
でも、折れると苦しい
直せませんよ。せめて数時間ないと治らない。
五分にしたつもりが不利な藤巻であった。
どぢめ。

今回、重要人物となるであろう長田が出てきていない。
次回以降の熱い声援が藤巻を支えるのだろうか。
梶原はせめて解説するだけの余裕は見せてもらいたい。
冷や汗を流すだけか嫉妬に狂うだけで終わりそうだ。
丹波は…えーと…扉絵だけで終わりそうだ。


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