範馬刃牙 第103話 敗北の報
範馬刃牙復ッ活ッ。
昔のいい刃牙が帰ってきた。
今ならこの作品の主人公になれる!
そして、今回は刃牙の出番は扉絵だけだ!
いいんスか、それで。
神心会本部の道場で独歩が多くの門下生の前で試し割りをしていた。
まずはテーブルの上に乗った四角形をしている氷柱の破壊だ。
独歩の身長の半分はあるほどでかい。
ツララじゃないぞ、ヒョウチュウだ(六女かよ)。
かなりダサいが普通に殴れば氷柱はテーブルを滑って床に落ちかねない。
もっとも、テーブルに凍り付いてくっついている可能性も否定できないが。
これだけの氷柱を横から殴って破壊するには筋力以上に技術が必要になることだろう。
「ぬんッ」
独歩は氷柱に拳を当てたまま佇み、その状態から身体を動かさずに腰と腕を捻って目の前の氷柱に拳を押し込む。
完全な密着状態からの打撃だ。
普通なら威力は半減どころの話ではない。
だが、氷柱は粉々に砕けた。
どうやって衝撃を氷柱に伝えたのか、非常に不思議な技だ。発勁などその辺の技だろうか。
鍛えられた肉体と技が生み出す武神愚地独歩ならではの試し割りだ。
独歩なら烈がやったブロック割りもできそうだ(89話)。
その光景を門下生と共に克己も見つめる。
最大トーナメント後、独歩が去った神心会の元締めになったはずが、結局はこの位地に落ち着いている。
かわいそうだ。
バンダナなんかを巻くことでせいぜいのオシャレをしてアイデンティティを保とうとしている。
そういえば、ピクルのところに出向いた時もバンダナ巻いていたな。
何でだ?
ピクルにルーザールーズを挑むためか?
[初めて見る…………“針金切り”]
独歩は今度は氷柱の次はブロックとブロックの間に無造作に置かれた針金を試し割りの材料に選んだ。
大きく壊しにくい氷柱とは真逆で、小さくて曲がりやすい素材だ。
“針金切り”というからには、この不安定な状態で置かれている針金を素手で斬るのだろうか。
間違いなく瓦を割るよりもずっと難しい。
並みの空手家なら切れずに曲がるだけだろう。
「つッ」
だが、人間凶器の完成形とも言える独歩の前に道理は引っ込む。
手刀で針金を両断した。
恐ろしい切れ味の手刀だ。
かつてドリアンのアラミド繊維を切り裂いた手刀は一向に衰えていないらしい。
「日本刀でもこうはいかねェ…」
針金の鋭利な切り口に克己も驚く。
なんかすっかり克己の立ち位置が加藤だ。
この妙にさっぱりしている驚き顔はもう…
二十歳で壜切りを成し遂げ、独歩を才能がないと言ったのは随分昔の話になったようだ。
それにしても、神心会驚き役コンビの加藤と末堂が独歩の試し割りに立ち会っていないのが不憫だ。
加藤はバキ275話でガラの悪い私服で道場に入ってため神心会から距離を置いているのかもしれないし、
末堂は…まぁ、生死不明だからしょうがないか。
しょうがないが…ホント扱い悪くなったなぁ、こいつら。
独歩は見事な試し割りを披露した。
しかし、この姿はピクル戦前に試し割りしていた烈とかぶる。
その後、ひどい目にあった。
…もしかして、今度は独歩が喰われちゃうの?
克己が加藤の位地に甘んじたのは喰われないようにするためかもしれない。
そんな折に独歩に徳川のじっちゃんから電話が入る。
内容は当然のごとく烈がピクルに喰われたことだった。
徳川のじっちゃんはちっとも落ち着いていない。
要領を得ない徳川のじっちゃんの言葉もあるが、百戦錬磨の独歩ですら烈が喰われたという事実を飲み込めていない。
愛弟子末堂の墜落死、じゃなくて墜落を見ても取り乱さなかったあの独歩が、だ。
負けたではなくリアルに喰われるなんて、キャリア豊富な独歩の闘争人生ですら一度もなかったことだろう。
「つまり烈
海王がピクルに敗け」「ちがう……?」「敗けたのではなく…………?」
「食われた――と」
独歩は最初は「喰われた」と「喰」を使っていたが、「食われた」と「食」に切り替えた。
バキ世界では「喰う」は主に勇次郎が使い、対戦相手を叩き潰す意味が濃い。闘争の意味がある。
だが、「食う」は食事をする時に使われる。
食事以上の意味がなく食事以下の意味もない。
つまり、ピクルと烈の戦いは闘争ではなく、ピクルの食事にすぎなかったのだ。
この衝撃的なニュースを聞き終えた独歩の目は見開く。
相当の驚愕があるのだろう。
ピクルはあの烈海王を食うことをできる力量と、本気で人間を食う危険性を備えているのだ。
武神をしてもその危険性は驚くに値する。
早速、独歩は克己を自室に呼び、烈食われ事件を伝える。
「あの烈 海王が敗けたと…」
克己大驚きだ。
まぁ、そりゃあ、恋人がやられたら…
とりあえず、寂海王の先手を打てた気がする。
烈争いは克己が一歩リードか?
いや、刃牙が数十歩リードしちゃったか…
「敗けたのではない」
「餌」「餌にされたのだよ あの拳雄がな」
「〜〜〜〜〜ッッ 舐めやがって…………ッッ」
「喰われた」ではなく「食われた」であることを強調する独歩であった。
でも、これだと烈が無抵抗で食われたみたいな言い方だな。
一応は頑張りました。ピクルの本気を出すには至りました。
もっとも、そこで終わってしまったわけだが。
結果としてピクルにダメージはほとんどなかったわけだし、暴れる餌を押さえつけるような感覚だったのかもしれない。
まぁ、当のピクルは烈に友情(仮)を感じていて号泣してたけど。
烈が食われたことで怒り心頭の克己に対し、独歩は終始冷静だ。
ピクルは舐めていると主張する克己は言うが、独歩はピクルは舐めていないと反論する。
「舐められる………ってのもおめえ
一つの権利―――資格だぜ」
「ピクルは舐めとらん」
「我々が魚や肉を舐めてないようにだ」
自分たちは対戦者以前に餌としか見られていないと独歩は言う。
そりゃあ、料理を侮辱する人間はいない。
そもそも同じ土俵に立っていないからだ。
ピクルと格闘家たちも同じような関係なのだろうか。
いや、ピクルは烈を敵として認めていたけど。
何にせよピクルは巨大すぎる存在だ。
「ワカってねェのはアンタだよ」
「もう一度言う そーゆーのをナメてるって言うんだよ」
餌としてしか見ないことがそもそも侮辱だと克己はキレる。
独歩をアンタ呼ばわりしてやけっぱちに起こっている。
今の克己は例え自分が餌であろうと噛みつく気満々だ。
まさに神心会のデンジャラスライオンだ!
すまん。言ってはいけないことを言った。
しかし、実際に食われるんですよ。
もう烈を食わせた以上、板垣先生は遠慮しないと思われる。
その…君がいなくなると寂しいな…克己…
克己のやけっぱちに何か感じるものがあったのか。
独歩は納得する。
独歩も餌扱いされても噛みつくだろう。
神心会コンビの未来はちょっと危ういかもしれない。
烈海王が食われた事実は厚木基地に集まった格闘家たちにも届く。
勇次郎にだけ報告されていないようだが、多分無根拠に知っているから問題ないだろう。
その頃、地下闘技場では異変が起きていた。
かつて麻酔で眠らせた勇次郎を閉じ込めておいた鋼鉄の扉が破壊されていたのだった。
ピクルをこの扉の中に閉じ込めたに違いない。
だが、破壊された。
脱走されてしまった。
「白サイを一晩眠らせるだけの麻酔を……ッッ たった数時間で……ッッ」
この事態にはペイン博士も驚く。
烈が食われそうになった時よりも驚いている。
いや、あの時は驚いてすらいねえよ。
ペイン博士は鋼鉄の扉が破壊されたことよりも、麻酔から数時間で醒めたことの方が驚きらしい。
つまり、ピクルの筋力なら鋼鉄の扉くらい障子紙だよ、と。人間風情が相手にならないよ、と。
でも、現代文明の粋の麻酔がある。
麻酔>筋力だと思っていたら、筋力が麻酔を凌駕してしまった。
狂人のくせして、こういう部分はなんか一般常識に縛られている人だ。
それにしてもあの麻酔アタックから数時間しか経っていないんだな。
僅か1日のうちにめまぐるしく情勢が動いている。
「エラいことが起こったのは………………百も承知じゃが………
正直
笑いがこみあげるわい」
そして、徳川のじっちゃんには烈食われ事件を過ぎても相変わらず反省の色が見られない。
いや、笑っている場合じゃねえよ。
第二第三の犠牲者が出ようとしているんだよ。
もっと焦りやがれ。
「このドアをブチ破ったのは過去―――」
「範馬勇次郎
ただ一人なのじゃから」
優秀なグラップラーなら鋼鉄のドアくらい破壊できる気がするが、
徳川のじっちゃんはピクルに勇次郎並みの暴力が秘められていると沸き上がる。
この人、勇次郎がピクルに力で押し切られた事実を知らないらしい。
知っていたら大喜びしただろう。
そして、その脅威に烈を…晒させただろうな。間違いない。
地下闘技場から抜け出したピクルはビルの最上階から街を見下ろしていた。
どうやってエレベーターを使わなければ地上へといけない地下闘技場から脱出したのか、
どうやってビルの最上階まで登ったのか、非常に疑問だ。
まぁ、多分野生だ。
野生で何でも解決するのがピクルだ。
問題ない。
でも、食人を躊躇わないピクルを野放しにするなんて危険どころの話ではない。
猛獣を街中に放すようなものだ。何というか責任問題だよ。
今度こそ警察飛び越えて刑務所の出番か?
裁判も飛び越えてた。
ピクルがついに束縛から解き放たれた。
現代に相応の獲物がいるとわかった以上、ついに狩猟を開始される可能性がある。
格闘家たちの居場所を野生で察知して、勝負、もとい食事をしていくのだろうか。
危ないのは今回の主役を張った神心会コンビ、そして烈だろう。
脚しか食えなかったからと烈にリベンジ、もとい食い残しを平らげる恐れがある。
刃牙は…しばらく出てこないな。
次号へ続く。
ピクルが野放しになってしまった。
自分に襲い掛からない相手は食わない。
だから、勝負を挑まなければ安心だし、軍人の例を見るに力量に差があっても食わないようだ。
シベリアトラは腹が減ってたということでひとつ。
これから現代の珍味、格闘家食いをするのだろうか。
今度はペイン博士が側にいないから麻酔を打てない。
誰かが止めない以上、全部食らい尽くす勢いだ。
ちょっと危険だ。否、危険すぎるッッッ。
あとせっかく街中に出たんだから前菜としてムエタイを食べてください。
サムワンショックから早5年。
そろそろムエタイが出てきてもいい頃合いだ。
しかし、これはある意味チャンスだ。
何のチャンスかって?
ピクルにレイプされたリポーターのファンたちが今度こそピクルを捕ま殺される!
あいつら、ピクルを引き渡してもらったとしても何する気だったんだろう…
そういえば、今回は不思議な点がある。
徳川のじっちゃんの電話だ。
前回、刃牙が烈を見舞った時の時刻は夕暮れだった。
刃牙は徳川のじっちゃんから電話を受けたと言っている。
夕暮れ時付近に電話を受けたのだろう。
で、今回の話は刃牙の見舞いと同日なのはペイン博士の言葉からわかる。
だが、独歩が徳川のじっちゃんから連絡を受けたのは日が落ちてからだ。
しかも、徳川のじっちゃんは落ち着きがなかったようだ。
刃牙への電話と独歩への電話の時間差と徳川のじっちゃんの落ち着きのなさが非常に怪しい。
刃牙と独歩の連絡の間には1時間程度の空白があると思われる。
なら、1時間程度置いてもなんで今だ徳川のじっちゃんは落ち着いていないんだろう。
トドメに今回のラストで微妙に喜んでいたし。
感情がコロコロ変わる人だ。何かがおかしい。
本格的に狂ったか?
まぁ、バキにこういったことを突っ込んでも詮無きことですが。
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