範馬刃牙 第113話 恋慕



ああ、お待たせ…俺の闘いを魅せてやる…
カラーの扉絵はなんかムカつく恍惚とした表情の刃牙だった。
お前のおかげで克己が…
雑魚殺しに長ける刃牙だけある。関わったものを全てどん底に突き落とすのだ。
今回は勝手に絡んできたのだけど。
あと別に待っていなかった


さて、問題は置いてけぼりを食った克己だ。
もう悲しいなんてレベルじゃない。
全ての元凶は刃牙だ。刃牙が何もかも悪い。
独歩を倒したことで化けるかと思ったら、悲しい人に化けてしまった。

「父親をハリ倒してまで………… 喜び勇んで来てみたら…………」
「いないと…… 行っちまったと」


克己はキレかける。
すぐ目の前にいたら刃牙を殴っていたんだろうな。
しかし、殴る相手もいない。
目の前の門下生、崎村を殴れば克己の株が大暴落だ。

独歩を倒したという発言に皆は驚く。
やっぱり克己は独歩以下だと思っているんだ。
あれは刃牙が勇次郎を倒したようなサプライズだし。
…なんか信用されてないなぁ…

「いとおしい彼女は……」
「つまらん彼氏を残し…………」
「気の利いたクラスメイトと出掛けちまったと…………」


だから、ピクルの女性化は止めろォ!
克己にとってはほんのシャレのつもりだろうが、ホモネタ連発のピクル編においては致命傷だ。
なんでホモネタをここまで絡ませたがるんだろう。
ピクルに恋しちゃうほど妙に魅力的だからといって…

もしかしたら、克己にはピクルと戦おうとする気持ちと愛する気持ちの二つが同居しているのかもしれない。
だから、いとおしい彼女という言葉を使った。
克己には館長としての気持ちと雄としての気持ちが混ざっているのだ。
混ざっているからこそ、どうにもノープランなのかも。
自分自身のために戦う時、克己は独歩が予想した通り、化けるかもしれない。

「よかったじゃん なァ」

溜まりかねた克己は妙に爽やかな顔をする。
アレ?綺麗な克己に化けた?
でも、ちょっと化け方を間違えているぞ。
置いてけぼりという最悪の化け方をした直後だからまだマシか?

「もともとのキッカケは烈師範の仇討ちだ」
「志を果たすのは なにも俺じゃなくてもいい 範馬刃牙でもいい 花山 薫でもいい」
「烈師範の無念を思う気持ち 思いは皆同じだ」
「いいんだよ………………俺じゃなくても」


克己がダメな方向に化けた。
悲しい男になったと思ったら今度はやる気なし男かよ。
コロコロダメになりやがる。ダメ男の属性を網羅するつもりじゃないだろうな。
愚地克己というか愚地カイジだな、これだと。

しかして、いざ決戦に赴こうとしたら、外伝の主人公と本編の主人公が現れてピクルを奪っていったのだ。
そりゃあ俺じゃなくてもいいと思いたくもなる。
いや、それじゃダメだろ。

ダメな克己をダメなままでいいと思わない崎村は反論する。
神心会で技を教えていた烈はやられた。寺田もピクルに一蹴された。
恩師をやられ、組織の名誉も汚されたのだ。
克己がやらずして誰がやるというのだろうか。
本人やる気なさそうだけど。
…お前は刃牙かよ。

崎村は一般論を言っただけかもしれないが克己を信じている。寺田だって信じていただろう。
寺田はもう死んだけど。
いや死んでない死んでない。
その信義に克己はどう応える!

「勝てるのかなァ!? この俺があのピクルにッッッ」

そういう応え方はダメー!
ダメ男としての道を遠慮なく歩む克己であった。
こいつ、館長としての器を得るためにピクルと戦っているということを忘れていないか?
ああ…館長ポイントが下がっていく…
せっかく独歩を倒したというのに。独歩も負け損だよ、これじゃ。

しかし、克己に烈の教えが加わっているとしたら話は別かもしれない。
空手の天才克己が中国拳法のエッセンスを加えることで生まれ変わるのだ。
ムエタイと中国拳法のハイブリッド戦士サムワンのように!
ダメじゃん。

「相手はウソかマコトか天下のTレックスの天敵とまで言われる 史上最強の戦士だッ」
「そんなモンスターに この愚地克己がッッ」
「この出来の悪い甘ったれ2代目がッ」
「本気で勝てるとッッ おまえらは思ってンのかよッッ」


もうダメとかそういうレベルじゃない。
驚天動地の逆ギレだ。
ちょっとこれはダメすぎるだろう。いや、そういうレベルじゃないんだけど。
どんどんダメレベルを上げていってる。
これ以上、ダメになるならいきなり全裸になって門下生に金的されて気絶するしか手はない。
愚地克己21歳。自暴自棄すぎる。

克己の不安と葛藤が刃牙が引き金となって爆発した気がする。
ピクルに勝てると思っていないのは門下生たちではなく克己自身だ。
自ら勝てない勝負に挑むと知っていた。なのに挑む。
このノープラン野郎め。

当然のように場は凍り付く。
ピクルを中心に包んでいた喧噪が嘘のようだ。
一陣の風だけが空しく吹く。

そして、克己は満ち足りた笑顔だ。
いや、満ち足りるなよ。
もう大満足だ。
だから、満足するなよ。
館長ポイントがマイナスに達しようというのに。

そんな笑顔から少しずつ克己は醒めていく。
冷静になったのだろうか。
さすが一発ネタとしてはやり過ぎたと思ったのか。

「勝てるからやる 勝てないからやらない そういう戦いじゃないと言ったのは俺じゃねェか」

これは克己個人の戦いではなく、館長として神心会を導くための戦いだ。
勝つ負けるの問題ではないかもしれない。
でも、ピクルとの戦いは倒すか食われるかの戦いだ。
そういう戦いに身を投じることこそが館長としても武道家としても間違っている

克己はバンダナを外し、皆に頭を下げる。
脱帽だ。敬意の表明である。
そして、協力を改めて頼む。
克己の真摯な態度に神心会一同の火は再び付く。

散々悪い印象を植え付けておいてちょっと改心したような姿を見せて、以前よりも高い評価を得る克己の作戦か。
100に1を足しても大したことはないが、0に1を足せばものすごい変化となる。
それと同じ理屈だろう。
あえて館長ポイントを0にすることで、僅かなポイントプラスでも大きな変化に見せつけるのだ!
…ごまかしだよな、これ。

克己の命令ではなく願いに応じ、門下生一同は再びピクルの捜索へと出向く。
発見できるのかはさておきピクルを止めることができるのかは怪しいが。
さっきはそこで躓いた。
それに対してのプランは…ないんだろうなぁ…

数多くいた門下生は去り、克己は一人になる。
視線も背中も寂しい。
ピクルへの戦いのテンションは高いのか、低いのか。よくわからない。

かつて独歩は克己が見せた背中に感心していた。
だが、今の克己の背中には空しさだけが漂う。
ピクルと戦えば待ち受けるのは死だ。でなくても今後の人生に関わるダメージを負う。
待ち受ける悲惨な結末に逃げることもできず、ただ立ち向かうしかなく、だが覚悟はなく、自信もなく。
克己の複雑な心中がその背中から伝わってくる。


さて、散々ダメなところを見せて、最後に複雑な心境を見せた克己は置いておく。
ピクルが刃牙と花山を導いたところはなんと地下闘技場だった
…いや、けっこう普通だった。<b></b>で強調する必要もなかった。
思えばピクルが知ってる日本の地理なんて、米軍基地と地下闘技場くらいだった。
米軍基地からはトラックなどで輸送されたのかもしれないし、自分の目と足で覚えているのは地下闘技場だけになるだろう。

でも、地下闘技場から抜け出した時も疑問だったけど、ピクルはどうやってここまで来たんだ?
専用エレベーターからしか行けないんですよ。
花山にエレベーターのボタンを押してもらったというわけでもないだろう。
答えは野生か。ずるいや。野生。

とりあえず、じっちゃんはピクルを怒る。
…怒るのか?怒れるのかよ、お前。
そもそも、言っても無駄っぽいぞ。言葉通じないし。
やっぱり、ある意味すごいや、この人。
あとピクルの服を気にしよう。剣持武志の尊い犠牲の元にその服を着ているんだぞ。

「どうしよって言うのかな…………… こんなところ連れてきて…」

格闘技の聖地、地下闘技場へ来ても刃牙の態度はハッキリしない。
本当に何しにピクルに逢ったんだろうこいつ。
ノープランといえど目的がハッキリしてる克己の方がまだマシだ。

「喧嘩売られとるンぞバキッッ」

ピクルは刃牙と戦うために地下闘技場へ連れてきたのだった。
刃牙に底知れぬ強さを感じ取ったのか。
野生の嗅覚で地下闘技場を現代の決戦の場所とわかったのか。
さすがに衆人環視の前で人間食うのはまずいと判断したのか。
ああ、でも、トラックの肉は食ったな。
倫理観よりも決戦に相応しい場所として地下闘技場を選択したっぽい。
やはり、今のピクルはこんな心境 なのかもしれない。

「…………………………
 …………………………
 ………だよね…………」


Eーー!刃牙の火付きが悪い!
いや、いつものことだった。
でも、相手は惚れてしまうほどの超雄だ。
ピクルの挑戦を上等だと受けてもいいくらいだ。
冷や汗だらだらだしこの期に及んで食われるのは嫌だと理性を働かせているのだろうか

刃牙とピクルが戦うのか、やる気のなさそうな刃牙に替わって花山が戦うのか、それともノープラン…じゃなくダークホース克己が来るのか。
対戦候補が何人も並ぶ中、次回へ続く。


克己がダメになってさらにダメになってちょっとまともな部分を見せてやっぱり何かローテンションだった。
刃牙と同じくらい迷走してる。
ダメじゃん。館長(仮)。
この調子だとピクル発見の報告があっても「俺じゃなくてもいいんだよ」とか言いそうだ。
…言ったら大物だな…

ピクルはやはり今回も食うのだろうか。
烈との対戦以降はパワーだけを見せてきたが、牙も武器として使うのがピクルだ。
3人のうち、誰かは肉が一口二口分くらい損失することは覚悟しなければならない。
でも、食事直後だし今回はいざという時に何とかしてくれる人員がいるし、被害は最小限で済むかもしれない。
じっちゃんもちゃんと麻酔を用意しているかも。
麻酔に対して耐性がついてそうだけど。
それが野生クオリティ。

それにしても俺の闘いを魅せてやると堂々としたアオリを打ったわりには刃牙のテンションが低いのはこれいかに。
あまりのローテンションになんかいつものように見損ないそうだ。
克己みたいに無駄にハイテンションでも見損なうけど。


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