餓狼伝 Vol.226
丹波が外道レスラー3人を一蹴した。
本気の丹波は強い。
卑怯なだけではない。実力も兼ね備えているのだ。
そんな丹波の珍道中。次はどこへ行くのだろうか。
さて、とある空手道場で小学生程度の子供たちが稽古をしていた。
男の子だけでなく女の子も混ざっている。
大人の姿は指導している神山徹だけだ。
どうやら少年空手道場らしい。
って、神山さんが少年空手道場ゥ?
…似合わないな。
あんた、久我重明のお墨付きの黒い空手家じゃん。
裡に秘めた黒さは北辰館トーナメント随一だ。
そんな神山さんが少年たちに空手を教える…嘘臭いにもほどがある。
子供たちは熱心に稽古をしている。
神山さんの指導の賜物だろうか。
どうやら暗黒空手を教えているわけではなさそうだ。
表向きは人格者なのが神山徹である。
突如、子供たちの手が止まる。
神山徹の真後ろには丹波が立っていた。
神山さんは丹波の接近に気付いていなかった。
丹波はわざわざ気配を消していたのか?
何を考える丹波。子供たちの目の前で血の雨を降らせる気か?
「オーーッ丹波さんッ」
「よくきてくださったッ」
だが、神山さんはフレンドリーに接する。
丹波珍道中の中でここまでソフトな接触は初めてだ。
丹波にも笑みが見える。
戦いのために来たわけではないのか?
「髪の毛…… だいぶ白くなっちゃいましたね」
言われてみると神山さんは全て白髪になっている。
初めて本編に描かれた時は全て黒髪だったのに…
いや、あれは何か違うけど。
姫川に敗北した精神的ショックが影響しているのだろうか。
しかし、そのわりには神山さんは生き生きしている。
一体何があったのだろうか。
稽古が終わったのか、丹波は神山さんの自宅にて夕食に招かれる。
神山さんは丹波に酒を注いであげている。
フレンドリーだ。
丹波もそれを受け取る。
フレンドリーで、お互いに敵意は見られない。
そして、神山さんは新婚で初婚であることが判明する!
嫁は明らかに20代だ!
神山さんってリア充!?
姫川に敗北したことで裏返ったのだろうか。
さて、神山さんは丹波を呼んだのだった。
呼んだ理由は青少年の育成、神山流空手道場の経営をやってみないかというオファーだ。
いやいや、神山さん。
丹波は教育者として不適任にもほどがある。
たしかに強いが、青少年の育成には向いていない強さだ。
加藤が量産されてしまうぞ。あと涼二忘れてないか、お前。
あ、丹波から学んだ涼二はダーティファイターになっていた。
…青少年を育成させちゃダメだよ。
神山さんは姫川に敗れて以来、自分を見つめ直したようだ。
ちょっと見つめ直しすぎてリア充一直線だ。
いや、それは見つめ直したことに成功したのか?
「空手バカと言われ 半ば悦に入っていた
わたしが その実――」
「ただのバカだったという現実です」
神山徹、約50歳。
空手に尽くしてきた人生を振り返る。
そして、空手以外の者に目を向けた。
こうして妻が出来た。童貞も卒業出来ました。
携帯電話も持つようになった。便利です。
本格的なフランス料理やイタリア料理を食べました。腰が抜けるほど美味しかったです。
日本酒やスコッチ、ワイン。酒を知らなかった自分を恥じた。
そして、先週覚えたばかりの葉巻。
神山さん、超リア充コースを歩んでいた。リア充以外の何だって言うんだよ、これ。
「こうして紫煙を目で追っていると 様々なものが見えてくる」
「特に様々なものに背き続けていた 自身が――」
「見えてくる」
…空手に全てを尽くしてきたであろう神山さんらしからぬ弱い言葉だ。
空手の比率を下げ、別のものを見るようになった。
今までの自分は愚かだったな、と思っていそうだ。
リア充になるためには正解かもしれない。
だが、最強を目指す一人の男としてはそれは正しいのだろうか。
「最強の称号から目を背けようとする自身も ですか……?」
それに口を出したのは丹波だ。
最強になることを丹波は諦めてはいない。
神山さんのように妻も持たなければ、携帯も持たない。
料理だってタンパク質最優先。酒を飲むことも少ないだろう。
日銭を工事現場のバイトで稼ぎながら、ビジネスホテルで寝泊まりする。
場合によっては野宿だって多いことだろう。
そんなリア充とはほど遠い生活をしながら、最強を目指す。
それが丹波という男だ。
それ故に、神山さんの申し出を受けることはなく、神山さんの言っていることにも賛同は出来ないだろう。
丹波は神山さんの道場の住所、本町(モトマチ)2丁目を30分探したという。
その理由は本町(モトマチ)と本町(ホンチョウ)を間違えていたからだ。
これにはさすがの神山さんも呆れてしまう。
さすがにそれは読み間違えないだろう…
私が昔住んでいた県外の住所の読み方を4年かけてもわからなかったとかそういうことは置いておこう。
「どこに出しても恥ずかしい立派なバカです」
「地上でイチバン強ええ空手 バカじゃなければ務まりません」
「俺や神山さん――」
「あなたのような」
リア充になった神山さんだが、その本質を丹波は掴んでいた。
リア充であれど強いんだ星人なのだ。
最強を志し、人生の全てをそれに賭けた。
その道から外れようとしても、外れることは出来ないのだろう。
神山さんは丹波との戦いを決意したのだろうか。
妻、ミチエに胴着を持ってくるように頼んだ…時には既に持ってきていた。
武道家である夫をよく理解している妻であった。
本当に新婚なのか?
若さからはまるで想像出来ないほど神山さんのことを理解している妻だ。
ここは本当にリア充になって正解だと思う。
「引き戻してくれると思っていたよ…… 丹波文七ならきっと…………」
妻をめとって、道場経営…
最強だけを目指す餓狼ルートへからリア充ルートへ向かった神山さんは、内心後悔していたのかもしれない。
今までの人生を否定するような行為だ。
軽々とはリア充ルートに入ることは出来ない。
そこに丹波が現れた。
神山さんが丹波を呼んだのは、自分に進むべき道を指し示して欲しかったからかもしれない。
丹波は純粋な餓狼だ。当然、最強を目指すための戦いを選ぶだろう。
そんな丹波がリア充に甘んじるようなら、自分もリア充になっても恥じることはない。
だが、戦いを選ぶようなら…
神山さんの最強への未練を断ち切る戦いになるのか、それとも…
次回へ続く。
ついに神山さんが登場した。
トーナメント随一の実力者だ。
相手が反則級の天才だった姫川だったことが唯一の不運である。
でも、すっかりリア充になってしまっている。
お前それで良いのか?
神山さんは当てるのか、当てないのか。
当てる空手は神山さんにとって暗黒面の象徴だ。
金的、目潰し。当てる時の神山さんは何でもありなのだ。
もしも、その当てる空手で負けたら、最強を目指した自分を完全に払拭出来る。
我が生涯に一片の悔いなし。
いや、うまくいけば育児も行うから悔いあり。
悔いを残さないためにも当てていくのか?
この戦いはリア充 VS
notリア充だ。
壮絶な死闘である。
一体、どちらが戦いの場で上回るのだろうか。
丹波は危なくなったら大河は俺の嫁とでも言ってみるか?
いや、もっとリア充度下がるよ。
そして、丹波は金的を食らわすことだけは容赦願いたい。
せっかくリア充になったのに睾丸潰されたらがっかりだよ!
ただ、外道レスラーを瞬殺した時のように、本気になった丹波はノー慈悲ノー手加減だ。
…とりあえず、神山さんは睾丸だけは死守しておこう。
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