範馬刃牙 第146話 反射神経



白亜紀闘法が炸裂だ!
白亜紀ならではの伝統ある闘法である。
お前白亜紀闘法でボコるわ…

原始の闘法は如何なるものなのだろうか。
ピクルは超音速を出す50年先の未来武術を上回っている
骨だけになる勢いではないに違いない。


ジャックは驚愕(おどろ)いていた。
その先にはピクルが立っている。ピクル自体には何の変化もない。
だが、異常はピクルの向こう側にあった。
なんと地下闘技場の柵が砕けていた。

真新しい穴が2つ空いている。
決してジャックが入場時に破壊したものではない。
穴の位置はジャックとピクルの立ち位置から大きく離れている。
それが砕けているというのは異常だ。異常すぎる。
何が起きたんだ?

砕けた柵を見てジャックはピクルの白亜紀闘法の正体を悟る。
この表情は…どこまでも沈痛だ。
絶望的な戦力差を見せつけられたように沈んでいる。
ジャックよ…ッッッ。

ジャックは最強最速の打撃であるジャックアッパーにピクルは反応できないと踏んでいた。
マックシングを以て放った打撃だ。反応されると困る。
だが、現実は違った。

[一歩も動けぬ――――――どころではないッッ]
[ピクル(やつ)は俺の放つ渾身の一撃を十分な余力を持って躱し―――――――]
[あまつさえ10メートルほども後方にある柵を][バネとし――――――]
[何食わぬ顔で元の位置へ立った]


白亜紀闘法の正体は超スピードで後ろに下がり素早く元の位置に戻るものだった
後ろに下がってジャックの打撃をかわす。
柵を足場とすることでバァンと大きな音が立つ。
その反動を活かしてピクルは元の位置へと戻る。
これだけ大きな動きを一瞬のうちに行うのだから、砂埃がたくさん舞う。
謎だった回避・音・砂埃の3つの要素の秘密が解明された

ピクルは一歩も動かずに相手の攻撃をかわしたのではなく、限りなく大きくかつ超高速で行うことでかわしていたのだった
一歩も動いていないように見えていたのだ。
ただ速く動く。あまりに捻りのない単純かつ原始的行動が白亜紀闘法の正体だった。
単純すぎる故に誰も真似できない神技でもあった

…うん。
こういうのを突っ込むのは野暮だってわかっているけど言っていいかな?
無茶だろ、それは。
あと元の位置に戻る意味はあるのか、これ。
アッパーをかわしたので俺はミステリーを残す為かわしたと同時に元の位置に戻ったが多分バキ世界で伝説になってる。

[それを俺は――――― 視界に捕らえることすらできなかったのだッッ]

これだけ大きな動きをしておきながらジャックはピクルの行動を認識できなかったのだ。
ピクルタックルを破った以上、スピードそのものには対応できるかもしれない。
しかし、白亜紀闘法はノーモーションから脅威のスピードを出し、さらに縦横無尽に動くことが出来るのだ
野球だって剛速球のストレート一本を狙うのは容易だが、複数の球種を混ぜられると対応しにくくなる。
そして、ジャックに至ってはストレートの速度を持つ複数の変化球を突き付けられたような心持ちなのだろう。
打てないぜぇ。超打てないぜぇ。

もはや次元が違う。戦いのレベルに別次元と言っても過言ではないほどの隔たりがある。
あ、ピクルは実際に別次元から来たようなものか。
ピクルと人類は生物としての立ち位置の時点で差がついていた。
その差は範馬一族を以てしても埋めがたいものなのか…

ともあれ、次元がまるで違う相手と戦っていることを実感する。
現実を理解したジャックに笑う余裕などまるでない。
噛み付きで負け顔面の皮を食われたことなど、この圧倒的すぎる戦力差の前には些細な問題であろうか。

ジャックはかつて聞いたことのある大山倍達の言葉を思い出す。
ジャックがこんなことを聞いていたなんて意外だ。
他人の言葉には耳を貸さない印象があるのにな。
特にこうした先人の言葉にはなおさら興味がなさそうだ。
先人の言葉なんてジャックにとっては破壊の対象でしかないだろう。
ガリガリ時代にボコられながら語られたのか?
悔しい…でも、聞いちゃう…ビクンビクンッ

人と猫が檻の中で戦ったのなら大山倍達は「ヒトは日本刀を持って初めて対等と言えるだろう」と答えた。
爪、牙、反射神経という人間には持ち合わせぬ武器を猫は持っているが、特に運動神経、スピードにおいては人間を凌駕している
武器がなければこの差は埋めることが出来ない。何十倍もの体重があろうとも、だ。
これについてググってみると実際に大山倍達関係の著書の中で語られた言葉のようだ。
もっとも「猫に殺される」のではなく「怪我をする」というニュアンスらしいが。

この話の真偽はさておき、スピードというものは闘争において圧倒的なアドバンテージとなる。
機動力は攻撃力以上に戦闘力に直結する要素なのだ。
そして――ピクルはその機動力が人知を超えていた。

[そういうことなのだ………]
[群雄割拠の恐龍紀]
[恐龍達(やつら)の武器と比べたら丸腰に等しいピクルが―――――――]
[捕食者として生き残る]
[おそらくは恐龍達の反射神経では
 決して追いつかぬほどのスピードで動いていたということだッッ]


そういうことなのだ。
ピクルはパワーとタフネスは恐竜クラスなれど、身体に備えた武器においては角や巨体を備えた恐竜には劣る。
いくらタフネスに優れていると言えど、恐竜の角が突き刺さりでもすれば致命的な致命傷だ。
そんなピクルが捕食者として生き残るにはどうしたのか。
恐竜を凌駕する圧倒的なスピードで戦っていた。
ピクルの身体に外傷がまったくないのはスピードを活かして回避していたからなのか。

今までの戦いぶりを見るにピクルはスピードで戦うことはなかった。
回想においても恐竜と真っ向から力比べをしていた。パワーとタフネスで戦っていたのだ。
スピードで戦うことは奥の手として隠していたのだろう。
生物離れした運動神経をフルに使って戦うのがピクル最後の武器…
四足歩行から二足歩行になったのも、この戦い方をするためなのだろう。
ピクルの二足歩行は闘争において最適化された構えであった。

[そういうことなのだ………]
[ピクル(こいつ)と闘うということは――――――
 恐龍達(やつら)に全勝するということなのだ……ッッ]


そういうことなんですか?
ピクル脅威のスピードと恐竜がどう繋がるのか、正直わからないがともかくピクルを倒すということは恐竜に全勝することらしい。
ピクルに勝つということと恐竜に全勝することは厳密には違う気がする。
でも、ピクルには勝てるけど恐竜には負けますという情けない思考ではいけないだろう。
恐竜にまで勝つ心構えで戦え!
刃牙は恐竜にだけは勝ったみたいでした。

でも、ジャック兄さんや。
それは今になって思うことではないぞ。
最初から恐竜にまで噛み付く覚悟で戦おうよ。
それとも、ピクルには勝てる気でいたけど恐竜は無理ッッと諦めていたのか?
1トンの北極熊を倒したことがあるんだし、もうちょっと自信を持っても…

脅威の機動力でピクルはジャックへと奔る。
あのスピードは守りに使っても脅威だが、スピードがもっとも活きる領域は攻めだ
スピード自慢の奇襲部隊に防衛をやらせるよりも、奇襲を行わせた方が本領を発揮できるのだ。

本気のピクルがそのスピードで攻め立てたら、ジャックのタフネスを持ってしても耐えられないことだろう。
ジャックは向かってくるピクルを迎え撃とうとする。
だが、その心中は…

[神さま………………………………初めて貴方にお懇願(ねが)いいたします
 どうか………………………………]
[どうかわたしに勝――――――――]


…ジャックは神頼みをした。
グルグルパンチをした烈の姿が被る。
既に独力での勝利を捨てていた。
ジャックの心は折れてしまったのか…?

神に祈るジャックであったが、現実は非情だ。
今までのお返しと言わんばかりにピクルアッパーがジャックに決まった。
歯が砕けてそのまま勝負ありになってしまいそうなほどに破壊力ばつ牛ンの会心打だ。
このままジャックは終わってしまうのだろうか。

肉体で負けた。心でも負けた。
ジャックに勝てる要素はないように思える。
しかし、神頼みしながらも生き延びることではなく勝つことを渇望(のぞ)んだ
ジャックは勝利への執念は捨てていないのだ。
藁にしがみつくようなか細い執念ではあるが執念は執念だ。
その執念が奇跡を起こすのであろうか。
今一番負けているのはスピードだ。ゲロ吐いてガリガリになって、スピードアップとかどうだ!

絶望的な状況においてジャックはどのような輝きを見せるのか。
神頼みしても範馬一族は範馬一族だ。窮地にこそ巨凶の血が目覚めるのだ。
多分ではあるがアッパーで歯が砕けない限りは戦える
歯が砕けたら…年貢の納め時だろうか。
次回へ続く。


白亜紀闘法の正体は予想の斜め上を行くモノだった。
てっきり関節をぐにゃらせたりするかと思ったらこれだよ。
超スピードで動くなんてシンプルすぎて逆に思いつかなかった。
そのうち残像を出すんじゃないか?

白亜紀闘法の機動力は脅威だ。
パワーとタフネスだけでも格闘家を屠り去っていたというのに、さらにスピードまで身に付けた。
パワー・タフネス・スピードの3つの要素が揃った今のピクルに隙はなかった。
足りないのはテクニックくらいだ。
ピクルにとって絶望的に不足している要素ではあるが、他の長所が補って余りある。
学習自体は出来るのでテクニックのハンデを埋めることも容易そうだ。

パワー自慢タフネス自慢の格闘家は花山やオリバなどがいるが、そのどれもがスピードという点では特別と言うほどの評価は得なかった。
パワー・タフネス・スピードの全てを満たしているのは勇次郎くらいである。
そんな領域にピクルは突入した。
今のピクルの戦闘力は勇次郎級、それも鬼の貌を出した状態に近いものがあることだろう。

対するジャックはパワー・タフネス・スピードのいずれも優れているが、その全てがピクルに劣っている。
ジャックですら器用貧乏に堕するのか。ヤバいぞ、ジャック。
唯一勝っているのはテクニックだ。
合理的な打撃テクニックがあるだろうし渋川流も使えるぞ。
それが用を成すレベルじゃなくなってきているが。
ドーピングをもう何本か打ち直してしまえ。

最新VS最古の戦いだったが、人類の限界VS太古の暴力へと移ろっている。
人類代表としてはもう打つ手ないですよ。
ズボンに隠していた麻酔注射を使うしか逆転の策がない。

人類の限界に突き当たったら、範馬としての引き出しを出すべきかもしれない。
弟の刃牙はちょくちょく巨凶範馬として覚醒している。
巨凶範馬と思わなければ合点のいかないことも何度かしている。SAGAとか。
巨凶範馬に目覚めれば不条理なパワーを発揮できるのだ。

そんなわけでジャックも巨凶範馬に目覚めてみては如何だろうか。
神頼みするほどに余裕のまったくない状態で範馬に覚醒できるかは疑問ではあるが、
刃牙だって最大トーナメント決勝では諦めかけたところから大逆転した。
ジャックだって同じことが出来る…はず。

さりげなくジャックは範馬の血に今まで一度も目覚めていない。
ドーピングが臨界点に達することはあれど、範馬の血の力が発揮されることはなかった。
だが、ジャックは勇次郎に最大トーナメントにおいては刃牙以上の評価を受けた。
刃牙の範馬の血の覚醒を目の当たりにした勇次郎が、だ。
ジャックが範馬の血に目覚めれば刃牙以上の実力を発揮できるかもしれない。
ステロイドが範馬の血を薄めているとか言われたら諦めてください。

もしも範馬の血に頼れないならドーピングの神様に頼ってしまえ。
ジャックほどドーピングに情熱を燃やしてきた人間は人類史上一人とていないだろう。
そんな血をドーピング色に染める人生を歩んできたジャックにドーピング神が奇跡を起こすのだ。
そのための神頼みだ!
さあ、オクレ兄さ…ダメだな、ドーピング神。


さて、今週の刃牙ですよ。
1コマしか出てきていない。冷や汗ダラダラだ。
でも、動揺している場合ではない。
ちゃんと対策を考えないとジャックの二の舞になるぜ。

かつて刃牙もユリーに対して縦横無尽に動く戦法を取った。
が、それを迎撃されて刃牙は敗北した。
同じようにピクルがいくら動こうとも確実に迎撃すれば無問題だ!
迎撃に耐えうるタフネスがあるので無理です。

じゃあピクルと同じように超スピードで動いてみるか?
何せジャックがピクルと戦っているのを知って、すぐに地下闘技場に着いた。
刃牙の機動力も異次元クラスなのだ。
今の私はピクルと同じことが出来るッッ。
いや、無理です。

今のジャックに勝機はほとんどないが、刃牙も同じくらい勝機がない。
例え鬼の貌を出してもピクルにパワー勝ちできるとは限らないし、
何よりも異次元のスピードを見せつけられた以上、ピクルに勝つためにはパワーだけではなく+αの要素が求められている。
刃牙は現在も出番とか役回り的にピンチだが、未来もピンチだ。
前途多難である。
想像を絶する悲しみが刃牙を襲った。


さて、最後にひとつ突っ込みたい。
前回のサブタイトルの「柔軟性」の意味は結局何だったのでしょうか?
内容に一切絡まなかったサブタイトルだ。
結局、何に柔軟性があったのだろうか。てっきりピクルがぐにゃぐにゃ曲がっていたんだとばかり…

まぁ、それを言ったら今回のサブタイトルも「反射神経」よりも「運動神経」が正しいとは思う。
サブタイトルに騙されちゃいけないぜ。
そう、第51話のようにッッッ。



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