餓狼伝 Vol.210
おいおい、急ぐなよ――
扉絵で大人の余裕を見せつける丹波文七であった。
急がなすぎて主人公としての風格を全て失ってしまった。
ゆっくりした結果がこれだよ!
[太い男であった]
[頭が太い 首が太い]
[肩も太い 腕も太い
腹も太い]
[脚も――指も――]
[鼻も――唇も――]
[眉も――放たれる眼光も太い]
[呼吸までもが太い]
[松尾象山 太い名前である]
松尾象山が胴着に着替え、試合場の上に立った。
北辰館トーナメントのラスボスであり、作品自体のラスボス的存在だ。
こいつが試合場に立ったからにはただではすまない。
間違いなく血を見る。
最強の二文字を体現する男の登場に会場はざわめく。
ここに集まった物好きな観客たちも松尾象山が試合をすることを本気にしていなかった。
どれだけ信憑性ないんだ、松尾象山。
あるいは信じられないくらいに伝説的な存在ということであろうか。
伝説が先行して実体を掴めないくらいに松尾象山の存在は肥大化している。
あ、でも、畳を突き破ったりチェ・ホマンをボコボコにした。
松尾象山の伝説的な強さは実体になっていた。
ということはあまりの強さに試合なんて公開処刑になるだけだから、やらないと思っていたのか?
しかし、対戦相手が問題だ。
本来の対戦者である姫川は藤巻との戦いによる負傷も疲労が大きく、欠場となっていた。
だが、松尾象山が試合場の上に立ったからには姫川の代わりとなる対戦者がいる。
そこで松尾象山は自らが対戦者を選んだ。
しかも、二人だ。
松尾象山にとって並み大抵の格闘家では相手にならない。
ならばと二人の挑戦者を用意したのだろう。
もし、対戦相手が梶原と丹波だったら俺はキレる。
二人がかりでも無理だよ。特に梶原は瞬殺される。
まず、松尾象山推薦の挑戦者、一人目が現れる。
剃り込まれた坊主。そして、花山かと言わんばかり顔に走る傷跡…
どうみてもヤクザです。本当にありがとうございました。
喧嘩を生業とする武闘派ヤクザであろうか。
このヤクザは松尾象山の古い友人らしい。
ならば当然強者だ。
きっとムエタイくらいならワンパンで倒しうる。
でも、思いっきりビール腹なのが不安だ。
そっちが太くてどうするんだ…
チェ・ホマン第2号だな。
一人目はヤクザだった。
ならば二人目は?
現れたのは機動隊だった。
全身にプロテクターを付けている。
お約束の盾と警棒も持っており、武装も万全だ。
…格闘技の大会のくせに武器持ちかよ。
なんかわかりやすいイロモノを選んでいるのは気のせいか?
松尾象山としては試合をするためではなく、ショーをするためにこの二人を選んだ気がする。
この辺のサービス精神に溢れるのが松尾象山だ。
さすが館長だけあり客寄せがうまい。グレート巽に匹敵するかもしれない。
アウトローの真髄の喧嘩ヤクザと治安維持の真髄の機動隊の二人が松尾象山が選んだ挑戦者であった。
メチャクチャだ。
空手の大会…だよね…?
「白強者と黒強者ッ」
「そして迎え討つ生きる伝説ッッッ」
「三つの伝説が揃い踏みだァッッッ」
伝説のうちの二つは伝説と書いて生け贄と読むけどな!
何だか壮絶なレイプショーが始まりそうな組み合わせだ。
間違いなく週殺される。
次回へ続く。
なんかすごいことになってきた。
先週までの展開を思わず忘れそうになった。
ヤクザと機動隊はいくら何でもない。
そりゃ無茶だよ…
二人は瞬殺されるだろう。
機動隊の盾なんて壊されるためだけに持ってきたようなものだ。
ヤクザのビール腹も危うい。
腹の肉がたるんでる人に強者はいないよ。
そして、いくら二人がかりだからといって松尾象山は満足しないだろう。
さらなる生け贄が捧げられる可能性がある。
今度はネタ要素満タンの相手ではなく、実力を伴った人間が捧げられるだろう。
危ないのは鞍馬だろうか。
鞍馬は松尾象山本人が目を付けていたのに準決勝で敗退した。
そこで無理矢理舞台に上げそうだ。
そして、ひどい目に遭わせる。
とりあえず、丹波の出番はないな。
これは確実だ。間違いない。
松尾象山は盛り上げることを意識しているし、確実に誰それ?で盛り上がらない丹波は選ばない。
…可哀想な主人公だなぁ…
2008/08/05追記
掲示板の方で突っ込まれたのですが、餓狼伝の扉絵のアオリは原作版の回想シーンに出てくるテキストのようです。
丹波の電波台詞だとばかり思って勘違いしていました。
それでもどこか調子がズレている気がするのですが、まぁそれは丹波だからでしょう。
ついでに書き忘れましたが、次号のイブニング、つまり8月第2火曜の餓狼伝は休載なのでお休みとなります。
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