範馬刃牙 第128話 空気の壁
克巳がマッハの男になった。
もうブレーキなんか積んでいない。
このまま、ピクルを轢き殺してしまうのか?
それとも曲がり角を曲がれず自滅してしまうのか?
文字通り、人生の岐路だ。交通事故でも起こそうものなら、その残骸をピクルは食ってしまうぞ。
[万日の時を費やし――――――――――
練り上げられ積み上げられた先人の知恵と術理が――――――――]
[天才
愚地克己の手により 飛躍する]
空手をベースに中国武術の理合を取り入れ、さらにそれを発展させ全身を多重関節と化し空手に活用する!
人間じゃねェ…
他武術の要素を僅か数日で自分の流儀に融合させるのは克巳の才能の為せる技か。
いや、人間じゃないけど。
[言うまでもなくその破壊力は想像を絶する]
[原始の力もマッハの前では分が悪い]
克巳は多重関節=マッハの理論を用いて廻し蹴りと手刀を行いピクルを再度ダウンさせる。
問答無用にダメージによるダウンである。
原始の力もマッハの前では分が悪いのだ。速力は筋力を超える。
スピードが軽視されがちなバキ世界では革命的ともいえよう。
そして、一歩間違えれば鞭打だ。
…鞭打を打ち込んだ方が良かったんじゃないか?
ただのティラノサウルスの尾で終わるかもしれないけど。
ピクル二度目のダウンに観客たちは再び沸き上がる。
克巳の身体を犠牲に奪ったダウンだということを忘れている。
いや、忘れんなよ。
対してグラップラー一同の表情はやはり暗い。
肉体を犠牲に奪ったダウンは大きいが、ピクルの戦力を考慮するとそれも一時の時間稼ぎに過ぎないのか?
[しかし問題は―――― そう―――]
[そのマッハにこそあった]
やっぱりというか何というか、真マッハ廻し蹴りと手刀に使った左足と右手は破壊されていた。
超音速の代償は大きかった。しかし、それでなければピクルに対し有効打を奪えない。
ピクルとの差を技術で埋めても、その差は大きいままであった。
やっぱり、速力よりも筋力か…
でも、多重関節にすれば骨折も免れる気がする。
衝撃を吸収するクッション代わりにはならないのだろうか。
やはり、イメージで強くなれど現実には勝てないということか?
刃牙も鞭打が液体をイメージすれど現実に関節は存在すると言っていた。
思わず忘れそうになるが当然のことだ。
克巳の拳は現実とぶつかったことで砕けてしまったのかもしれない。
イメージのティラノサウルスを倒しても現実では…
「あれがピクル」
「あれ程の犠牲を払わなきゃ」
「ダウン一つ奪えやしない」
何でピクルを知っているかのような台詞を言えるんだ刃牙。
ピクルと実際に戦ったことのないお前が言う台詞じゃない。蹴り一発でダチ(笑)とか言ってる場合でもない。
本来ならばこれは烈が言うべき台詞だ。
自分のことじゃないのに何だか偉そうである。
肉体を犠牲にしなければダウンを奪えないほどであるから、新聞紙パンチ程度でやれる気になってたどこかのB少年は猛省してもらいたい。
ピクルをダウンさせたのはいいが、克巳は膝を地面につけてしまう。
ピクルにこれといった外傷はないが、克巳は超骨折だ。
押してはいるものの分が悪い。
ボス戦でMPを使い切る気持ちで魔法連発した状態だ。
HP回復するだけのMPが残されていないので反撃に転じられれば大ピンチだ。
どうする克巳。
「克巳の拳をもってして…」
「鋼鉄(はがね)で出来とるんかいッッ ピクルの肉体はッッ」
「肉体によるもの ――ではない」
お前どれだけピクルを侮っているんだよという徳川光成の言葉に対し、いつの間にか現れたペイン博士が反論する。
最近、姿を見せなかったがやはりこの一騒動に絡んでいた。
…やっぱり、克巳をピクルに食わせる気なんだろうなぁ…
ペイン博士が言うには克巳の拳のダメージはピクルの肉体と激突したことが要因ではないらしい。
マッハの速度があればピクルとて反応できないだろうし、それゆえに反応して腹筋を固めることもできないのか?
そうなるとどうして真マッハシリーズのダメージがあそこまで大きいのだろうか。
「空気の壁…………」
「音の壁によるものだ」
空気の壁を破ったことで克巳の肉体に莫大な負担がかかったらしい。
…あれ?
すごく不味い予感が…
突っ込みたい心を抑えて次に移る。
1225kmを超えると空気の壁を突き破る。
この現象をソニックブームと呼ぶのだとペイン博士は科学者らしいことを言う。
ソニックブームは高度5000mで発生させても地上にある窓ガラスを割るらしい。
東京ドームで真マッハ突きでも行えばその衝撃波がドーム全体に広がるのもある意味必然か。
そうなると道場の窓が全て割れたのも表現としてはおかしくなかった。手段としてはおかしいけど。
さて、そのソニックブーム発生における負担は非常に大きいらしく、金属製の航空機ですらその衝撃で破壊されることもあるという。
それを生身の拳でやろうものなら…
「彼の手足が時速1225キロを超えたとき」
「凄まじい負担を課したハズ……」
克巳の拳は空気の壁と激突したことで壊れたのだ!
…えーと…言っていいのだろうか。
空気の壁の影響で克巳の拳が壊れたとしたら、
真マッハ突きを試し撃ちした時点で壊れているんじゃあ…
花山に撃ったマッハ突きや郭海皇のマッハ突きは速度が足りなかったと無理矢理納得するにしても、
真マッハ突きだから空気の壁に阻まれて拳が壊れたというのは無理がある。
ペイン博士は相変わらずどこかが抜けている。
空気の壁を考慮したとしても、やはりピクルの肉体と激突した衝撃の方が大きそうだ。
もしかしたら試作版の貫手マッハ突きは空気抵抗を考慮していたのかもしれない。
空気抵抗の少ない貫手ならば空気の壁による反動を受けずに済む。
それを思い出して克巳は真マッハ手刀を叩き込んだのかも。手刀ならば空気抵抗は正拳より少ないのだ。
結果は見事にクラッシュしたけど。うーん…やっぱり、空気の壁より接触による衝撃だよなぁ…
それにしても真マッハ突きの盲点は指摘すれど、人間がマッハの速度を出すのは否定しないのか。
科学者ならむしろそっちを否定するべきだと思うが…
多重関節をイメージしたからといってそれが一体どんなプラスになるというのだッッッ、くらいは言って欲しいところだ。
うん、その通り。実にその通り。
ペイン博士はピクルのダウンを目の当たりにしながらも落ち着いている。
ピクル専門家だけあり、マッハの速度程度ではピクルは揺らぎもしないという自信があるのだろうか。
空気の壁の恐ろしさを知っているなら、マッハの速度で衝突した時の恐ろしさも知っておいた方がいいんじゃないのか?
何というピクルへの信頼と崇拝だ。というか、結局お前は止めないのかよ。
さて、ペイン博士のトンデモ解説を聞いて刃牙と徳川光成は汗を流す。
常識外れのグラップラーとその関係者をも納得させるペイン博士の言葉であった。
科学を凌駕するグラップラーといえど、科学にはまだまだ及ばぬ部分もあるらしい。
あるんだ。あるんだ、きっと…
「両手と左足を犠牲に やっと手に入れた確かな有利」
「なのに――――――――」
「奴はもう回復しつつある」
〜〜〜〜〜〜〜ッッッ。
ピクルが速くも回復している!
これには刃牙も驚かざるを得なかった。
真マッハ突きという驚異的な打撃を受けたというのに、その肉体は速くもそのダメージを克服しつつある。
やはり、人外の肉体は桁がまるで違う。マッハの打撃を受けても鼻血すら流さない。
回復力のすさまじさは範馬一族と互角、もしくはそれ以上なのかもしれない。理不尽レベルも範馬並みだ。
妄想ティラノサウルス倒しただけで資格十分と思っていたどこぞのB少年は猛省してもらいたい。
ピクルは内蔵へのダメージを狙った真マッハ突き第一打から素早く持ち直した。
持続するはずの内蔵のダメージをものとしていなかった。
次に顔面を狙い純粋なダメージによる気絶狙いの第二打と第三打のダメージも回復しつつある。
ピクルの異常な頸椎はマッハの速度すらも無力化しているのか?
恐ろしいまでの肉体の強さだ。烈海王を持ってして肉体の才能が現代人とは違うと言わしめるだけある。
やっぱり範馬以外には倒せない気が…
金的のダメージもすぐに消えているしなぁ。
範馬一族同様に鋼鉄の睾丸を持っているのだろうか。
いや、金的食らった範馬一族は刃牙だけだけど。
にィ…
ピクルはうつぶせに倒れたまま、笑う。
克巳は自身をダメージでダウンさせた初めての人間なのだ。
餌として相応しすぎるほどの強敵である。
そして、足を立てて腕は地面を捉える。
ピクル全力の証、ピクルタックルの構えだ。
克巳オワタ\(^o^)/
克巳に武器はもう残されていない。地面に膝をつけてしまっている。まるで敗者の姿だ。
拳は使えないし残された右脚で蹴ろうにも軸足となる左足が死んでしまっている以上、ダメージに期待できないだろう。
ピクルがこのままピクルタックルを撃てば克巳は何一つ抵抗できずに終わってしまう。
ピクルタックルと見せかけて普通に立ち上がってくれることを期待するしかないのか?
このままでは天才愚地克己の才能を持ってしても、ピクルという存在には抗えずに終わってしまいそうだ。
あるいはここから天才愚地克巳が本当に覚醒するのか?
真マッハ突きは他の格闘家の技を克巳流に再統合したもので、克巳のオリジナルとは言い難い。
そんな中、両手と左足は死んだ。残った右脚が熱いぜ。
絶体絶命の逆境でこそ、愚地流空手ならぬ克巳流空手が完成するとか。
例えば、イメージすれば多重関節になれるように、イメージさえすれば壊れた拳も元通り(になると思い込めるの)だ。
これで真マッハ突きを何度でも撃てる。五分と五分だぜ。
…妄想は刃牙の仕事だな。
克巳が窮地にさらされながら次回へ続く。
人類とは一線を画す圧倒的なフィジカルの強さがピクル最大の武器である。
克巳はそれに対して自らの肉体を犠牲に真っ向勝負を挑みダウンさせるまでには至った。
が、後に続かなかった。
ダメージは回復すれど骨折は回復しない。克巳、大ピンチだ。
最大トーナメント決勝戦で刃牙の骨折は試合中に明らかに回復していたけど無視。無視っ。
しかし、このまま負けては克巳の立つ瀬がないし、観客たちの立場もない。
窮地にこそ再び潜伏期に入った加藤と末堂の出番だ。
ウリャッケイッ再び!
でも、観客席が遠いので克巳に気付いてもらえません。
潜伏期に入っているといえば独歩もだな。
真マッハ突きに菩薩の拳を用いて師匠冥利に尽きる。
…と思ったら、真マッハ手刀の真マッハ廻し蹴りの前に忘れ去られるとさりげなく扱いが悪い。
見せ場を奪って親父として子を奮い立たせるのか?
これから克巳は四肢の末端から順番にマッハで撃ち込んでいくのかもしれない。
関節を多重化すればいいのだ。
マッハの速度で身体を叩きつければそれだけで超威力だ。原始だってマッハにはかなわないことは照明済みである。
もはや拳を握る必要すらない。
ならば、末端の攻撃にこだわる必要は絶無!
それは空手じゃないけど。
そうしていると真マッハ肘打ちを敢行する頃には肘から先は骨折でグニャグニャだ。
その骨折っぷりは柴千春なんて目じゃない。
こうすることで非常に痛々しくなるが、同時にイメージによる多重関節化だけではなく現実に多重関節化を行える。
そして、イメージ+現実の二重の多重関節化による音速を超越した領域まで克巳は踏み込む。
これぞ音速拳を超えた光速拳!
…すごい鞭打だな、それ。
それとも変に凝らず真マッハ突きを正統進化させるのか?
菩薩の拳は骨折した拳を無理矢理整えて作り出すことにする。
そして、克巳は思い出す。刃牙の存在と刑務所での戦いを。
刑務所については克巳は知らないけど無理矢理思い出す。
こうして真マッハ突きにさらに剛体術と地球アタックを加えるのだ。
地面と垂直に超音速で殴りかかりつつインパクトの瞬間に無限の関節を全て停止。
これにはピクルも鼻血確定だ!
と、ここまで書いて思ったけど、多重関節じゃなくいっそ軟体動物よろしく無関節をイメージしてみるのはどうか。
一つの線は無限の点で出来ている。
ならば、無数の線をイメージするよりも点そのもので肉体を構成してしまえばいい。
そして、克巳にも無関節の部位はある。
それを使った本当のアルティメットウェポンが真マッハチン(以下、検閲により削除)
Weekly
BAKIのTOPに戻る