餓狼伝 Vol.216



丹波文七VS片岡輝男!
お互いに一流の実力を持つ一級の格闘家だ。
そうだよね。
そうだよね!
そうだよね?
…腕はいいはずなんだけどなぁ、丹波…


丹波と片岡がぶつかり合う。
二人を閃光が包んだ。
片岡の手下…じゃなくて弟子、佐野君はこれでもかと言わんばかりに笑顔だ。
そんなに片岡の喧嘩を見たかったのか、こやつは?
北辰館トーナメントを見に来れば良かったのに。
骨折させたり胸骨を凹ませたりと見応えあったぞ。

そんな佐野君の笑顔はすぐに驚愕に変わる。
片岡の右手首が丹波に掴まれていたのだ。
丹波は片岡の動きに反応してのけた。
不意打ち気味で片岡の反応が遅れた、あるいは反応させられた可能性もあるが、いずれにせよ恐るべしだ。

しかし、片岡も半端ではない。
骨折した右手を放っていたのだ。
さすが、負傷した手でも特訓をする男だ。
骨折なんて痛いだけで攻撃力を下げる要素にはならないのだろう。

「仮にも俺たちは武道家同士」
「まずは握手からだろう……」


丹波はフレンドリーに語りかける。
そして、骨折した右手と右手で握手だ。左手は手首を掴んでいる。
これで片岡の右腕は完全に封じられた。
丹波が優勢か?

しかし、片岡にはまだ左が残っている。それも負傷していない左だ。
万全の一撃を繰り出すのか?
だが、先手を取ったのは丹波だった。
頭突きが片岡の右こめかみを襲った。
よほど鋭い当たり方をしたのだろう。皮膚が切れ出血する。

この痛みに片岡は身をかがめ切った部分を押さえる…って、いくら何でも痛がりすぎだ
隙だらけですよ。
片岡は身をかがめたまま、床を見たまま、丹波の足元だけを見たまま、突進する。
相手を見ないで突っ込むのは危険だろう。
これは試合ではない。見上げてみると対戦相手が武器を持っているかもしれない。
相手のコンディションもとい武装が逐一変わってくるのだ。

そして、丹波を見上げた片岡の動きは止まる。
丹波は木製のトンファーを持っていた。
って、おい。武器かよッッッ。
丹波の見せた武器に片岡は身構える。
人間凶器なのに木製のトンファーを恐れるなんて…
そりゃあ食らえば大打撃だろうが、積極的に破壊する気概を見せてはどうだろうか。
今の片岡は完全に丹波に呑まれている。
気持ちで負けては勝てる勝負も勝てないぞ。

丹波はトンファーの柄の部分を手刀でへし折る。
切り口はささくれている。
松尾象山が警棒を手刀で切った時は刃物かと疑わんばかりの見事な切れ口であったが、丹波のはそれと比べると数段劣る。
駆け引きこそうまいものの、肉体面では超一流格闘家と比べると劣っているか?

「丹波文七」
「空手道」


そう言い放ち、へし折った柄を片岡の右足の甲に投げつける
どこが空手道だと思いつつも、ささくれた切り口が片岡の足に突き刺さる。
これで利き足は封じられた。
このためにあえて切り口を鋭利にしなかったのだろうか。
いや、多分マジでやっても同じ切り口になったな。

丹波のぺースで戦いは進み、かつ丹波の有利に働いている。
何という試合巧者であろうか。
堤との試合で思いっきり上がっていたことは忘れて上げた方がいいのか。
丹波は恥ずかしがり屋なんです。

追い打ちをかけるように今度はトンファーの本体の部分を投げつける。
その標的は片岡ではない。片岡の直上にある蛍光灯だった。
破片が片岡に降り注ぐ。片岡はその破片から身を守るので精一杯だ。
丹波が足を狙ったのはガラスシャワーから逃げられなくするためか?

片岡の動きは止まった。
その最大の隙を逃さずに丹波のハイキックが片岡に決まった
片岡は力なく崩れ落ちる。
丹波はクリーンヒットを感じつつ、崩れ落ちる片岡を見ながらも、反撃に備え構えを取る。
残心もバッチリだ。
実戦に生きる男らしい心構えである。

片岡は門田のハイキックをまともに受けても倒れなかった。
あの瞬間はハイキックを食らうことを覚悟していたからだった。
だが、今は違う。破片に気を取られていた。
そこを不意打ちに等しい形で射貫かれてしまった…
覚悟する暇すら与えられなかったのだ。これには耐えることもできまい…

[手に何も持たぬから―――――空手]
[そう教えられてきたハズの両雄だった… しかし――]
[歩んだ日常があまりにも違っていた]
[その違いが――]
[一方を空手家へ][もう一方を空手愛好家へと道を分けた]


実戦に生きる本物の空手家であった丹波と自分の安心のために鍛錬を重ねた空手愛好家片岡…
決着は一瞬で着いた。
丹波は勝つためなら不調の相手を狙う。武器だって使う。
エゲツないがそれが空手家だ。
主人公らしくないけど。
主人公らしくないけどッッッ。
次回へ続く。


ヤル気を出した丹波の前には片岡だってかませ犬だ。
長田を噛んだ以上、手加減などせぬ!
武器まで取り出してお前は本部かよ。

餓狼伝は長い間続いた試合形式の戦いに終止符を打ち、不意打ちあり武器使用ありの実戦へと移ろっている。
実戦こそが武道家の真髄が試される場所だ。
そこでこそ丹波は強いのだ!
試合では武器が使えないのが苦しいです。
〜〜〜〜〜〜〜ッッッ。
よく考えたらかなり情けなくなるぞ、丹波。

実力者二人を屠った。
今後も丹波は獲物を狩っていくことだろう。
やり方の是非はともかく、丹波は勝っている。
しかし、こんな勝ち方を続けるだけでは自己を研鑽できぬだろう。
主人公らしさだって下がる一方ですよ。ただでさえ底値割っていたっていうのに。
実戦の場において力を発揮する真の武道家とそろそろ戦ってみてはいかがでしょうか。

実戦で強そうなのは前にも書いたけど伝統派空手の神山徹だ。
何せ試合だというのに目潰しを本気でやろうとしたくらいだ。
その本気の拳を打ち込む姿が見たい。
どれほどの危険性を伴っているのかが気になる。

鞍馬も試合でこそ反則負けしたものの、実戦になれば強そうだ。
グレート巽の後継者ですよ。
プロレスしか出来ないってんなら今すぐチョークスリーパーで絞め殺される
底知れぬ実力を丹波にぶつける日が来るかもしれない。
片岡に胸骨を割られて長田に恐れを感じていた辺りで底が見えているかもしれないが。

と、長田と片岡と言えばいずれも鞍馬の対戦相手だ。
もしかして、丹波は鞍馬の対戦相手を狙っているのだろうか?
そうだとすれば次の獲物は決まっている。
前北辰館トーナメント覇者立脇如水だ!
〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ。
こいつは(丹波に)勝てねェ!何もかもで敗北を物語っている!


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