範馬刃牙 第115話 501年目
悩める克巳の前に烈が現れた!
克巳と烈海王。バキホモ同人の黄金カップリングだ。
かつて二人は仲が悪かった。
だが、拳を合わせたことがきっかけとなったのか。
以後は相当に仲が深まっているように見えた。が、二人のやりとりはあまりなかった。
今、この土壇場で二人はどのような奇跡を起こすのだろうか?
「烈さん……」
烈の突如の来訪に克巳は驚く。
当然目にするのは失われた右脚だ。
膝の先に杖を付けた痛々しい姿は烈の武勇を知っている克巳にとって、目を背けたくもなると同時に思わず凝視してしまうものだろう。
将来の自分の姿を暗示してもいる。
克巳の胸中は不安でいっぱいになりそうだ。
烈は神心会が自分の仇を討とうとしている事実を確かめる。
このことは自分に縁があると言えばあるし、ないと言えばない。
何せ克巳が館長としての器を手に入れるために勝手に言い出したことだ。
烈はダシだ。頼んでもいない。
「不可思議ッ」
不義(プイー)ッッ。
四文字熟語で烈は異論を唱える。
久しぶりに中国人っぽい烈を見た気がする。
最後に見たのは救命阿(ジュウミンア)と叫ぶ烈だったかな…
あれは中国人とかそういう問題じゃないが。
「わたしに歯が立たぬ相手に―――」
「わたしに指導される立場の君等が 仇討ちとは笑止なッッ」
ギャー!この人も言っちゃったァ!
最近の克巳はかわいそうなくらいにダメ出しされている。
掌底一発で自分に負けた男が仇討ちとは笑止なッッ。
落ちこぼれ海王に不意打ちされて負けた男が仇討ちとは笑止なッッ。
あっさり道場を爆破された男が仇討ちとは笑止なッッ。
主人公に出番をかすめ取られた男が仇討ちとは笑止なッッ。
…烈の心中ではそんな言葉が連呼されているのかも知れない。
さすがツンデレである。ジャブ代わりにツンを見せつけた。
「おっしゃる通りです」
「武術界の先達であるあなたの仇を討つ 出すぎた行為です」
「俺はもう知ってしまっている 拳雄 烈
海王の武がまるで通じなかった事実」
「それでもなおッ 否それだからこそなおッ」
「俺の空手 ぶつけてみたい」
「仇討ちなど便宜上のスローガン 強ぇならヤリてェ…… そういう生き物です
俺たちは」
克巳は自分の本心を烈に伝えた。
仇討ち。館長として。
それは建前で結局は強いんだ星人なのだ。
自分より強いヤツは許せない。そんなヤツは叩き潰す。
例え自分を遙かに凌駕する生物であろうと関係ないのだ。
強いんだ星人だとわかっているからこそ、ピクルとの戦いに迷いや悩みを隠せないのかもしれない。
克巳の答えに烈は笑みを浮かべる。
烈も己が磨いた中国武術をピクルにぶつけたくなり、そして戦ったのだ。
ピクルに挑もうとする本質は烈も克巳も同じである。
あと館長があーだこーだということは隠しているが、それも建前の一つと思ってもいいのか?
館長としての格を上げるためにピクルと戦うんですよ、なんて言ったら烈に殴られかねない。
義足の身だけど関係なしに殴りかねない。
歩けるから戦うことだってできるだろう。
「勝てるかな
君の空手でッッ」
烈は第二の問いを投げつける。
ある意味一番大事なところだ。
今度の勝負は勝ち負けではなく、生死を賭けた勝負である。
強いから戦いたいでは済まない。
強いんだ星人ではピクル星人に捕食されるだけだ。
それに対して克巳は相変わらず勝てないからやらない戦いではないと烈に言う。
本心を吐露したが論調は変わらない。
勝算なしに挑んで殺されるのはちょっと馬鹿馬鹿しいぞ。
勝算のない喧嘩はしないと言ってボロ負けした本部みたいになってしまう。
克巳の諦念とも取れる覚悟に烈は克巳は変わったと言う。
かつての克巳なら、
ピクル?ボコボコにしてやんよ
∧_∧
( ・ω・)=つ≡つ
(っ ≡つ=つ
/ ) ババババ
(
/ ̄∪
なんてことを言っていただろう。
勝つと断言しない。自分に絶対の自信を持っていない。
勢いのないノープランだ。
延々と続く緩い坂道にブレーキのない車を走らせるようなものだ。
いつか緩やかに事故る。それが今の克巳だ。
「そういうわたしもこうして変わってしまったが―――――――
伝えられることは山ほどある」
「克巳さん」
「4000年の蓄積を誇る中国武術の4001年目―― 君が引き継いでみないか」
あの烈海王が克巳に中国武術の伝承を打診する。
ええ?相手はかつて水たまりと比喩した相手ですよ?
ついに烈がツン期を抜けてデレ期に入った。
もうハッピーエンド直行便ですよ。エッチシーン一直線だ。
刃牙なんかもうガン無視の体勢である。
刃牙に中国武術を教えなかったのも、克巳に伝承するために取っておいたのかもしれない。
いや、やたらテンションの低い刃牙にムカついただけなのかも…
4001年目は99話でピクルに本気を出された時に出た言葉だ。
当時はちょっと履き間違えていたけど、対四足歩行用武術を築けるのかという意味であった。
つまり、4001年目とは対ピクル用のエッセンスを盛り込むのである。
敗れ食われ、再起不能になった烈であったが、セコンドとして克巳の側に立つことはできるのだ。
「克巳さん 空手はまだ若い」
「沖縄から数えてもたかだか500年」
「皆が501年目
迎えようとする今日」
「あなただけが… 4001年目に先んじる」
あの烈が空手を認めている!
空手の歴史はまだ若い。若いから意味がないと言っていたかつての烈とは別人だ。
若いからこそ羨望がある。だからこそ、4001年目の中国武術を教えたい。
…変わったなぁ…この人…
恋は人を変えるというが本当のようだ。
でも、もし4001年目の中国武術を教えて克巳が勝ったら、それは中国武術の名誉にもなる。
ピクルに陵辱されてしまった中国武術の威信を取り戻せるのだ。
克巳には才能がある。努力だってする。
中国武術のエッセンスをうまく吸収してくれるだろうし、烈がマンツーマンで教授すればまさしく化けるかもしれない。
そんな烈のしたたかな計算が内在している可能性もなきにしもあらずだ。
「若いなら若いまま
未熟なら未熟なまま 501年目をぶつけたい」
「空手に殉じたいのです」
「空手じゃなければいけないのです」
だが、烈の心強い言葉を克巳は断る。
デレ期に入ったツンデレ娘のアプローチを断るような勇気のある行動だ。
空手に捧げてきたからこそ空手で戦い空手に殉じたい。
いつの間にか克巳が空手バカ一代になっている。
ああ、独歩から数えれば空手バカ二代か。
克巳の決意は空手に身を捧げてきた男としての意地と覚悟だと察したい。
ノープランノープランと囁かれてきた克巳だったが、その心の奥底には空手家としての矜持が存在していた。
あくまで空手で戦いたいのだ。
これでノープランだったらどうしようもないが。
克巳の返答に烈は自分の考えはお節介だったと悟る。
烈も同じ心でピクルに挑んだのだろう。
克巳の気持ちは痛いほどに分かるはずだ。
もう恋人同然である。同然だよ。同然なんだよォッ!!
「ときに克巳さん わたしのその501年目を補佐することは?」
だが、デレ期に入った烈はそう簡単には引かない。
どうしても克巳の側にいたいという熱い想いが伝わってくる。
デレ期どころかデレデレ期だなこれじゃあ。蜂蜜を煮込んだ結晶よりも甘い。
克巳は一人でピクルに挑むわけではない。烈という仲間がいるのだ。
迷いと葛藤に満ちた克巳にとって、それはとても心強いものだろう。
多分刃牙だったら誰にも補佐されない。
強いて言えばアイアン・マイケルくらいだ。100kgの体重差を注意して終わる。
(イヤ………だからそれじゃあ………………………アンタがからむと……………
せっかくの501年目が……………………4001年目とごっちゃになって………………)
「是非ッッ」
「501年目の一助にッッ」
あれこれと悩む克巳に対しても、烈は押せ押せだった。
終いには頭を下げてまで協力を願い出る。
右脚を失った烈は格闘家としての道は閉ざされた。
ならば、自分がもっとも信頼できる友にせめて自分が溜めてきた財産を渡したいのだろう。
熱い友情であった。
克巳は烈の真摯な態度に501年目や4001年目にこだわるのは些末な問題だと感じたのか、烈の協力を快諾する。
[4001年目の中国武術との合流 そう これが空手の501年目]
[革命的な足跡が―――――]
[今
刻まれようとしている]
そして、克巳と烈の稽古が始まった。
烈は上着を脱ぎ捨てたいつもの蛮勇スタイルだ。
…稽古できるの?
烈は当然義足だ。食われた左肩にもプロテクターが巻かれている。
でも、ちゃんと立っている。歩くこともできる。それに加えて稽古までできる。
脚を食われてから(推定)1日とは思えないほどの超再生力だ。
さすが骨折すら数時間で治るグラップラー星人である。
烈は強さを競い合う格闘家としての道は閉ざされたかもしれないが、指導者としては十分やっていけそうだ。
克巳は信頼できる友に自分の心中を吐き出し、そして友の支えを得てピクルとの戦いに挑もうとしている。
メンタル面での不安はほぼ解消されただろう。
烈との稽古により中国武術とのハイブリッド空手家になるだけではなく、対ピクルの要素も盛り込んだ501年目空手家にも進化するだろう。
今本当の意味で克巳が化けようとしている。
愛の力は偉大だ。
あと刃牙が水を差さなかったら克巳は烈と出逢うことはなかった。
刃牙の犠牲は無駄ではなかったのだ。
ピクルに蹴られるためだけに現れたように見えて、克巳に進化の時間を与えるという大任をやってのけた。
一方で独歩は一人寂しそうに克巳の変貌ぶりをぶつくさと呟く。
師として、父として、克巳が急に変わっていくのは寂しくもあるのか。
ある意味美味しい役だ。
蹴られて観客席に吹っ飛んだ刃牙よりははるかに美味しい。
新生克巳に期待がかかる中、次回へ続く。
長かった烈のツンデレ物語もようやく佳境に入った。
何度か刃牙に寄り道したが、最終的には克巳の元へと戻って来た。
102話で烈の心を掴めたかと思いきや、その後のやる気なしっぷりが悪かったのか。
刃牙は残念ながら脱落してしまった。
そりゃあピクルを目の前にしてあんなのらりくらりと詭弁を連発していれば…
克巳は烈から技術を学ぼうとしている。
ただ中国武術者から教わるのではなく、ピクルの強さを知る者から学べるのは大きい。
烈はピクルの強さを嫌と言うほど知っている。同時にどうにかこうにかの対抗策も知っている。
それを克巳に伝授すれば善戦できるかもしれない。
しかし、いくら技術面で成長しても問題は肉体面だ。
バキ世界は技術<肉だ。
いかに技術が優れていようとも、圧倒的な肉体の前には食われてしまう運命にある。
克巳はピクルというインチキクラスの身体能力をどうするのだろうか。
どうにもならなそうだけど。
でも、覚醒後の烈はスタンドの勝負ではピクルの一枚上手を行っていた。
負けたのは全力のピクルと正面衝突したのが原因だ。
同じように克巳も自分の実力を発揮できる状態では戦える可能性が高い。
…そして、ピクルに全力を出されると負けそうだ。
ピクルタックルの構えを取ったら逃げるのが策か?
もしかして、4001年目の中国武術は相手が四足歩行取ったら逃げるんじゃないだろうな…
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