餓狼伝 Vol.205
開始早々、折れた左腕を狙った容赦なく狙った藤巻と姫川だった。
直撃していたら骨が肉から飛び出していたかもしれない。
見せ物にならない生々しい攻防だ。
多分、全国ネットでは見られない。
藤巻は姫川の蹴りを右腕で受け止め、姫川は紙一重で藤巻の蹴りをかわす。
この攻防に藤巻は喜びを隠せない。
普段のルールだったら負傷から戦う前に勝負ありだし、反則扱いされていたことだろう。
これはルールに縛られない実戦に限りなく近い勝負なのだ。
藤巻としては恨み深き姫川とこうしたノールール勝負をできたことが嬉しいのだろう。
藤巻も姫川も手負いだ。
ゆえに泉宗一郎は短期決戦になると予想する。
藤巻の冷や汗とかもう終盤かよって感じだし、短期決戦という予想は的確かもしれない。
いや、冷や汗は関係ないよ。多分。
むしろ、何かあるたびに汗を流しているのが藤巻だ。
汗のない藤巻は想像しにくい。
両者の動きは止まる。
互いに左腕が使えないし、ヘタに動けば弱点である左腕を狙われるのは最初の攻防で明らかになっている。
安易に動くことはできないのだろう。
緊張感溢れる睨み合いを観客も実況も察する。
丹波もけっこう大きいコマに出てくる。
因縁浅からぬ両者の対決に丹波も緊張しているのだ?
(姫川よ…)
(数千にも達する竹宮流の技術体系 キサマの知る竹宮流などほんの一欠片に過ぎぬ)
(虎王だけが竹宮流ではないッッッ)
虎王だけが竹宮流ではないのだ。
根止めなんてガン引きするような技もたくさんありそうだ。
何せ数千ですよ。
なんでそんなに多いんだ。
竹宮流は4000年の間、技を磨き続けたのか?
中には日本刀を投げつける技とか、相手をジャングルジムにぶつける技もあるのかな…
藤巻にとって、竹宮流を泉宗一郎に直々に学んだわりには虎王しか使わなかった丹波の評価は低いんだろうな。
対して雛落としを使ってみせた長田の評価は非常に高いと予想できる。
そりゃあ客席でデレまくるよ。見事なり雛落としって喜びまくるよ。
本当はプロレスでなく竹宮流をやってもらいたかったんだろうな。
いつも持っている稽古着を長田にあげたりする。
腰を落とし冷や汗を流しながら不敵な笑いを浮かべる藤巻とは対称的に、姫川は涼しげな顔と共に直立不動だ。
心情的には姫川に分がありそうだ。
そして、手練れの格闘家二人にしか見抜けない予備動作があったのだろうか?
泉宗一郎と丹波が同時に姫川が仕掛けると読む。
姫川は藤巻へと踏み込もうとする。
ドン
同時に藤巻の足刀が左足にめり込んだ。
姫川が先に仕掛けようとしたところに藤巻の攻撃が決まった。
0.5秒の無意識を狙ったかのようなベストタイミングの攻撃だ。
藤巻が鋭い読みと蹴りを見せた。
藤巻の蹴りに姫川の動きが一瞬止まる。
追い打ちを仕掛けるように藤巻は小指を姫川の眼球に走らせる。
眼球を破壊するような強い一撃ではなく、軽く触れるような目潰しだった。
100%反則だ。
おいおい。あのハゲの審判は何のためにいるんだよ。
リングにかけろ並みに審判がいていないような存在と化している。
だから、チョビヒゲの審判を降ろしたしたのか?
藤巻の目潰しによって姫川の視界は奪われる。
その隙に藤巻は姫川の懐に入り、腰に腕を回し帯を掴む。
相手を掴むことができたのは、柔術家の藤巻にとって理想的な展開だ。
相手の攻めを潰し、一瞬で自分のターンにする見事な連携だ。
丹波と五分ったことから藤巻の強さはけっこう怪しかったが、姫川を手玉に取るその実力は本物だ。
同時に丹波は藤巻と五分れるくらい強かったんですね。
どうも梶原くらいしか倒していない印象がある。
姫川をキャッチした藤巻は右腕のみで姫川を縦回転するように投げる。
どういう力だよ、それ。
投げるに当たって特に姫川を崩していないように見える。
これって技か?
それとも、竹宮流ならではの超秘術なのだろうか。
ともあれ、人体をいきなり縦回転させる驚愕の投げだ。
普通なら一瞬で混乱してまともな思考ができない。
だが、姫川は現状を把握し、自分がどれだけ回転しているのか把握しようとする。
恐るべし才能だ。
姫川は2回転したことを把握する。
どれだけ回しているんだ。1回転目で直接叩きつけろ。
でも、回転は男のロマンですよね。
回転しなきゃディオを倒せないよ。
(ならば―――)
(ここで自らが加速―――― 半回転だけ)
(そうることで最悪を回避できる)
藤巻の投げを防ぐべく、姫川は自ら回転することで被害を減らそうとする。
数回転の後、普通に着地するという姫川らしいエレガントな受け身だ。
空中でどうやって自力で回転するのかが疑問だが。
…屁とか?
でも、2回転目で半回転すればやばくないだろうか。
わかりやすくするため、稚拙な絵ながら図解してみよう。
頭から着地しないかこれ!
(わたしの足は―――― 藤巻の思惑を外れ)
(着地する 正しく 今ッッ)
頭から!頭から着地してしまう!
まぁ、藤巻も普通に2回転させるだけでは姫川を普通に着地させるだけだ。
回すだけ回してノーダメージなんて寂海王だ。
そんなのを実戦でやればどぢっ娘なんてレベルじゃない。
おそらく2回転半させたのだろう。
姫川にとって未知の連携だったが、普通に対処されてしまった。
どうする。藤巻。
[秘投必殺 地被(じかぶり) 見参!!!]
対処されたと思ったら姫川が頭から地面に落ちた!
ええと…もしかして本当に2回転だけさせたのか?
姫川が自力で回転することを読んだ上での投げだったのだ。
自爆を狙い澄ました高度なテクニックである。
いや、ないない。それはない。
地被は姫川が回転数を間違えるほどの超回転投げだったのか。
それとも、姫川が受け身を取ると見た瞬間に藤巻が回転数を上げたのか。
真偽は来週以降だが、とりあえず藤巻が先手を取った。
しかも、何回転させた後に頭から叩きつける大技だ。
並みの格闘家なら即刻勝負ありだ。
だが、虎王に耐えた姫川にとって、大ダメージにはなれど致命傷にはなりえない可能性が高い。
次回へ続く。
冷や汗流しまくりで先行きが不安だった藤巻だったが、先手を打つことができた。
冷や汗は杞憂だったようだ。
でも、最初に猛攻を仕掛けた側が手痛い反撃をされるのは板垣漫画の定石でもある。
そういう意味では藤巻はちょっと危ういかもしれない。
秘投必殺地被はどんな技なのだろうか。
とりあえず、死ぬほど回転させる技なことは明らかになっている。
片手で回転させるなんてどういう技術だよという話だが、両手でも無理だろうから問題ない。
長い逃亡生活があっても、一切技が錆びていない藤巻は見事である。
練習のために長田も地被で回したのかな…
頭からぶつけると痛いのでちょうど2回転だけさせる。
しかし、梶原が少しも解説を差し込めない戦いだ。
もし、竹宮流の解説を始めたらそれはそれですごいが。
泉宗一郎を置いてけぼりだ。
丹波は普通に置いてけぼりにされるだろう。
いや、今こそ反逆の狼煙を上げるべきだ。
勝利者に丹波の挑戦状が叩きつけられる!
…すまん。フルネームを書こうとしたら普通に忘れた。
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