範馬刃牙 第114話 羽化
ピクルが刃牙に喧嘩を売った!
喧嘩というか捕食だけど。
史上最強の挑戦に地上最強の息子の闘争心は熱く燃えたぎる!
「そうだよね……………」
「売られてンだよね 喧嘩」
「受けなきゃ……………」
なんでお前はしょうがなさそうなんだ。
嫌々戦う。渋々戦う。なんかそんなノリだ。
ピクルとの戦いを本気で嫌がっている。
戦いに対してここまでテンションの低い主人公もそうそういないだろう。
負ければ食われるけど、その恐怖心に完全に負ける(っぽい)というのも珍しい。
刃牙は上着を脱ぎ捨てる。
ピクルもそれに従って全裸に…ならない。
ここ最近、ピクルが全裸にならないから野生度が落ちたのかと心配してしまう。
ああ。もしかして、服を着ることで野生度が落ちたから合気を使えたのか?
剣持武志の犠牲は無意味ではなかった。
「いいのか…………?」
「こんな初(うぶ)いのを 巻き込ンじまって……」
何となくやる気を感じない刃牙に対して、花山は救いの手を差し伸べる。
でも、処女をAVに出していいのかみたいな言い方は止めてください。
本当、そっち系のネタ好きだというか何というか…
それにピクルは初どころじゃないだろう。
公開レイプを敢行したくらいだ(80話)。別の部分では烈を食っている。
刃牙をかばおうとしたがちょっと無理があるぞ、花山。
そもそも、刃牙を連れてきたのはピクル本人だ。
早速、花山は前言撤回する。
花山の静止に徳川のじっちゃんは困った顔をする。
お前全然反省してないのな。
命を賭けた戦いを見られれば格闘家一人くらい問題ないらしい。
烈が食われそうになった時、必死にピクルを止めようとしたのは何だったんだ。
格闘狂徳川光成とピクル狂ペイン博士がピクルに関与している限り、犠牲者は増える一方なのだろうか…
「助けられたよ花山さん」
「5年前に犯したミス 再び繰り返すところだった」
「静かに暮らしていた罪もない者たち――――― その領域(テリトリー)に踏み込み」
「ムリヤリ生き死にの戦いに引きずり込んだ」
「迷惑なハナシだ」
出たァ!詭弁タイム!
水を得た魚のように詭弁を繰り出す刃牙であった。
花山の言葉が起爆剤となった。前言撤回しても既に遅しだ。
夜叉猿の件とピクルの件を重ね、自分のやってることは間違ってる。だから、戦う必要がないと主張する。
とりあえず、リアルシャドーのために勝手に捕獲されたカマキリや戦うだけでなく徹底的にプライドを傷つけられたオリバのことも忘れるな。
こいつらも静かに暮らしていて罪もないぞ。
刃牙の言ってることが末期だ。
夜叉猿の件だって、雄と雄の比べ合いを迷惑なハナシで終わらせられたら死闘を演じた夜叉猿も報われない。
そんな刃牙の詭弁でピクルとの対決は反故になった。
徳川のじっちゃんは「アララ……」と残念そうだ。
…反省の色がまったく見られない。
烈が食われたのも1週間2週間前の話じゃなく、今日の話だろうが…
「チョットだけ退屈してただけなのに チョットだけ遊んで欲しかっただけなのに……」
「俺はそれに乗じて思いを遂げようとした」
「バカをやるところだった……」
ドッ
問答無用でピクルがバカを蹴ったァ!
そりゃそうだよな。
ピクルに言葉なんて通じないし。
刃牙がどれだけ御託を並べようが無関係だ。
むしろ、隙だらけで絶好のチャンスだったのだろう。
警戒していた烈だってピクルに背骨折りをされたのだ。
完全詭弁モードの刃牙がピクルの蹴りに反応できるわけがなかった。
烈との戦いでは一度も蹴りを放たなかったピクルだが、トラックの荷台を破壊した時といい蹴りを身につけているようだ。
もしかしたら、烈の蹴りを幾度も受けたことで学習したのかもしれない。
烈の蹴りとは違って力任せの直蹴りだったが、脚を武器として使えることをわかっただけでも大きな進化だ。
さて、蹴られたバカ…じゃなくて刃牙は吹き飛ぶ。
ピクルは片手を振るだけで烈を柵まで吹き飛ばした。
腕の数倍の筋力を誇る脚を使うとどうなるかと言うと…
観客席まで吹っ飛んだ。それも数メートル上のところまで。
入場口の天井よりも高い位置だ。刃牙は頭上10メートルくらいは飛んだのかもしれない。
いくら何でも吹っ飛ばしすぎだ。
ピクルの驚愕の脚力に花山すらも冷や汗を流す。
かつて幾人もの人間が吹っ飛んだ(主に巨漢)地下闘技場でも、ここまで吹っ飛ぶことはなかった。
さすが、勇次郎を超えるパワーを持つだけある。
勇次郎以上のパワーでやる気なし男を蹴ればこうなるということか…
刃牙は蹴られた腹部を押さえる。何とか意識はあるようだ。
しかし、呼吸もままならないようだ。
規格外のタフネスを誇る範馬一族にとってもピクルの一撃は致死に値するようだ。
それでも五体を留めているあたりはさすがか。
さて、バカは置いておこう。
問題はピクルの方だ。
やっぱり、食うんですか?
いっそ食われちまえとか思われていそうだよな。
そう期待していたらピクルはリズム良く身体を揺らす。
そして、人差し指を天へ掲げ、握り拳へ変える。
ワイクーか?
ごめん。ムエタイなんか連想しちゃってごめん。
「古代(むかし)も現代(いま)も………………… 勝ち名乗りは同じ」
ピクルの踊りは勝ち名乗りだった。
踊りで己の勝利を表現するなんて実に文化的だ。
まさにピクルに備わった高い知能を証明している。
ピクルは言葉を知らない。常識も知らない。
だが、思考と感情を持ったたしかな霊長類なのだ。
人外の進化を遂げてるけど。
あと同種食うなよ。
「1パツじゃったの……………」
「運んでやるか…」
「食われんうちに…」
問題発言ばかりのじっちゃんだ。
食われんうちにって、敗者は食われるという自覚があったと告白していたようなものだ。
あまりのショックにこの事実を忘れていた方がまだ可愛かった。
あと運べば食われなくなるってもんでもないだろ。
ヘタに運べばピクルに勝負を汚したと捉えられかねない。
ピクルは本気で追いかけるだろう。
それから逃げ切れるのは勇次郎くらいのものだ。
むしろ、運んで食われなくなるなら烈も運んでやれよ。
とりあえず、バカは捨てておこう。
ここまで力の差を示しておいて、刃牙が特にトレーニングなしでピクルに勝ったらキレそうだ。
オリバを倒したみたいに。
さて、置いてけぼりを食った克巳に話は移る。
克巳は親指だけの逆立ち歩行を行っていた。
驚愕の指力とバランス感覚があって初めて成立するハードトレーニングだ。
親指逆立ちはゲバルの無隠流忍術のトレーニングにも取り入れられている(43話)。
さりげなく克巳にもゲバルクラスの身体能力はあるのだろうか。
あと何でトレーニングしてるんだ?
どうやら1日経過したみたいだし、結局ピクルは見つからなかったということだろうか。
刃牙がいたせいで…
「一周だ」
「こいつだけで――――― 道場(ここ)をグルリ一周するワケだ」
「その握力で拳ィ固め……」
「ブッ叩くッッ」
「人間なら無論一パツ 正確に射抜きゃ牛でもイケる」
克巳の脳裏に浮かぶのはまだ白帯の少年時代に独歩から聞いた言葉であった。
その時の言葉を覚え、成年になった今でもトレーニングをしている。
克巳は天才だが初心を忘れていない努力家である。
こういう地道な努力家な面を門下生に見せればいいんじゃないだろうか?
ヘタにピクルを倒すよりもずっといい気が…
(フフ…… 相手が牛だったらどんなに楽か………………)
トレーニングを重ねるが克巳の心中には不安が渦巻く。
相手は牛どころか生物ですらないんだ。
ちょっと人間的な文化とかを持っているくらいだぞ。
1日経過したことだし、腹も空かしている。
挑めば確実に食われる。
何で自分から13階段を登るんだ克巳…
(だからと言ってどうするッ)
(空手家である俺が―――――)
(空手以外の何にすがる)
いや、逃げてもいいと思います。
ピクルとの対決は義務じゃない。結局は克巳の心の持ち方の問題だ。
ピクルに挑んで食われるなんてオチが館長的に一番ヤバい。
それでも克巳は挑まなければいけない。そう決めちゃったから。
だから、空手に磨きをかける。
ノープランだからこそ、今の手持ちに全てを賭けるしかない。
…ノープランも考えものだ。
その時、道場に硬質音が響く。
克巳は振り返り、汗を流す。
烈だった。
失われた右脚には無骨な杖が装着されているのが、かつての惨劇を思い出させ痛々しい。
それでも自分の脚で立って歩けるようになっただけ、喜ばしいだろう。
失われた脚は戻らないものの、片足を失ってからたった1日で歩けるようになるなんてさすがはグラップラーだ。
特に食われた右肩は完全に治ってるように見える。
「同志よ……」
烈は克巳を同志と呼ぶ。
ピクルに挑もうとする志は同じだ。
久しぶりの烈と克巳の絡みはどうなるのだろうか?
そういえば、ある程度仲良くなった後の克巳と烈の濃いやり取りは今まで一度もなかった。
かつて克巳を一蹴した者として、ピクルに一蹴された者として烈は克巳に何を伝えるのだろうか。
克巳×烈カップリング再燃を感じさせつつ次回へ続く。
想像以上に刃牙がひどい目にあった。
Jr.を一蹴してオリバを倒した。
今の刃牙には勇次郎以外に敵はいないかと思われたが文字通りに一蹴された。
そして、ピクルは空気を読みすぎである。
刃牙の詭弁に暴力を振るったのは偉業だ。
オリバもこうすれば良かったのに…
今回、ピクルは食欲よりも勝負を優先したように見える。
刃牙を食おうとしなかったのだ。
本気で食う気だったら、どこへ連れて行こうが無駄だろう。
腹が満たされているとピクルも比較的安全ということだろうか。
烈を食った時は1ヶ月の絶食をどうにか免れた直後だったしなぁ…
刃牙に大器晩成の気質を見たという線もなくはなさそうだ。
刃牙への対する対応は異質だった。
今は勝負をする相手と見なしていないのかもしれない。
…そうこうしていると奇妙に強くなるんだよなぁ…刃牙…
範馬の血が目覚めるとやばいぞ、ピクル。
ピクルが範馬一族の祖先なら大丈夫そうだが。
そして、烈は克巳にどんな声をかけるのだろうか。
右脚を失って1日にして克巳に逢うために出向いたのだ。根性を出しすぎだ。
それほどまでに伝えたいことは一体何なのであろうか。
「おめェじゃ無理なんだよォッッ」
…これじゃないだろうな…
父親からダメ出しされ、友からもダメ出しされたらさすがの克巳も…
烈の喉仏に親指一本拳を決めて倒したら大物だが。
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