範馬刃牙 第117話 オアシス
克巳がマッハ突きに更なる磨きをかけようとする。
だが、今回の克巳の出番はなしだ!
でも、刃牙の出番ならあるよ。
え?いらない?
場面は濃密な愛の巣と化した神心会本部ではなく、惨劇(烈食われる)と笑劇(刃牙がよだれと鼻水を流す)の最前線、地下闘技場であった。
だが、いつもと様子が違う。
スリージジイだけではなく、ライフルを構えた軍人が四方にいる。
そして、何よりも闘技場を白い煙が包んでいる。
柵を越えない範囲で煙が満ち満ちている。
ドライアイスか?
いや、それはない。
「ドラム缶で140ダース」
「空気との比重は約1.5倍」
「クロロホルムだ」
ペイン博士が告白するに煙の正体はクロロホルムであった。
ピクルを眠らせるのに使ったようだ。
空気よりも重いために闘技場内に漂っているらしい。
でも、クロロホルムは有毒ですよ。
例えそうでなくとも麻酔の類を大量に散布すると、神経がマヒしかねない。
ピクルに薬物ごときが意味を為すとは思えないが、とても生物を扱う人間のやることではないことはたしかだ。
即効性はないとか刺激臭がするからピクルが逃げるだろとか、その他諸々といろいろな突っ込みがあるがとりあえず保留にしておく。
「我々には責任があるのです 出逢ってしまった故の責任が」
「全人類のため 未来のためにピクルを生かす責任がッッ」
アホウ!クロロホルムでピクルを殺す気か!
言ってることとやってることが噛み合っていないペイン博士であった。
でも、一応のヒト科に白サイを一晩眠らせる麻酔を打ち込んだり、ピクルの生命力を把握した上での暴挙なのかもしれない。
ああ、うん。暴挙だよね、これ。
相変わらずペイン博士の目はヤバい。
全然反省の色が見えない。
完全な監禁施設が必要だとも言う。
いや、無理だろ…常識的に考えて…
巨大金庫で閉じ込められないなら、何をやっても無理だ。きっと核シェルターをも突き破る。
加えるならアメリカから日本に連れてきた時点で監禁を諦めているようにしか思えない。
あれ?そういえば、何でピクルは日本に来たんだ?
「忘れてはいけないことがもう一つある」
「“ピクル本人は何を望んでいるのか”…………だ」
「超Aクラスの研究対象であることは疑りようもないが
彼はモルモットではない 人格を持つ1人の人間なのだ」
ピクル=標本を主張するペイン博士に、ストライダムは真っ向から反論する。
ピクルは人外だけど心を持っているのだ。
ヘタに閉じ込めれば暴れて大きな被害が出てしまうはずだ。
完全に閉じ込められたとしてもストレスで疲弊してしまう可能性もある。
地下闘技場に置いておくくらいのアバウトさの方が犠牲者が剣持武志くらいで済んでちょうどいいのかもしれない。
食料はトラックを連れてくる方向で。
ともあれ、己の肉体の強さに賭ける人間に対して尊敬の念を持つストライダムならでは反論だった。
だから、烈を軽々と戦わせようとしたのか。
当然、研究者のペイン博士は理解しようともしない。
だから、烈を軽々と食わせたのか。
…どっちに転んでもダメな奴らだ…
「ピクルを閉じ込める施設 いらんよ」
「奴ァ
ここを動きゃせん」
さらに徳川のじっちゃんもペイン博士に反論する。
ええい。お前は黙れ。
動きはしないって思いっきり街に出たばかりだろ。
腹が減ればまた街中へ繰り出して強そうだけど弱い人から服装を奪って、そしてトラックに轢かれる可能性がある。
でも、中身が普通の宅配便でがっかりする。
どうやらピクルは刃牙を蹴り飛ばした後、クロロホルムで眠らされるまでの数時間の間、体育座りのまま一歩も動いていなかったようだ。
服も着たままで脱いでいない。
野生のくせにインドアだ。
そういえば、1ヶ月の絶食中もずっと座ったままだった。
獲物を見つけるまで体力を温存しておこうという野生の知恵だろうか。
…野生なんだから自分の命に危険が及んだらおとなしく狩りに行くか、目の前の獲物で我慢しようよ。
ピクルは何だか野性的ニート体質だ。
もしも、PCが目の前にあれば喜んでネットサーフィンするかもしれない。
「気付いたのじゃ」
「ここがオアシスであることを」
「ここにさえ居れば……」
「餌にも遊び相手にも事欠かせないッッ」
もうダメですこの人。
ちっとも、まったく、これっぽっちも反省していない。
烈が食われる時の焦りようはどこへやらだ。
悲しみが一周してどうでもいいやと思ったのか?
戦いを見たいだけでなく、戦いによって致命傷を負っても良しかよ!
今までもそういう一面は見て取れたけど、脚一本でも許容できるレベルになったのか…
巨凶徳川の進化は止まらない。
地下闘技場に陣取れば餌も遊び相手も確保できる。
それがピクルがその場を動かない理由だと徳川のじっちゃんは推測している。
だが、ピクルの行動を見るにそう判断することは無理だ。
たしかにピクルは地下闘技場でシベリアトラと烈を食した。
しかし、烈を食った直後に地下闘技場から脱走し、そこでトラックの生肉を食っている。
別に地下闘技場でなければ食い物にありつけない理由は存在しない。
戻って来た理由もよくわからない。
なんで刃牙を地下闘技場に連れてきたんだ?
ピクルを標本として管理しようとするペイン博士。ピクルの人権を尊重しようとするストライダム。戦いが見たいだけの徳川光成。
スリージジイの言い争いは平行線を辿る。
徳川のじっちゃんは論外の気はするが。
その時、クロロホルムの煙の中からピクルの身体が浮かび上がる。
ピクルが目覚めたのだった。
全然クロロホルムの効果がありません。本当にありがとうございました。
薬には免疫が付くというし、あまり麻酔をやりすぎると格闘家食いを阻止できないかもしれない。
目覚めたピクルはTシャツ姿だった。
野生度低っ。
てっきり脱ぎ捨てているかと思いきや、しっかり剣持武志の遺品を身に纏っている。
スカジャンがないことがせめてもの妥協点だ。
衣服の存在を気に入ってしまったのだろうか。
ただし、メスが目の前にいれば即脱ぐ。
脱ぐっていうか破り捨てる。主にパンツを。
目覚めた原人はとりあえず辺りをちょろちょろと見回す。
探しているのは餌なのか。
地下闘技場を見回しても餌が簡単に目に入るはずもないけど。
本部なんかがいても構わず眠るんだろうな…
「餌も友達ももう少しじゃあッ」
「まだ休んどってもええぞォッッ」
ミスター徳川ァ!お前はアホかァ!!
…きっと、克巳がピクルに挑もうとしていることを知っているんだろうな…
空手家は克巳の他に独歩がいるから、それじゃあ克巳なら別に餌にしてもいいとか思っていそうだ。
克巳を運ぶどころか、ピクルを止めることすらしなそうだ…
徳川のじっちゃんがピクルに通じるはずもない。
知能はあっても知識はないし。
未知の外国語で話されるようなものだ。
だが、野生は俺たちに出来ないことを平然とやってのける!そこにしびれる憧れるゥ!
考えるな感じろの要領で徳川のじっちゃんの言葉を理解したのか、
ピクルは再びクロロホルムの煙の中にその身体を埋める。
ピクルの行動は予測できないと言ったペイン博士形無しである。
でも、烈の時も序盤は押されてたものの、後半で度肝を抜かせた。
この押されっぷりは克巳が負けた時、凄惨な出来事が起きる前触れなのかもしれない…
あ、それとも、餌ってもしかして刃牙のことか?
それなら問題ない。むしろ、食わせてよしッ。
運んでやるかとやる気なさげに言ったのも、ピクルが刃牙を食う気がないと見透かしたからだろう。
今のじっちゃんには刃牙をいかにして食わせるかしか頭にないのだ。
一方、屈辱的な敗北を喫した刃牙は自宅でトレーニングに励んでいた。
ええい、刃牙はいい!カツレツを映せ!
刃牙は拳を握っていた。
ただ、握っているだけでなく、新聞紙を握っていた。
だが、新聞紙は外からはまったく見えない。
拳の中に新聞紙を完全に隠していたのだった。
変態的…もとい驚愕に値する試し割りが相次ぐバキ世界において、
実に他愛のないことに見えるが拳の中に新聞紙を隠すことは以前はできなかったらしい。
グラップラークラスの握力を持ってしてもできないことを刃牙はできるようになった。
刃牙の握力が成長した証拠であった。
いつの間にか、それでいて納得のいかない成長をする男だ。
(次はぶつける……)
(この力を思いきり……… 言わずもがなピクルへッッ)
それは何年後の話だ?
いずれにせよ刃牙がピクルとの戦いを本格的に決意した。
相変わらず空気を読まない男である。
克巳とピクルの対決はどうなるのであろうか。
刃牙の手によって、再び水に流されるのか?
克巳が501年目の空手を烈と共に切り開こうとしている中、刃牙は本気で拳を握ればいいだろと楽観的だ。
次回へ続く。
とりあえず、スリージジイは一切反省してなかった。
あの場で一番焦っていた徳川のじっちゃんはむしろ清々しいに開き直ってる。
克巳が食われるのを阻止できる人間はいない。
ピクルの良心に期待するしかないけど、期待できないよなぁ…
食うなら刃牙を食えば良かったのにと書きそうだ。
ストライダムはピクルの人権を尊重していた。
その存在と行動の異常性が取り沙汰されるピクルだが、人権を考慮するなんて非常に珍しい流れだ。
ピクルは烈を食って以来、服を着たり刃牙を連れ出したりと何かと人間味が増している。
人間を食って人間味が増すというのも矛盾しているけど。
もしかしたら、現代の知識を見よう見まねでも学んでいけばピクルは現代社会に溶け込めるのか?
とりあえず、服を着なければ街を歩けないということは学んだ。
料理を食べるという文化を学べば、最大の問題である食糧についても困らなくなる。
…まぁ、現実はそう甘くはないだろうけど。
克巳も身体のどこかを失う覚悟じゃないとダメなんだろうなぁ…
刃牙がピクルとの戦いを決意したが、そちらもどうなるのだろうか。
何せやる気のないことには定評のある刃牙だ。
決意したのはいいものの、当分の間長引かせる可能性がある。
オリバの時みたいにピクルを延々と馬鹿にしてみるか?
ピクルの猛烈な勢いの放尿に吹き飛ぶかもしれない。
いや、その前に蹴るよな…そして、再び気絶する。
それとも、刃牙が普通にピクルと戦うのだろうか。
そして、敗北。食われようとした時に克巳が現れる!
安藤さんの如く敗北して、安藤さんの時のように刃牙は復讐を誓うのだ。
今度は飛騨で鍛えてもピクルには追いつけないだろうから、2億年前にタイムスリップして鍛える。
その時、野生の梢江と性交して生まれたのがピクルだったのだ。
ピクルは範馬一族の祖先であると同時に、範馬一族の最新でもある矛盾した存在だった。
性交して満足した刃牙は現代に戻り、我が子ピクルとの戦いを始まる!
SAGA効果でパワーアップしているから蹴り一発ではやられないのだ。
梢江エキスで強くなったよな、あれはどうみても。
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