範馬刃牙 第11話 ヒトとムシ
カマキリにチョークスリーパーしています。大マジで。
これはギャグではない。
本人たちは大マジだ。
傍目から見ればギャグ以外の何でもないけど。
チョークスリーパーの必殺性は非常に高い。
完璧に極められた裸締めからは絶対に逃げられない。
相手が範馬じゃなければ、このままKOだろう。
だが、相手は人間どころか、哺乳類でもない。
昆虫の王者(になってしまった)カマキリだ。
[み……ッッ]
[見られてる……ッッ]
[バック奪(と)ってもしっかり見られてんじゃん………ッッ]
カマキリの視角は非常に広い。
死角にいるはずの刃牙の姿をしっかりと捉えていた。
刃牙、大焦りだ。
人外の生物に対人用の技を仕掛けるということ自体が間抜けなのだが無視しておく。
…人外と書けばかっこいいけど、相手はカマキリなんだよなぁ…
[しかも………ッッ]
[おっそろしく器用]
刃牙の危機は姿を捉えられたことだけではない。
鎌の部分で首根っこを捕まれた。
人間が相手なら死角の位置、攻撃を仕掛けられない部分だ。
だが、カマキリは違う。
関節を器用に曲げて刃牙を捕らえた。
カマキリは体重100キロという条件さえ満たせば、アフリカ象を捕食するだけの能力を持つ(らしい)。
その力をフルに活用して刃牙の体勢を崩す。
絶対的有利をいとも簡単に崩された。
これには百戦錬磨の刃牙も大驚きだ。
[く………ッッ]
[喰われる!!]
だが、カマキリは刃牙の体勢を崩しただけでは終わらない。
鎌で刃牙の首を捕らえたまま、噛み付こうとする。
刃牙が「おわアァッ」と情けない声をあげるほどの驚異だ。
ジャックの噛みつきとは異なり、カマキリの噛みつきは捕食するための噛みつきだ。
噛まれるだけでは終わらない。
これにはさすがの刃牙も恐怖するしかないだろう。
どうでもいいけど[く………ッッ][喰われる!!]は、バキSAGAでこそ使ってもらいたかった言葉なのだがどうだろう?
梢江という怪物との喰うか喰われるかの戦いだったしピッタリだ。
口淫のシーンなんかは特に似合う。
…まぁ、Jr.が梢江を連れて訪れたラブホの中で「喰われる!!」と叫んでいるかもしれないが。
シンクロニシティというやつで。
[ムチャだッッ]
[昆虫と力比べなんて…ッッ]
何にせよ刃牙は絶賛大ピンチだ。
今度は鎌で捕まえられたまま、食われそうになっている。
さっきまでの優勢が嘘みたいに劣勢に変わっていた。
捕まえたはずが捕まえられているのだ。
両腕でカマキリの頭部を押えつけて、どうにか噛み付かれないようにしているが、それも時間も問題らしい。
カマキリの恐るべきパワーに刃牙はひるむばかりだ。
刃牙の筋力は楽にオリンピック記録を更新できるほど高い。
前作「バキ」の体力測定において、それは実証済みだ。
それ以外にもジャックと真っ向から殴り合ったりと、刃牙の身体能力には特筆すべき点がいくつもある。
(梢江と数日間ぶっ続けでセックスできるほどの体力の持ち主でもあるが、あえて無視しておこう)
しかし、それだけの筋力を持ってしても、カマキリ相手には劣勢になるばかりだ。
強イナァ…カマキリ…
ところでルミナの[ムチャだッッ][昆虫と力比べなんて…ッッ]という台詞から察するに、すっかり昆虫>人間の図式が成り立ってしまっている。
刃牙に完全に洗脳された証拠だ。
阿鼻叫喚の人間VSカマキリの姿が見えたり、どうみても一人じゃ無理な動きも無理なく見えたりと既に十分以上にやばいのだが。
この地下室、気持ちよくなる薬の粉末などが飛び交っているんじゃないのか?
刃牙はこのまま力比べをしても埒があかない、もしくは押し切られると判断したのだろう。
素早く体勢を変えて、顔面にドロップキックを放つ。
どうにかカマキリとの間合いを離すが、それほど効いてはいないようだ。
この際、一人じゃ無茶な動きだとかそんな無粋なツッコミはやめておきます。
[相手が……]
[相手が誰であれ]
[人であれ 猛獣(けもの)であれ 昆虫(むし)であれ]
[やることは同じ……]
[やれることは決定(きま)っている]
刃牙は覚悟を決めた表情をする。
拳を強く握る。
真っ向勝負をするつもりか。
今まではカマキリの出方を伺うような戦い方が主だった。
前回のカウンターハイキックなんかは典型例だ。
だが、それでは通用しないとやっとわかったらしい。
力と力でぶつけ合うつもりだ。
正直なところ、夜叉猿との戦闘経験があるんだから、妄想開始と同時に力で勝負して欲しかったが。
[普通に――――――]
[フツーに戦闘(たたか)う!!!]
ダッシュして顔面にパンツを当てた。
テクニック0%、パワー100%の原始的な攻撃だッ!
夜叉猿相手に格闘技のセオリーを無視した一撃を放った姿を思い出される。
これほど頼もしい刃牙はジャックとの対決以来だ。
何年前のことになるかはあえて述べない。
[か……ッッ]
[硬(かって)ェ〜〜〜〜ッッ]
カマキリの硬度に刃牙は驚く。
だが、それでも怯まない。
顔面へのパンチの次は、腕へのハイキックだッッ。
刃牙は人であれ、猛獣であれ、昆虫であれ、妄想であれ、普通に戦うッ!!
妄想相手に普通に戦えるということは異常であると思うのだが。
[まるで金属ッッ]
[でもヤルッ]
[なにが起こってもヤルッッ]
相変わらずカマキリの硬さに驚きつつも刃牙は攻めの手を緩めない。
ハイキックの次はローキック、そしてアッパーだ。
並みの格闘家ならこの時点ですでに倒れているだろう。
春成とかJr.ならその間実に2秒判定だ。
だが、カマキリは平然としている。
タフさも一流かッッッ。
[なにも起きなくてもヤルッッ]
[急所も弱点もクソもねェッッ]
[ヤレることをヤルッ]
打撃だけではなく、関節技も仕掛けるッッ。
刃牙渾身の飛びこみ腕ひしぎ十字固めだ!!
…って、待て。
今までにない以上に何かに捕まらないとできない動きじゃねえかッ!!
というかそんな技、カマキリに有効なのか?
昆虫にだって関節があるんだから、それを攻めるのは有効、だと思う(自信なさげ)。
冒頭で証明されたように、カマキリは関節を柔軟に曲げることができるが、それでも限界はある。
それを考えると一応だが有効な攻めができている、はずだ。
しかし、カマキリは甘くなかった。
関節を極められたまま、刃牙を持ち上げ、投げ飛ばす。
すげえ…
腕ひしぎ以上に何かに捕まらないとできない動きだ!!
今さっき無茶な動きをしたと思ったら、数ページ後に無茶な動きランキングをあっさり更新しやがった…
板垣先生飛ばしすぎ。
渾身の腕ひしぎもあっさりと破られた。
投げられた勢いのまま、刃牙は壁に頭をぶつける。
しかも、その先にはリアルカマキリを入れた虫かごが置いてある机があったため、追加ダメージだ。
股間が危ない。間違いない。
鋼鉄の睾丸を持つ男範馬刃牙なら金的程度今更どうってことないだろうけど。
刃牙がぶつかったためリアルカマキリを入れていた虫かごは砕け散り、中からリアルカマキリが出てきた。
その大きさは刃牙の手の平にも満たない。
対峙している妄想カマキリがどれだけ大きいのかわかる描写といえる。
[格闘技が………ッッ]
[通用しないッッ]
脳天から大出血だ。
冷や汗を流すことも止め、静かに絶望的な現実(いや、妄想か)に驚いている。
格闘技が通用しないことくらい、冒頭のチョークスリーパーの時点で気づいてもらいたかったのだが。
加えるなら前述した通り夜叉猿との戦いを経験している時点でだけど。
妄想主の刃牙本人も100キロのカマキリがこれほど強いとは思ってもいなかったのだろう。
アフリカ象を捕食できる戦闘力は伊達ではない。
そして、これくらい朝飯前で倒せるようにならないと勇次郎の背中は遠いままだ。
やっぱり、勇次郎と戦うのは時期尚早だったんじゃないだろうか?
これから刃牙はどうするのだろうか。
虫かごから出てきたリアルカマキリを踏み潰したら、妄想カマキリが消えてしまったというオチは勘弁だ。
妄想カマキリを倒したらリアルカマキリも同時に倒れた、というのはもっと勘弁だけど。
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