範馬刃牙 第154話 範馬の系譜
範馬一族がアワレにも敗北した。
人外、異星人、インチキ…範馬一族を表現する言葉はたくさんある。
筋肉至上主義のバキ世界において、唯一血脈の概念を持ち込み常勝不敗なのが範馬一族だった。
(筋肉至上主義を持ち込んだのも範馬一族だがあえて無視しておく)
その範馬一族が血族以外の者に真っ向勝負で敗れた。
世界のルールを揺るがすかのような出来事だ。
さて、夜の徳川邸。
そこで徳川光成と勇次郎が向かい合っていた。
徳川光成は刃牙のことを告げる。
今の刃牙は地下闘技場、ピクルの目の前で何日も飯を食わずに機会が訪れるのを待っているらしい。
わざわざそんなことをする理由はフェアじゃないかららしい。
蹴り一発で瞬殺された男の言う台詞じゃない。
くそう。相変わらず小生意気な小僧だ。
とりあえず、刃牙は公言通りに行動した。
明日からやるぜ。明日から。
明日から職安に通う!
これほどの決意であった。だから、面接までの1週間くらいは休むぜ。
そんな徳川光成の話を無視する勇次郎であった。
何というマイペース…さすがは範馬。
徳川光成は当然刃牙が勝てるかどうかを勇次郎に聞く。
親馬鹿だから贔屓された評価が下されそうだから、相手としては不適切だと思うけど…
「拳雄烈
海王が倒され」
「新生愚地克巳が惨敗」
「怪物ジャック・ハンマーまでもが………」
「ワシの知る限りあの3名――」
「地球防衛軍最強と云える戦士達じゃ」
「この3名なら誰だって――――― 誰だって範馬刃牙に勝手も不思議はない」
刃牙に劣らぬ実力者3名が負けた。
だから、刃牙の勝算は薄い…徳川光成はそう言いたそうだ。
読者としてもそう言いたい。
ピクル編で刃牙は何をやっていたのか…蹴られて鼻水垂らしたくらいな気がする。
ピクルに勝てる気があんまりどころかまったくしないぞ。
しかし、地球防衛軍ってピクルは地球を襲っているわけでもあるまい。
いつの間にか地球代表にされてしまった3人であった。
とはいえ、地球全土を巡ってもあの3人ほどの格闘家はそうそういない。
代表選手として相応しい実力の持ち主だ。
その言葉も勇次郎は無視する。
おっととグーの音も出ないくらいに凹ませてしまった感。
とにかくにも酒の肴として出されていた鮭の内臓の塩辛、メフンを食する。
箸でッッ。
箸かよ!?
いや、勇次郎だって東洋人だ。箸を使うよね。おかしくないよね。
何で驚いたんだ、俺。
そんなに勇次郎が箸を使った姿が不思議だったのか…?
メフンを勇次郎は好物だと言う。
何とも意外だ…
焼き肉ではステーキ肉を持って行く勢いで、肉が好きだと思っていたのに。
グルメな勇次郎であった。
「3人の戦力は五分ッ ―――と云うことはじゃ―――」
〜〜〜〜ッッ。
刃牙じゃ勝てないと直接言いやがった!
しかも、親馬鹿の勇次郎の前で言っちゃったよ。逆鱗に触れたらどうするんだ。
TPOをわきまえろ!
あとそこまでわかっているなら止めろよ。
相変わらず戦士を生贄に捧げることを躊躇わないのであった。
「刃牙にはあって―――あの3名にはないもの」
「兎にも――角にも――」
「刃牙は俺の血を引く 明らかな範馬の系譜」
ついに出やがった…
範馬万歳の範馬一族理論だ。
これを出されると中国四千年の英知も100kgの体重差もなかったことにされるリーサルウェポンである。
2億年前の野生もなかったことにするのか?
というか、ここまで断言されると困らざるを得ない。
もう遺伝とかそういう問題じゃなさそうだ。
やっぱり、範馬一族という品種はヒト科とは異なるんじゃないか?
ワガママが定向進化したのが範馬一族のルーツとか。
と、範馬の血を持ち上げられると当然疑問となるのはジャックの敗北だ。
範馬一族だけどピクルに負けてますよ。
範馬一族の絶対性は崩されている。
徳川光成はその事実を指摘する。
見ろ、見事なカウンターで返した。
「結果を見るなら明らか あれは血が薄い」
EEー!?
負けたのは範馬の血が薄いから。血が薄いと弱い。負けてもしょうがなし。
理論理屈とか勝負の過程とか個人の努力とか完全に無視している。
範馬一族理論が絶対的なものとされてしまった。
ジャックは範馬の血が薄いからドーピングや骨延長などの手段に逃げたと揶揄されてしまいそうだ。
苦悩や努力が必要なのは範馬の血が薄いからさ!
そのジャックにかつては刃牙以上の評価を与えていたのは無視しておこう。
範馬のいないLSに未来はにい。
しかし、範馬の血を振りかざされると刃牙の強さにも納得できる。
範馬の血さえ濃ければ!
SAGAのためにわざわざ別の雑誌で掲載できる!
SAGAさえすればやたらパワーアップできる!
毒でガリガリに痩せても14リットルの砂糖水を飲めば復活できる!
強そうな2世キャラをその間実に2秒で倒すことができる!
5ヶ月出番がなくてもライバルを瞬殺できる!
カマキリ相手にリアルシャドーをやっているだけで強くなれる!
刑務所に入っていつの間にかオリバを倒せるようになっている!
そして、範馬の血さえ濃ければ!ピクルに勝ってもいいんだよォ!!
まぁ、納得はできるけれど理解は出来ない。
そんなわけで範馬一族万歳!
血が濃いからピクルとも渡り合えるぜ。そりゃあ、無茶だよ、勇次郎さん。
でも、勇次郎が黒といったら白も黒くなる。
人間を圧倒的に上回る身体能力を持つ突然変異種が勇次郎だと仮定すると、
その血の濃度で受け継ぐ強さが変わってもおかしくはない。
突然変異という時点で何か間違ってるけど、勇次郎だからおかしくはない。
刃牙が強くなったのは範馬の血を濃くしたからか?
くそう。アイアン・マイケルの血を入れてズタズタにしてやろうか。
徳川光成はこの強弁を呆れるほどの自負心と評価する。
自負心なのか?
自負心というよりも、何というか、その…
いや、自分が範馬種であるという自負心には溢れているか。
「ところでオーガよ」
「おぬしはやらんのか」
徳川光成は禁句を言ってしまった。
何でお前はピクルと戦わないの、とか言っちゃいけない言葉だろう。
何らかの被害が出るぞ。
今日の徳川光成はTPOをいつも以上にわきまえない。
酔いすぎだろ、お前ッッ。
勇次郎は笑う。そして、畳を叩く。
これだけで畳が垂直に立った。
畳替えしである。まるで時代劇のワンシーンだ。
だが、勇次郎のパフォーマンスはこれで終わりではない。
畳が垂直に立った瞬間を狙い、一気に手刀を振り下ろした。
日本刀を持ってしても両断しにくい畳を見事に真っ二つにしてのけた。
試し割り歴1年未満だが、相変わらず破壊に関しては超一流だ。
ただ真っ二つにするだけでなく、見事な畳替えしを行うという芸の多彩さだ。
一流の格闘家であると同時に一流のパフォーマーなのが範馬一族なのだ。
刃牙もピクルの目の前に座っているだけでなく何かパフォーマンスしろよ。
「心配するな爺ィ………」
「ああ見えて範馬刃牙」
「そう捨てたもんじゃねェ」
「いずれにしろ二人は闘う運命(さだめ)」
「立っていた一人を―――――― 俺が喰うまで」
結局、根拠は親馬鹿かよッッッ。
実は範馬の血は冗談でただ刃牙が大好きだから刃牙の力量はピクルに相応すると思っているのか?
いや、範馬の血は冗談とは思えないけど。
勝った方と戦う。
だから、勇次郎は手を出さないようだ。
珍しく気長だ。ゆっくりしていってね!!!
でも、負けた方も喰うのが勇次郎流だ。
一流の格闘家を好むグルメであると同時に、敗北者を弄るのが大好きな残飯処理係が勇次郎でもある。
勝った側も負けた側も勇次郎の制裁が下されそうだ。
前門の虎前門の王神状態でなす術なしです。
ともあれ、刃牙とピクルの戦いが半ば確定した。
今までは予約を取ろうとしたら先を越されてばかりだった。
なら、今度は飲まず食わずで店頭に居座って待つ!
…なんか格好悪いな。
地球代表の3名が敗れたから、残る出場者は範馬代表(長の太鼓判付き)しかいない。
今度こそ本当の範馬一族VSピクルの開戦だ。
刃牙の範馬濃度は半端ではない。近頃、形だけかもしれないが範馬らしさが増してきている。
しかし、ピクルの実力もインチキだ。範馬濃度が薄い判定されたとはいえ、ジャックを一蹴したほどである。
インチキVSインチキの規格外の戦闘になりそうだ。
次回へ続く。
次は刃牙VSピクルとなった。
ついに主人公の出番だ。本番到来である。
刃牙じゃ人工的に淘汰されるのが目に見えていたけど、範馬の血を引き合いに出されると諦めるしかない。
うん。実力十分だ。
バキ世界のイチローですね。
刃牙は飲まず食わずでピクルの前で機会を待っている。
その機会とは何なのであろうか。
とりあえず、飲まず食わずで同じく飲まず食わずのピクルと条件を合わせる。
そして、餓えに耐えかねたピクルが襲い掛かるのを待っているのか?
でも、ピクルは1ヶ月の空腹を味わっても、決して獲物に襲い掛からなかった。
そうして1ヶ月の間、座りっぱなしのニート学生とニート原人と相成る。
…ニート学生?
しかし、監視も何もなしで刃牙とピクルを二人っきりって警備も何もあったものではない。
多くの戦士が酷い目に遭ってるというのに…
徳川光成の反省のなさは凄まじいものがある。
また、新聞に報道されたらどうするんだよ。
ピクル編が始まってから刃牙はほとんど戦っていない。
妄想ティラノサウルスくらいだった。
だが、それもいつの間にか倒した扱いだ。
刃牙はここ1年半の間、一切戦っていないのだ。
大丈夫なのか?
まぁ、範馬だし大丈夫か…
烈の四千年の技術が敗れ、克巳の進化した空手が敗れ、ジャックの命を犠牲にするほどの生き様が敗れた。
これら3つを範馬の血はこれらを上回るのだろうか。
範馬の血の恐ろしさは何度も実証されてきた。
だが、今までと同じ範馬レベルではピクルを越えられないだろう。
刃牙も異世界の進化を果たす時が来るか?
鬼の貌を越えたスーパー鬼の貌を出すのだ。
勇次郎はスーパー鬼の貌3くらいまで出せます。
しかし、烈にしろ克巳にしろ、何かと人生を賭けてきたというのに、刃牙は血縁で勝負か。
烈たちが刃牙が妬ましく思っても誰が止めることが出来ようか。
妬ましい…ああ、妬ましいわ…
ルールブレイカー的な範馬の血をついに堂々と持ち出された。
もしかして、あまりにも強すぎたピクルをどう収拾するのか、板垣先生も詰まってしまったのか?
ルールブレイカーにはルールブレイカーをぶつけて均衡を保つしかないのだ。
そういえば、厚木基地に集まった戦士はどうなったんだろうか。
3人出して残り5名の出番はなさそうだ。
寂海王や鎬昂昇に期待していただけにちょっと残念だ。
それとも刃牙がピクルを倒した後、厚木基地戦士の復讐が始まるのか?
Jr.がお礼参りされたように!
…ないか。
次回から刃牙VSピクル開戦であろうか。
それとも誰かが割り込むのだろうか。
とりあえず、本部は解説に来てやれ!
…あ。刃牙が待っている機会ってもしかして本部の解説か?
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