餓狼伝 Vol.222



丹波はいきなり袋叩きにされ、いきなり大ピンチだ。
やっぱり、働いたのが不味かったのか?
実生活を充実させれば駄目なのだ。ハングリー精神こそが戦いに潤いをもたらす!
これぞまさに餓狼。


(バカなッッ この俺が…ッッ)
(この俺が…ッッ 空手家のこの俺がッッ)
(プロレスラーに遅れを取ってる…………ッッ)


超油断してたんだ、この人!
ダ、ダメダメじゃん。
いくら相手がプロレスラーだからって侮りすぎですよ。
長田と鞍馬を一蹴して調子に乗ってしまったのか?
餓狼じゃないよ、これじゃ。肥狼(ひろう)だよ。
だから、働くなと…

丹波は前回、麻田(ハゲ)をベテランレスラーだと認めていた。
でも、ベテランはベテランでも所詮はプロレスラーくらいの認識だったのか。
グレート巽に翻弄されたことはすっかり忘れました。
あと自分が空手家って認識があったのかよ。トンファーとか匕首とか、あれも空手道具なのかよ…

丹波は相変わらず両脚を須黒(チビ)に両脚を掴まれたまま、麻田に踏みつけを行われる。
丹波とて無抵抗に攻撃を受けるわけではない。両腕を使ってガードをしている。
脱出手段はないが、こうしている限りはダメージをKOされることはないだろう。
だが、悪あがきに等しい。苦しい状況だ。

埒があかないと踏んだのか、麻田は丹波の頬の内側に手を伸ばす。
噛みついて抵抗できない。防御の出来ない部位を狙った。
そして、引っぱる。丹波はいつの間にか立ち上がっていた。
同時に麻田に羽交い締めにされた。
これでガードに使う腕を封じた。

丹波の前に須黒が立つ。
今度は須黒が攻撃を仕掛けるようだ。
しかし、この体勢になると脚を使える。
すかさず丹波は須黒を蹴り上げようとする。
その狙いは金的か。だが、見事にガードされる。
須黒は背に恵まれていないものの、鍛え上げられていた。

蹴りをガードされ丹波は思わず呆然とする。
呆然としていいのかよ!
さっきからダメキャラが炸裂してばかりいる。ヒモ属性を身に付けようとしているのだろうか。

そんな甘い考えを打ち砕くように須黒のパンチがクリーンヒットする
今度はガードできない。鼻血が飛び散る。
何発も須黒のパンチが決まる。
羽交い締めをして、もう一人に殴らせる…シンプルながらもディープな連携だ。

丹波は抵抗することすら出来ず殴られ続け、やがては頭を垂れ下げる。
気を失ったのか?
麻田は若干油断してしまう。
その瞬間を狙って丹波は後頭部で頭突きを食らわせた
目の前の須黒ではなく、背後の麻田を攻める。まずは羽交い締めを解こうという考えか。

不意打ち同然の形で入ったからか、麻田は涙を流し羽交い締めを解いてしまう。
さすが、不意打ちは丹波の得意技だ。
いや、実際にそうなのかはわからないけど、ここ最近の暴虐を見るに不得意な方がおかしい
それが丹波です。

麻田がのけぞったところに、腹部に背を向けたまま蹴りを放つ
強力な一撃だ。大きなダメージがある。
さらに前方の須黒には目にも止まらぬハイキックを放った
矢継ぎ早の2連撃で二人の動きを止め、挟み撃ちの状態から二人を前方に置くポジション取りをする。
不覚を取った以上、不用意に仕掛けず体勢を立て直すことを重視する。実戦派の丹波らしい、的確かつ冷静な判断だった。

だが、丹波の一撃をモロに食らったというのに二人とも倒れていない
丹波の攻撃は片岡や鞍馬を一蹴するほどの攻撃力を持つというのに…
麻田も須黒も外道とはいえ、プロレスラーだった。
プロレスラーらしい耐久力を見せる。

それでも麻田と須黒の顔には冷や汗が見える。
どうやら実力差を示すには十分な打撃だったようだ。
グレート巽の予測通り、実力には大きな差があるようだ。正面きって戦うのはまずいか?

「てめェら……」
「こちとら真剣で生きてんだぜ」
「殺(や)るか殺(や)られるかで生きてんだよ」
「空手家嘗めんじゃねェェッッ」


丹波が吠えた!いや、吠えるのかよ!?
さすが、中学時代はハッタリとトリックで不良のトップに立った男だ
手を出したら、口も出す。口を出さずにはいられない!
本当につよいやつは強さを口で説明したりはしないからな。
口で説明するくらいならおれは牙をむくだろうな。
おれ真剣で生きているしやるかやられるかだし。

でも、殺るか殺られるかの男が不意打ちで押されたら立つ瀬がない
殺るか殺られるかなら、口出す前に殺っておこうよ。
それに空手家を嘗めるなって嘗められ放題だったじゃないか。
丹波さんにはがっかりだよ!
自分でもけっこう無理矢理だと思ったのか、丹波は冷や汗ながらに凄んでいる。迫力が台無しです。
…丹波だからこうなったけど、姫川あたりなら普通に対処しそうだな。

「丹波さん……」

「「おみそれしました」」

ここで麻田と須黒は土下座をする。
敗北のベスト・オブ・ベスト!
どうみてもフェイクだ。外道の土下座ほど信用できない。
当然、丹波はその頭を蹴るくらいはしてくれるはず!
だって、丹波も外道だもん!

「……………いや……………」
「はァ!?」
「ふざけンじゃ――――――」


だが、ダメダメだ!
いやいや、違うだろ、丹波。
リアクションの順番も何だかおかしいぞ。
土下座なんて隙だらけだ。そこを攻めずにいつ攻める。
やっぱり、働いたから…
働いたことで丹波から武の神様が逃げてしまったようだ。

丹波は油断した。
そこを犬飼(長身)が後ろから殴った
金的ではないのがせめてもの情けだ。
油断して殴られる。もう、ボケとツッコミのレベルである。
今の丹波はアイアン・マイケル同等のレベルまで落ち込んでいる。

(不覚…ッッ もう一人……?!!)

どうやらモロに不意を突かれたようだ。
不覚も不覚。何回不覚を取れば気が済むんだ。
こんな油断たっぷりの男に長田も片岡も鞍馬も、敗れたんだよな。
くそう…あいつらの屍が報われない…

犬飼は丹波にコブラ・ツイストを決める。
関節の柔軟な格闘家に直接的なダメージは与えられないかもしれない。
だが、犬飼の狙いはダメージではなかった。
…麻田と須黒が立ち上がる。
そして、動けなくなった丹波を二人がかりで殴る。
息のあったコンビネーションだ。そして、丹波は油断しすぎだ
ともあれ、大ピンチのまま、次回へ続く。


ダメ、丹波、全然ダメダメ!
何かもう、濃厚すぎるほどにダメオーラが醸し出している。
丹波は卑怯な手を使って勝ってきた。生粋のヒールなのだ。
が、そのヒールが卑怯な手にやられてどうする!?
格好悪いってレベルじゃないぞ。
これで卑怯だぞ!と叫ぼうものなら、かなりいい感じになる。

丹波は格闘技の技術という点では外道レスラーたちを凌駕しているようだ。
だが、パワーとタフネスだけで言えば、丹波に遅れを取っていない。
外道レスラーの打撃は十分な効果を発揮し、丹波の一撃をモロに受けてもダウンしていないのだ。

そして、この二つの長所だけを前面に押し出した戦術を忠実に実行している。
正面切っての駆け引きは不利だから、油断させてからの不意打ちを主とする。
丹波を捕らえて絶対の安全を確保したところで、自慢のパワーで攻め立てる。
合理的だ。丹波のように変な油断がない。
300万円分、きちんと働こうとしているプロ意識がある。

ここから丹波はいかにして逆転するのだろうか。
外道には外道。
丹波の外道が本気を出す時が来るかもしれない。
とりあえず、携帯を取り出す。ないようなら、公衆電話まで走る。
そして、110に電話だ!レスラーに襲われています!助けテ!
丹波だって、手段は選ばん。

ただ、これだと本気で格好悪い。
ここで仲間に助けに来てもらおう。
これなら丹波の評価もあんまり落ちない。
当然、助けに来るのは外道レスラーに対抗して、正道レスラー…
梶原と宮城だ!
これで3対3、文句はねえな。餓狼伝初の多人数戦が始まろうとしている。
なお、宮城は1巻で丹波に瞬殺されたレスラーです。


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