範馬刃牙 第125話 歴史VS時空



武術の粋を身に付けた天才と生粋の超野生の戦いが始まった。
克己個人だけではなく中国拳法と空手の威信を賭けた戦いである。
ヘタすれば後に続かない。
斬撃空手とか空拳道が鼻で笑われかねないぞ。
ついでにピクルは本気でフンドシだ。誰だよ、履かせたの。


前回の最後に克巳が放った5連打の解説が行われる。
頬のやや奧の舌根、左胸の雁上、右脇腹の稲妻、太ももの付け根の夜光、腰と膝の中間点辺りの伏兎
それぞれの部位を左右の拳、掌底、肘で撃ち抜いている。
的確な部位を様々な形で攻めたバリエーション豊かな連撃であった。

部位名についてはあまり意味のないことを承知してググってみた。
するとどうやら伏兎はツボの名前らしい。
「足のむくみ、膝痛」に効果があるそうな。
…偏食ばかりで栄養が偏っていそうだからなぁ、ピクル。
克巳のちょっとした心遣いなのかもしれない。

「オール急所五連撃ッッ」

観客たちは沸き上がる。
おお、懐かしい。
最近何かが足りないと思っていたら、ちょっとしたことに反応する観客の存在だった
これに実況と解説に驚き役が加われば最大トーナメントの無駄なテンションが戻るに違いない。
東京ドームなんだから実況する機材は十分に揃っている。
今すぐ地下闘技場実況の人を連れ戻してこいッッ。

観客たちは克巳の一瞬の5連撃をちゃんと捉えている。
素人なら何が起きているのかわからなそうなのに…
さすが、武術家の端くれの神心会門下生である。
有象無象の観客とはレベルが違う。今回は量も圧倒的だ。
…本部の出番ないな、これだと。

いや、舌根、雁上、稲妻、夜光、伏兎について、本部は解説するべきだな。
伝説となった虎口拳、足先蹴り、風魔殺、六波返しの解説をしたようにッッ。
そして、「あの野生といえど、この5か所の急所を狙った攻撃を受けたからには立ち上がれぬわい」とか言う。
無論、直後に余裕で立ち上がる。

さて、驚愕の5連撃が決まった。
急所らしいし普通人なら大ダメージであろう。それを知っている門下生一同は大騒ぎである。
だが、観客席で見守る烈の表情は浮かれていない
烈の後ろにコレジャナイ克巳がいるのに浮かれていない。いや、当たり前だ。

烈はピクルの異常なまでのタフネスを知っている。
普通人なら即死を免れない蹴りをモロに食らってもダメージがなかったのだ。
克巳の見事な連撃を見ても安心できないのだろう。
これで隣に本部がいたらいいピエロになっていたというのに…惜しい。

烈が感じていた通り、ピクルにダメージはなかった。
よろめきはすれどダウンはしない。
即反撃開始だ。
またも掴みかかろうとする。背骨をメキュッとやる気か?
克巳は実力そのものでは烈を上回ったかもしれないが、奇妙な身体操作に関しては劣っている気がする。
というか、中国武術は身体操作においては何でもやれるように感じてしまう。
克巳はメキュられるだけで致命傷の危機だ。多分、立ち上がれない。公開食人ショーのスタートだ。

だが、突如の反撃に対し、克巳は驚かない。慌てない。
冷静に構え直す。
そして、金的だ。
烈のように腕をしならせて打ち込む技の金的ではない(98話)。
思いきり蹴りで打ち込む力の金的である。
睾丸破壊する気ですよ。
人類の宝を何だと思っているんだ。

「キマッた〜〜〜〜〜〜」
「金的にモロだッ」


お前らは喜びすぎだ。
館長が躊躇なく見せた金的に躊躇なく喜ぶ。下の方まで教育が行き届いている。
神心会的に金的は卑劣な手段などではなく基本らしい。
さすが金的大好きなバキ世界を代表する武術集団だ。
…人道的にダメな連中だ。

現代からの強烈な洗礼にピクルはたまらず股間を押さえのけぞる。
これで二度目の金的だ。
もしかしたら、金的対策にフンドシを着用したのかもしれない
現代の戦士たちは恐竜ですら狙わなかった股間を狙ってくる。次も狙われるかもしれない。
ならば、この布っきれで守ろう。守れるはずがなかった。

股間を押さえたまま上体を折り曲げてピクルは隙だらけだ。
そこに渾身の飛び膝蹴りを放つ
ピクルの上体が跳ね上がる。
連撃で動きを止め、金的で動きを止めながら態勢を崩し、そして膝蹴りで打ち上げる。
完璧なコンビネーションであった。

さすが、我らが大将と観客たちは笑みを浮かべる。
だが、やはり烈の表情は固まったままだ
経験者は語る。ピクルはこの程度では倒れないと。
膝蹴りも自慢の異常な頸椎でダメージを吸収されていそうだ。

いつの間にやら観客席に座っている刃牙の表情も烈と同じく変化がない。
いや、こいつは何があっても変化なさそうだけど。
I'am無関心。

「あんなに強かったかのォ……………………」

徳川のじっちゃんは克巳の強さに驚く。
オイ、テメェ。クソジジイ。
克巳の強さを半端なままだと思ってピクルの餌にしようと思ったのか?
具体的にはドリアンに加藤ごとアラミド繊維でカットされそうになった時くらいの強さで
すさまじいノープラン大王の手によって克巳は死地へ送り出されたらしい。

その強さはまぐれではなく確実に成長したものだと刃牙は評価する。
こいつにとっての克巳は…アラミド繊維でカットされそうになった時くらいの克巳で止まっているか。
ドイルをボコった辺りが省かれています。
そういえば、ピクルの戦いを見るのは初めてだ。
この一戦を見ることは後の決戦へ向けて大きな意味を持つかもしれない。
…リアルシャドーの材料にしたり。

克巳は見事なオープニングヒットを飾った。
並みの相手ならばこのまま勝負ありかもしれない。しかし、今回は相手が異常すぎた。
ピクルは笑っていた。
ダメージなしだ。
もはや金的のダメージも一過性のものにすぎないらしい。
恐ろしい回復力である。まさしく範馬級だ。

[妥当な攻撃だった これ以上は望めぬほどにッッ]
[しかし相手はピクル――― 恐龍紀最強!!]
[肉体の持つ才能は…ッッ]
[現代人の比ではない!!!]


ここで烈が解説する。
妥当な解説だった。これ以上は望めぬほどにッッ。
ピクルのある種理不尽なタフネスを身を以て知っているだけあり、実に重みのある解説だ。
技術筋力以前に生物としての立ち位置からして異なるのがピクルだ
身長2メートルとか言ってるけど、どうみても2メートル20センチはありますよ。

今度はピクルの反撃であった。
克巳はフェイントも何もない正面からの蹴りだと見切る。
それを予感しただけで冷や汗が克巳を包み込む。
天才すらも脅かす超野生の一撃が炸裂するのか?

ギャドッ

身体を横に向け上体を後ろに反らしながら蹴るという格闘技にはない奇妙な態勢から蹴りを放つ。
軸足はうまく身体を支えられていないようだ。無茶な蹴りである。
しかし、肉体の才能が現代人の比ではないのだ。
そんな無茶な態勢からの蹴りでも爆発物のような衝撃が発生した
刃牙が受けた蹴りと同等かそれ以上の破壊力を秘めていそうだ。

克巳は腕と脚を使って蹴りを受け止める。鉄壁の防御であった。
だが、受け止めきれない。
克巳が文字通り飛んだ。
球場の端から中央くらいまで飛んだ。大体…50メートル?
実際には十数メートルくらいかもしれないがピクル的にはありえる数値だ。
何とか受けたからこそ、この程度で済んだのだろう。
ノーガードで受けた刃牙は2階席まで飛びました。馬鹿です。

その時、観客たちは驚きの声をあげるどころか、逆に静まりかえる
日々の稽古で蹴り技を幾度も学び、組み手でそれを人間に当ててきた。
それ故に蹴りで人を飛ぶ限界と常識を知っている
だが、ピクルはそれを凌駕した。凌駕してしまった。

[克巳の飛距離は彼等の常識からあまりにも逸脱していた]

信じられない一撃だった。
自分たちの常識だけでない。元館長愚地独歩の蹴りと照らし合わせての結果なのだろう。
克巳が戦っている相手はあまりにも常識外れで桁外れの存在だと観客たちもやっと悟った。
自分たちが信じている館長を圧倒的に上回る相手なのだ。
間違いなくショックだ。克巳の必勝を願っていただけになおさらそのショックは大きい。

(まるでダンプカー……………)
(防御は成功している…… なのにこのダメージ…………)


連続技で負わせたダメージが一度の蹴りで逆転してしまった。それどころか、与えたダメージは回復までされている。
理不尽なまでの肉体の差だ。
アウトボクサーがインファイターに感じる理不尽なんてレベルじゃない。
やはり人間とピクルは根本的な部分で違う。
人間の筋力と技術では決して倒れぬ相手なのか?

絶望的なまでの差を感じながらも克巳は立ち上がる。
膝は揺れ体中が震えている。ピクルの蹴りのダメージがどれだけ大きいのかを物語っていた。
それでも心は折れていない。
折れていたら…烈克巳を名乗って烈に婿入りかな。

[立ち上がれる身体 ―――に産んでくれた両親]
[立ち上がれる技術 ―――を与えてくれた父 独歩]
[立ち上がれる俺   ―――に育んでくれた母 夏恵]
[4人の両親へ――――]
[感謝したい!!]


ピクルの一撃に耐えうる身体。それを受け止める技術。絶望的な差にくじけない心。
己の心技体を鍛え上げてくれた4人の両親へ感謝をする。
初期克巳のどこか歪んだ天才の姿からは、今のような感情を抱こうだなんて想像も出来ない。
敗北し友を得たことによって、大きく成長したのか。

克巳は立ち上がりながら拳を菩薩の形にする。
関節のイメージは郭海皇から学んだ超多重関節だ。
親からもらった大事な身体を早速改変している
こんな子に産んだつもりはなかったのに(肉体的な意味で)…そんな嘆きが聞こえてきそうだ。

克巳は5222年マッハ突き…略して真マッハ突きの構えを取る。
…ええ?もうっすか?
いくら何でも切り札を出すのが速すぎる。
まだ戦いを始めたばっかりですよ。
烈戦でいきなり切り札出して負けたのを忘れたのか、こいつ。

それともピクルとの圧倒的な差を実感したからこそ、五体満足のうちに切り札を撃っておこうという考えか?
ピクルの回復力と攻撃力の前には、持久戦を挑んでも不利であろう。
合気を体得していることから学習能力も高いことがわかってきたし、なおさらだ。
克巳のベクトルは全てピクルを倒すことに向いているし、出し惜しみしてもしょうがない。
この選択はベストかもしれない。

[このときを境に―――]
[ピクルの表情から 微笑みは消え失せ]
[克巳は「遊び相手」から餌へと昇格した]


克巳を餌だと認めた。全力を尽くすに値する相手だと認めた。
ピクルから笑みは消え、戦士の顔になった。
構えただけでピクルを本気にさせた克巳、構えを見ただけで目の前の相手がただ者ではないと察知したピクル、両者共に流石である。

あと食人ショー一歩手前であることも確定した
餌扱いしましたよ。負ければ食われるぞ、克巳。
ピクルは四足歩行を見せるのか?克巳が真マッハ突きでピクルを退けるのか?
一方は普通に人外、もう一方は想像上は人外の変則人外マッチが始まろうとしている。
より人外になれるのはどっちだ?
次回へ続く。


やはり、ピクルは格が違った。
バキ世界において必殺の技である金的のダメージがすぐさま回復している。
金的で敗北するようでは二流とはいえ、金的のダメージを数秒で回復するのはグラップラー的にもおかしい。

そんなピクルに対して克巳は早々に秘密兵器を持ってくる。
…通用するのかなぁ。
烈VSピクルでは烈の持つ中国武術への誇りを崩されてからが本番だった。
今回も同じように真マッハ突きが破られてからが本番になるのかなぁ。
…真マッハ突きを模倣されたらその時点で勝負ありだけど。

最近、両親というキーワードが頻出している。
克巳にとって両親は自分を育て上げてくれた感謝すべき存在だと結論付けられた。
刃牙はどうなるのだろうか。
パパ大好きでありながら憎むべき対象でもあるという二律背反が存在している。
この辺りはバキという作品のテーマでもある、はずだが、最近はパパ大好きしかなさそうだ。
…単純なんだか複雑なんだか。

さて、ピクルの反応が烈の時とは少し違う。
ピクルが泣いておらず、餌の前に遊び相手と認識していた。
刃牙を蹴った後食わなかったのも、遊び相手と認識していたからだろう。
しかし、烈の時は違った。
全力で戦うに値する相手だと判断する前から食っていた。

もしかして、あの時は腹が減っていたのかもしれない
腹が減ってどうしようもなかった。
だから、遊び相手でも食わざるを得ない。泣きながら食う。
でも、今回は数日前に何十キロもの肉を食べたから腹があまり空いていない。事前にトラックをぶちかまされて生肉食っていたのかも。
余裕があるから遊び相手であるなら食わない。みだりに泣かない。
…なんとなく説明をできたような、できないような。

それとも烈の時は本気で恋をしていたのか?
一目惚れしたので、遊び相手ではなく愛人=餌だと判断した。
そして、泣く。恋した相手を食うのは辛い。しかし、生きるためには食わねばならぬ。
あの涙はピクルの恋心が悲鳴をあげていたのであった…



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