範馬刃牙 第104話 強奪



[巨大(おお)きな男だった]
[周囲の通行人と比べて頭一つ]
[実数でもおそらく185センチは楽に超えていそうである]
[剣持武志21歳]


逃げろ剣持武志イイイイイイイイイイッッッ!!
いきなりこの上なくやられそうな人が夜の繁華街に出てきた。
なんかもう、風貌から雄弁に敗北を語っている。
すでに限界ギリギリ(エクストリーム)だ。
外見通り、負けるために街中を歩いているのだろう。
たまらぬ男であった。

[強そうな名前だ 事実強い]

(毛海王よりは)強そうな名前だ。事実(一般人よりは)強い(が、格闘家一同の足下にも及ばない)
あまりに敗北を体現している男なのか、名前くらいしか褒められる部分がない。
名前が真璃だからマリー・アントワネットの生まれ変わりくらいのハッタリは効かせてください。

とにかく、もういい…もういいんだ、剣持武志…
さっさと家に帰って寝よう…
僅か2ページで未来が絶望視される人間も久しぶりだ。
あ、人間じゃなければシベリアトラも該当していたな。

[小学校でチビッ子相撲 中学 高校と柔道に打ち込んだ]
[全国優勝の経験こそないが 上位入賞の常連とも言える実力は折り紙付き]


もう止めてくれェ!(負け犬)根性見届けたァ!
持ち上げれば持ち上げるほど、剣持武志がダメなんだなとわかってくる。
クレーンに針金を付けて剣持武志を持ち上げているような感じだ。
いつ針金が切れるのか不安すぎる。
風に吹かれて左右に揺れる剣持武志の何と心なき事か…
第一、全国優勝できないけど上位入賞しているなんて自慢にすらなりゃしない。
ここは世界チャンピオンのアイアン・マイケルですら容赦なく敗北する世界なんですよ、OK?

[さらには大学から始めた空手]
[ボクシング][ウェイトトレーニング]
[それぞれの道場 ジムに 実力で並ぶ者はいない]


大学から空手を始めたところで生涯を空手に捧げてきた武神独歩の域どころか、天才克己にも及ぶことはなく、
ボクシングなんてバキ世界では地雷格闘技としての地位を確立しているし、
ウェイトトレーニングなんて咬合力だけでバーベルを持ち上げるヘリコプターを引っ張るほどでないと無意味だ。
なんか人間を倒すための準備ではなく、行為そのものとして素振りをするような男だ。
素振りだけじゃ敵は倒せないよ。ちゃんと当てなきゃ。

あと大学生なんだな、こいつ。意外と高学歴だ。
剣持武志21歳。順調に進学していれば大学3年だ。
キャンパスライフの真っ最中だというのに…それが台無しになるなんて哀れとしか言いようがない。

[スカジャンのポケットに隠された両の掌(て)]
[その握力は無造作にリンゴをクラッシュさせる]


これは無造作に剣持武志がクラッシュすることを暗示しているのでしょうか?
リンゴを握り潰せるって…その程度の握力じゃ孫海王にすら負けるぞ。
さっきから自慢にならない自慢を繰り広げている剣持武志であった。
なんか末堂ですら鼻で笑ってしまいそうだ。

[さて―――― そんな剣持が夜の繁華街でいったい何をしているのか………………?]
[喧嘩の相手を探しているのだ]
[殺さぬよう………しかし無事にはすまさぬよう……………
 そんな遊び相手が今夜もいてくれッ]


相撲、柔道、空手、ボクシング、ウェイトトレーニング――
強さに必要な条件を満たした剣持武志が求めるのは己の力を試せる相手だった!
ごめん。
大文字にしても何かダメだった。
もういいんだ…剣持武志…君は何もしてないけどよく頑張った…
喧嘩なんかしたらお前、殺されちゃうよ…

[無論 喧嘩で敗(ま)けたことはない]
[否―――――苦戦の経験すらない]
[ルール抜きなら―――]
[自分より強い男など見たこともない]


5秒後には自分より強い男にこてんぱんにされるようなことを言うな。
サムワンだってムエタイのリングの中じゃ自分より強い男はいなかったんだ…
神心会トーナメントにでも出てみようよ。
存命しているのなら末堂がやっつけてくれる。

[しかし日本(わがくに)は法治国家]
[殺さぬよう…… しかし無事にはすまさぬよう………]


法治国家ですが食人が看過される国でもあります。
電話ボックスだって平気で強奪されるぞ。
殺さない…無事に済まさない…
なんて甘いことを言っているんだ。
それとも、自分がこれからどうなるのか、予言しているのか?

剣持武志は繁華街のメインストリートを外れ、路地裏へと入り込む。
ああ…こんなところじゃ襲われても文句言えないよ…
自ら窮地に飛び込んだ剣持武志であった。
虎穴に入らずんば虎児を得ずという奴だろうか。
お前は虎に食われるよ…

剣持武志はズボンのチャックを開ける。
な、何をするだァ!
と思ったら、ゴミ袋に向けて立ちションだ。
すぐ隣に多くの通行人が立ち並ぶというのに大胆な男だ。
せめて最初からチャックを開けていたら…もっとネタキャラになっていただろうな。

そう思っていたら、剣持武志の身体がびくッと震えた。
な、何が起きた!
やられるのは想定範囲内だ。
もしかして、イッたか?

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」

なんと剣持武志の逸物が謎の手に握り潰されていた
なッ、何をするだァ!
放尿中にも関わらず、素手で急所を攻撃だ。
襲撃者には衛生観念というものがないのか?

この想像外の奇襲に声をあげることもできず、剣持武志は冷や汗を流す。
だが、君の冷や汗顔は初めて見た気がしないなぁ…
初めて君を見た時…こう…こんな顔をすると思っていたのかもしれない…

剣持武志はゴミ袋の中へと引きずり込まれる。
助けを求めようと手を出す。
だが、その手は二回りも大きい襲撃者の手によって潰された。
足もその巨大な手によって握り潰される。
お前自身が握力のみで無造作にクラッシュさせられてどうする。
今しがたクラッシュさせられると予想したら見事にクラッシュした。
期待裏切らないという意味ではいいキャラだった。
無茶しやがって…

剣持武志は逸物、手、足とあっさり破壊された。
残った顔もゴミ袋の中に引きずり込まれる。
もう外部からは剣持武志の姿は確認できない。
喧嘩で負け知らずのあの剣持武志をこうも簡単に捻り潰すとは、
ゴミ袋の中にどんな強者がいるんだ――ッッ!!
(棒読み)

ゴミ袋の中からは衣擦れ音が聞こえるが、やがて収まる。
だが、やがて剣持武志はゴミ袋の中から出てくる。
おお!襲撃者をやっつけたのか!
さすが剣持武志。喧嘩では負け知らずだ。
手を失おうが、足を失おうが、チンポ失おうが、闘争心は衰えない。
さすが相撲、柔道、空手、ボクシング、ウェイトトレーニングの各分野において、上から数えた方が多分速い位地にいる人間だけある。
剣持武志、実戦派であった。
剣持武志がピクルの次の対戦相手となるのであろうか?
烈海王ですらかなわなかったピクルだが、剣持武志ならば勝負になる可能性はない。
どんな惨劇が繰り広げられるんだ!

そう思ってページをめくったら出てきたのは剣持武志ではなく、剣持武志の服を奪ったピクルであった
野生度低っ。
でも、頭いいな、こいつ。
服のサイズがまったく合っていないからキツそうだよ。
靴なんか全然はまらないから見事に履き潰しているよ。
服にはゴミがひっついているよ。
そもそも、お前、身体を洗っていないだろうから、体臭とか大丈夫か?
でも、シャツ、ジャケット、ズボン、帽子、靴と街中を歩くのに違和感のない姿には一応なっている。
全裸のままでは街中を徘徊できないと推測したため、衣服を奪うことにしたのだろう。
多分、パンツも奪った。

ピクルは原人だからといって無知無能なわけではなかった。
ただの猿だったら変装なんてしない。
ジュラ紀の頃だって恐竜の皮をかぶっても恐竜に到底なりきれないから、
変装という行為が擬態として本能に刻み込まれていた可能性は皆無だ。
この変装は間違いなく思考の果てに辿り着いた答えだ。
ピクルの知能はかなり高いことがはっきりと証明された。
野生だ、原人だといえど、並みの動物とは一線を画す知能だ。
烈との戦いで何種類ものパンチを使い分けただけのことはある(97話 )。
そして、すさまじいまでの環境順応度だ。

人間は考える葦とパスカルが言っていたし、考えることができるピクルは人間に限りなく近い存在といえる。
同時に原人としては肉体も知能も異例の進化を遂げているから立派な人外でもあるよな。
とりあえず、これだけの知能があるなら人肉を食べないでください。

衣服強奪成功したピクルの顔は嬉しそうだ。
ゴミ袋の中に隠れて獲物が来るのを待つなんてとんでもない博打だ。
剣持武志が来なかったらどうするつもりだったんだ。
たまたまサイズに優遇が着る服だったし、ピクルが着てもそれほど不自然じゃないラフなものだったからいいものの、
酔っぱらいサラリーマンだったりしたらどうしたんだ。スーツなんて着ることはできない。着ても怪しすぎる。
おそらく、ゴミ袋の中に張り込んですぐ奪えたのだろうし、様々な面でピクルはかなり運がいい。
まぁ、変装するだけの知能があるなら、あっさりと衣服を奪えたことが幸運だとわかるだろう。
そりゃ嬉しくてたまらないだろうな。

なお、ピクルの口元に血はない。
剣持武志から衣服を奪うついでに腹ごしらえした のかと思ったら、肉は食べなかったようだ。
喧嘩無敗(ローカル限定)の剣持武志ですら、食べるに値する獲物ではないようだ。
殺さぬよう…無事には済まさぬよう…剣持武志は自らの肉体にて実戦してのけた。
さようなら、剣持武志。
君のことは忘れない。
再来週あたり俺の服を返せッッ!と全裸でピクルに襲い掛かってください。

変装完了したピクルはメインストリートへと出る。
爪が目立つ手をポケットの中に隠すなど、細かいところで知能を見せる。
ハンドポケットなんて衣服が存在しないジュラ紀では考えもしない行為のはずだ。
なのに、さも当然のごとくやってのけたのは、同じくハンドポケットをしていた剣持武志を見習ってのことだろうか。
ピクルは観察眼にも優れている。
…野生度、随分下がったなぁ…

しかし、その努力も空しく はっきり言ってメチャクチャ怪しい
推定2m20cmの巨体ですよ。
周囲から頭数個飛び抜けている。
どう見てもすぐ見つかる。
服さえ着れば普通にイケメンだけにもったいない。
もったいないと思うポイントが違うか。

まぁ、変装しただけでも十分に賞賛に値するか。
近くに女性がいるのに襲っていないことも賞賛に値する。
性欲を抑えることも知ったようだ。本能だけで生きていない。
それとも、性交する相手も襲い掛かってくる女性のみなのか?
そりゃ、絶滅するよ…ジュラ原人…

剣持武志の尊き犠牲によって、ついにピクルが自由になった。
現代に蘇ってからというもの軍隊の保護下にあっただろうから、感じるまま思うままに動くことができるのはこれが初めてだ。
自分のいた世界とはまったく違う現代文明を謳歌…することはできないだろうなぁ。
知能はあっても知識はないし。
何かする度に破壊の2文字が付きまといそうだ。
これからピクルはどんな行動を見せるのだろうか。
わざわざ変装した以上、狩猟が目的ではなく娯楽が目的なのかもしれない。
真意やいかに。
次回へ続く。


ピクルは知恵(変装作戦)と野生(獲物を探り当てた)を同時働かせて、理想的な形で街中を徘徊することができた。
そして、剣持武志には追悼の意を表しよう。
ボクシングじゃなくムエタイを学んでいたら完璧だったのだが…

ピクルが街中に身を乗り出すということは事件の前触れだろう。
変装するだけの知能は見せた。だが、現代の常識は知らない。
ゆえに問題が無限に起こりかねない。
本人にその気なしでも大問題を起こす可能性がある。
単なる散歩で済む…わけがないか。

とりあえず、ムエタイがピクルに絡んで欲しいものだ。
街中にピクルが徘徊している今がチャンスだ。
ここで絡まなきゃあと3年は出番ない
ムエタイ活躍のチャンスなのだ。

あまりにバレバレすぎるから、格闘家陣との衝突が街中で起こる可能性も高い。
さしあたり危ないのは克己だ。
神心会の組織力を持ってすれば、ピクル脱走はすでにわかっているだろうし、どこにいるのかも把握していることだろう。
友の仇を討つために自らも餌になってしまいそうだ。
いや、ピクルなら衆人環視の前の食人はやばいとわかって…
だったら、レイプしないよなぁ…

でも、街中にいるということは刃牙の出番が来るかもしれない。
今の刃牙ならピクルを見つけると同時に喧嘩を売りかねない。
ここで絡まなきゃあと3ヶ月は出番ない
刃牙活躍のチャンスなのだ。


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