範馬刃牙 第129話 体重差 



真マッハ突きのダメージがあっさりと回復された。
ダメージはあった。ピクルに未知の打撃を与えることに成功した。
しかし、許容範囲内であった。
やはり、ピクルはどこまでも規格外だ。
これが人間の限界なのか?


膝を着ける克巳に対して、ピクルは四足歩行の構えを取る。
このまま、ピクルタックルを放って決着か?
と、思いきや普通に立ち上がる。
とりあえずではあるが九死に一生を得た克巳であった。

だが、5万5千人の観客たちの顔に不安の色は隠せない。
会場全体に衝撃波が伝わるほどの打撃を3度当ててもピクルはそれを克服してのけた。
最新最強の空手がピクルに通用しないのだ。
烈永周だったら泣いているところである。

[なんという理不尽……]
[打ち込んだ者が跪き――――― 被弾した者が見下ろす]
[嗚呼………  何故 神はこのような者を現代に………]


ピクルは克巳を見下ろす。
両手をやや広げながら下げるその姿は勇次郎やジャックが見せた範馬立ちによく似ている
勇次郎同様の構えを取ったり、ピクルは範馬一族との共通点が多く見られる。
古来よりこの立ち方が強者の証なのだろうか。
理不尽なあたりも範馬一族とそっくりだ。

(残念なことに…)
(克巳さんがここまでやったこと 何一つ間違えちゃいない)
(当たり前のことが当たり前に起こっている ただそれだけ……)


おい待て刃牙。
当たり前とか言っているがお前はピクルの何を知っているんだ。
お前は蹴られただけだから!
一発KOされただけだから!
餌以下の遊び相手使いだから!
一発でダチとか勘違いしている場合じゃないから!
あと新聞紙握ったり妄想と戦っている場合でもない。

それとも、妄想アイアン・マイケルを一発KOしたハイキックでピクルをKOできなかったから、
真マッハ突きで倒せなくても当たり前とか言うんじゃないだろうな。
上から目線は相変わらずである。
何だ、この主人公は。

ここで前回音の壁理論を持ち出したペイン博士が語り出す。
以前までは格闘技はシマウマにすら勝てないと言っていたペイン博士だったが、
烈の技術と克巳のマッハ突きで評価を改めたのか、格闘家の強さを予測を覆すほどのものだと認めていた。
しかし、ここで持ち出したのが体重差だ
バキ世界において体重と身長ほど頼りにならないステータスはない
体重差なんかを気にしているのはアイアン・マイケルくらいだ。

ボクシングにおけるウェイトは数キロ単位で細かく分けられている。
しかし、ピクルが戦ってきた恐竜は数トンクラスである
重さの桁が違うのだ。
まぁ、トンクラスの差があってもグラップラーなら楽に埋めるとは思うが。
100キロのカマキリがアフリカ象以上の戦闘力を誇るし。

ウェイトの桁の違いを語ったペイン博士は続け様に最大の恐竜、スーパーサウルスを挙げる。
体長33メートルに加え体重30トンだ。桁外れにデカくて重い。
しかし、それすらもティラノサウルスに捕食されていたらしい。
捕食していたという根拠や証拠は不明だ。
恐るべきティラノサウルス信仰もといピクル信仰である。

「15トン(15000kg)の攻撃は100kgの克巳以下ではあり得まいッッ」

体重って問題じゃねーよ!
最大の恐竜スーパーサウルスを食らうティラノサウルスの攻撃力は凄まじい。
そのティラノサウルスの攻撃に耐え続けてきたピクルの防御力はもっと凄まじい。
ペイン博士は猛烈な勢いでピクルを持ち上げると同時に、猛烈な勢いで克巳を地面に叩きつける
おいおい、原始の力もマッハには分が悪いんじゃなかったのかよ。
速度が体重に負けてしまった。

しかし、克巳の体重と真マッハ突きの速度を鑑みると、15トン以上の衝撃は楽にある気がする
衝撃力は速度に重さ、そして面積が関わってくる。
恐竜はデカくて重いが大きすぎる分、破壊力が分散しがちな恐れもある。
大きすぎるがためにピクルには攻撃を全身で受け止められることになり、ダメージを分散すれ数値よりもダメージが低くなっていそうだ。

そうなるとマッハの速度で100キロの体重をピンポイントで乗せた真マッハ突きのダメージは、
恐竜の攻撃以上の破壊力が秘められているのは間違いない。
間違いないはずなのに、すぐに回復するピクルはもったいない。
ティラノサウルス級の重さの攻撃がピンポイントで突き刺さったのなら、もうちょっと苦しんでもいいのに…

(………ッッ やる気だッ)
(あれを………ッッ)


一度は起き上がったピクルだったが、再び地面に手を着ける。
ピクルタックルの構えだ。
このピクル、容赦せん。相手が骨折していようが何していようが問答無用にぶっ放す。
ピクルタックルの構えに烈は敗北の瞬間を思い出し、汗を流す。
あの時は真っ正面から崩拳をカウンターで当ててもピクルの筋力とタフネスに負けてしまった。
もはや武器が残されていない克巳にどれほどの抵抗が期待できようか。

(まちがえてはいない)
(何一つまちがえてはいない 結果―――――)
(両手と―――――)
(片足をブッ潰した…………)


真マッハ突きを使わなかったらピクルにダメージすら与えられなかった。
ならば例え身体を犠牲にしてでもダメージを与えようという克巳の判断は正しいとも言える。
結果、ピクルからダメージよるダウンを奪うという偉業を成し遂げた。
その結果、自分だけが消耗することになってしまった。
例え一時といえどダメージを与えられただけマシか?

今の克巳は独歩に迷わず奇襲をするような冷酷さを備えている。間違いなく空手選手ではなく空手家だ。
しかし、負け戦に身を投げ入れてしまった。勝つ以上に生き残ることを重要視する武道家としてあるまじきことだ。
そして、守るべきはずである五体を消耗させてしまった。
武道家としての心得以上に自分より強い相手と戦いたい強いんだ星人の本能が勝ってしまったのかもしれない

克巳は観客席にいる門下生の顔を見る。
誰もが誰も不安に顔を染めている。
末堂だって冷や汗で驚いていますよ。
あ、出てきた。
点呼を行って以来、すっかり忘れられていたけど出てきた。
加藤も出てやろうよ。

不安なのは門下生だけでなく、烈と郭海皇もだった。刃牙も一応冷や汗。
恋人の不安げな顔は克巳には辛いものだろう。
今こそ立ち上がる時だ。
ピンチにヒロインの顔を思い浮かべて最後の力を振り絞るのは王道である。
あ、刃牙は梢江を思い出して最後の力を出すのは止めてください。
梢江、どうなったんだ?
ああ、思い出すな。思い出さなくていい。

烈からパワーを受け取ったのか受け取っていないのか、克巳は立ち上がる。
だが、両手と片足は砕けている。
万全の状態で真マッハ突きを撃ってもダメージは回復されてしまった。
何か打つ手があるのだろうか。

(俺はまだ使用(つか)っちゃいない!)
(俺だけが掴んだ―――― 俺だけのマッハッ)


何ィ!まだマッハネタが尽きていなかったのか!
郭海皇から教わった技術体系を基礎にしたマッハ突きではなく、正真正銘に克巳オリジナルのマッハ突きが炸裂するのだろうか。
これが克巳自身の力で踏み込んだ501年目の空手による真の501年マッハ突きか?
ここで改良前のオリジナルを自分だけのマッハ突きと言うのはギャグにもならないので止めてください。

克巳は脱力しきったように身体をゆらゆらと揺らす。
力を抜いていたとはいえ身体を揺らしていなかった真マッハ突きと比べると明らかに違う。
何かを感じたのか、目ざといグラップラー一同は驚愕の嵐だ。

「まだあるというのか この先がッッ」

郭海皇も驚いた!
関節多重化理論が応用されることまでは読めていたが、さらにその先があることは予想できなかったらしい
あまりに驚きすぎてサングラスが割れる。
何も触れていない。驚いただけで割れた。種も仕掛けもございません。
…何で割れるんだ?
マッハ?それとも消力?
いずれにせよ、克巳は中国武術最強の妖怪ですら予測不能の領域に踏み込んだ。

「来いやァ… 親友………」

克巳は呟く。
死力を尽くした攻撃が通用しなかった理不尽なまでの強敵を親友扱いした。
克巳にとってピクルはただの強敵ではないようだ。
もっとも、恋人には烈がいるからピクルは親友止まりです。

ピクルは踏み込む。ピクルタックル発動だ。
ピクルタックルは受けるだけで致命傷となる。
勇次郎の鬼哭拳並みの破壊力を誇ることだろう。
対して克巳は棒立ちのまま、右腕を突き出し501年マッハ突きを放つ。
同時に右腕が視認不可の速度へと達し衝撃波が広がる。
地味ながらも音速に踏み込んだ証だ。

全身を多重関節にして加速させる真マッハ突きと異なり、501年マッハ突きは明らかに稼働箇所が少ない
というか、郭海皇マッハ突きそのものだ。
だが、そこに501年マッハ突きの真髄があるのだろうか。
天才愚地克己の真の力が発揮されるのか。
それとも某地球の人クラスのハッタリになってしまうのか。
次回へ続く。


克巳に秘密兵器501年マッハ突き(仮称)が隠されていた。
501年マッハ突きは他の格闘家の必殺技を再統合した真マッハ突きシリーズとは異なり、
克巳本人のオリジナリティが引き出されたものになるのだろうか。
来週、ピクルに勝ったと思ったら実は夢だった、という展開を否定できないのが怖いが。
…最後に一花咲かせられるかは克巳次第か。

なぜ501年マッハ突きを最初から使わなかったのだろうか。
消耗しきった後に出しても効果も半減していそうだ。
もっとも真マッハ突きを実戦で使ってみてやっと閃いた技なのかもしれないが。

負傷に関係なく撃てるマッハ突きなのか、あるいは拳だけではなく腕を丸ごと破壊してしまうとか。
だとしたら、温存というか撃たなかった理由もわかる。
ピクルに破壊され尽くした右腕を食われないことを祈るばかりである。

克巳が拳を破壊してもノーダメージ。501年マッハ突きも負担の大きさが容易に想像できる。
そんな絶望的な条件が揃う中、刃牙はどうするのだろうか。
新聞紙パンチがこの期に及んで十分な威力があると思っていたら勇次郎に殴り殺されることであろう。間違いない。

しかし、こうなると克巳はあえて旧マッハ突きを使って戦った方が良かった気がしないでもない。
一発の威力は欠けるが拳が壊れないし連打できるのが旧マッハ突きの利点だ。
菩薩の拳で殴ればマッハの負担なしでダメージを底上げできるだろう。
真マッハにこだわらず、そこそこマッハで戦うのも手の気が…
もっとも、真マッハのダメージが即回復されるほどだから、そこそこマッハではすぐに反撃されたのかも。

ただ、501年マッハ突きが本物ならば、ピクルタックルに合わせることでダメージ増大、下克上もあり得るか?
烈の崩拳でもピクルタックルに合わせたら鼻血を流させることに成功した。
ならば、ダウンさせるほどのマッハ突きをタイミング良く打ち込めば…
代わりに克巳側のダメージも増大するけど。
…やっぱり、右腕は捨てることになるのかなぁ…

どうにも克巳に明るい未来は見えない。
とりあえず、今から食われそうになった時のための準備はしておくといいかもしれない。
末堂を生贄に捧げるとか。
…遊び相手にもならないか。
あるいはその時のための郭海皇か?
妖怪VS恐竜は見てみたい気がする。

それにしても克巳はマッハ一辺倒のマッハ馬鹿になってしまった。
もうちょっとバランスのいい人だと思っていたのに…
基本を守って勝てる相手でもないから、マッハ一辺倒が正しいのかもしれないけど、克巳の真っ当な空手を見たかった気もする。
それとも克巳が見つけたマッハは基本にマッハで立ち返る原点回帰だろうか。
マッハの速度で初めて空手を教わった日を思い出すぜ。
走馬灯などでは決してない。



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