餓狼伝 Vol.206



秘投必殺地被が姫川に決まった。
最初の1ページで姫川は頭から決戦場へと落ちる。
しかし、ページ的には逆に描かれ、まるで天上へ姫川がぶつかっているような構図だ。
これは姫川の心象から描かれた1シーンか。

藤巻は折れた左腕を姫川の帯に当て、その左腕をカバーするように右腕を添えている。
右腕でまず回転させた後に、左腕で一気に地面へ向けて垂直に叩き落とすのが地被の正体なのだろうか。
回転させるという時点で意味不明な脅威の投げ技だ。
さすがの姫川も防御もままならないということか。
地面に垂直に頸部を叩きつける危険性といい、秘投必殺の名に相応しい技だ。

この地被に観客は沸き上がる。
丹波も驚く。
なんと丹波ですら初めて見る投げ技らしい。
…一時期とはいえ、泉宗一郎に教えを受けていたとは思えない。
すっかり驚き役が板についてしまった。
丹波でこれなんだから、梶原はもっと驚いているんだろうな。

(「地被」かァァ…ッッ)

藤巻の見事なり地被に泉宗一郎も驚く。
え?そう驚くの?
うっかり本人ですら忘れていたような驚き方だ。
それともおとなしく虎王を使えと言いたいのか。
竹宮流の主にとっても、地被は予想外の奇手らしい。

[視覚を奪い……]
[後帯を取ることによって生じる 急加速ッッ]
[暗闇の中で突如体験する“急加速”により 受け手は天地上下を謝る およそ半回転……!]
[地に激突する際まるで地面が上から降り落ちてきたように錯覚するという…………
 故に名付けて“地被”!]


後帯取ることで人間一人を数回転できるほどの急加速を得られるのが地被だッッ。
無茶だ!
無茶は置いておいて、加速させることで相手の平衡感覚を失わせる技らしい。
普通なら数回転させるだけでも十分必殺だが、そこからさらに平衡感覚を見失わせるのが竹宮流の奥深きところか。
数千の技を保有する竹宮流だけあり、入念な研究が為されている。

姫川は受け身を取れずに地被りを受けてしまった。
畑幸吉の切り落としに匹敵するダメージがありそうだ。
普通なら勝負ありだ。この試合なら一本だ。
だが、相手の急所を狙っても、目潰しをしても、止めどころか警告すらされない勝負だ。
このままで済むわけがない。

(立つ?!!)

必殺の一撃を受けた姫川が立ち上がろうとする。
藤巻は「!」よりも「?」を先に出すほど驚いている。
驚きすぎて髪型が坊主になっている。
いや、それはあんまり関係ない。

姫川に意識があると確認するや否や、すかさず藤巻は追い打ちの下段蹴りを放つ。
だが、驚愕によって数テンポ攻撃が遅れたせいか、姫川が後ろへ飛び跳ねたことで空しく空を切る。
姫川の突如の復活に藤巻は普通に冷や汗を流す
何かと汗を流している藤巻だが、今までの汗と違って明らかな驚愕が見える。

(何故倒れぬッッ 何故動けるッッ まともに受け身すら取れていないハズ…ッッ)(泉宗一郎)

(「地被」はそんな甘い“投げ”ではないッッ)
(藤巻)

地被をよく知る竹宮流の人間は大驚きだ。
それほど必殺の投げ技だったらしい。
虎王で倒れたかった時も同じくらい驚いたのだろうか?

だが、姫川も藤巻と同じくらいの冷や汗を流している。
虎王を受けても目立った汗は見せなかったくらいだ。
ダメージ以上の何かが姫川にあるのだろうか?

(ことここに至っては…)
(もはや……)
(美しくなくともいい……)


姫川が口元から大量の血が溢れた。
吐血のように吐き出した感じではない。
膨大な血が口の中に留まっていたような感じだ。
この異様な出血に観客中の人間が一斉に驚く。
人前に見せる戦いではなくなった。
あと美が大切だったのか、こいつ。

泉宗一郎、丹波、松尾象山の3名はこの出血を見て、姫川が何をやったのかを悟る。
しかし、驚愕よりも哀れみの入った感情だ。
姫川は一体何をやったのだろうか?

ところでなんで驚愕連中に恋人の長田が並ばないのだろうか?
梶原は並ばないで当然なのに、どうして長田は…

(万が一に備え…… 受身が取れぬ時に備え 口の内)
(舌を歯に挟んでおいた)
幸いにも受身は失敗(ミス)………… 投げの衝撃により舌は半切断に)
(しかし立っている だから立っている)
(完全ではないものの こうして藤巻の眼前(まえ)へ再びッ)


痛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜いッ!説明不要!
舌を噛み切る激痛で姫川は意識を保つことに成功した。
あまりに痛い。痛すぎる。姫川だって冷や汗をだらだらと流すよ。
舌を噛み切った膨大な出血が姫川の溢れ出す吐血の正体だったのだ。

いくらこうしなければ負けるからって、普通ならこんなことはしない。
舌先には甘い物を感じることができる部分だし、ヘタに噛み切ってしまえば生涯甘さを感じなくなってしまう。
自分の肉体の一部を噛み切るという選択肢自体、そもそも普通人には存在しない。
姫川は肉体の一部を失おうとも藤巻に勝ちたいらしい。
恐るべき勝利への執念だ。
未来を捨ててまで姫川に挑んだ藤巻に匹敵するものがある。

それにしても地被は舌を噛み切らないといけないけど、虎王は普通に受けても大丈夫なのがちょっと悲しい。

姫川の勝利への執念に藤巻は再び喜びを感じる。
何をやっても、どうしてでも勝ちたい者同士だ。
藤巻としても、逮捕される覚悟で挑んだ勝負だ。
簡単に負けてもらっても喜びは少ないというものだろう。

(勝ちたいのだなオマエも 何に替えてもッッ)

(負けず嫌いなのですよわたしは)


心の声で会話しつつ、二人は距離を詰める。
審判は見守るだけだ。
普通の試合だったら姫川の出血を確認次第、ドクターが呼ばれそうなものだ。
だが、呼ばない。呼べない勝負だ。
チョビヒゲだとうっかり呼びそうだからハゲ審判に変えたのかもしれない。

[時あたかも決着の刻]
[武道館の外では夜にも関わらず夥しい数の烏が一斉に鳴きだしたという]


その時、東京にはハゲワシがいないので、代わりにカラスがやってきていた。範馬刃牙75話
始まって間もない姫川と藤巻の勝負だったが早速決着の時か?
短期決戦になる予想は的中している。

この状態では足を破壊され、地被を受け、舌が切れている姫川の方が圧倒的に不利だ。
満足に動くことすらできないだろう。
だが、先に奥の手を見せた方が不利なのが常識だ。
藤巻が逆転されてしまうのか。
それとも押し切ってしまうのか。
次回へ続く。


驚愕の技と恐怖の受け身が繰り広げられた。
普通、舌を噛まない。
その状態でなお戦おうとする姫川の精神力も恐ろしいものがある。
藤巻も対抗して舌を噛むのだろうか?
いや、それじゃただの馬鹿だよ。

クライマックスへ向けて、両者共に出せるものを出している。
会場の緊張も高まる。格闘家たちもざわめく。
なのに、なんで長田は出てこないのさ。
なんで?なんでだ?

と、そういえば、決勝になってからグレート巽を筆頭とするプロレスラー陣の出番がなくなっている。
もしかしたら、長田はお仕置きの最中なのかもしれない。
だから、出番がないのかも。
もちろん、梶原には特別お仕置きコースを贈呈だ。
残った金玉も潰す。
しかも、素手で握り潰す。
なんでそこまでひどい目に遭うのかは梶原だからという理由で納得させるのである。


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