餓狼伝 Vol.221



300万円で丹波包囲網が完成だ!
逆に言えば、丹波の価値は300万円なんだよな。
格闘家としての実力に反してかなり安い。
まぁ、日本経済への貢献度で考えたら妥当か?


さて、とある工事現場…そこは工事によって道路が塞がれていた。
そこを車で通りがかったチンピラが整備員にどけと喧嘩をふっかける。
普通にどけません。どいたところで車が危ないです。
どかせるために文句を言っているのではなく、喧嘩を売るために文句を言っているのか。

だが、整備員、丹波文七は気圧されることなくだらしない笑顔で受け流す。
………
…え?丹波が整備員のバイト?
嘘だッッ。
この人、何やってんの!さっさとニート生活を堪能しちゃいなよ!
定職ではないにせよ、丹波がきちんと働いていることは大きなショックだ
君には失望した…働いていない方がよっぽど丹波らしいというのに…

車を降りてまでチンピラは因縁をふっかける。
やはり、丹波はだらしない笑顔で対応する。チンピラの気は当然収まらない。
だが、働いているとはいえ丹波だ。制服を着ても隠せない盛り上がった筋肉は常人とはまるで違う。
明らかに返り討ちに遭いますよ。
ここらでチンピラは引いた方が…

しかし、彼我の戦力差を一向に考慮しようとしないチンピラは何も考えないぜ!
素人同然の蹴りだ!
丹波の腕に「ド…ッ」と当たる。「ポス…ッ」じゃなかったのがせめてもの情けと言わんばかりの情けない打撃音だ。
「ポカ…ッ」だったら萌えキャラになれます。…あ、烈ゥ。

当然、丹波の筋肉の鎧に通じることなくノーダメージである。
それどころか、蹴った側がバランスを崩して体勢を崩す。
まったく蹴り慣れていないチンピラだった。

さて、丹波の反撃は…今度は100%の営業スマイルだ!
工事現場にいるが魂はマック店員だ!と言わんばかりのスマイルである。
これを見せられたチンピラは引かざるを得ない…

丹波は日にちによってはコンビニなどで営業スマイルを見せているのかもしれない。
勤労青年丹波なのである。
に、似合わねぇ…
読者の信頼を裏切らないためにも今から引きこもってみてはいかがか。


さて、夜になると昼間のだらしない笑顔とは打って変わった餓狼の表情で街に繰り出す丹波であった。
どこへ向かうのか、と思ったらビジネスホテルだった。
作業員として日銭を稼ぎつつ、定住することなく戦いの日々に明け暮れているようだ。
これでアパートなんかに住んでいたら全力で失望されていたところだ。
うむ。ビジネスホテル暮らしは丹波らしい。
当然、毎日ホテルというわけにもいかないだろうから、たまに公園とかで寝ることもありそうだ。
うむ。なおさら丹波らしい。

ビジネスホテルまで目と鼻の先まで迫ったその時。
丹波は後ろから声をかけられる。
声をかけたのは外道プロレスラー麻田(ハゲ)だ。
早速、丹波に喧嘩をふっかけた。行動が速い。

丹波は麻田に駐車場まで呼び出される。
ほいほいとついていきますよ。
僕…麻田さんみたいな人、好きですから…

「見ず知らずのあたしに事情も尋(き)かずついてくる たいへんな自信だ」

「額の傷――体格(にく)の持つ空気――物腰―― 情報がいっぱいだ」
「プロレスラー それも超ベテランのね」


丹波は一目見ただけで麻田の本質を見切っていた。
さらにグレート巽の命を受けたことも言い当てる。
強者に必要なのは腕っ節だけでなく、相手の実力を見切る観察眼もだ。
丹波は実戦で生きる(外道)武道家だけあり、一級の観察眼を備えていた。

さらには麻田が汚い手を使うプロレスラーであることも丹波は見切っていた
さすが、長田と片岡を汚い手で屠った男だ
自分が汚い手を使われることも覚悟している。同時にそれを行うような相手かどうかを見通している。
ただの卑怯者じゃない丹波であった。一級の卑怯者です。

幼児が相手でも反則で――麻田はそんな徹底した外道面だと丹波は語る。
ここまで言われても麻田は表情を何一つ変えない。
ベテランだけあり肝の据わった男だ。

不意打ち、と言わんばかりに、麻田はくわえていた煙草を丹波に投げつける。
当然、丹波はかわす。
次の瞬間、横から飛び出してきた須黒(チビ)のタックルが丹波の両脚に決まった
完璧な不意打ちだ。これには丹波も不意を突かれる。

丹波はそもそも場所を指定された時点で怪しかったことに気付くべきだったのだろう。
麻田の実力を見切り…そして、自分には及ばぬものだと油断したのかもしれない。
だからこそ、麻田以外にも敵がいることを計算に入れてはいなかった。
丹波の油断が引き起こした失態であった。

(二人掛かり(タッグ)……ッッ?!!)

丹波大焦りだ!
冷や汗が流れる。流れまくる。
これでいきなりトンファーを出された人の気持ちがわかったかと思う。

さらに須黒はただの雑兵ではない。鍛えられたベテランプロレスラーだ。
丹波がふりほどけないほどの力で両脚を押さえつける。
丹波の動きは封じられた。大ピンチだ。

その時、後ろに麻田の足音を聞く。
危機を感じ振り向く丹波の顔は…完全に狼狽している
この顔を見たくてたまらなかった。
働いたりしてらしくない姿を見せた丹波であったが、ここに来て丹波らしい姿を見せてくれた!

「ごっつぁんです」

麻田の蹴りが丹波の顔面に決まった。
完全なクリーンヒットだ。丹波は鼻血を流す。ダメージ十分だ。
さらに麻田は拳を丹波に何度も振り下ろす
試し割りの原理でダメージは上がっていることだろう。
初手から必殺級のダメージを負ってしまった。

遠目に見ていた犬飼(長身)は圧倒的な優勢にこの時点で既に勝利を確信していた。
脚は封じられたから逃げることは出来ない。この状況では手を使った攻撃も行いにくい。
単純ながら無駄のない戦法で外道プロレスラーたちは、一気に優勢を保つことに成功した。
さらに外道プロレスラー軍団はまだ犬飼を控えている
敵は二人だけではない。大ピンチの丹波だった。
次回へ続く。


ついに丹波に報いの時が訪れた。
因果応報というヤツであった。
これで卑怯だぞ!とか言えば、お前が言うな大賞を受賞できる。

丹波は両脚を封じられ大ピンチだ。
脚をふりほどかないと何も出来ない。
かといって、ここからふりほどく方法は少なくとも格闘技の定石にはない。
片岡だったらそのまま負けてしまいます。

だが、丹波は武道家だ。
勝つためなら何だってやるぜ。
例えばドスを取り出したりな!
そこまで恥も外聞も投げ捨てる男かは怪し…くないんだよな、今の丹波。

あるいはここで丹波側に助っ人が来るとか。
餓狼伝初の多人数対多人数だ!
当然、助けに来るのはライバルの梶原だ。
…ごめん。来なくていい。
一人で頑張れ。丹波。


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