餓狼伝 Vol.220



焼き鞍馬の完成だ!
ざまぁ!と声があがりそうだ。
ざまぁ!鞍馬ざまぁ!
梶原に慰められても泣くな。

そんなわけで鞍馬は焼き上がった。
さすがに死んだわけではなかった。が、効果覿面だった。
眉が焼かれ、なくなってしまい鞍馬は別人のようだ。
いい男が台無しという奴であった。

人が焼けた匂いに嫌悪感を催すグレート巽だった。
でも、何か慣れているように見える。
もしかして、ダメレスラーを何人か焼却済みなのか?
やりかねん。グレート巽ならやりかねん。

「ヒコイチ」「やり直せ」
「フンドシ担ぎからだ」


要するに下っ端からやり直せとグレート巽は言う。
後継者と期待された寵児の未来は丹波によって閉ざされた。
だが、下っ端からやり直せるだけまだ幸運なのかもしれない。
グレート巽なら完全な焼き鞍馬を作っていてもおかしくはなかった。

下っ端からやり直し…鞍馬は息を呑む。
梶原と同格にまで格下げというのは想像するだけで恐ろしいことなのだろう。
梶原が下っ端かどうかはわからないけど、役者的には下っ端同然だ。
鞍馬だってあんな扱いをされると思うと…

グレート巽はFAWの良心、川辺に電話をかける。
鞍馬はただ黙っているだけだった。
そんな鞍馬にグレート巽は声をかける。

「とっとと失せろッッ」

ざまぁ!鞍馬ざまぁ!
もはや鞍馬にはただ建っていることすら許されない。
金的人形だ!
鞍馬は2コマに渡ってただ呆然とした後に部屋を出る。
もはや発言すら許されていないレベルだ。
グレート巽と握力の比べ合いをした鞍馬はどこへ…

丹波に無様に敗北したペナルティは本当に大きかった。
そして、よほどダメな負け方をしてしまった。
うん、アレはダメな負け方だ。
ダメすぎて丹波が憎々しく思えるほどだった。

さて、グレート巽は川辺に麻田亮・犬飼五郎・須黒康介の3名を手配するように言いつける。
川辺はその3名の名前を聞いた瞬間、どうやら焦っているようだった。
どうやら曰く付きの3名らしい。
この3名を呼びグレート巽は何を企むのだろうか。

さて、夜になる頃には3名がグレート巽の元へ招集されていた。
瞳の位置が散眼状態のスキンヘッドが麻田…長身で無精ヒゲを生やしたドリアン似の犬飼…背の小さい須黒だ。
それぞれがそれなりの年齢のようで若くはない。華のある外見にも見えない。
しかし、鞍馬を差し置いて招集しただけあり実力は折り紙付きなのだろう。

その3名にグレート巽は100万円ずつ渡そうとする
いきなりの札束だ。胡散臭いにもほどがある金だ。
まして渡しているのがグレート巽…悪魔との契約にも思えてくる黒い金だ
受け取ればヤバい仕事をやらされる…そうに違いない。

だが、この3人は冷や汗も何もなしで100万円を受け取る
よく理解(わか)ってやがる。
梶原や鞍馬なら冷や汗が止まらなかったところだろう。
hai!鞍馬は梶原と同じランクです!

麻田は受け取ってから理由を問う。
しかし、理由を聞く前に受け取っていることから、どんな理由であろうとも受け取る気だったのだろう
黒い。黒い連中だ。
挙げ句、早速100万円を財布に入れる。
どんな理由であろうと返す気がないということだろうか。
どこまでも黒い。

この3名をグレート巽はロートルレスラーと言う。
客も呼べない…センスもない…未来もない…
ひどい言いようだった。
興行的にはお荷物同然の3名をグレート巽は何故呼んだのだろうか。

「運動家(アスリート)でもない 格闘家(ファイター)でもない 3人共が生粋のプロレスラー」
「“プロレスラーこそ最強だ”と―――― 偽り続けて幾十年」
「嘘吐きとしてのキャリアが他とは違う」


麻田、犬飼、須黒はグレート巽が認めるほどの生粋のプロレスラーだった
プロレスラーならではも駆け引き…八百長やワイロなどにもこの3人は秀でているのだろう。
武術家に対抗しうる純粋足るプロレスラーなのであった。

「丹波文七を囲め 3人で」

丹波文七のリンチが100万円の理由であった。
たった一人で3人がかりでボコれとは遠慮のない命令だ。
この命令を聞いて3人の目の色が変わる。真剣そのものだ。
そして…3人は笑った。
3人がかりで丹波を始末することに一切の躊躇いがないのだ。
黒い。実に黒いプロレスラーだ。

「フフ 目的を聞いて誰一人金を返す者がいねェ 見込んだ通りのドグサレ振りだ」

ひでえ言いようだ!
こんな外道だからこそ、グレート巽は丹波にぶつけるのだろう。
実力はわからないが、黒さが今までの相手とは違う。
何より3人がかりなことが違う。
腐れ外道の丹波とて油断の出来ない相手なのかもしれない。

そんなわけで腐れ外道レスラーが丹波の次の敵と相成った。
腐れ外道VS腐れ外道だ。
外道勝負はどちらが制するのだろうか。
次回へ続く。


外道戦法で勝ち抜いてきた丹波に初めての曲者が差し向けられた。それも3人で。
外道部分では互角かもしれない。
ただ外道以外の部分も一流なのが丹波だ。
外道レスラーたちの実力はどうなのだろうか。
…あんまり強そうには見えないな。

人は多人数で戦うことに慣れていない、とバキで述べられていた。
外道レスラーたちはどうなのだろうか。
プロレスにはタッグマッチがあるが、さすがアレと実戦は別物だろう。
果たして3人がかりはアドバンテージになるのであろうか。

それとも丹波がアイアン・マイケルのように殴る蹴るされまくるか?
よし!いいぞ!好きなだけやれ!
ピンチの丹波を救いに現れるのはライバルの梶原だ。
同じように殴る蹴るされまくる。


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