餓狼伝 Vol.217
丹波は人間凶器片岡をいとも簡単に屠った。
実力だけでいえば二人の間に大きな差はなかったかもしれない。
だが、実戦に向ける心構えの差が勝負を分けた。
セコくて勝つ男だぜ、俺は。
今回の舞台はFAWプロフェッショナルレスリング道場だ。
かつて丹波が梶原に敗れ、己の人生を見つめ直した場所だ。
そう、梶原に敗れた場所だ。
大事なことなので2度言いました。
かつては痛んでいたトレーニング機器の数々は、どうやら新調されているようだ。
何かと話題性のあるFAWだ。収入は十分あるのだろう。
梶原が乱入者にやられたりと話題性には事欠かせない。
鞍馬デビュー日に梶原が生贄にされたりもする。
梶原のことなので2度言いました。
さて、道場ではただ一人の男がトレーニングをしていた。
端正な顔つきに頭にタオルを巻いた男…
克巳?
いや、鞍馬だ。FAWの秘蔵っ子鞍馬であった。
鞍馬はトランプをめくりながら腕立て伏せをする。
出た数字の分だけ腕立て伏せをするという、道場における伝統的なトレーニングらしい。
もちろん、全部のトランプを使うので364回の腕立て伏せを行うことになる。
なら最初から364回腕立て伏せをしろという心持ちになるが、単調なトレーニングにせめてもの華を添えるためであろうか。
しかし、364回はその…多いとも少ないとも言えない微妙な数だ。
鞍馬が伝統的なトレーニングを行うというのも意外だ。
伝統なんかとは無縁な人間だと思っていたのに。
鞍馬とて何だかんだでプロレスに愛着を持っているのだろうか。
そんな一人きりのトレーニングに割り込むのが丹波だ。
鞍馬の外面のイメージとは異なる地道なトレーニングを指摘する。
指摘された鞍馬の表情は何とも微妙だ。
やっぱり、見られたくなかったんだろうな。
丹波の用件は何であろうか。
当然、喧嘩だ。
餓狼のように鞍馬にも噛み付くのであろうか。
「有名だぜ道場(ここ)では」
「あの――――カジワラくんに 悲鳴をあげたタンバくん」
鞍馬が先に挑発した!
あの梶原に丹波はここで負けた。
そう、あの梶原に。
あの梶原に負けたのだ。
大事なことなので何度も言いました。
鞍馬にとってもあの梶原扱いなんだな、梶原。しょうがないけど。
丹波に勝ったことが梶原のプロレス人生最大最後の華だ。
もう二度とあのような機会には恵まれないので、想い出のアルバムにきちんと取っておくんだ。
逆に丹波にとっては梶原に負けたことが武道家人生最低最悪の汚点だ。
丹波の表情が強ばる。
早速、開始か?
その時、鞍馬が跳躍した。
丹波の頭くらいまで飛んでいる。さすがの瞬発力だ。
そして、ドロップキックを放つ。
不意打ちだ。
長田にも、片岡にも、丹波は先手を取っていた。
だが、鞍馬には先手を取られてしまった。
鞍馬は今までの相手とは違う。不意打ちありの実戦派なのだ。
実戦に生きる男、丹波は不意打ちに冷や汗をかきながらも反応する。
素早くドロップキックの軌道を右腕でズラし、カスりはしたものの直撃を避ける。
ドロップキックを受けたのが梶原でなくて良かったな。梶原だったら梶原が死んでるぞ。
鞍馬はドロップキックを放ったら空中で姿勢を変え、背中から床に落ちる。
そして、素早く立ち上がり構える。
隙だらけだ。
だが、驚きの方が大きい丹波はその隙を突けなかった。
鞍馬はそれを見通してのドロップキックであろうか。
実戦だからこその大胆な選択だ。
「喧嘩だろ」
「プロレスは喰うための仕事…… 俺の本質は街のゴロツキだ」
「喧嘩の気配には敏感なんだよ」
鞍馬は丹波の目的を悟っていた。
挑まれるまで狼狽えていた長田や片岡とは異なる。
プロレスではなく、喧嘩に生きる男、鞍馬…
丹波と同じステージに立つ男がついに現れた。
しかし、本質は街のゴロツキって、中学時代にグレート巽にスカウトされてプロレスラーになったんだから、
街のゴロツキ時代はなかった気が…
影に隠れて喧嘩をする日々を過ごしていたのか?
鞍馬は頭にかぶせていたタオルを取る。
そこからは長髪が…坊主!?
あの鞍馬が坊主になっていた。
坊主じゃ伊達ワルになれないぞ。
お前それでいいのか?
「切られたなヒコイチッ グレート巽にッッ」
「北辰館の大会でヘマをした…… ――で罰として頭ァ丸められた…………と」
今度は丹波が挑発した。
北辰館トーナメントでの結果は鞍馬にとっては屈辱的なものだったのだろう。
しかし、長田にはわざと負けたようにも見える。
グレート巽もそのことを了承していたのではないだろうか。
外から見ていてはわからない複雑な事情があるのか?
でも、坊主になった鞍馬はロン毛時代よりも男前に見える。
坊主は坊主でいいんじゃないだろうか。
坊主といっても3分刈りくらいだし、そこそこには髪のボリュームがある。
ギリギリのところでオシャレをしている鞍馬であった。
トーナメントでの結果が原因で頭を丸めた。
あの屈辱を二度と背負わないために初心に帰ったトレーニングをした…
チャラチャラした外面とは異なり、中身は質実剛健な鞍馬であった。
ちょっと好感度アップだ。
丹波は挑むつもりが挑まれたが、何にせよお互いに戦いに向ける準備は万端だ。
あとは奔り出すだけだ。
「街頭ルールと武の違い 体で教えてあげよう」
〜〜〜〜ッッ。
丹波が異常に偉そうだ!!
油断させて不意打ちやトンファーを使った立ち回りが丹波の言う武なのか?
それ、思いっきり喧嘩やん。
それとも今度こそ武を見せるのか?
次回へ続く。
予想通りに鞍馬を狙い撃った丹波であった。
長田や片岡を狙ったのも鞍馬の対戦者だったからなのだろうか。
でも、立脇如水を忘れないでください。
前大会覇者ですよ。
前の二人は開始前からもう負け犬ムードだった。
口の時点でほとんど勝利が確定していた。
というか、長田は口だけで負けてしまった。
だが、鞍馬は違う。喧嘩には喧嘩で返した。
丹波の対戦者としての資質十分だ。
久しぶりに丹波のかっこいいところを見れそうだ。
バーベルで殴りかかるとかは勘弁な。
しかし、喧嘩とはいえ勝負は勝負だ。
勝負においてプロレスの技は生きるのだろうか?
空手ベースの丹波の方が分がありそうだ。
それともルールに縛られない喧嘩でこそ、鞍馬の脅威の身体能力が発揮されるのか。
丹波とて油断の出来ない勝負になりそうだ。
二人にとって負けられない勝負だ。
特に鞍馬は負けたら梶原になんて言われることか…
ねぇねぇ、丹波に負けてどんな気持ち?
6年間まともな出番のなかったキャラに負けてどんな気持ち?
∩___∩ \悔しいです・・・ビクンビクン!/∩___∩
♪ | ノ ⌒ ⌒ヽハッ __ _,, -ー ,, ハッ
/ ⌒ ⌒ 丶| ねぇ、丹波に虎王
/ (●) (●) ハッ (/ "つ`..,: ハッ (●) (●)
丶 食らってどんな気持ち?
| ( _●_) ミ :/ :::::i:. ミ (_●_ )
| 餓狼(笑)に奥歯
___ 彡 |∪| ミ :i ─::!,, ミ、 |∪|
、彡____まで砕かれて
ヽ___ ヽノ、`\ ヽ.....::::::::: ::::ij(_::● / ヽノ
___/ どんな気持ち?
/ 梶原 /ヽ < r " .r ミノ~. 〉 /\ 長田 丶
/ /  ̄ :|::| 鞍馬 ::::| :::i ゚。  ̄♪ \ 丶
/ /
♪ :|::| ::::| :::|: \ 丶
(_ ⌒丶... :`
| ::::| :::|_: /⌒_)
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し )).
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ソ
トントン ソ トントン
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