範馬刃牙 第127話 狩り(ハンティング) 



真マッハ突きがピクルに炸裂した。
ティラノサウルスの尾と同等の一撃だ!
…大丈夫なのか?効いているのか?
克巳の運命やいかに。


真マッハ突きの直撃と同時に衝撃波が観客に襲い掛かった
皆、耳を塞ぐ。それほどの轟音であった。
観客席にいた寺田は第122話で道場の窓全てを破壊した瞬間を思い出す。
空撃ちしただけで道場の窓を破壊できるほどなのだ。
実際に人間に撃ち込めば東京ドーム全体に衝撃波が伝播するのは当然である。
…当然なんだよッッッ。

真マッハ突きには基礎理論を教えた郭海皇も口を開け呆然とする。
自らが教えた技がここまで昇華するとは思ってもいなかったのか。
烈も冷や汗出しまくりで大驚きだ。さすが汗海王である。
刃牙も普通に驚いている。…克巳関係で驚くこと、あるんだ。
超一流の戦士ですら驚愕に値するのが真マッハ突きであった。

さて、問題は破壊力の方である。
ティラノサウルスの尾というキャッチコピーが不安を煽る。
その一撃を受けたピクルがどうなったかというと…
何と身体をくの字に曲げていた。

烈の攻撃を幾度受けてもこんな姿は見せなかった。
ピクルは明らかに大きなダメージを受けた。
そして、膝を地面に着ける
態勢を崩してダウンしたのではない。ダメージでダウンしたのだ。

ピクルのダウンに伴って5万5千人の門下生は沸き上がり東京ドームが揺れる。
ピクルは人間の常識をはるかに上回る特A級の人外だ。
その人外を搦め手ではなく純粋なダメージでダウンさせた。
人類史上に残る快挙だ。
克巳は想像上の人外となることでピクルと対等になることができた。

だが、沸き上がる門下生とは対照的に刃牙他一流グラップラーの表情はどこか暗い。
特に烈の表情に陰りが見える。
驚き以上の何かを抱いているようだ。

あと門下生たちが沸く中、末堂が出てきていない
前回、驚き役としても出なければ筋金入りと書いたけど、本当に筋金入りだったのかよ…
セミの一生は短かった。

[ピクル1億9000万年の人生………………初]
[得体の知れない苦痛が腹部に発生]
[Tレックスの尾の重量感(おもさ)を持ったものが――]
[自身の胃(ストマック)にピンポイントで突き刺さる]


真マッハ突きはティラノサウルスの尾そのものではなく、尾の重さに加えてピンポイントを狙った攻撃だった
巨大で鈍重な恐竜とばかり戦ってきたピクルにとっては未体験も未体験の攻撃だ。
ピンポイントの攻撃なだけだったらピクルの筋肉の壁の前に阻まれる。
局部を狙いすました烈の攻撃は通用しなかった。克巳の急所狙いの攻撃も通用していない。
通用したのは金的くらいだ。
ピンポイントに攻めざるを得ない鎬昂昇はどうすればいいのやら。

だが、恐竜クラスの破壊力を持ってピンポイントに攻撃すれば有効らしい。
現にピクルはダウンに加えよだれを垂らすほどのダメージを負っている
ピクルが明確なダメージを負ったのはこれが初めてだ。
史上最強といえどマッハの速度にはかなわないらしい。
あとさりげなく2億年から1億9000万年になっているけど無視しておこう。1000万年くらい誤差の範囲内だ。
1億9000万年の人生というのもおかしい。1億9000万年も生きてきたわけじゃないだろうに。

(思った通りだ………)
(いかにピクルといえども…………
 マッハの速度をまともに受けたらなら倒れるしかない………)


克巳はダウンしたピクルを前にして一息つく。
今の克巳は独歩を不意打ちで倒すように非情な一面も備えている。
なので迷わずピクルに追撃しそうだが、攻撃の手を休めた。
それを反映しているのか、克巳の表情は快挙を成し遂げたというのに明るいものではない。
むしろ、冷や汗が流れている。
何が起きたんだ?やっぱり、真マッハ突きは使う方にも負担がかかるのか?

(マッハの速度で正拳を打ち込んだなら…………………)
(拳も破壊される……ッッ)


ギャー!やっぱりィ!
克巳の左手の骨は砕けていた。
烈と郭海皇は静かに視線を逸らす。
克巳がこうなることをある程度予知していたのかもしれない。

通常のマッハ突き以上の速度に加え、人外の筋密度の持ち主を殴ったのだ。
身体の方がついて行けるはずもなかった。
右の真マッハ突きを撃たなかったのは、いざという時のために利き腕を取っておくためだったのだろうか。
そして、早めに真マッハ突きを持ち出したのも、自らの肉体を犠牲にする技だと勘付いていたがためか。
五体満足でなければ撃てないのならば、ヘタに消耗してからでは手遅れである。…ヘタすれば食われるし。

それにしても人外の技術に人間の身体がついて行かないというのは、技術が肉体に勝つことができないことを暗示しているようだ
桁外れの技術と常識外れの肉体がぶつかれば、後者が勝つのがバキという漫画だ。
そして、今回は直接的ではないにしろ、肉体が負けてしまった。
郭海皇が勇次郎戦でマッハ突きを使わなかったのも、自分の身体がついて行けないことを悟っていたからかもしれない。
それ故に単純な速度よりも消力のような不思議パワーを用いるようになったのかも。
あと拳でこうなるんだったら初期の貫手マッハ突きは中止しておいて本当に良かった
ぐしゃって折れてしまうよ…

ピクルは起き上がり再び克巳へと襲い掛かる。
何という回復力ッッッ。
持続するはずの内臓へのダメージをものともしない。
勇次郎の構えといいますます範馬じみてきた

[過去 何人もなし得なかったピクルのノックダウン]
[空手家の命とさえ言える拳と引き換えに手にした]
[なのに戦士は………………]
[歓喜していた]


空手家の命である拳を砕きながらも克巳は笑う
痛みの向こう側にある戦うっていいなぁモード発動だ!
リアルで死ぬ危険性があるから戦うっていいなどころではないが、克巳はそんな次元を乗り越えた。
自分の全力を受けてもなお立ち上がるピクルに、さすが史上最強と感謝すらしていそうな勢いだ。
生死を賭けて戦う正真正銘の戦士に克巳がなった瞬間であった。

しかし、何人もなし得なかったって人がピクルに挑んだ歴史が他にもあるのか?
現代でピクルと戦ったのは烈だけだ。
2億年前はピクルに勝負を挑む同種同族がいたのかもしれない。
恐竜を食らう男としてピクルの存在は派手に知れ渡っていそうでもある。
…もしかして、同種と戦ってそれを食らって来たから食人を敢行するのに一切の躊躇を覚えないのか?

さて、襲い来るピクルを迎撃するために再び克巳は全身を多重関節にする。
もはや安易な手で勝つ気はないらしい。空手家生命を失ってでも自らの全てを出し尽くす気だ
今の克巳には本気の覚悟がある。今までの克巳にはなかった精神的な強さを備えていた。
もう背水の陣すぎる。こんな覚悟で戦う恐竜はいなかっただろう。その意味でもピクル初体験の相手だ。

[五体に刻まれたマッハの感触……]
[今や繰り出す技の全てに 最新の方程式は当てハマった]


真マッハハイキックを襲い掛かるピクルの顔面に放った。
天才愚地克己はここに来てさらなる進化を遂げた。
マッハで正拳突きできるならマッハでも蹴れるのだ。
蹴れる。蹴れるのだ。
真マッハハイキックは真マッハ突きよりも体重が乗っている。破壊力も大きいだろう。

真マッハハイキックを受けたことでピクルの頬が大きく歪む
ティラノサウルスの尾の重さを誇る打撃をモロに受けたからには当然であろうか。
ピクルの異常な頸椎を持ってしても耐えられないほどの威力かもしれない。
人外の筋力を支える人外の骨格にもダメージを与えたか?

克巳は真マッハハイキックでピクルにさらなるダメージを与えた。
だが、克巳は攻撃の手を止めない。
生きている右手を使って真マッハ手刀で反対の頬を撃ち抜く。
ピクルの頭部が左右に揺れる。
これにはいくらピクルといえど脳震盪を免れないか?

[空手家 愚地克己 21歳の夏………]
[灼熱の時間(とき)――――――]


克巳は燃え尽きる気満々だ。
こうなったら止まらない。
砕けた腕でも真マッハ空手を敢行しそうな勢いである。
このまま、ピクルを燃やし尽くしてしまうのか?それとも燃え尽きてしまって終わるのか?
でも、真マッハ頭突きはあんこはみ出るから止めておけ。
次回へ続く。


やはり、真マッハ突きは反動の方も大きかった。
不安だと思っていたら見事に予感的中だ。
真マッハシリーズには明確な弾切れが存在するのが不安要素となった
今後、全ての部位を使って真マッハ空手を行っていくのだろうか。
いつの間にか命がけの男になった克巳だ。
空手家生命に関してはグラップラーだしドクター紅葉に任せれば安心だろう。
食われたら別だけど。

克巳の命がけの真マッハ突きでピクルに何とかダメージを与えられるようになったんだから、
刃牙なんか今頃妄想ティラノサウルスを倒した程度じゃ勝てないと後悔してそうだ。
前回よくぞそこまでのとかやたら上から目線で克巳を評価したのはいいけど、現実を見て思い直していそうだ。

ティラノサウルスを倒しただけではピクルと五分れないのだ。
ティラノサウルス超級の攻撃力を身に付けないとダウンもさせられませんよ。
半端な攻撃は回復されるし。さらに食人という部位破壊攻撃を持っているから長期戦は不利だ。
範馬なら何とかなるかもという可能性を考慮すると、やっぱり人外は不条理だ。

技術でピクルの域に踏み込むことが可能だとわかったが、肉体の方がついて行かないことが判明した。
残り6人の戦士たちはどうするんだ?
ジャックは人外だからその辺は大丈夫。ガイアもフィジカルな強さだけで戦うタイプではないので問題ない。
しかし、他の4名は暗雲が差し込めるばかりだ。
独歩は克巳が戦った以上出番ないかもしれないけど、昂昇や渋川先生はキツそうだ。
寂海王がどうするのかが一番気になる。
…不安だなぁ…



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