範馬刃牙 第144話 この闘いとは――



貴様は範馬一族を嘗めたッッッ。
そう言わんばかりにジャックの逆襲が始まった。
打たれれば打たれるほど強くなるのが範馬の気質だ。
ここから範馬一族の本番が始まるのか?


(なァ先輩…………)
(教えてくれよ先輩…………)


ジャックは心の中でピクルを先輩と呼ぶ。
ピクルは最古の霊長類(あえてヒトとは呼ばない)だ。
霊長類という種の観点から見れば先輩である。
意中の人を呼ぶ時にもどうぞ。

同時に範馬一族の先輩だと深読みもできる
かつて刃牙はジャックと初めて出会った時は、兄だということを知らなかった。
だが、その身体は同族であることを感じ取っていたようで、刃牙の身体は反応していた。
肉薄すれば理屈でわからずとも身体で同族だと理解(わか)るのかもしれない
範馬一族にはそんな超能力があってもおかしくない。

さて、ジャックはピクルを先輩扱いしながらピクルの頭を観客席に叩きつける
先輩を敬う心がまったくない。
さすが範馬だ。敬意の対象は暴力の対象でもあるのだ。
むしろ、殴って叩きつけることが敬意みたいなもんですよ。

そして、好みのタイプだからこそ叩きのめすのがジャックである
ガーレンはひどい目に遭いました。
いい貌になったシコルスキーもひどい目に遭いました。キャラクター的にもひどいことになった。
刃牙と梢江の初体験がちょっと筆舌に尽くしがたいほどにひどいことになったのも、やっぱりその辺が関わってくるのだろうか。

ジャックはピクルの顔を自分の顔くらいの高さまで持ち上げて凄む。
マックシングにより歪んだ輪郭。細めた視線。そして、剥き出しの歯…
超怖ェよこの人。
ジャックが夢見たフランケンシュタインはここに完成した。本物の化け物になっちゃったよ。

そんなジャックに対してピクルは口を半開きで目は虚ろ…
相変わらずの天然ボケスタイルである。
たった2発でマックスにさせ、そのマックスを受け流した相手に対して、恐ろしいまでに危機感がない。
事実、まだダメージ表現の基本とも言える出血がない。
マックシングジャックもピクルにとっては未だ本格的な脅威になっていないのか?

ジャックの攻勢は続く。
観客席に叩きつけた後は一本背負い風の投げだ。
しかし、掴むのは腕ではない。髪の毛だ。
脳を揺らし、さらには頭部にダメージを与えるえげつない投げだ。
ピクルは観客席から闘技場へと投げ飛ばされる。
2階席から投げただろうから、落下の衝撃も大きいことだろう。落下程度がダメージに換算されないとは思うけど。

でも、ピクルの髪の毛は抜けていないようだ
何という毛根の強さ…と言いたいところだが、烈の足技でピクルの髪は抜けている(第98話)。今回の投げで抜けないのは何か不思議だ。
もしかして、ジャック兄さんは技を使ったか?
万年坊主だからピクルの長髪を壊すのはもったいないんです。

ピクルはM字開脚をしながらダウンする。
フンドシなければ逸物が丸見えだ。でも、フンドシのおかげでちゃんと隠されている。
フンドシがあるから恥ずかしくないもん!
フンドシがなくても恥ずかしくないもん。

ともあれ、すぐに上体を引き起こす。
未だ十分なダメージには至っていないようだ。
しかし、背後には即ジャックだ。相変わらずの機動力を見せつけている。
ピクルは振り向く。

(感じ取ってくれてるかい?)
(俺がさァ…………)
(何を想い―――――――――何を生きてきたのか――――――――)


――と同時に、ジャックのローキックが決まった
奇しくも烈がジャックの頭を蹴り抜いた時とほぼ同じ構図だ(第94話)。
だが、ジャックが、それもマックシングを発動させているため、威力は段違いであろう。
その証拠にピクルは後頭部を強かに地面にぶつける。
ピクルの筋力を持ってしても踏ん張ることが出来なかったのだ。
決定打にはなり得ないかも知れないが着実にダメージを稼いでいる。…と思いたい。

ジャックはピクルを攻め立てながら己の人生を振り返る。
美食も、美酒も、美女も、金銭も、地位も、名誉も、興味がないのもあるけれど、何もかもを捨ててきた。
範馬一族の長、勇次郎は禁欲の果てに辿り着く境地などたかが知れたものとばっさり切っていたが、
ジャックはそれとはまったく正反対で禁欲禁欲のMore禁欲生活を過ごしていたようだ。

勇次郎が欲を一切押さえつけないのが生来強者だったからだが、ジャックは違った。
ドーピング博士と出会うまでは一般人にすら負けるほどだった。
生来の強者たり得なかったのだ。
それでも強さを手にするために禁欲生活を過ごしていたのだろう。
なお、刃牙はちゃっかり女を手に入れてました。このリア充め。あえてというか、わざと美女とは言いません。

(たった一つのための――――人生でいい)
(強きこと!!!)


その禁欲生活の中、たった一つ求めたモノが強さだった。
強さにかける執念なら誰にも負けないのがジャックだ。
暴走しまくりの強さ☆BOYである。ヤンデレみたいなものだ。
精神というか身体が病んでいるけど。
…あれ?それじゃあジャックは病弱娘(けっこうな確率で眼鏡っ娘)になるのか?
ジャックの女性化は人によって差異が生まれそうだ。どうせ誰もやらないけど。

(生命活動の全ては――)
強さの獲得 この一点にのみ向けられた)


失禁しても特訓を止めなかった。
死の淵まで薬物を摂取した。
骨延長手術によって激痛と引き替えに身長を手に入れた。
強くなるために己の身体を限界まで責め上げてきた男であった。

ジャックの人生は肉体改造の人生だ。
過程はどうあれ、ピクルの驚愕の肉体に肉薄している。
この戦いは持って生まれついた強さと死に物狂いで身に付けた強さの激突なのだろうか。
克巳が後の人生を捨てる覚悟で戦ったのなら、ジャックは今までの人生を苦痛で染め上げながらも強さを手にしてきた。
その重さは克巳と同等――いや、それ以上であろうか。

ジャックは倒れたピクルの首筋を思いきり踏んづける。
力で攻めるだけではなく、今度は急所を狙い撃った。知恵でも戦うのが現代人の強みである。
強さマニアであると同時に天才でもあるのがジャックだ
ドーピングで高揚して己の人生を振り返りつつも、冷静にピクルの急所を攻めている。

烈は急所を攻めても決定打を奪えなかったが、ジャックほどの力を持ってすれば話が変わってくるのか。
ついにピクルの瞳が泳いだ。
これはダメージあり、か?

それにしても私はさっきから烈が〜烈が〜とばかり書いている。
知らぬ間に烈はいい比較対象になってしまった
そんな本人がちょうど来ている。
「私では通用しなかったが、ジャックならダメージを与えられるかッッ悔しい…でも、感じちゃう…ビクッビクッ」とか言ってみてはどうか。

再びジャックはピクルの頭を持ち上げる。
持ち上げられてピクルは素直に立っちゃいますよ。
どこまで素直なんですか、この原人は。
素直だけど慌てない。素直クールですか。
ヤンデレVS素直クールの属性対決らしい。

ともあれ、ピクルは立てている。
だが、視線は虚ろだ。それなりのダメージはあるか?
こうして隙だらけのピクルに対して、ジャックが筋繊維剥き出しの口を開ける。
剥き出しの凶器が向かった先は…

グジッ

ジャックがピクルの耳を甘噛みした!
ア・マ・ガ・ミ…見事な。
キスの次は甘噛みである。
そっくりだ!闘争とセックスはそっくりだ!
「グジッ」と擬音がすさまじく嫌だけど気にするな。SAGAの「シャリ」みたいなものです。
出だしがアレだったしこの戦いはそっち方面に傾かざるを得ないのか?

耳を噛んだ後、一気に身体ごと引き抜く。
このダイナミックを動きを間近に見ても…やっぱり、ピクルは動かない。
口は半開きで目は虚ろのままだ。
この人、どこまで天然ボケなんだよ。萌え要素の核弾頭ですか。
恥知らずな原人がいた!

あるいは自慢のピクルタックルが破られたことがショックなのだろうか
多くの強敵を屠ってきたピクルタックルを、ノーダメージで破られたのはおそらく人生初であろう。
その動揺が尾を引いて動きに精彩を欠いている…
ピクルはこれで繊細な心を持っているからありえなくもない。

ジャックは何かを大量の血と共に吐き出す。
血はどちらのものなのだろうか。
いや、普通にジャックの血が多そうだけど。
よく考えれば常時出血を免れないジャックが不利だ
うまく隙を見つけて顔に包帯でも何でも巻いたらどうか。
ピクルのフンドシとかどうよ、ジャック範馬。

吐き出した何かをジャックは蹴る。
ピクルの鼻に当たったそれは先ほど噛んでいた耳だった
ついにピクルも食われた。
今回の相手は噛み殺す相手だ。ぼーっとしていると無遠慮に部位破壊されるぞ。
現代に来てから初めての食うか食われるかの戦いに発展した。
手乗らないタイガーことシベリアトラは忘れておこう。

これで文化遺産に直接的な損傷が及んでしまった。
ノーベル賞受賞者を恐れぬ暴挙だ。
さすが反社会の鏡、ジャックさんだぜ。パネェっすよ。
もっとアウトローになるべくチンポ噛みきってはいかがか。

しかし、これほどの猛攻を受けてなお、ピクルには鼻血すらない
ピクル自身も苦痛に顔を歪めていない。
マックシングを持ってしても並大抵の攻撃ではダメージに勘定されないのか?
猛攻を受けてはいるものの、ジャックに対して敵意を露わにしていない。
ピクルがジャックを敵と認識した時が、全力と全力が激突するかもしれない。

ジャックもジャックでわざわざ耳を狙わないでも…
耳を斬るくらいなら加藤にだって出来る。
勝ちを優先するのなら頸動脈を狙えば良かったのに。
頸動脈を狙うのが得策だと勇次郎にレクチャーされていたのを忘れたのか?
あるいは顔面の皮の借りを返すべく、頬を狙ってみるとか。
ピクルも歯を剥き出しだ。そして、絵面は頬にキスなので女性読者も喜ぶ

強さマニアである以上、勝つこと以上に強さを比べたいのだろうか
小細工を弄して勝ったところでさほど意味はない…弟の刃牙の言葉だ(第74話)。
油断や隙に付けいって勝つのではなく、ピクルの力が発揮されるフィールドで勝つ…それがジャックの望みなのか。
あえて耳を狙ったのも挑発して本気を引き出すためかもしれない。
範馬一族はあれでけっこうフェアな一面を持っているのだった。

[この――――][闘いは――――――――]
[ジャック対][ピクルとは]
[最新VS―――――――――― 最古の闘いッッ]


観客4名はジャックとピクルの戦いは最新と最古の戦いだと認識する
似てはいるものの相反するテーマをいくつも背負った両者だ。
そして、お互いに肉体を破壊しあう壮絶な戦いになってきた。
これには全員冷や汗を流しながら見つめざるを得ない。
あの刃牙だって軽口を挟めないほどだ。
ジャックに密かにうるさい気が散る一瞬の油断が命取りと注意されたか?
新年早々に出てきて、新年早々に台詞なしだ。
やっぱり刃牙は刃牙でした。
次回へ続く。


範馬一族が爆発した。
思えばピクルが現代に蘇ってからというもの、範馬一族にいいところはない。
勇次郎は力で負けた。ジャックは噛み付きで負けた。刃牙は…問題外でした。
地球上のあらゆるところで、あれだけ幅を利かせた範馬一族が嘗められているのだ。
範馬一族として逆襲しておかないとダメだろう…常識的に考えて。

今のところ、ジャックがペースを握っている。
しかし、肝心のダメージはピクルにあるのだろうか?
マックシングを持ってしても出血すら与えられていない。ダメージによるダウンもない。
押してはいるが押し切れていない。
…大丈夫なのか、マックシング。

でも、ジャックアッパーの時はその手応えに冷や汗を流すほどの違和感を感じていた。
今はその違和感がないようだ。
故にジャック本人としては十分なダメージを与えられているのかもしれない。
マックシングで有頂天になって、手応えを計るのを忘れていたとか止めてください。

ともあれ、自分の人生を振り返るほど、ジャックはノリノリだ。
さすが試合中に9週間もの回想を行うだけはあるぜ。
対するピクルは何の反応もない。ニート原人の不動っぷりは伊達ではなかった。
飯を出されるまで部屋(闘技場)から動こうともしない。
布団の中が俺の固定座席で伴侶だ。

猛攻を受けた以上、烈や克巳の時以上のダメージを受けているのは間違いない。
しかし、無反応なのが不気味だ。
観客席にぶつけられた時点で気を失っていましたというオチは遠慮願いたい。
低血圧の設定を付与して寝ボケキャラにもなれるぜ。
どんどんピクルの牙城は強化されていく。

ピクルが牙を剥いた瞬間、今以上の惨劇が繰り広げられてしまうのだろうか。
バキ史上において究極のオンリーパワーバトルになりそうだ。
格闘技が入る余地はありません。
逆にジャックが技を用いた時こそ、追い詰められた時になるのか。

でも、技を用いるのはジャックではなくピクルの可能性もある。
合気ッ。ここに来てッ。の如く技を用いるのだ。
真マッハ突きを模倣されるとジャックといえどヤバそうだ。
ピクルなのでノーリスクで撃てる。きたないなさすがピクル汚い。
肉体の強さだけでは学習能力の高さを見せつける時が来るかもしれない。

ジャックだけでなくピクルも身体の一部を失った。
これは刃牙も覚悟しておいた方がいいかもしれない。
ピクルと戦ってノーダメージで済まされると、食われた人たちが嫉妬しますよ。妬ましいわ。
血管とか言わず思い切って食わせてやろう。

それがダメならせめて全裸でピクルと戦ってやれ。
全裸と全裸で戦ってこそ、真の友情が目覚めるのだ!
バキ史上初の全裸バトルが刃牙VSピクルのセールスポイントでございます。

なお、今回の作者コメントは以下の通りだ。

「2009年……。テーマは「ショック」。よろしければお手に取ってご覧ください」

今年も板垣先生はやる気満々らしい。
いや、去年の時点で脚食われたり腕食われたりとショッキングでした。
今年はそれを越えてしまうのだろうか。ジャックは注意した方がいい。
刃牙とピクルの全裸バトルとかピクルが寂海王にあっさり負けるとか、そんな方向のショックも待ち受けているのだろうか。
今週から同じ雑誌で本編と外伝を同時掲載するという暴挙を成し遂げた。成し遂げちゃった。
今年の範馬刃牙も油断できそうにない。



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